【AI】頭蓋内出血のCT画像のAIによるトリアージは死亡リスクと神経学的予後を大きく改善する
■今回,救急部門で頭蓋内出血患者への放射線画像検査ワークフローにAIによるトリアージシステムを導入することで,絶対全死亡率を1/2~2/3に減少させ,神経学的予後も改善したという前後比較研究がInternationarl Journal of Emergency Medicineに報告されたので紹介する.
■本研究で導入されたAIトリアージシステムは次のように作動する.すべての関連CT検査は,手動トリガーなしでAI解析のために自動的にAIに送信される.頭蓋内出血所見が検出されると,AIは放射線科医のワークステーションに直接通知を配信する(フラグ).フラグが立てられたCT画像については放射線科医が優先的に読影を行う.
■AI導入後群では,AI導入前群に比べて30日死亡率(AI前27.7% vs AI後17.5%,OR 0.48,95%CI odds 0.29-0.79,p=0.004)。および120日死亡率(AI前31.8% vs AI後21.7%,OR 0.58,95%CI odds 0.37-0.91,p=0.017)の有意な減少がみられた.抗血栓薬使用患者に限定したサブ解析においても,AI導入後の方が有意な死亡率改善を示した.なお,この研究では対照として,虚血性脳卒中,心筋梗塞の患者でも前後比較が行われたが,これらの患者では有意差はみられなかった.
■入院時の修正Rankin Scaleに有意差はなく,退院時の修正Rankin Scaleは,AI導入後群で減少し(3.17 vs 2.84,p=0.044),期間間に有意差が認められた.退院時と入院時の修正Rankin Scaleの差は,AI導入前群とAI導入後群で有意差がみられた(2.37 vs 2.03,p=0.041).これらのことからAI導入による神経学的予後の改善の可能性も示唆された.
脳出血の検出における人工知能ソリューションの導入による1年後の臨床転帰への影響
Kotovich D, Twig G, Itsekson-Hayosh Zeev, et al. The impact on clinical outcomes after 1 year of implementation of an artificial intelligence solution for the detection of intracranial hemorrhage. Int J Emerg Med 2023; 16: 50
PMID: 37568103
https://doi.org/10.1186/s12245-023-00523-y
Abstract
【背景】救急部門における市販の人工知能(AI)ソリューションの導入が,レベル1外傷センターの臨床転帰に及ぼす影響を評価すること.
【方法】レベル1外傷センターにおいて,AI導入前(2017.1.1~2018.1.1)とAI導入後(2019.1.1~2020.1.1)の2つの期間の後ろ向きコホート研究を実施した.救急部入院時に頭部CTで頭蓋内出血(ICH)と確定診断された連続患者587例にICHアルゴリズムを適用した.研究変数は,人口統計,患者の転帰,画像データなどであった.同時期に他の急性疾患(虚血性脳卒中(IS),心筋梗塞(MI))で救急部に入院した患者を対照群とした.主要評価項目は30日および120日全死因死亡率であった.副次評価項目は退院時のmRS(modified Rankin Scale for Neurologic Disability)に基づく有病率であった.
【結果】ICHを有する587人(AI前の年齢71±1歳の289人,男性169人,AI後の年齢69±1歳の298人,男性187人)が解析対象となった.人口統計,併存疾患,救急重症度スコア,ICHの種類,入院期間は2つの期間間で有意差はなかった.30日および120日の全死因死亡率は,AI前群と比較してAI後群で有意に減少した(それぞれ27.7% vs 17.5%;p=0.004,31.8%対21.7%;p=0.017).退院時のmRS(modified Rankin Scale)はAI施行後に有意に低下した(3.2 vs 2.8;p=0.044).
【結論】本研究の付加価値は,頭蓋内出血(ICH)と診断された患者の30日および120日間の全死因死亡率および罹患率の有意な減少を実証した,救急医療環境における人工知能(AI)コンピュータ支援トリアージおよび優先順位決定ソフトウェアの導入を強調するものである.AIソフトは,死亡率だけでなくmRSの有意な減少にも関連していた.