【研究】XBB流行期のCOVID-19の2価ワクチンは症候性感染を82-85%,入院を88-96%予防した
■SARS-CoV-2オミクロン株はデルタ株までと比較してワクチンによる液性免疫(抗体による)が得られにくいが,有効性は低下しつつも維持していた.そして,現在主流となっているXBB株はワクチンの恩恵をさらに受けにくくする変異株と
in vitro 研究ではされてきたが,リアルワールドデータではそうでもないようである.今回,XBB流行期のシンガポールにおいて,1価ワクチンによる4回目接種者と比較して2価ワクチン(オミクロン株BA.1またはBA.4/5対応ワクチン)が症候性感染を82-85%,入院を88-96%予防したという報告がLancet Infectious Diseases誌にpublishされたので紹介する.
SARS-CoV-2未感染者および既感染者における有症状SARS-CoV-2感染およびCOVID-19関連入院に対する2価mRNAワクチンの有効性:後ろ向きコホート研究
Tan CY, Chiew CJ, Pang D, et al. Effectiveness of bivalent mRNA vaccines against medically attended symptomatic SARS-CoV-2 infection and COVID-19-related hospital admission among SARS-CoV-2-naive and previously infected individuals: a retrospective cohort study. Lancet Infect Dis 2023 Aug.2[Online ahead of print]
PMID: 37543042
https://doi.org/10.1016/s1473-3099(23)00373-0
Abstract
【背景】免疫回避能の高いSARS-CoV-2オミクロン株(B.1.1.529)の出現により,従来株とオミクロン株を標的とした2価のmRNAワクチンが開発され,普及している.しかし,二価ワクチンの有効性に関する実際の観察データは乏しい.我々は,シンガポールにおけるSARS-CoV-2未感染者および既感染者を対象に,有症状SARS-CoV-2感染およびCOVID-19関連入院に対するBA.1由来またはBA.4/BA.5由来の2価ワクチンによる4回目のワクチン接種の相対的有効性を評価することを目的とした.
【方法】18歳以上のシンガポール在住者で,一価のmRNAワクチンを3回接種し,4回目の接種資格を有する者を対象に後ろ向きコホート研究を実施した.データはシンガポール保健省が管理するCOVID-19症例とワクチン接種に関する公式データベースから収集した.2022年10月14日から2023年1月31日の間に,医療機関で受診した症候性SARS-CoV-2感染とCOVID-19関連入院の発生率を,前回の感染状況と4回目のワクチン接種の種類別に解析した.逆確率重み付けCox回帰を用いてハザード比(HR)を推定した.
【結果】2,749,819人が解析に組み込まれた.SARS-CoV-2未発症群では,4回目の1価ワクチン接種は,3回目の1価ワクチン接種と比較して,症候性感染に対する追加予防効果をもたらさなかった(HR 1.09 [95%CI 1.07-1.11])が,2価ワクチンは追加予防効果をもたらした(HR 0.18 [95%CI 0.17-0.19]).感染歴のある人では,4回目の1価ワクチン接種でHR 0.87(95%CI 0.84-0.91),2価ワクチン接種でHR 0.14(0.13-0.15)であった.COVID-19に関連した入院に対しては,2価ワクチン(SARS-CoV-2未感染者ではHR 0.12[95%CI 0.08-0.18],既感染者ではHR 0.04[0.01-0.15])は,4回目の1価ワクチン(SARS-CoV-2未感染者ではHR 0.84[95%CI 0.77-0.91],既感染者ではHR 0.85[95%CI 0.69-1.04])と比較して大きな利益をもたらした.
【結論】SARS-CoV-2未感染者,既感染者ともに,2価ワクチンの4回接種は,1価ワクチンの4回接種と比較して,医療機関で受診した症候性SARS-CoV-2感染およびCOVID-19に関連した入院に対してかなり有効であった.このオミクロンが優勢なパンデミックでは,過去の感染歴にかかわらず,2価ワクチンによるブースターが望ましいかもしれない.