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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.医療におけるAIについても

【AI】最新のClaude-3.5-Sonnetをどう使うか?課金すべきか?

最新のClaude-3.5-Sonnetをどう使うか?課金すべきか?
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■2024年6月21日にAnthropic社のAIモデルClaudeシリーズに最新のClaude-3.5-Sonnetが登場した(今年度末には3.5でのHaikuやOpusもリリース予定).精度向上のみならず,新たなArtifactよるPreview機能がビジュアル的にインパクトがあってか,SNSでは絶賛されているが,使用するとなれば,無料ではすぐにレート制限にひっかかってしまい,短時間しか使えない.さらに,プロジェクトごとにファイルアップロード(Knowledge)と事前の指示(Instructions)ができるbot機能を使用できるProjects機能が6月25日に搭載されたが,これは無料ユーザーには開放されていない.

■最近はAIのアップデート,新しいツールの登場などが目まぐるしい中,課金すべきか悩むケースも多いと思われる.では,Claude-3.5-Sonnetにはどのような人が課金すべきか?代替手段はないのか?このあたりについてこの記事では扱う.

1.Claude-3.5-Sonnetの性能

■Claude-3.5-Sonnetは確かに高性能で,「LLMのベンチマークではGPT-4oを超えて最強」とSNSでは湧き上がっているが,この手のベンチマーク比較については話半分に聞いておいた方がよい(新しいモデルがでるたびにこういう騒ぎが起こるが,過剰評価であることもしばしばで,後で評価が逆転することもある).なので,LLMとしての精度だけで課金しようとするのはおすすめしない今回のアップデートは,LLMの精度向上というよりもむしろ,Claudeの新しいオプション機能による利便性が大幅に増した,というのがポイントで,ここに自分のAIを使う目的がマッチするかどうかである.
Claude-3.5-Sonnetの注目すべきポイント
・回答速度の速さ
・API利用料金の安さ
・Artifact機能
・Projects機能
(1)回答速度の速さ
■Claude-3.5-Sonnetの性能はClaude-3シリーズで最強と言われているOpusを上回っており,その回答速度はOpusの2倍である.他者のLLMとのベンチマークでの比較は参考程度にとどめておいた方がいいが,同じClaude同士の比較では確かにOpusより高性能である.
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(2)APIの安さ
■APIを使用しない方には関係ない話であるが,最近,OpenAIもGoogleもAPIの料金の安さで競争しているかのような低コスト化が進んでおり,Anthropic社もそれに乗っかった形となった.入力トークン100万あたり$3,出力トークン100万あたり15$で,トークンコンテキストウィンドウは20万(200K)である.これはClaude-3-Opus/Sonnetのみならず,GPT-4oやGemini-1.5Proよりも安く,1000文字の入力で1円程度である($1=¥155,1文字2トークンと換算した場合).APIは従量制であるため,どの程度値段がかかるのか使用してみなければ分からないという恐怖心がある人も多いが,ここまで安くなると使いやすいのではないだろうか?
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(3)Artifact機能
■Claude-3.5-Sonnetで最もインパクトがあるのがこの機能であろう.この機能はアプリ版では使用できず,Web版のみ可能である.Claude-3.5-Sonnetのページでアカウント(設定)をクリックし,[Feature Preview]を選択してArtifactsを[On]に設定すれば使用できる.
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■Artifactsには以下の6つの機能が搭載されている.

- コード:プログラミング言語で書かれたコードスニペットやスクリプトを表示する.シンタックスハイライトが適用されており,コードの構文に基づいた色分けが行われて読みやすくなっている.
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- ドキュメント:プレーンテキストやMarkdown形式のドキュメントを表示する.長文のテキスト,説明文,レポートなどに適している.
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- HTML:HTML形式のコンテンツを表示する.HTML,CSS,JavaScriptを含む単一ファイルのウェブページを表示でき,インタラクティブな要素を含むことができる.ホームページ作成に適している.
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- Scalable Vector Graphics (SVG):一言で言えば図形や簡単な絵などの描画機能である.SVGはウェブやその他の環境で使用される2次元のベクター画像を定義するためのXMLベースのファイル形式であり,ベクター形式のグラフィックスを表示できる.ベクター画像は数式で描画されるため,どの解像度でも鮮明に表示され,直接編集しやすく,要素の位置や形状,色などを手軽に変更できる.軽量なため,ウェブページの読み込み速度を向上させることができる.
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- Mermaid図:Mermaid記法で書かれた図表を表示できる.具体的には,フローチャート,シーケンス図,ガントチャート,マインドマップなどの図表を簡単に作成できる.テキストベースで図表を定義できるため,修正や更新が容易である.同様の機能はGPTsにもあるが,Artifactsでは事前に日本語表記できる点が異なる.
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- Reactコンポーネント:ReactはFacebookによって開発されたオープンソースのJavaScriptライブラリであり,主にユーザーインターフェース(UI)の構築に使用されている.要は,ウェブページの一部分を作るための「部品」のようなものである.例えば,ボタン,フォーム,カードなどのUI要素を作ることができる.ボタンやフォーム(クリックしたり,テキストを入力したりできる部品),データの表示(グラフや表で情報を見やすく表示できる),シンプルなゲーム(簡単なクイズやパズルのようなゲームを作れる)などが可能である.
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■「Claude-3.5-Sonnetはスライドも作成できる」との話もあるが,これは間違いである.確かに,プロンプトで指示するとあたかもスライド生成ができるようには見える.しかし,このArtifact機能にはスライド生成機能はなく,上記の6つの機能を組み合わせて,プレゼンテーションのような内容を生成し,スライドを模倣しているというのが実際である.

■このArtifact機能を活用する上で肝となるのが「Preview」である.Previewは生成されたArtifactの内容をユーザーに即座に表示する機能であり,これにより,ユーザーは,コードだけでは分かりにくい作成されたコンテンツを直接視覚的に確認し,必要に応じて修正や調整を要求することができる.まさにプログラムができない人でもコードを扱いやすくするためのツールである.

■このPreviewが非常にインパクトが高いためSNSでは話題性が高いが,Artifacts機能を扱う上でのその本質はPreviewではなく,コード生成能力の高さにある.もともとClaudeはChatGPTなどの他のLLMよりもコード生成能力が高く,Claude-3.5-Sonnetではさらに精度が向上している.その精度に自信がなければ,このようなPreview機能はつけられなかっただろう.同時に,このPreviewはダウンロードはできない.もっとも,特定のデータを可視化して自分にとって理解しやすい形にする上ではその場では便利で,例えば,論文を読み込ませた上で内容・データをビジュアル化させるのは一つの手である.だが,そこでせっかく生成されたコードを活用できなければ宝の持ち腐れでもある.

(4)Projects機能
■Projects機能は,Claude-3.5-Sonnetリリースから数日遅れで追加された機能で,有料会員であるProもしくはTeamのユーザーしか使用できない.この機能は早い話が自分専用のbotを作成できる機能である.GPTsと似ているが,Webアクセス機能やActionによる外部API呼び出し機能,Advanced Data Analysis(旧Code Interpreter)ほどの機能は有していない.

- ファイルアップロード登録機能
■knowledgeとしてドキュメントやコードなどのファイルをアップロードでき,会話の際にそのファイルを参照してくれるようになる.1つのプロジェクトにつき,アップロードできるファイルの上限は200kトークンであり,書籍で言うとや500ページほどの量である(NotebookLMには遠く及ばない).

- Custom Instructions機能
■ChatGPTにもあるような,事前の指示をそのプロジェクトにおいて守らせることができる,「自分だけのチャットbot」の機能である.

2.Claude-3.5-Sonnetをどう使う?課金は必要?

■前述の通り一通りの機能を説明したが,ここからはどう使うかである.ただ普通に会話するだけならChatGPTもあるので,わざわざ課金する必要はないだろう.無料のままでいいのか,有料(月$20≒3100円のサブスクリプション)で使用するかはここが大きな分岐点である.当ブログの性質上,読者が医療従事者であるため,医療従事者を想定した内容に限定することになるが,ここの読者が使用するとなると第一に考えることと言えば学術的な内容であろう.

(1)論文の理解のための使用
■Claude-3.5-Sonnetは論文の解説がうまい.加えて,内容をデータも含めてビジュアル的に分かりやすくする上では非常に使い勝手がいい.となれば,あとは1日にどれくらいの本数の論文を読み込ませるかしだいである.
考え方

1日2~3本程度
 →無料がおすすめ

まとまった時間に何本も読み込ませたい
 →選択肢1:有料化
 →選択肢2:ChatGPT-4o(無料)を使う
(2)ガイドラインや通知文書等,まとまった情報の理解
■ガイドラインやレビュー論文,厚労省などの通知文書などを読み込ませてFAQのbot代わりに使うことも可能である.ただし,毎回アップロードするのではなく,あらかじめファイルをアップロードしたbotを作っておくと便利で,このような使い方をする際は有料のProjects機能が便利である.ただし,同様の機能を有する代替手段は無料のものも含めて多い.
考え方

多量の参照文書のbot的使い方はしない
 →無料がおすすめ

多量の参照文書のbotを作成して使用したい
 →選択肢1:有料でProjects機能を使う(Artifacts機能付きで使いたいなら特におすすめ)
 →選択肢2:既にChatGPTの有料ユーザーならGPTsを使う
 →選択肢3:Cozeで自作する(無料.モデルはClaude-3.5-Sonnetを含め様々なAIから選択できる)
 →選択肢4:NotebookLMで自作する(無料)
 →選択肢5:Poe.comで自作する(使用回数制限はあるが無料.モデルはClaude-3.5-Sonnetを含め様々なAIから選択できる)
 →選択肢6:easy-peasy.AIで自作する(有料.NotebookLMのような特化bot,GPTsのような創造性もあるbotのどちらも作成可能)
(3)論文を書く
■論文生成にも使用できるが,論文生成となればそれなりの会話頻度になるため,無料で使用するのは現実的ではないだろう.有料で使うにしても,既にChatGPT-4oが無料で使用できる他,論文生成を支援してくれるGPTsは既にいくつか公開されているので,そちらを使うのがいいだろう.
考え方

Claude-3.5-Sonnetはおすすめしない.既存の論文生成を支援してくれるGPTsを使用する.
(4)スライド作成
■アウトラインを考えてくれたり,スライドに使用するデータをまとめる上では有用だが,それは他のAIでも可能である.なにより誤解してはいけないのは,前述の通り,Claude-3.5-SonnetのArtifacts機能はスライド生成機能はなく,HTML等を使用した模倣であり,提示されたコードを使用してもスライドは作れない.
考え方

Claude-3.5-Sonnetはおすすめしない.ChatGPT-4o,あるいは既存のスライド生成を支援してくれるGPTsを使用する.
(5)データの解析
■ChatGPTのAdvanced Data Analysis(旧Code Interpreter)ように,プログラムを独自にUI上で走らせて解析してくれる機能までは備わっていないが,コード生成機能自体は全AIモデルの中でほぼトップであり,そのコードを用いて自分のPC(あるいはコードが使用できるGoogle Colaboratoryなどのプラットフォーム)で動かす上では非常に有用である.ChatGPTのAdvanced Data Analysisが精度があまりよくなくて失敗しやすいことを考えれば,Claude-3.5-Sonnetの使用はおすすめである.コード生成する上では会話回数も多くなることから,有料での使用がおすすめである.
考え方

無料はおすすめしない.

選択肢1:有料で使用する(コードを使用するための他のアプリケーションを使用する必要はある).
選択肢2:ChatGPT-4oのAdvanced Data Analysisを使用する(無料.精度は落ちるが,解析をAI上で済ませてしまいたい場合はおすすめ)

by DrMagicianEARL | 2024-06-26 18:31 | 医学・医療とAI

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