【研究】リファンピシンは相互作用によりリネゾリドの血中濃度を低下させる
■黄色ブドウ球菌菌血症に対する補助的リファンピシンのRCTのメタ解析が2023年8月に報告された[PMID: 37583062].全部で6報のRCTがあったが,前述のARREST以外は小規模であったため,85%のweightを占めるARRESTにかなり引っ張られる結果となっている.結果は,細菌学的治療失敗が59%減少するが,臨床的治療失敗や死亡に関しては有意差はみられなかった.これらの結果から,少なくともルーティンでのリファンピシン併用は行う必要はないと思われる.ただし,ARRESTは菌血症の割には比較的軽症集団であり,皮膚軟部組織感染症やカテーテル関連血流感染症が多いことは考慮しておく必要があり,重症例や人工物感染においてのオプションとしては考慮してもいいかもしれない.
■今回紹介する論文は,リファンピシンをリネゾリドと併用すると相互作用でリネゾリドの血中濃度が低下することを定量化して示した研究である.もともと,リファンピシンはCYP450酵素を誘導することから,リネゾリドの代謝を増加させ,血中濃度が低下することが知られている.本研究の対象は感染性心内膜炎であり,実臨床でリネゾリドを本疾患に使用することはまずないとは思われるが,MRSA感染症の難治例等ではリネゾリドとリファンピシンの併用を検討する機会はよくみられる.その際のリネゾリドの投与量には注意が必要である.
感染性心内膜炎患者においてリファンピシンはリネゾリドの血漿中濃度を低下させる
Bock M, Van Hasselt JGC, Schwartz F, et al. Rifampicin reduces plasma concentration of linezolid in patients with infective endocarditis. J Antimicrob Chemother 2023 Oct.12 [Online ahead of print]
PMID: 37823408
https://doi.org/10.1093/jac/dkad316
Abstract
【背景】リネゾリドとリファンピシンの併用は,特に黄色ブドウ球菌に感染した感染性心内膜炎の治療に用いられてきた.
【目的】リファンピシンはリネゾリドの血漿中濃度を低下させることが報告されているため,本研究ではリファンピシンとの併用による影響を定量化する目的で,リネゾリドの母集団薬物動態を明らかにすることを目的とした.また,用量調節による補正の可能性を検討した.
【方法】POET(Partial Oral Endocarditis Treatment:部分的経口心内膜炎治療)試験において,左側感染性心内膜炎に対してリネゾリドを投与された62例を対象に薬物動態測定を行った.15例はリファンピシンを併用していた.合計437例のリネゾリド血漿中濃度が得られた.薬物動態データは,一次吸収・一次排泄の1コンパートメントモデルにより適切に記述された.
【結果】リファンピシンとの併用により,リネゾリドのクリアランスが150%(95%CI 78~251%)増加することが示された.最終的なモデルは適合度プロットにより評価され,許容可能な適合を示し,視覚的予測チェックによりモデルが検証された.モデルベースの投与シミュレーションによると,リファンピシンとの併用により,リネゾリドのPTAは,MICが2mg/Lおよび4mg/Lの場合,それぞれ94.3%から34.9%および52.7%から3.5%に減少した.
【結論】感染性心内膜炎患者において,リネゾリドとリファンピシンの間に実質的な相互作用が検出され,その相互作用はこれまでの報告よりも強かった.モデルベースのシミュレーションでは,リネゾリドの投与量を増やすことで副作用のリスクを同程度増加させることなく補える可能性が示された.