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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

カテゴリ:文献( 74 )

■日本版敗血症診療ガイドライン2016において,世界で初めてPICS(post-intensive care syndrome)がガイドラインに明記されましたが,私を含むこのPICSの項目を担当したワーキンググループメンバー6名でPICSに対する早期リハビリテーションのシステマティックレビューを行い,publishされたので紹介いたします.ワーキンググループメンバー以外では,本ガイドライン委員長である西田修先生,メタ解析経験のある山川一馬先生にご協力いただいております.PICSについてよく講演してきたこともあってか私が筆頭執筆者に指名されてはいますが,システマティックレビューにおける膨大な作業量をみんなで分担しつつ執筆しております.

■今回のシステマティックレビューは,PRISMAプロトコルを遵守し,PROSPERO登録とプロトコル論文投稿した上でGRADEシステムを用いて行っております.5000以上の論文から20報以下にまで絞りこみましたが,その後の組み入れ基準をめぐり,メンバー内でもいろいろ議論があり,査読に際してもこの研究をなぜいれないのか?この研究はなぜ入っているのか?などのコメントをいただいており,最終的に6報に確定するまで紆余曲折がありました.また,ICU早期リハのメタ解析論文はこれまでも複数publishされておりますが,どの論文も待機手術患者のRCTが多く含まれており,急性期疾患によるICU患者での評価においてはそれらの患者集団を含めることは妥当でないとして,我々はそれらを極力除外した論文抽出を行っております.これらの統合解析結果として,ICU-AW発生率や筋力を示すMRCスコアといった短期指標での改善は認めたものの,認知機能障害,精神障害,長期の健康関連QOLの改善はみられませんでした.もっとも,見て分かる通り小規模の研究が多く,各アウトカムごとの研究数も少ないため,多施設大規模RCTの蓄積が望まれることは言うまでもありません.

■今回,5000もの論文を仕分けましたが,日本からの論文はほぼゼロに近いです.今回診療報酬改定により早期離床が加算として認められました.これを機に本邦での早期リハ研究が進むことを期待します(私の施設でもようやく早期リハチームが立ち上がりましたので評価はこれからです).
重症疾患患者におけるpostintneive care syndrome予防のための早期リハビリテーション:システマティックレビューおよびメタ解析
Fuke R, Hifumi T, Kondo Y, et al. Early rehabilitation to prevent postintensive care syndrome in patients with critical illness: a systematic review and meta-analysis. BMJ Open 2018; 0: e019998

Abstract
【背 景】
我々は,重症疾患生存患者における身体機能,認知機能,精神の障害であるpostintensive care syndrome(PICS)の予防において,早期リハビリテーションの有効性を検討した.

【方 法】
PICS予防における早期リハビリテーションvs早期リハビリテーションなしまたは標準ケアの効果を比較した無作為化比較試験(RCT)を抽出するため,各データベース(Medline,Embase,Cochrane Central Register of Controlled Trials)で系統的文献検索と手動検索を行った.主要評価項目は入院期間中の短期での身体関連,認知関連,精神関連のアウトカムとした.副次評価項目は標準化された長期の健康関連QOL(EuroQol 5 Dimension (EQ5D)とMedical Outcomes Study 36-Item Short Form Health Survey Physical Function Scale (SF-36 PF))とした.エビデンスの質の評価はGrading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation(GRADE)を用いた.

【結 果】
5105報のアブストラクトをスクリーニングし,6報のRCTを登録した.標準ケアまたは早期リハビリテーションなしと比較して,早期リハビリテーションは,Medical Research Councilスケール増加(SMD 0.38, 95%CI 0.10 to 0.66. p=0.009,エビデンスの質:低い)と,ICU-AW発生率の減少(OR 0.42, 95%CI 0.22 to 0.82, p=0.01, エビデンスの質:低い)により短期身体関連アウトカムの有意な改善を示した.しかし,認知機能関連項目である無せん妄日数(SMD -0.02, 95%CI -0.23 to 0.20, エビデンスの質:低い),精神関連のHospital Anxiety and Depression Scaleスコア(OR 0.79, 95%CI 0.29 to 2.12, エビデンスの質:低い)は両群間で差はみられなかった.早期リハビリテーションはEQ5DとSF-36 PFによるPICSの長期アウトカムを改善させなかった.

【結 論】
早期リハビリテーションは重症疾患患者における短期の身体関連アウトカムのみ改善させた.さらなる大規模RCTが必要である.

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by DrMagicianEARL | 2018-05-10 13:23 | 文献 | Comments(0)
■睡眠薬として用いられるメラトニン受容体作動薬であるラメルテオン(ロゼレム®)がICU患者のせん妄を予防し,ICU在室期間を短縮させる傾向がみられたという報告が名古屋大学からCritical Care Medicineにpublishされましたので紹介します.

■2014年と2017年に順天堂大学などのDERILIA-J groupがラメルテオン(JAMA Psychiatry 2014; 71: 397-403)やスボレキサント(J Clin Psychiatry 2017; 78: e970-9)がせん妄を予防したというRCTを報告しています.しかし,この2つのRCTの対象は急性期病院に救急入院となった65-89歳の薬剤経口摂取可能な患者です.高齢者以外でも有効か,(経口摂取ができない)より重症なICU挿管患者ではどうかということは分かっていません.今回の名古屋大学の研究はICU患者が対象ですので,よりICU関連せん妄に対する効果を見る上では妥当なものかと思います.サンプル数が88例と検出不足感はありますが,より大規模なRCT検討のtriggerとなるかもしれません.
ICU在室期間におけるメラトニン受容体作動薬ラメルテオンの投与効果:単施設無作為化プラセボ対照試験
Effect of Administration of Ramelteon, a Melatonin Receptor Agonist, on the Duration of Stay in the ICU: A Single-Center Randomized Placebo-Controlled Trial. Crit Care Med. 2018 Mar 27.[Epub ahead of print]
PMID: 29595562

【目 的】
ICUでのせん妄の発生はICU在室の長期化に関連している.メラトニン受容体作動薬であるラメルテオンの使用が重症疾患患者において,せん妄を予防し,ICU在室期間を短縮するかについて検討した.

【方 法】
本研究は大学病院ICUで行われた単施設三重盲検無作為化プラセボ対象試験である.患者は入室から48時間以内に薬剤の経口摂取または経鼻胃管投与が可能なICU患者とした.介入群はラメルテオン(8mg/日),対照群はプラセボ(ラクトースパウダー1g/日)をICU退室まで毎日20時に投与を受けた.

【結 果】
計88例がラメルテオン群(45例)またはプラセボ群(43例)に無作為化された.主要評価項目では,プラセボ群(5.86日)に比してラメルテオン群(4.56日)でICU在室期間の短縮傾向がみられた(調整前p=0.082,調整後p=0.028).副次評価項目では,せん妄の発生率(24.4% vs 46.5%; p=0.044)とせん妄期間(0.78日 vs 1.40日; p=0.048)がラメルテオン群で統計学的有意に低かった.ラメルテオン群の非挿管患者では,夜間の覚醒が有意に少なく,覚醒していない夜の比率が有意に高かった.

【結 論】
ラメルテオンはICU在室期間を短縮させる傾向があり,また,せん妄の発生率およびせん妄期間を統計的に有意に減少させた.

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by DrMagicianEARL | 2018-04-02 18:10 | 文献 | Comments(0)
■2015年に名古屋で行われたHPVワクチンと接種後の症状との関連性を調べるための大規模アンケート調査結果がpublishされました(オープンアクセスです).もともとこのアンケートは名古屋市長である河村たかし氏が全例調査を目的して行うよう指示したものです.2015年12月14日に結果が発表され,副反応症状とワクチンに関連性は認められないという解析結果でした(その時の河村市長の発言は「驚いた」というもので,どうやら薬害ありきでこのアンケート調査を指示したともとれる発言です).今回紹介する論文はそのデータ解析結果を学術論文としてpublishしたものです.これほどの大規模データはワクチン接種率が著しく落ちてしまった今となってはとることは難しいでしょう.本研究結果がHPVワクチン積極推奨に繋がればと思います.

■さて,本研究の24の症状有無についてのアンケートでは,ワクチン接種群の方が有意に多い症状はないという結果でした.一方で,24の症状で「病院を受診した」リスクに関しては,接種群の方が月経血量異常や不規則な月経,ひどい頭痛が有意に多く,接種前からあった症状の影響を除いても受診リスクは有意に高いという結果でした.

■これは,症状頻度は増加していないが病院受診で有意差がでているということで,考察として,他の症状が増加していないことから接種群の方が重症だったとは考えにくく,副反応かもしれないという心理的要因が関係しているのではないかとしています(サブ解析を見ると,後に接種するほどORが上昇している傾向がみられていることもそれを示唆していると思われます).加えて,HPVワクチン接種後の日本のメディアや何人かの医師によって報告された複数の同時症状の発生を示唆する結果も得られていません.以上から,接種後症状とHPVワクチンとの間に因果関係はないであろうと結論づけています.

■執筆者らはlimitationとして,①回答率が100%ではないため選択バイアスが結果に影響を与えている可能性があること(これは大規模アンケート研究ではほぼ避けられない潜在的リスク),②本研究デザインでは極めて稀な症状を拾い上げることができない(ただし,本研究は子宮頸がん予防ワクチン被害者連絡会愛知支部の協力を得てHPVワクチンと関連した症状を反映する方法をとっている),③アンケートであるため,医師によって診断された症状とは限らない自己報告であること,④ワクチン接種者のみが予防接種日を有しており,ワクチン接種前に起こった症状を除外してしまうと比較の妥当性が損なわれるため,完全に除外を行っていない,を挙げています.

日本の若年女性において,HPVワクチンと,報告されたワクチン接種後の症状に関連性はない:Nagoya study
Suzuki S, Hosono A. No Association between HPV Vaccine and Reported Post-Vaccination Symptoms in Japanese Young Women: Results of the Nagoya Study. Papillomavirus Res. 2018 Feb 23. [Epub ahead of print]
PMID: 29481964

Abstract
【背 景】
名古屋市は2010年に無料のHPV予防接種を導入し,2013年4月に厚生労働省はHPVワクチンを全国予防接種プログラムに組み入れた.しかし、2013年6月に未確認の有害事象の報告後,ワクチン接種の推奨を中止した.

【方 法】
名古屋市では,ワクチンと症状の関連性を調査するため,アンケート調査を実施した.参加者は1994年4月2日から2001年4月1日までの間に生まれた名古屋市の女性71177例であった.匿名化された郵便アンケートでは,24の症状(主要評価項目)の発症,関連する病院の受診,頻度,および学校出席への影響を調査した.

【結 果】
計29846例の参加者から回答が得られた.24のHPVワクチン接種後の症状のいずれも発生率の有意な増加は見られなかった.ワクチンは「異常な月経出血量」(OR 1.43; 95%CI 1.13-1.82),「不規則な月経」(OR 1.29; 95%CI 1.12-1.49),「ひどい頭痛」(OR 1.19; 95%CI 1.02-1.39),慢性的に遷延する「異常な月経出血量」(OR 1.41; 95%CI 1.11-1.79)において,年齢で調整されたオッズの増加と関連していた.学校への出席に有意に影響を与えた症状はなく,症状の蓄積も認められなかった.

【結 論】
本結果はHPVワクチンと報告された症状の間に因果関係がないことを示唆する.

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by DrMagicianEARL | 2018-03-02 18:39 | 文献 | Comments(0)
■ICU患者での急速輸液では晶質液(いわゆるリンゲル液系)と生食のいずれがいいのか?というClinical Questionに関しては,「理論上は晶質液の方がいいけどエビデンスがない」という状態が続いていて,(海外では特に)コストの関係から安い生理食塩水を用いているところもあるようです.SSCG 2016も蘇生輸液は生食でもいいよというスタンスでした.

■生理食塩水などのクロライド(Cl)を多く含む輸液製剤は,クロライドにより糸球体細動脈を収縮させるためGFRが落ちることが知られており,これまで複数の観察研究でクロライド負荷が死亡リスクを増加させるとの結果がでていました.比較的最近の研究をみてみると,敗血症性ショック患者において,晶質液群より生理食塩水群の方が死亡率が有意に高い(19.6% vs 22.8%)という53448例傾向スコアマッチング解析(Crit Care Med 2014; 42: 1585-91)があります.

■一方,ANZICSは2278例でのRCT/pilot studyであるSPLIT study(JAMA 2015; 314: 1701-10)を行っており,AKI発症率(9.6% vs 9.2%, p=0.77),新規腎代替療法導入(3.3% vs 3.4%, p=0.91),院内死亡(7.6% vs 8.6%, p=0.4)に有意差なしという結果でした.よりハイリスク集団で検討すべく,8300例を登録するPLUS studyが進行中です.

■このPLUS studyを待っている間に米国の方から大規模RCTがNEJM誌に報告されたので紹介します.結果は,全死亡+腎機能障害遷延+腎代替療法の複合アウトカムが晶質液群の方が生食群よりもよかったということで,今後は積極的に晶質液が推奨されていくと思われます.ただ,データを見るにSPLIT studyと似たような印象で,個々のアウトカムに関しては有意差はついていませんし,主要評価項目である複合アウトカムについてもその絶対差はわずか1.1%です.さてこれは統計学的に有意な差であっても臨床的に有意な差だろうかという疑問はあります.NNT 91ですし,救急集中治療領域でこのNNTの数値は意味があるのかと.なんせサンプル数15802例であり,数で押し切ってる感がありますね.全死亡率は10.3% vs 11.1%,p=0.06で,p値だけ見れば「ギリギリ有意差ついてないけど晶質液の方がよさそう」となりそうですが,これも絶対差0.8%,NNT 125です.NNT 30以下だけどサンプル数を集めるのが困難で統計学的有意差がつけられなかった介入が「有効性なし」とされることがこの領域ではゴロゴロあるわけで悩ましいところです.少なくとも,コストがシビアな発展途上国でこのエビデンスをもって生食よりも晶質液を使えという推奨は現実的ではないとは思います.個人的にはもともとリンゲル液使用してますし,一種の補強材料といえないこともないですけどね(生食でガンガン輸液するとあとで電解質補正が大変・・・).

重症疾患の成人患者における調整晶質液vs生理食塩水(SMART trial)
Semler MW, Self WH, Wanderer JP, et al. Balanced Crystalloids versus Saline in Critically Ill Adults. N Engl J Med. 2018 Feb 27 [Epub ahead of print]
PMID: 29485925

Abstract
【背 景】
調整された晶質液と生理食塩水は成人重症疾患における輸液で使用されるが,臨床アウトカムにおいていずれがよりよいのかについては知られていない.

【方 法】
大学病院の5つのICUで行われた本実用的クラスター無作為化クロスオーバー試験において,我々は15802例の成人患者をICU入室時に,生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)投与群または調整された晶質液(乳酸リンゲル液またはPlasma Lyte A)投与群に無作為に割り付けた.主要評価項目は30日以内の主要な腎有害事象(退院時または30日のいずれか早い時点で生じた全死亡,新規の腎代替療法導入,クレアチニンがベースの200%以上の上昇で定義された腎機能障害遷延の複合アウトカム)とした.

【結 果】
主要な腎有害事象は,調整晶質液群で7942例中1139例(14.3%),生理食塩水群で7860例中1211例(15.4%)に生じた(marginal OR 0.91; 95%CI 0.84-0.99,conditional OR 0.90; 95%CI 0.82-0.99; p=0.04).30日時点での院内死亡率は調整晶質液群で10.3%,生理食塩水群で11.1%であった(p=0.06).新規の腎代替療法の導入率はそれぞれ2.5%と2.9%であり(p=0.08),腎機能障害の遷延はそれぞれ6.4%vs6.6%であった(p=0.06).

【結 論】
重症疾患の成人患者では,輸液投与における調整晶質液の使用は生理食塩水の使用と比較して,全死亡,新規の腎代替療法導入,腎機能障害遷延の複合アウトカムの発生率が低かった.

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by DrMagicianEARL | 2018-02-28 18:27 | 文献 | Comments(0)
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■今回は宣伝です.INTENSIVIST最新号「PICS」が発刊となりました.私は2014年末頃からPICSについて興味を持ちはじめ,2015年の学会主催の敗血症セミナーin大阪でPICSについてショートレクチャーで講演させていただきましたが,当時はまだ概念が全然浸透しておらず,集中治療医学会でもシンポジウムや教育講演でPICSを見かけることはほとんどありませんでした.それが気が付けば日本版敗血症診療ガイドライン2016の一項目となり,学会,さらには地方の研究会レベルでもPICSの演題が増えてきました(ただし,残念ながら日本から原著論文はまだほぼ出ていません).JSEPTICセミナーに参加した時はアンケートの「今後取り上げてほしいトピックス」で私は毎回PICSと書き続けてきたので,実際にこうしてINTENSIVIST誌で特集が組まれ,自分も執筆陣の一員となれたことは非常に感慨深いものがあります(ただやっぱりINTENSIVISTの執筆は他の執筆よりもはるかに大変です.3回目ですがまだ慣れないというか毎回ヒットポイントゼロになります).

■実はINTENSIVISTからの執筆依頼が来たとき,他の書籍等も同時に依頼がきたため,夏から秋にかけてPICSの原稿を4つ平行して抱える状態にありました.PICSに関する講演依頼も増えて,日本でもだいぶhot topicsになったなと思っています.なお,今回もそうなんですが,PICSに対して「集中治療後症候群」という日本語訳をあてているケースがだいぶ増えてきましたが,学会等が公式に認定している日本語名ではありませんのでご注意ください(別に執筆した書籍でそのことを書きました).ちなみにネットで調べてみると,集中治療後症候群という言葉で一番古いソースはどうもこの私のブログのようです(汗).私のブログが見られていたからかどうかは分かりませんが,つい先日のGoogle検索仕様が変更されるまではPICSのネット検索では最上位にこのブログが来ていたので,それなりにこの言葉が露出していたようです.単に「直訳すれば」で書いただけなのですが・・・

■さて,今回の特集,日本版敗血症診療ガイドライン2016のPICS/ICUAWワーキンググループメンバーとJSEPTICの豪華メンバーによる執筆陣の力作で,PICSの初の日本語教科書を目指すべく250ページにわたり解説をしております.私は敗血症とPICSについて解説させていただきましたが,PICSの原因の代表格である敗血症は死亡率こそ大きく改善はしたものの,完全な社会復帰をとげられる患者は入院前にADLが自立していた患者に限定してもたったの1/3に過ぎません.それだけPICS患者が増加しているということです.ぜひ,PICSを知り,その予防とケアを臨床現場に活かすべく本書を手に取っていただければと思います.
INTENSIVIST 2018 Vol.10 No.1「PICS」

内容紹介
ICUにおける補助循環・呼吸装置の技術革新やガイドラインによる診療レベルの向上と標準化などにより,この20年で集中治療医学は劇的な進化を遂げ,ICU死亡率や28日生存率などICU患者の短期的なアウトカムは飛躍的に改善しました。しかし,ICU患者の長期予後やQOLはいまだ改善していません。ICU患者の多くは身体的および精神的な障害を抱え,それらが社会復帰や長期予後の障壁となり,集中治療後症候群Post−Intensive Care Syndrome(PICS)は世界中で進行する超高齢社会とICU患者の高齢化を背景に浮かび上がった,21世紀の集中治療医学の新たな問題点であるといえます。近年,このPICSやICU−AWなどの亜急性期から慢性期の病態がICUにおける重症敗血症患者にも密接に関与しているという報告がなされました。本邦でも世界的にも注目されつつあるPICSですが,いまだ最新知見がまとまった書籍がなく,医療従事者の多くがその最新知見を手に入れることが困難な状況です。本特集では,PICSおよびICU−AWの新しい病態の概要・診断・予防に関する最新の知見について,エキスパートが解説します。

Part 1 PICSとは何か

1. なぜ今PICSなのか:高齢社会のなかで重症患者救命後の長期予後改善を目指して
井上 茂亮(東海大学医学部付属八王子病院 救命救急医学)

Part 2 PICSの危険因子

2. PICSの疫学:発症率,予後と予防法
一二三 亨(香川大学医学部附属病院 救命救急センター)

3. 敗血症とPICS:生存率は改善した,次の目標は?
DrMagicianEARL(EARLの医学ノート管理人)

4. ARDSとPICS:PICSを防ぐ急性期治療とは
三反田 拓志・則末 泰博(東京ベイ・浦安市川医療センター 救急集中治療科 集中治療部門)

5. ICUケア・環境とPICS:環境因子と治療介入因子の調整によるPICS予防
和田 剛志(北海道大学病院 先進急性期医療センター 救急科/Department of Surgery, Brigham & Women's Hospital/Harvard Medical School)

6. 鎮痛・鎮静による譫妄予防とPICS:浅い鎮静と譫妄予防の薬物療法
矢田部 智昭(高知大学医学部 麻酔科学・集中治療医学講座)

Part 3 PICS 3要素

7.ICU−AW,運動機能・筋力低下
武居 哲洋 横浜市立みなと赤十字病院 集中治療部

8.認知機能障害
近藤 豊(ハーバード大学 外科)

9.精神障害
竹内 崇(東京医科歯科大学医学部附属病院 精神科)

【コラム】PICS−F(family)とは何か?
新井 正康(北里大学医学部附属新世紀医療開発センター・集中治療医学/北里大学病院 集中治療センター)

Part 4 PICSは予防できるのか?

10.ABCDEFGHバンドル:患者のQOL改善のためにICU在室中から行うべきこと
森川 大樹(聖マリアンナ医科大学 救急医学)
藤谷 茂樹(聖マリアンナ医科大学 救急医学/東京ベイ・浦安市川医療センター)

11.身体リハビリテーション:PICSの予防に有効か?
對東 俊介(広島大学病院 診療支援部 リハビリテーション部門)
志馬 伸朗(広島大学大学院医歯薬保健学研究科 救急集中治療医学)

12.呼吸リハビリテーション:長期予後の改善を見据えて
原 嘉孝・西田 修(藤田保健衛生大学医学部 麻酔・侵襲制御医学講座)

13.神経筋電気刺激:PICS/ICU−AW予防に有効か
畠山 淳司(横浜市立みなと赤十字病院 集中治療部)

14.栄養管理:ICU患者の長期予後,PICS予防との関係
佐藤 格夫・安念 優・森山 直紀(愛媛大学大学院医学系研究科 救急航空医療学)

15.環境管理:日記,耳栓,メンタルケア,音楽療法
長友 香苗(自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔科・集中治療部)

Part 5 コメディカル・地域におけるPICS

【コラム】PICS予防のための看護ケア実践:東海大学医学部付属八王子病院と自治医科大学附属病院における取り組み
剱持 雄二(東海大学医学部付属八王子病院 看護部)
井上 茂亮(東海大学医学部付属八王子病院 救命救急医学)

16.理学療法士から見たPICS:PICSの評価とリハビリテーションの可能性
神谷 健太郎(北里大学医療衛生学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻)

【コラム】ICUフォローアップ外来:歴史と現状藤内 まゆ子・林 淑朗(鉄蕉会亀田総合病院 集中治療科)

17.多職種連携とPICS:各職種と患者・家族も含めた連携の重要性
櫻本 秀明(筑波大学附属病院 ICU/ER)

後書き:PICS:全人的そして家族も含めた究極的な予防医療への第一歩
藤谷 茂樹(聖マリアンナ医科大学 救急医学/東京ベイ・浦安市川医療センター)

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by DrMagicianEARL | 2018-02-01 18:21 | 文献 | Comments(0)
■東日本大震災時の福島第一原発事故の関係で,いまだに福島県をはじめとする東北に対する風評がネット等で続いています.現時点では福島県において小児の甲状腺癌は見た目の数字は多くても,それだけでは増えたと結論づけれない状況です.その理由としてスクリーニング効果,過剰診断が挙げられます.以前に津田論文がEpidemiology誌にpublishされてますが,循環論法に陥っている内容で,あの内容では増加したかどうかはまったく分かりません.今回紹介する論文は,実際に甲状腺の腫瘍径を調べたものです.

■もともと成人の甲状腺癌のほとんどは癌と呼ぶには予後がかなりいいことが知られており,小児においてもその傾向が示唆される結果です.甲状腺癌発生初期の小さな結節は成長速度が速いが,一定の大きさになると増殖が止まるため,これからの患者の長いであろう人生を考えれば,過剰診断を防ぐ上で,すぐに細胞学的診断はやりにいくべきではないとしています.
原子力発電所事故後の日本における超音波検査でスクリーニングされた若年患者の甲状腺癌発育パターンの比較解析:福島健康管理調査
Midorikawa S, Ohtsuru A, Murakami M, et al. Comparative Analysis of the Growth Pattern of Thyroid Cancer in Young Patients Screened by Ultrasonography in Japan After a Nuclear Accident: The Fukushima Health Management Survey. JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. 2017 Nov 16 [Epub ahead of print]
PMID: 29145557

Abstract
【背 景】
成人では,甲状腺癌は一般的に非常に遅い速度で成長し,過剰診断が世界的問題となっている.しかしながら,若年患者でのスクリーニングによる早期のステージの甲状腺癌同定に関しては十分には知られていない.過剰診断を防ぐため,若年患者の超音波検査スクリーニングによる甲状腺癌の成長の自然経過を理解することが不可欠である.

【目 的】
若年患者での甲状腺癌の自然進行を評価する.

【方 法】
本観察研究では,悪性または悪性疑いの甲状腺腫瘍の直径の変化を2回評価した.悪性甲状腺腫瘍の直径の変化は,福島県の原子力発電所事故後で,21歳未満の患者の福島健康管理調査の第1回甲状腺超音波検査でのスクリーニングと確認検査の間の観察期間中に,悪性甲状腺腫瘍径の変化を推定した.甲状腺癌またはその疑いと細胞学的に診断された計116例の患者を,10%超の直径減少,-10%~+10%の直径変化,10%超の直径増加の3群に分類した.腫瘍成長率と主要径の関連性について解析を行った.本研究は2016年3月1日から2017年8月6日までの期間に行った.評価項目は,腫瘍径変化,若年患者における甲状腺癌の成長係数,観察期間または腫瘍径とそれらの関連性とした.

【結 果】
116例の患者のうち,77例が女性であり,平均年齢は16.9歳(中央値17.5歳)であった.平均観察期間は0.488年(範囲 0.077-1.632)であった.3群間で年齢,性別,腫瘍径,観察期間,甲状腺刺激ホルモン,サイログロブリンに有意差はみられなかった.腫瘍径変化は観察期間と直線的には相関していなかったが(Pearson R=0.121; 95%CI -0.062 to 0.297),スクリーニング検査では増殖係数は腫瘍径と有意に負の相関がみられており(Spearman ρ=-0.183; 95%CI -0.354 to -0.001),初期増殖後の増殖停止を示唆していた.

【結 論】
超音波検査によるスクリーニングは,多くの若年患者において成長が停止するパターンになっている無症候性の甲状腺癌を同定しうる.患者の予測される長い人生を考慮すると,過剰診断の予防のためには,非浸潤性甲状腺癌疑いをすぐに診断することなく,慎重に長期間観察していくことが必要である.

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by DrMagicianEARL | 2018-01-22 18:14 | 文献 | Comments(0)
■2017年最後の論文紹介はこちら.まさに明日から日本中の病院が直面することになりますが,餅と窒息の疫学研究です.PubMed収載されている医学雑誌にPublishされた餅窒息の原著論文て私が探した限り今までなかったんですよね.まあほぼ日本でしか起こりませんので当然かもしれませんが.本研究はウツタイン大阪のデータベースでの解析になります.ざっくりと結果を述べると,「窒息による院外心停止の1割が餅が原因であり,その1/4は正月三が日に発生し,1カ月生存率は20%弱」です.正月三が日に集中していますが,1月1日に絞っても14%という高さです.

■ボランティアで1人暮らしの高齢者に餅を配って回ることをやっている団体もあるようですが,食べやすく小さく切っているとはいえやはり気が気でなりません.嚥下機能低下の程度しだいでは切っていても窒息するものは窒息します.本論文では餅窒息による院外心停止例の7割は目撃者なしです.窒息が生じて目撃者がいなければ予後は極めて厳しいものになりますので(本論文では目撃がなければ1カ月生存率は4.8%)
餅による窒息に焦点を当てた窒息による院外心停止の疫学:ウツタイン大阪プロジェクトの集団ベース観察研究
Kiyohara K, Sakai T, Nishiyama C, et al. Epidemiology of Out-of-Hospital Cardiac Arrest Due to Suffocation Focusing on Suffocation Due to Japanese Rice Cake: A Population-Based Observational Study From the Utstein Osaka Project. J Epidemiol. 2017 Oct 28[Epub ahead of print]
PMID: 29093354

Abstract
【背 景】
日本において餅は食物による窒息の主要な原因である.しかしながら,餅での窒息による院外心停止の疫学データは乏しい.

【方 法】
大阪府の集団ベース院外心停止レジストリより2005年から2012年までの院外心停止データを抽出した.救急隊到着前に生じた窒息による院外心停止となった20歳以上の患者を登録した.患者特性,病院前介入,予後を窒息の原因(餅かそれ以外)で比較した.主要評価項目は院外心停止後からの1カ月生存率とした.

【結 果】
研究期間で計46911例の成人院外心停止例があった.それらのうち,7.0%(3294/46911例)が窒息が原因であり,餅による窒息はそのうちの9.5%(314/3294例)を占め,それらのうち24.5%(77/314例)が正月三が日の間に発生していた.租分析では,1カ月生存率は餅による窒息が17.2%(54/314例),餅以外の窒息が13.4%(400/2980)であった.全原因による窒息の多変量解析では,若年,目撃のある心停止,早期の救急隊の対応時間が良好な1カ月生存に有意に関連していた.

【結 論】
窒息による院外心停止の約10%は餅が原因であり,そのうちの25%は正月三が日に発生していた.予防策を確立し,窒息を早期に認識し,目撃者が早急に救急隊に電話するよう促すためのさらなる努力が必要である.

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by DrMagicianEARL | 2017-12-31 12:38 | 文献 | Comments(0)
■腸内細菌叢移植(糞便微生物移植:FMT)の研究が近年さかん,重篤なCDIに対して有効との報告が出てきた後に様々な疾患でも臨床応用を検討すべく研究が行われています.まあある意味最強のprobioticsと言えますかね.今回は肝性脳症に有効だったというRCTが報告されましたので紹介します.事前に5日間の広域抗菌薬投与後にFMTを行うというプロトコルで,対照群と比較して安全性が高く,肝性脳症は150日間もの間ゼロに抑えたとのことです(対照群では50%に発生).効くもんですねぇ・・・
合理的に選択された便の提供者からの糞便微生物移植は肝性脳症を改善させる:無作為化臨床試験
Bajaj JS, Kassam Z, Fagan A, et al. Fecal microbiota transplant from a rational stool donor improves hepatic encephalopathy: A randomized clinical trial. Hepatology 2017; 66: 1727-38
PMID: 28586116

Abstract
【背 景】
近年,肝性脳症は微生物叢の異常(dysbiosis)に関連した標準ケアがあるにもかかわらず再入院の原因となっている.糞便微生物移植(Fecal microbiota transplantation :FMT)は細菌叢異常を改善させる可能性があるが,肝性脳症での研究はなされていない.

【目 的】
本研究の目的は,便提供者から合理的に選択され用いられるFMTが標準ケア単独と比較して肝性脳症再発において安全かどうかを検討することである.

【方 法】
標準ケアで肝性脳症の再発を有した肝硬変の男性外来患者を対象とした5ヶ月間の観察期間の本非盲検無作為化臨床試験は1:1に無作為化された.FMTに割り付けられた患者は5日間の広域スペクトラムの抗菌薬の事前投与を受け,肝性脳症のない適切な微生物叢の同じドナーからのFMT単回注腸を受けた.観察は無作為化から5,6,12,35,150日目に行った.主要評価項目はFMT関連重篤有害事象を用いた,標準ケアと比較したFMTの安全性とした.副次評価項目は有害事象,認知機能,微生物叢,代謝の変化とした.

【結 果】
両群の患者は全ての背景因子が同等であり,研究終了まで観察された.抗菌薬の事前投与を行ったFMTは良好な忍容性であった.FMT患者の重篤な有害事象は2例(20%)であったのに対し,8例(80%)の標準ケア患者は計11の重篤な有害事象を有していた(p=0.02)標準ケア群で5例,FMT群で0例の患者で肝性脳症の再発があった(p=0.03).認知機能はFMTで改善したが,標準ケアでは改善しなかった.Model for End-Stage Liver Disease (MELD) スコアは抗菌薬事前投与で一時的に悪化したが,FMT後はベースラインまで改善した.抗菌薬投与後,有益な微生物群や微生物多様性の減少によりProteobacteriaの増加が生じた.しかし,FMTは多様性と有益な微生物群を増加させた.標準ケア群の微生物叢とMELDスコアは全体にわたって同様であった.

【結 論】
再発性肝性脳症を伴う肝硬変患者において,合理的に選択されたドナーからのFMTは入院を減少させ,認知機能や微生物叢異常を改善させる.

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by DrMagicianEARL | 2017-12-07 15:55 | 文献 | Comments(0)
■原稿執筆に追われて話題の論文を紹介するのがだいぶ遅れてしまいましたが,NUTRIREA-2 studyがLancetにonline publishされました.この研究は人工呼吸器を装着したショック患者において,早期経腸栄養と早期静脈栄養をガチンコ勝負させたものです.結果は死亡率,感染症発生率に有意差なし,消化管合併症は早期経腸栄養群の方が有意に多かったということで,安全監視委員会の勧告により2410例を登録した時点で研究中止となっています.これだけ見ると早期静脈栄養の時代到来か?と一瞬思いましたが,研究デザインを見ると首をかしげたくなります.少なくとも私は本研究結果を見て早期経腸栄養をやめる気はまったくありません.

■死亡率が高めなのは気になりますがそれ以上に気になることがあります.2ヶ月前にpublishされたEAT-ICU trial(Intensive Care Med 2017; 43: 1637-47)の時もそうだったんですが,実臨床においてpermissive underfeedingが主流のこの時代になぜフルカロリー量の栄養投与設計でRCTを行うんでしょうかね・・・?そりゃいきなりそんな量入れたら消化管合併症増えるに決まってるでしょうとしか言いようがありません.この投与設計ではネガティヴな結果になるのは当然だろうなというのが率直な感想です.

■2012年に報告されたEDEN trial(JAMA 2012; 307: 795-803)ではARDS患者1000例を対象として,400kcal/dayと1300kcal/dayを比較した結果,死亡率や人工呼吸器装着期間に有意差はなく,嘔吐・胃内残量増加・便秘が1300kcal群の方が有意に多かったという結果でした.また,2015年に報告されたシステマティックレビュー(Crit Care 2015; 19:180)では,目標エネルギー量の33.3-66.6%の群が最も死亡率が低かったという結果がでています.おそらく今回のNUTRIREA-2 trialもEAT-ICU trialもoverfeeding傾向かと思われ,必要とするインスリン量も多くなります.全体の死亡率がやや高めなのはそれが関連しているのかなとも思ってます.
ショックを伴う人工呼吸患者における早期経腸栄養vs早期静脈栄養:無作為化多施設共同オープンラベル並行群間研究(NUTRIREA-2 trial)
Reignier J, Boisramé-Helms J, Brisard L, et al; NUTRIREA-2 Trial Investigators; Clinical Research in Intensive Care and Sepsis (CRICS) group. Enteral versus parenteral early nutrition in ventilated adults with shock: a randomised, controlled, multicentre, open-label, parallel-group study (NUTRIREA-2). Lancet 2017 Nov 8 [Epub ahead of print]

Abstract
【背 景】
早期栄養投与ルートが重症疾患患者の予後に影響を与えるかについては議論の余地がある.我々は早期静脈栄養を第一選択とするよりも早期経腸栄養を第一選択とする方が予後良好であると仮説をたてた.

【方 法】
フランスの44施設の集中治療室(ICU)で行われた本無作為化多施設共同オープンラベル並行群間研究(NUTRIREA-2 trial)では,侵襲的人工呼吸管理とショックに対して血管作動薬投与を受けている成人(18歳以上)を,標準カロリー(20-25kcal/kg/日)を目標として挿管から24時間以内に静脈栄養群と経腸栄養群に1:1に無作為に割り付けた.無作為化は可変サイズの順列ブロックを用いてセンターで層別化された.栄養投与ルートはマスクできないため,医師と看護師の盲検化はできなかった.ショックが改善した場合(24時間連続して血管作動薬投与がなく,動脈血乳酸値<2mmol/L)に,静脈栄養を受けている患者は少なくとも72時間後には経腸栄養に変更できた.主要評価項目はIntention-to-treat集団で無作為化から28日後の死亡率とした.本研究はClinicalTrials.govの番号NCT01802099で登録されている.

【結 果】
2回目の中間解析で,独立したデータ安全監視委員会が,患者の登録を完了することが試験結果を大きく変える可能性は低いと判断し,患者登録を中止することを勧告した.2013年3月22日から2015年6月30日までで2410例の患者が登録され,1202例が経腸栄養群に,1208例が静脈栄養群に無作為に割り付けられた.28日目までに,経腸栄養群で1202例中の443例(37%),静脈栄養群で1208例中422例(35%)が死亡した(絶対差推定 2.0%; 95%CI -1.9 to 5.8; p=0.33).ICU関連感染症の発生率は経腸栄養群(173例[14%])と静脈栄養群(194例[16%]; HR 0.89; 95%CI 0.72 to 1.09; p=0.25)で差はみられなかった.静脈栄養群と比較して,経腸栄養群は嘔吐(406例[34%] vs 246例[20%]; HR 1.89; 95%CI 1.62-2.20; p<0.0001),下痢(432例[36%] vs 393例[33%]; HR 1.20; 95%CI 1.05 to 1.37; p=0.009),腸管虚血(19例[2%] vs 5例[<1%]; HR 3.84; 95%CI 1.43-10.3; p=0.007),急性腸管偽性閉塞(11例[1%] vs 3例[<1%]; HR 3.7; 95%CI 1.03-13.2; p=0.04)の発生率が高かった.

【結 論】
ショックを伴う成人重症患者において,早期静脈栄養と比較して,早期経腸栄養は死亡率や二次感染を減少させず,消化管合併症リスクの増加に関連していた.

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by DrMagicianEARL | 2017-12-01 16:41 | 文献 | Comments(0)
■機械的心肺蘇生が日本でも普及していっていますが,実際の効果は?というと,徒手的CPRと比較して良好とは言い難いです.5報RCT,12206例のメタ解析(Ann Emerg Med 2016; 67: 349-60)でも生存入院・生存退院・神経予後などの臨床アウトカムを改善しなかったと報告されています.

■今回紹介する論文は,日本のデータでの院外心停止症例に対する機械的CPRの有効性を検討した多施設共同前向き研究です(林田先生,JAHA publishおめでとうございます).結果は,交絡因子で調整すると,機械的CPRは生存退院をむしろ減少させてしまうリスクがあるとのことです.こうなってくるとなかなか導入しづらくなってきますね.
救急部門に搬送された非外傷性院外心停止の成人患者における機械的心肺蘇生と生存退院:日本における前向き多施設共同観察研究(SOS-KANTO[Survey of Survivors after Out‐of‐Hospital Cardiac Arrest in Kanto Area] 2012 Study)
Hayashida K, Tagami T, Fukuda T, et al. Mechanical Cardiopulmonary Resuscitation and Hospital Survival Among Adult Patients With Nontraumatic Out‐of‐Hospital Cardiac Arrest Attending the Emergency Department: A Prospective, Multicenter, Observational Study in Japan (SOS‐KANTO [Survey of Survivors after Out‐of‐Hospital Cardiac Arrest in Kanto Area] 2012 Study). J Am heart Assoc 2017; 6: e007430

Abstract
【背 景】
日本では,救急部に搬送される院外心停止患者の機械的心肺蘇生(mCPR)が広く普及している.本研究の目的は,救急部門におけるmCPRと臨床アウトカムの関連性を検討することである.

【方 法】
本前向き多施設共同観察研究では,搬入時に心停止が持続している院外心停止の成人患者が登録された.主要評価項目は退院時生存率とした.副次評価項目は.自己心拍再開と入院の成功とした.mCPRとアウトカムの関連性を分析するため,一般的な推定式を使用して潜在的交絡因子および施設内のクラスタリング効果を調整した多変量解析を使用した.

【結 果】
2012年1月1日から2013年3月31日までで6537例の院外停止患者が登録され,5619例(86.0%)が徒手的CPR群,918例(14.0%)がmCPR群であった.救急部門においてこれらの患者のうち28.1%(1801/6419)で自己心拍再開が見られ,20.4%(1175/5754)が入院となり,2.6%(168/6504)が生存退院し,1.2%(75/6419)は入院から1ヶ月時点で良好な神経学的予後であった.多変量解析ではmCPRは生存退院(調整後OR 0.40; 95%CI 0.20-0.78; p=0.005),自己心拍再開(調整後OR 0,71; 95%CI 0.53-0.94; p=0.018),入院(調整後OR 0.57; 95%CI 0.40-0.80; p=0.001)の減少に関連していた.

【結 論】
潜在的交絡因子で調整すると,成人の非外傷性院外心停止後の救急部門でのmCPRは良好な臨床アウトカムの減少に関連していた.mCPRがこれらの患者において有益となる可能性がある状況を明らかにするためにさらなる検討が必要である.

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by DrMagicianEARL | 2017-11-02 13:58 | 文献 | Comments(0)

by DrMagicianEARL