【研究】PICCはCVCよりもコロニゼーション率が少ない
■本研究では,使用されたカテーテルは主にトリプルルーメンで,カテーテル挿入はmaximum barrier precautionで行われた.患者背景に有意差はなし.PICCの平均留置期間は20.47±10.1日(範囲:3-87日),CVCの場合は14.4±8.5日(範囲:2-40日)であった.カテーテル抜去の原因は,使用終了85.5%,感染の疑い10.7%,その他3.8%であった.感染の疑い(潜在的なCLABSIまたはCRBSI)に関しては,先端培養に伴うすべての血液培養は陰性であった.
■コロニゼーション発生は2.97% vs 10.28%(p=0.001),1000カテーテル日あたりでは1.71 vs 12.48(p<0.001)でPICC群の方が有意に少なかった.日本とギリシャで耐性菌の事情がかなり異なるため,微生物パターンは参考にならないかもしれないが,CVC群ではMDRAb(多剤耐性アシネトバクター)が31.1%,次いでMDRKP(多剤耐性肺炎桿菌)が16.4%であったのに対し,PICC群では分離された主要な微生物はカンジダ属が23.8%であり,次いでMDRAb,MDRKPが14.2%ずつであった.PICC群でカンジダ属が多かったのは,CVC群よりも留置期間が長かったからだろうと考察されている.
中心静脈カテーテルと末梢挿入式中心静脈カテーテルの微生物コロニゼーション率の比較
Pitiriga V, Bakalis J, Theodoridou K, et al. Comparison of microbial colonization rates between central venous catheters and peripherally inserted central catheters. Antimicrob Resist Infect Control 2023; 12: 74
PMID: 37550791
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/pmc10405474/
Abstract
【背景】中心静脈カテーテル(CVC)や末梢挿入式中心静脈カテーテル(PICC)は,重症患者の血管内留置器具として広く使用されてきた.しかし,これらは中心静脈カテーテル関連血流感染症(CLABSI)の素因と考えられているカテーテルコロニーゼーションなどの合併症を引き起こす可能性がある.PICCとCVCの血流感染リスクを比較した研究は数多くあるが,コロニー形成率に関する比較研究は限られている.
【目的】ギリシャの3次病院における2年間のCVCまたはPICCを有する重症患者におけるカテーテルコロニゼーションの事例を後ろ向きに解析し,コロニゼーション率,微生物プロファイル,および抗菌薬感受性パターンを比較した.
【方法】2017年5月~2019年5月にPICCおよびCVC留置を受けた連続重症入院患者の臨床検査データを解析した.すべてのカテーテルを,カテーテル抜去後のルーチンのプロセスとして,または感染が疑われた後に,細菌病原体について半定量的培養法で検査した.菌種の同定および抗菌薬耐性パターンはVitek2自動化システムにより決定した.
【結果】調査期間中,CVCでは合計122/1187例(10.28%),PICCでは19/639例(2.97%)のカテーテルコロニーゼーションが確認された(p=0.001).コロニー形成率はCVC群で12.48/1000カテーテル日,PICC群で1.71/1000カテーテル日であった(p<0.001).多剤耐性菌(MDRO)によるカテーテル1000日あたりのコロニーゼーション率は,全例で3.85,CVC群で7.26(71/122),PICC群で0.63(7/19)であった(p<0.001)。CVC群で最も多く分離された微生物はMDR Acinetobacter baumannii(n=38,31.1%)で,次いでMDR Klebsiella pneumoniae(n=20,16.4%)であった.PICC群では,最も多く分離された微生物はカンジダ属(n=5,23.8%)で,次いでMDR K. pneumoniae とMDR A. baumannii が同数(n=3,14.2%)であった.
【結論】PICCはCVCと比較して有意に低いコロニーコロニゼーション率と関連していた.さらに,微生物コロニーニゼーションのパターンから,CVCではMDRグラム陰性菌が優勢である傾向が明らかになり,PICCが長期入院患者の血管内アクセスにとってより安全な選択肢である可能性が示唆された.局所微生物生態学に基づく予防プログラムは,カテーテルのコロニゼーション率とCLABSIを減少させる可能性がある.