【RCT】小児クループは30分間の屋外寒冷気(<10℃)曝露で症状が早く改善する
■今回,クループ流行ピーク期間に,軽度から中等度のクループの小児に対する30分間の屋外寒冷気(<10℃)曝露と室内の室温への曝露の有効性を比較したRCTがPedaiatrics誌にpublishされたので紹介する.本研究ではデキサメサゾン0.6mg/kg経口投与は前提として,介入群は屋外の寒冷気にさらされてトリアージデスクの視界内でPEDの外で30分待機する.主要評価項目は30分後のWestleyクループスコア(WCS)の2点以上の低下とした.
■結果は,主表評価項目は49.2% vs 23.7%(p=0.007)で,寒冷気曝露群の方が有意に改善しており,特に中等症の小児で効果が大きかった.なお,60分後の評価では有意差はなくなっていた(62.7% vs 66.1%,p=0.86).酸素飽和度に関しては寒冷気曝露群の方が30分後,60分後のいずれでも統計学的に有意に高かったが,両群とも常に98%以上であったことから臨床的意義は乏しい.
■クループの小児に対して冷たい飲み物の効果を検討した研究[PMID: 29100262]も過去にはあるが,改善効果は得られていない.これは,冷たい飲み物が咽頭壁~食道粘膜にしか接触せず,下気道に影響を与えにくいためだったと考えられる.今回の研究の考察では,動物モデルの研究で上部気道に冷感受容体の存在が示されており,これらの受容体の冷却刺激により,上部気道拡張筋の活性化が促され,喉頭と声門上部の上部気道抵抗が減少する.これらの部位での温度変化は,上部気道の開放性を制御する役割を果たしている可能性があるとしている.また,上部気道抵抗の減少を説明する可能性のある別の機序としては,寒冷空気の影響で収縮することによる喉頭粘膜血流の減少が知られており,これによる粘膜の厚さの減少と腔内断面積の増加をもたらす可能性がある.若い動物では,寒冷気が上部気道抵抗を減少させる効果も示されている.
クループ症状に対する屋外寒冷気vs室内温度曝露:無作為化比較試験
Siebert JN, Salomon C, Taddeo I, et al. Outdoor Cold Air Versus Room Temperature Exposure for Croup Symptoms: A Randomized Controlled Trial. Pediatrics 2023 Aug.1[Online ahead of pirint]
PMID: 37525974
https://doi.org/10.1542/peds.2023-061365
Abstract
【目的】クループは子供における急性上気道閉塞の最も一般的な原因である.ステロイドによるクループの治療の効果は確立されており,その効果は投与後30分で現れる.我々は,ステロイドが作用する前に,30分間の屋外寒冷気への曝露が軽度から中等度のクループ症状を改善するかどうかを検討した.
【方法】このオープンラベル,単施設,無作為化比較試験では,クループがあり,かつWestleyクループスコア(WCS)が2点以上で,小児救急を受診する3ヶ月から10歳の子供を登録した.患者は,トリアージと単回投与の経口デキサメタゾン後すぐに,屋外の寒冷(<10℃)大気への30分間の曝露か,または室内の室温への曝露のいずれかに1:1に無作為に割りつけられた.主要評価項目は,30分後のWCSのベースラインからの2点以上の低下であった.解析はintention-to-treatで行った.
【結果】合計118例の患者が屋外の寒冷気(n=59)または室内の室温(n=59)への曝露に無作為に割りつけられた.屋外群の59例のうち29例(49.2%),室内群の59例のうち14例(23.7%)が,トリアージ後30分でWCSがベースラインから2点以上低下した(リスク差25.4% [95%CI 7.0-43.9],P=0.007).中等度のクループの患者は,30分後の介入から最も恩恵を受けた(リスク差46.1% [95%CI 20.6-71.5],P<0.001).
【結論】経口デキサメタゾンの補助として,30分間の屋外寒冷気(<10℃)への曝露は,特に中等度のクループの子供たちにおいて臨床症状の強度を減少させるために有益である.