【SR】黄色ブドウ球菌菌血症へのRFP追加は細菌学的失敗を減少させるが臨床的予後は改善しない
■今回,黄色ブドウ球菌菌血症に対する補助的リファンピシンのRCTのメタ解析がJournal of Antimicrobial Chemotherapyに報告された.全部で6報のRCTがあったが,前述のARREST以外は小規模であったため,85%のweightを占めるARRESTにかなり引っ張られる結果となっている.結果は,細菌学的治療失敗が59%減少するが,臨床的治療失敗や死亡に関しては有意差はみられなかった.これらの結果から,少なくともルーティンでのリファンピシン併用は行う必要はないと思われる.ただし,ARRESTは菌血症の割には比較的軽症集団であり,皮膚軟部組織感染症やカテーテル関連血流感染症が多いことは考慮しておく必要があり,重症例や人工物感染においてのオプションとしては考慮してもいいかもしれない.
黄色ブドウ球菌菌血症の治療における補助的リファンピシンの効果:無作為化比較試験のシステマティックレビューおよびメタ解析
Dotel R, Gilbert GL, Hutabarat SN, et al. Effectiveness of adjunctive rifampicin for treatment of Staphylococcus aureus bacteraemia: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. J Antimicrob Chemother 2023 Aug.16[Online ahead of print]
PMID: 37583062
https://doi.org/10.1093/jac/dkad214
Abstract
【目的】黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)菌血症(SAB)に対する従来の治療にリファンピシンを追加することで,細菌学的または臨床的失敗や死亡が減少するかどうかを評価する.
【データソース】 PubMed,Embase,Cochrane CENTRALデータベースを開始時から2022年12月31日まで検索した.適格な研究の参考文献リストとPubMedの引用をチェックした.
【方法】2人の研究著者が独立して,成人SAB患者を対象とし,介入群にはリファンピシンを補助的に投与し,対照群にはプラセボを併用する,または併用しない通常のケアを行った無作為化比較試験(RCT)を同定した.Mantel-Haenszelランダム効果モデルを用いて,リスク比(RR)と95%信頼区間(CI)を用いて,2値データ(細菌学的,臨床的失敗および死亡)を解析し,試験間でプールした.重要な変数はリファンピシンの使用の有無であった.
【結果】894例(うち758例(85%)が1件のRCT)の参加者を含む6件のRCTが組み入れ基準を満たした.SABの通常治療にリファンピシンを追加すると,細菌学的失敗が59%有意に減少した(RR 0.41,95%CI 0.21-0.81,I2=0%,NNT 27).しかし,臨床的失敗(RR 0.70,95%CI 0.47-1.03,I2=0%)や死亡(RR 0.96,95%CI 0.70-1.32,I2=0%)は減少しなかった.さらに,菌血症の期間や入院期間も短縮しなかった.リファンピシンの併用はSABの再発を減少させた(1% vs 4%,P=0.01)。治療中にリファンピシン耐性が出現することはまれであった(1%未満).
【結論】リファンピシンの併用は,細菌学的失敗および再発のリスクを減少させたが,SABにおける使用を支持する死亡率への有益性は認められなかった.