【SR】フィダキソマイシンを第一選択とするCDI診療ガイドラインは妥当か?
■このガイドライン推奨に疑問を呈するシステマティックレビューがClinical Microbiology and Infectionにpublishされた.このシステマティックレビューでは13報のRCTが組み入れられ,バンコマイシンと比較してフィダキソマイシンもメトロニダゾールもメタ解析の主要評価項目とした全死亡率に有意差はみられていない.ガイドライン指摘通り,初期治療失敗は確かにメトロニダゾールの方が高かったが,いずれの研究も,他のCDI合併症や日常生活における感染の負担について報告していない.ハードアウトカムや患者関連アウトカムではないアウトカムでのガイドライン推奨は信頼性にかかわると注意喚起されている.
死亡率と患者関連アウトカムにおけるClostridioides difficile 感染症の抗菌薬治療効果:システマティックレビューおよびメタ解析
Stabholz Y, Paul M, et al. The Effect of Antibiotic Therapy for Clostridioides difficile Infection on Mortality and Other Patient-Relevant Outcomes: a Systematic Review and Meta-analysis. Clin Microbiol Infect 2023 Sep 8[Online ahead of print]
PMID: 37690610https://doi.org/10.1016/j.cmi.2023.09.002
Abstract
【背景】現在の診療ガイドラインでは,Clostridioides difficile 感染症(CDI)に対する推奨標準レジメンからメトロニダゾールを除外し,フィダキソマイシンの方が再発率が低いことを根拠に,バンコマイシンよりもフィダキソマイシンを支持している.
【目的】CDIに対するメトロニダゾール,グリコペプチド(バンコマイシンまたはテイコプラニン),フィダキソマイシンの死亡率およびその他の患者関連転帰に対する影響をまとめること.
【データ情報源】PubMed,Cochrane Library,ClinicalTrials.gov,会議録,Google Scholar(2023年8月まで).対象となる研究は無作為化比較試験(RCT).
【参加者】原発性または再発性のCDIに罹患している成人患者.
【介入】グリコペプチドvsフィダキソマイシンまたはメトロニダゾール(比較対象).
【バイアスのリスク評価】無作為化試験のRoB2ツールを用い,全死亡を評価項目とした.
【データ統合】ランダム効果メタアナリシスを二項対立アウトカムについて実施した.転帰はすべての無作為化患者について優先的に要約した.
【結果】13報の試験が組み入れられた.バンコマイシンとフィダキソマイシン(RR 0.86, 95%CI 0.64-1.14, 8報のRCT, 1951例の患者)またはメトロニダゾール(RR 0.78, 95%CI 0.46-1.32, 4件のRCT, 808例の患者)の間で全死亡率に有意差はなく(RR<1, 比較対象が有利),エビデンスの確実性はそれぞれ低および非常に低かった.フィダキソマイシンとバンコマイシンの間に初期治療失敗の有意差は認められなかったが,初期治療失敗はメトロニダゾールの方が高かった(RR 1.58, 95%CI 1.10-2.27, 5報のRCT, 843例).無作為化された全患者における再治療を必要とする症候性再発について報告した研究はなかった.初回治癒患者において,再治療を必要とする症候性再発は,フィダキソマイシンの方がバンコマイシンよりも少なかった(RR 0.54, 95%CI 0.42-0.71, 6報のRCT, 1617例).いずれの研究も,他のCDI合併症や日常生活における感染の負担について報告していない.
【結論】CDIの患者関連アウトカムをRCTの定義や結果とは無関係に設定することはCDI管理のガイダンスの信頼性を低下させる可能性がある.