ブログトップ

EARLの医学ノート

drmagician.exblog.jp

敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

カテゴリ:敗血症( 143 )

■EAA≧6の敗血症性ショックに対するPMX-DHPの有効性を検討した大規模RCTであるEUPHRATES trialは2016年10月の欧州集中治療医学会で発表されましたが,そこから待つこと2年,ようやくpublishされました.ABDO-MIX trialがIntensive Care Medicine誌で,それよりは対象患者が広いEUPHRATESだと,北米の研究ということもあって出てくるならJAMAだろうと予想してたらその通りJAMAにpublishされました.2年前の学会発表時とはN数もデータもずいぶんと違うようでもう一度整理し直しです.EUPHRATESのアブストラクトだけでなく,敗血症性ショックに対するPMX-DHPのレビューもその下につけました.

■本研究は,PMX-DHPという,デバイスと大きな装置を用いますが,試験方法を工夫してシャム(≒プラセボ)群を設定して二重盲検化に成功している研究です.当初は絶対差15%の死亡率改善を予測して(強気すぎじゃないですか・・・?)360例登録予定でしたが,中間解析でモニタリングボードからより重症例に絞るべきとの提言を受け,対象患者を多臓器障害の指標であるMODS≧9にプトロコル変更して450例まで集積しています.結果はネガティブ,というよりIntent-to-Treat解析ではPMX-DHP群の方が好ましくなさそうなデータです.28日死亡率は有意差がなく,長期追跡では1年死亡率が全患者集団で52.2% vs 42.2%(p=0.10)とPMX-DHP群の方が10%高くなっています.重篤な有害事象は約8%ほどPMX-DHP群の方が高いです.PMX-DHPを2回完遂したper-protocol解析でも死亡率に統計学的有意差はなく,絶対リスク差も5%未満.また,患者背景の違いとしては,PMX-DHP群の方がグラム陰性桿菌が10%ほど多く,これはどちらかというと機序的にはPMX-DHP群に有利な差ですが,それでも死亡率に差はつかなかったということです.この結果から次の改訂のSSCG 2020や日本版敗血症診療ガイドライン2020では「使用しないことを推奨or提案する」になることは必至でしょう.

■それにしてもずいぶんとあっさりとした論文です.患者背景と主要評価項目と有害事象のデータを載せただけです.学会発表から2年も待ったんだしもう少し詳細なデータがあってもいいのにと思ったんですが,supplementary appendixを見てもサブ解析の結果が一切載っていません.感染巣別の死亡率とか見たかったのですが・・・.プレスリリースにあったEAA 0.6-0.9なら死亡率が大きく改善,というデータも載っていません.学会発表時は重篤な有害事象として,PMX-DHP群の方が消化管障害が5%も多かったので気になっていたのですが,論文にもsupplementary appendixにもデータなし.考察も1ページに満たない短さ.いろいろ後から別にpublishするんでしょうか?
敗血症性ショックとエンドトキシン濃度上昇を伴う患者における28日死亡に対するPMX-DHPの効果:EUPHRATES trial
Dellinger RP, Bagshaw SM, Antonelli M, et al. Effect of Targeted Polymyxin B Hemoperfusion on 28-Day Mortality in Patients With Septic Shock and Elevated Endotoxin Level: The EUPHRATES Randomized Clinical Trial. JAMA 2018; 320: 1455-63

Abstract
【背 景】
ポリミキシンBによる血液灌流(PMX-DHP:polymyxin B-immobilized fiber column-Direct HemoPerfusion)は敗血症における血中エンドトキシンレベルを減少させる.エンドトキシン活性は迅速アッセイで血液から計測可能である.敗血症性ショックでエンドトキシン活性が上昇した患者に対するPMX-DHPを使用した治療が臨床アウトカムを改善させる可能性がある.

【目 的】
敗血症性ショックで高いエンドトキシン活性の患者において,標準治療と比較して標準治療にPMX-DHPの追加が生存率を改善するかを検討する.

【方 法】
本研究は北米の55の三次施設において2010年9月から2016年6月まで敗血症性ショックでエンドトキシン活性アッセイレベルが0.60以上の成人重症患者450例を登録した多施設共同無作為化臨床試験である.最後の追跡は2017年7月まで行った.患者は,登録から24時間以内に,標準治療に加え2回のPMX-DHPによる治療(90-120分)を完遂する治療群(224例)と標準治療にシャム(≒プラセボ)を加えたシャム群(226例)に割り付けられた.主要評価項目は,全ての無作為化された患者(全患者)と多臓器障害スコア(MODS:multiple organ dysfunction)が9以上の患者での28日死亡率とした.

【結 果】
450例の患者(平均年齢59.8歳,女性177例[39.3%],平均APACHEⅡスコア29.4[範囲0-71])が登録され,449例(99.8%)が研究を完遂した.PMX-DHPは,全患者(治療群84/223例[37.7%] vs シャム群78/226[34.5%]; 絶対リスク差3.2%; 95%CI -5.7% to 12.0%; 相対リスク 1.09; 95%CI 0.85 to 1.39; p=0.49),MODS≧9の集団(治療群65/146例[45.5%] vs シャム群65/148[43.9%]; 絶対リスク差0.6%; 95%CI -10.8% to 11.9%; 相対リスク 1.01; 95%CI 0.78 to 1.31; p=0.92)のいずれにおいても28日死亡率に有意差はみられなかった.全体で264例の重篤な有害事象が報告された(治療群65.1% vs シャム群57.3%).最も多い重篤な有害事象は敗血症の増悪(治療群10.8% vs シャム群9.1%)と敗血症性ショックの悪化(治療群6.6% vs シャム群7.7%)であった.

【結 論】
敗血症性ショックと高いエンドトキシン活性の患者において,標準治療にPMX-DHPを加えた治療は標準治療にシャムを加えた治療と比較して28日死亡率を改善しなかった.
敗血症性ショックに対するPMX-DHPのレビュー

■1994年に日本発のエンドトキシン吸着カラムPMX-DHP(polymyxin B-immobilized fiber column-direct hemoperfusion)が保険承認され(30万円します),主にグラム陰性菌による腹腔感染での敗血症において使用されている.抗菌薬であるポリミキシンBはエンドトキシンと結合する性質をもっており,PMXを吸着体として直接血液灌流させることによりエンドトキシンを吸着させるものである.以下,臨床アウトカムをメインにレビューを行った.
※COI開示:本ブログ管理人はこれまでPMX-DHP(トレミキシン®)販売メーカーである東レ・メディカル株式会社から同社主催or共催のエンドトキシン血症救命治療研究会,各地域での講演会,社内講演会等において旅費・講演料を受けている.

1.PMX-DHPは敗血症性ショックの死亡率を改善させるか?

■2007年にCruzらがPMX-DHPに対する28報の英語論文によるシステマティックレビューを行い[1],その結果,PMX-DHPの施行で平均血圧の上昇(19mmHg),ドパミン使用量の低下,P/F比の改善および転帰の改善効果(死亡リスク53%低下)が示されている.ただし,このシステマティックレビューはほとんどが本邦での研究であり,また,本邦から報告された8編のRCTのうち7編は同一研究者のもので,同一年に2編のRCTが報告されたことが3回もあり,症例のクロスオーバーやdouble publicationの可能性が否定できないなど問題点がある.2013年にZhouらは,敗血症における血液浄化の16報のメタ解析を報告し[2],これにおいてもPMX-DHPの死亡リスク減少効果が示唆されたが,同様の問題点をかかえている.よって,バイアスを極力除外した大規模なRCTが必要であった.

■PMX-DHPを評価した比較的N数のあるRCTとして,まずEUPHAS(Early Use of Polymixin B Hemoperfusion in Abdominal Septic Shock) studyが行われた[3].本研究はイタリアの10施設で行われた前向き多施設RCTであり,腹腔内感染由来の重症敗血症,敗血症性ショックの64例を対象とし,緊急手術後6時間以内にPMX-DHP施行群と標準治療群に無作為に割付し,臨床的予後の改善に有効であると結論づけている.

■しかしながら,本研究にはさまざまな問題点が指摘されている.本研究は64例の時点で死亡率が有意にPMX-DHP群で低いとの判断で試験が早期終了となっている点である.有用性をもって早期終了した臨床試験の効果は誇張されていることがあり,早期終了した試験は効果のない治療で30%の相対リスクの低下を示し,真に20%の相対リスク低下効果のある治療では40%以上の低下を示すとされている[4].ましてや有意差がでたのは生存期間に関する比例ハザード分析結果によるものであり,あまり前例がない.

■また,EUPHAS studyを掲載したJAMA誌にはこの論文に対して3 編のletter to the editorが掲載されている[5-7].まずVincentはcontrol群とPMX-DHP群が各々34例と30例を集積してあるこの治験でそもそも救命率に統計学的に有意差はないとしている.Amaralらも同様に統計学的手法に懸念を表明している.確かに本研究では死亡関係のアウトカムでは,院内死亡率(41% vs 67%, p値記載ないが計算上は0.049),比例ハザード分析による生存期間は有意に改善しているが,これらは一次・二次評価項目のいずれにも含まれていない.二次評価項目に28日死亡率が含まれているが,32% vs 53%(p=0.13)であり,有意差はない.よって,この報告をもって予後改善が示されたとは言えないであろう.またKidaらは両群間における起炎菌の分布に関しても懸念を示している.加えて,比較的感染巣コントロールがしやすい感染腹部由来敗血症で対照群における救命率が50%以下というのは,SSCG 2004発表後のRCTとしては考えられない低さである.

■次に行われた大規模RCTがABDO-MIX studyである[8].本研究は,フランスの18のICUにおいて,消化管穿孔に関連した腹膜炎に対する緊急手術後12時間以内の敗血症性ショック患者243例を登録している.主要評価項目の28日死亡率は,PMX-DHP群(119例)で27.7%,標準治療群(113例)で19.5%,p=0.14(OR 1.5872, 95%CI 0.8583-2.935),副次評価項目の90日死亡率はPMX-DHP群で33.6%,標準治療群で24%,p=0.10(OR 1.6128, 95%CI 0.9067-2.8685)であった.統計学的有意ではないもののPMX-DHP群の方が死亡率が7-8%大きく,これは臨床的には無視できない差である.この差がなぜ生じたかであるが,PMX-DHP群の32%にあたる38例がPMX-DHPを続行できず,そのうちの23例が凝固が原因であり,そのうち19例が1回目のPMX-DHP施行で凝固が生じていた.この続行不可能であった38例を除外したサブ解析ではPMX-DHP群の死亡率は18.5%となり,標準治療群の19.5%とほぼ同等となる.一方,PMX-DHPが続行できなかった38例の死亡率は47%と異常に高い.なぜこんなに死亡率が高まってしまったのか?

■考えられる原因としては,①フランス人が凝固が起こりやすい人種である点,②日本やイタリアと違いPMX-DHPに慣れてない施設やスタッフも多かった,③フランスではDICの治療は行われない(このため凝固が起こりやすかった),④使用した抗凝固薬はヘパリンであり,これが敗血症病態において何らかの悪影響を及ぼした可能性も否定できない(本邦ではメシル酸ナファモスタットが一般的である).これらの要因が重なり,PMX-DHPが続行不可能となった症例では死亡率が5割近くまで高まったのかもしれない.だが,いずれにせよ,これらの症例を除外しても,死亡率の改善は示せていないことになる.

■そして今回報告されたのが上記の北米で行われた大規模RCTであるEUPHRATES trialである.またしても主要評価項目である28日死亡率に有意差はみられなかった(詳細の説明は上を参照されたい).

■EUPHRATESも含めた敗血症性ショックを対象としたPMX-DHPの効果を検討した5報の海外RCTのメタ解析をFujiiらが既に2018年2月に報告しており[9],28日死亡に有意差はみられなかった(RR 1.03, 95%CI 0.78-1.36; I2 = 25%; n=797).メタ解析はITT集団で解析されるため,死亡率が悪化傾向を示したABDO-MIXに引っ張られている部分はあるが,仮にABDO-MIXを抜いたとしても死亡率に差はない.

■一方,RCTではないが,最近本邦から大規模観察研究JSEPTIC-DIC studyのデータを用いたpropensity score matching解析結果が報告されている[10].1723例からマッチングにより262組がマッチし,全院内死亡率はPMX-DHP施行群の方が有意に低かった(32.8% vs 41.2%; OR 0.681; 95%CI 0.470-0.987; p=0.042).また,本研究はマッチング前のデータとマッチング後のデータを比較すると興味深いことが分かる.APACHEⅡスコアやSOFAスコアはマッチング前後でほぼ変わっていないにもかかわらず,院内死亡率はPMX-DHP施行群で37.9%→32.8%に減少,非施行群で36.6%→41.1%に増加しているのである.そして患者背景を見ると,腹腔感染症やグラム陰性桿菌の比率がマッチングによって増加している.これはpropensity score matchingの特徴の一つである「N数の少ない方の群の特性にマッチング後の集団が寄る」という現象の産物であろうと推察される.これらのことから,やはりメシル酸ナファモスタットを用い,グラム陰性桿菌による腹腔内感染症による敗血症性ショックを対象とした本邦でのRCT再検証が必要と言えなくもない結果かと思われる.

2.PMX-DHPで血圧は上がるのか?

■PMX-DHPで血圧が上がることは臨床現場でよく経験され,これはABDO-MIX,EUPHRATES,さらにはメタ解析でも示されており,その効果は真であろう.PMX-DHPによって血圧が上昇する機序としては,エンドトキシンが関与しないグラム陽性菌感染症でも血圧が上昇する報告があることから,エンドトキシン吸着ではなく,血管拡張作用をもつ内因性大麻と呼ばれる内因性カンナビノイド(anandamide(ANA)と2-arachidonyl glycerol(2-AG))を吸着する[11]ことによる効果が主体と考えられている.

■しかしながら,血圧が上がるにもかかわらずカテコラミン非使用日数では有意差がついていない.これは,他にも昇圧手段があるのも一因と思われる.カテコラミン不応性の難治性の敗血症性ショックにおいても昇圧手段としてはさまざまなものが報告されている.特にバソプレシンやステロイドは多数のRCTが存在し,死亡率改善効果こそまだcontroversialであるが,昇圧効果は得られる.また,Sawaらは,敗血症性ショック患者の後ろ向き研究において,PMX-DHP群30例とバソプレシン群30例をマッチングさせた解析を行っており[12],90日生存率はバソプレシン群が有意に高かった(83% vs 53%, p=0.008)としている.このように,難治性ショックでの昇圧手段としてはPMX-DHPは有用ではあるが,他の比較的低侵襲な昇圧手段がある以上,必ずしもPMX-DHPでなければならないということはなく,難治性ショックの原因に応じて適切な昇圧手段を選択する上でのひとつのオプションとしてとらえるべきであろう.

3.PMX-DHPで有害事象は増えるのか?

■中心静脈にデバイスを挿入し,抗凝固薬を用いるという特性上,有害事象が増加することは避けられない.問題はPMX-DHPの益をその害が上回るかどうかである.何をもって「重篤な有害事象」と判断するかは研究によって異なる.ABDO-MIXでは重篤な有害事象発生数は6例 vs 3例であり,いずれの群も非常に少ない.一方,今回のEUPHRATES trialでは重篤な有害事象は65.1% vs 57.3%でPMX-DHP群の方が8%高い結果となっている.一方,デバイス関連の有害事象は5.2% vs 2.3%であった.いずれにせよ,死亡リスクのeffect sizeから見ると,RCT結果からは益が害を上回るとは言えにくそうである.

■加えて,PMX-DHPはエンドトキシンだけでなく様々なものを吸着することが知られている[11,13-15].ただし,この吸着は敗血症状態の生体にとって悪いもののみでなくいいものも吸着してしまっている可能性がある.体内の生理活性物質等はそれぞれが生理学的意味があって分泌されるもので,サイトカインストーム等過剰で有害なものもあればそうでないものもある.エンドトキシンだけならまだしも,その他の個々の吸着する物質がその患者にとって益か害かは判断が難しい.

■前述の通り,PMX-DHPは内因性カンナビノイドを吸着することで昇圧効果を示す.これらの内因性カンナビノイドはシナプス後部で生成され,逆行性の抑制性モジュレーターとして働き,興奮性伝達物質グルタミン酸や抑制性伝達物質GABAの遊離を制御している.カンナビノイド1受容体は記憶の中枢である海馬,恐怖・情動行動を司る扁桃体に多く発現しており,その生理的役割として,痛み・不安・うつの軽減や脳内報酬系の賦活,不快な記憶の消去等が知られており[16-18],抗ストレス作用として働いているとされ,生体にとって必ずしも有害とは言えない.現状として,ICUで人工呼吸管理を受けた患者の3人に2人がうつ,不安,PTSDの少なくとも1つの精神障害を有することが知られており[19],敗血症性ショックという高度な生体侵襲ストレスによる悪影響を打ち消すために内因性カンナビノイドが増加するのであれば,これらを吸着することは,特にPICS(post-intensive care syndrome)における精神障害に悪影響を及ぼす可能性が否定できない.現時点でPMX-DHP患者のPICSを評価した研究はないが,その機序からすれば懸念せざるを得ない.

4.今後のPMX-DHPの研究

■PMX-DHP群のRCTは少なくともあと1本は出てくる.現在スイスで今も行われている,ENDoX-study[20]である.の研究はAN69ST(SepXiris®)のカラムの電荷を少し変えてエンドトキシンを効率よく除去できるようにしたoXirisというカラムを用い,このoXiris群,PMX-DHP群,標準治療群を比較した3アームのRCTである.

■また,EUPHRATES studyではEAA 0.6-0.9の範囲の患者集団(194例)では28日死亡率は26.1% vs 36.8%と絶対リスク差にして10.7%の減少効果がみられており,プレスリリースでそのデータが公表されている[21,22].これを受けて米国FDAは追試としてRCTではなくシングルアームの研究を行うよう指示している[23].ちなみに研究名はメソポタミア文明に関連する大河であるユーフラテス川とチグリス川にかけてか,(今回EUPHRATESだったので)TIGRISである.現時点ではClinicalTrialGovには登録されていない.

[1] Cruz DN, Perazella MA, Bellomo R, et al. Effectiveness of polymyxin B-immobilized fiber column in sepsis : A systematic review. Crit Care 2007; 11: R47
[2] Zhou F, Peng Z, Murugan R, et al. Blood purification and mortality in sepsis: a meta-analysis of randomized trials. Crit Care Med 2013; 41: 2209-20
[3] Cruz DN, Antonelli M, Fumagalli R, et al. Early use of polymyxin B hemoperfusion in abdominal septic shock : The EUPHAS randomized controlled trial. JAMA 2009; 301: 2445-52
[4] Bassler D, Briel M, Montori VM, et al. Stopping randomized trials early for benefit and estimation of treatment effects: systematic review and meta-regression analysis. JAMA 2010; 303: 1180-7
[5] Vincent JL. Polymyxin B hemoperfusion and mortality in abdominal septic shock. JAMA 2009; 302: 1968
[6] Amaral AC. Polymyxin B hemoperfusion and mortality in abdominal septic shock. JAMA 2009; 302: 1968-9
[7] Kida Y. Polymyxin B hemoperfusion and mortality in abdominal septic shock. JAMA 2009; 302: 1969
[8] Payen DM, Guilhot J, Launey Y, et al. Early use of polymyxin B hemoperfusion in patients with septic shock due to peritonitis: a multicenter randomized control trial. Intensive Care Med 2015; 41: 975-84
[9] Fujii T, Ganeko R, Kataoka Y, et al. Polymyxin B-immobilized hemoperfusion and mortality in critically ill adult patients with sepsis/septic shock: a systematic review with meta-analysis and trial sequential analysis. Intensive Care Med 2018; 44: 167-78
[10] Nakamura Y, Kitamura T, Kiyomi F, et al; Japan Septic Disseminated Intravascular Coagulation (JSEPTIC DIC) study group. Potential survival benefit of polymyxin B hemoperfusion in patients with septic shock: a propensity-matched cohort study. Crit Care 2017; 21: 134
[11] Wang Y, Liu Y, Sarker KP, et al. Polymyxin B binds to anandamide and inhibits its cytotoxic effect. FEBS Lett 2000; 470: 151–5
[12] Sawa N, Ubara Y, Sumida K, et al. Direct hemoperfusion with a polymyxin B column versus vasopressin for gram negative septic shock: a matched cohort study of the effect on survival. Clin Nephrol 2013; 79: 463-70
[13] Nakamura T, Kawagoe Y, Matsuda T, et al. Effect of polymyxin B-immobilized fiber on blood metalloproteinase-9 and tissue inhibitor of metalloproteinase-1 levels in acute respiratory distress syndrome patients. Blood Purif 2004; 22: 256-60
[14] Abe S, Seo Y, Hayashi H, et al. Neutrophil adsorption by polymyxin B-immobilized fiber column for acute exacerbation in patients with interstitial pneumonia: a pilot study. Blood Purif 2010; 29: 321-6
[15] Oishi K, Mimura-Kimura Y, Miyasho T, et al. Association between cytokine removal by polymyxin B hemoperfusion and improved pulmonary oxygenation in patients with acute exacerbation of idiopathic pulmonary fibrosis. Cytokine 2013; 61: 84-9
[16] Neumeister A, Seidel J, Ragen BJ, et al. Translational evidence for a role of endocannabinoids in the etiology and treatment of posttraumatic stress disorder. Psychoneuroendocrinology 2015; 51: 577-84
[17] Huang WJ, Chen WW, Zhang X. Endocannabinoid system: Role in depression, reward and pain control (Review). Mol Med Rep 2016; 14: 2899-903
[18] Coccaro EF, Hill MN, Robinson L、et al. Circulating endocannabinoids and affect regulation in human subjects. Psychoneuroendocrinology 2018; 92: 66-71
[19] Huang M, Parker AM, Bienvenu OJ, et al. Psychiatric Symptoms in Acute Respiratory Distress Syndrome Survivors: A 1-Year National Multicenter Study. Crit Care Med 2016; 44: 954-65
[20] https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01948778?term=polymyxin+hemoperfusion&rank=7
[21] http://www.spectraldx.com/assets/spectral-rls-05.30.17.pdf
Iba T, Fowler L. Is polymyxin B-immobilized fiber column ineffective for septic shock? A discussion on the press release for EUPHRATES trial. J Intensive Care 2017; 5: 40
[22] http://www.spectraldx.com/assets/spectral-rls-053018.pdf

[PR]
by DrMagicianEARL | 2018-10-10 16:29 | 敗血症 | Comments(0)
■新年あけましておめでとうございます.今年もよろしく御願い申し上げます.さて,新年最初の論文紹介はClinical Infectous Diseaseに掲載された以下の論文から.救急部に敗血症患者が来た時に感染症チームが早期介入したらガイドライン遵守率と死亡率が改善したという前後比較研究です.私自身,大阪時代に実際にそのようなことをやって遵守率も死亡率も大幅に改善したので,納得の結果です.

■この論文では,13名の感染症医により構成された感染症チームが作られ,救急医が敗血症患者を見つけた時点でチームが呼ばれます.感染症チームが行うのは,認知から1時間以内に患者評価を行い,診断ワークアップの推奨,抗菌薬治療介入(薬剤選択,用量,投与スケジュール),必要時の感染巣コントロールの導入推奨を行います.

■結果は,介入前後で14日死亡率は39%から29%に有意に改善したという結果です.ただし,敗血症性ショックに限定すると57%から51%に減少はしているものの有意差はありません.敗血症性ショックに関しては死亡率がちょっと高すぎる印象ですね.SSCGバンドル遵守率は4.6%から17.6%に有意に改善していますが,まだまだ低すぎると言わざるを得ません.このあたりは何年もかかる取り組みでしょうから,続報に期待します.

■ついでであれですが,私の大阪時代の介入についてはエンドトキシン血症救命治療研究会で発表しておりますので,そちらの要約も下に掲載しました.大阪にいたときは救急医すらおらず,ERは主に3~10年目あたりのドクターで回していた状態で,敗血症性ショックの院内死亡率は8割と極めて高いものでした.その状況からICTとして介入を行い,4割まで改善しています.遵守率も最終的に81%まで改善し,ガイドライン遵守患者に絞ると院内死亡率は26%でした.一般病棟での看護師へのSIRS基準および臓器不全トリアージのプロトコル教育を行うと,30日生存率,臓器不全,ICU/HCU入室期間が有意に改善したという報告も出ています(Crit Care 2016; 20: 244).たとえ救急・集中治療医がいなくとも,敗血症死亡率改善に向けてICTにもできることはあります.
救急部における重症敗血症および敗血症性ショックの早期管理のための感染症チーム
Viale P, Tedeschi S, Scudeller L, et al. Infectious Diseases Team for the Early Management of Severe Sepsis and Septic Shock in the Emergency Department. Clin Infect Dis 2017; 65: 1253-9
PMID: 28605525

Abstract
【背 景】
救急部における重症敗血症/敗血症性ショックの初期管理に特化した感染症チームによる患者の生存への影響はいまだに評価されていない.

【方 法】
我々の病院の救急部において準実験的前後比較研究を行った.前期(2013年6月から2014年7月)では,重症敗血症/敗血症性ショックのすべての連続した成人患者は標準ケアに従って管理されており,データは前向きに収集した.後期(2014年8月から2015年10月)では,患者は救急部到着から1時間以内にベッドサイドの患者評価を行うことに特化した感染症チームと協力して管理された.

【結 果】
全体で382例の患者が登録され,前期が195例,後期が187例であった.年齢中央値は82歳(四分位範囲70-88歳)であった.最も多い感染巣は肺(43%),次いで尿路(17%)であり,22%は感染巣不明であった.後期では,Surviving Sepsis Campaign(SSC)バンドル遵守率(4.6% vs 32%, p<0.001),適切な初期抗菌薬投与率(30% vs 79%, p<0.001)が改善した.多変量解析では,全原因14日死亡の予測因子は,qSOFA≧2(HR 1.68; 95%CI 1.15-2.45; p=0.007),血清乳酸値≧2mmol/L(HR 2.13; 95%CI 1.39-3.25; p<0.001),感染巣不明(HR 2.07; 95%CI 1.42-3.02; p<0.001)であり,後期は保護因子であった(HR 0.64; 95%CI 0.43-0.94; p=0.026).

【結 論】
救急部における重症敗血症/敗血症性ショックの早期管理のための感染症チームの介入はSSC推奨の順守率と患者生存率を改善させた.
DrMagicianEARL.救急・集中治療医不在の病院におけるICT主導の敗血症性ショック治療プロトコルの導入;89例単施設後ろ向き観察研究.第21回日本エンドトキシン救命治療研究会

【背 景】
近年,敗血症の治療成績は改善傾向にあるが,その報告は救急医・集中治療医がいる施設からのものであり,これらのエキスパートが不在の施設における敗血症性ショックの治療成績の報告はまだない.当院では2011年3月までの敗血症性ショックの院内死亡率は約8割であり,その背景には,SSCGの周知不足,診断の遅れや不適切な治療の常態化が挙げられた.そこで,2011年8月より感染対策室(ICT)が主導となり,敗血症性ショック治療への介入を開始した.具体的には,SSCGをベースとしたより使いやすい院内プロトコルの作成と導入,敗血症性ショック発生時の検査・治療推奨,院内の多職種への研修,非侵襲的陽圧換気や乳酸値計測が可能な血液ガス分析機の導入を行った(第1次介入).さらに,2年後(第2次介入)に治療成績のフィードバックを行い,プロトコルの改訂と研修を行った.

【目 的】
ICT主導の敗血症性ショック治療介入の有効性を評価する.

【方 法】
本研究は,2009年4月から2016年2月まで当院のICUに入室した全ての敗血症性ショック患者89例を後ろ向きに抽出登録した単施設観察研究である.主要評価項目は蘇生プロトコルの遵守群と非遵守群の院内死亡とした.統計解析ソフトはR®を用い,有意水準は0.05とした.

【結 果】
全89例のうち,遵守群が50例,非遵守群が39例であり,患者背景因子では有意差はみられなかったが,治療介入については非遵守群の方が免疫グロブリンの使用が有意に多かった(38% vs 72%; p=0.002).院内死亡率は遵守群の方が有意に低かった(26% vs 80%, p<0.00001).また,第一次介入の前後での院内死亡率も有意に改善していた(40% vs 81%, p=0.001).多重ロジスティック回帰解析では,プロトコル遵守(OR 0.021; 95%CI 0.004-0.11),SOFAスコア(OR 1.53; 95%CI 1.10-2.24),日本救急医学会急性期DIC診断基準スコア(OR 1.87; 95%CI 1.11-3.15),挿管拒否の意思表示(OR 15.3; 95%CI 2.9-80.7)が院内死亡・生存の有意な関連因子であった.第1次介入前,第1次介入後~第2次介入前,第2次介入後のそれぞれの院内死亡率は81%,42%,38%,蘇生プロトコル遵守率は0%,65%,81%であった.

【結 論】
当院で行ったICT主導の敗血症性ショック治療介入により,蘇生プロトコルの遵守率が向上し,院内死亡率が低下した.

[PR]
by DrMagicianEARL | 2018-01-04 17:22 | 敗血症 | Comments(0)
■免疫不全があると敗血症性ショックの治療が難渋することは多々あります.今回はそのような免疫不全をベースとした敗血症性ショック患者の死亡やICU関連合併症を検討した後ろ向き研究を紹介します.ただ,一口に免疫不全と言っても多種多様です.たとえば固形癌があるからといってそれが即免疫不全に結びつくわけでもありませんし,どのような抗癌剤治療を行っているかでも変わりますし,固形癌で生じる感染症はどちらかというと腫瘍による閉塞等に伴う物理的要因での免疫不全の方が問題になりやすいため,この研究はちょっとざっくりしすぎかもしれません.
免疫不全および非免疫不全における敗血症性ショックの経過
Jamme M, Daviaud F, Charpentier J, et al. Time Course of Septic Shock in Immunocompromised and Nonimmunocompromised Patients. Crit Care Med 2017 Sep 20 [Epub ahead of print]
PMID: 28937407

Abstract
【目 的】
死亡,急性感染症,非感染性合併症の発症に関する敗血症ショックの経過における免疫状態の影響を検討する.

【方 法】
本研究は,ICU入室の48時間以内に敗血症性ショックと診断された患者を登録した8年間(2008-2015)の三次施設内科ICUの単施設後ろ向き研究である.患者は免疫状態に応じて4つのサブグループ(非免疫不全,免疫不全(血液疾患,固形悪性腫瘍,非悪性免疫抑制))に分類された.評価項目は院内死亡,虚血性・出血性合併症の発生,ICU関連感染症とした.死亡と合併症の決定要因は多変量競合リスク解析で検討した.

【結 果】
801例の患者が登録された.そのうち,305例(38%)が免疫不全であり,固形腫瘍122例,血液悪性疾患106例,非悪性免疫抑制77例であった.3日死亡,ICU死亡,院内死亡はそれぞれ14.1%,37.3%,41.3%であった.固形腫瘍患者は院内死亡が増加していた(原因特異的HR 2.20 [95%CI 1.64-2.96]; p<0.001).ICU関連感染症は3日間生存者のうちの211例(33%)に生じていた.加えて,ICU入室中に重篤な虚血性合併症が95例(11.8%),出血性合併症が70例(8.7%)発生していた.免疫状態とICU関連感染症の発生に関連性はみられなかった.非悪性免疫抑制と血液悪性疾患は,重篤な虚血性イベント(原因特異的HR 2.12 [95%CI 1.14-3.96]; p=0.02)と出血性イベント(原因特異的HR 3.17 [95%CI 1.41-7.13]; p=0.005)の増加に関連した独立危険因子であった.
※原文から:非免疫不全vs固形腫瘍vs血液悪性疾患vs非悪性免疫抑制状態で
好中球減少:0.8% vs 13.1% vs 73.8% vs 6.9%(p<0.001)
入院時SOFAスコア中央値[IQR]: 9[6-12] vs 9[6-12] vs 10[6-13] vs 8[5-11](p=0.02)
虚血性イベント:4.6% vs 2.4% vs 0.9% vs 7.8%
重篤な出血:1% vs 0% vs 1.9% vs 3.9%
Withdrawal:9.5% vs 24.6% vs 17% vs 11.7%(p<0.001)
3日死亡率:12.1% vs 24.6% vs 18.9% vs 3.9%(p<0.001)
ICU死亡率:32,9% vs 54.9% vs 39.6% vs 35.1%(p<0.001)
院内死亡率:36.1% vs 59% vs 44.3% vs 42.8%(p<0.001)

【結 論】
ベースの免疫状態は,敗血症性ショックの経過およびICUに関連した合併症の感受性に影響を及ぼす.これは,併存疾患と関連する敗血症症候群の複雑さを強調し,臨床研究における関連エンドポイントの問題を提起する.

[PR]
by DrMagicianEARL | 2017-09-24 16:01 | 敗血症 | Comments(0)
■プロカルシトニン(以下PCT)が保険承認となってから久しいですが,だいぶ普及したのか計測する先生がかなり増えました.これまでの観察研究では敗血症の補助診断ツールとしてそこそこのいい成績が出ていますし,PCTガイド下の抗菌薬治療(PCTを連日測定し,その推移で抗菌薬終了の目安とする)も複数のRCTが行われており,抗菌薬投与期間の短縮が示されています.一番最新の大規模RCTであるSAPS trial(Lancet Infect Dis 2016; 16: 819-27)では,抗菌薬投与期間の短縮のみならず28日死亡率まで有意に改善しています.ただし,この研究は,耐性菌事情が大きく異なるオランダの研究であること,プロトコル違反が非常に多いことは考慮しておく必要があります.

■一方,実臨床ではPCTはどのように使用されているでしょうか?私が現場を見ていて思うのは,「なんでもかんでもPCT測りすぎ」「RCTで示されたプロトコル通りにPCTガイド下抗菌薬治療をやってるケースなんて見たことがない」「PCT値の結果の解釈ができないのに測ってる」「PCTの偽性高値・偽性低値を知らない」「RCTでの除外基準を全く考慮していない」「PCTの保険点数を知らない(310点=3100円なので馬鹿にならない)」です.おそらく,臨床現場ではPCTがかなり不適切使用されており,その結果抗菌薬の不適切使用に繋がってしまっている,というのが私の考えですが,皆様のご施設ではどうでしょうか?実際に他施設のICTの方に聞くと同様の印象を持たれている方がけっこうおられました.今後PCTを院内採用しようと考えている施設は少し熟慮した方がいいと思います.加えて,PCTのメーカーの説明会で「肺炎患者(敗血症ではない)の抗菌薬治療過程でPCTを3回計測し,このように数値が下がりました」という症例のプレゼンをされてめまいがしたことがあります.通常の肺炎治療過程でわざわざ何回も測らなきゃ効果が分からないものではありませんし,そもそも敗血症病名で保険承認されたものであってプロモーションコード違反じゃないですかねあれは?

■RCTで示されたPCTを指標とした抗菌薬終了のプロトコルの共通点は,①PCT定量測定,②連日測定(日本では保険診療逸脱),③即日で結果が分かっている,です.なので,定性評価,非連日測定,外注の施設ではこのプロトコルは使えないということになります.もっとも,初日と5日目に2ポイント測定する,というやり方はありかもしれませんが,その有効性を示したエビデンスはまだない状況ですのでこれから検討していかなければなりません.また,以下の場合は除外基準に該当しますので,PCTガイドは使えません.
① 原因菌が緑膿菌,アシネトバクター,リステリア,レジオネラ,黄色ブドウ球菌,真菌,または不明
② 感染性心内膜炎,膿瘍,骨髄炎
③ 免疫不全患者または免疫抑制薬投与患者

■さて,今回紹介する論文は,実際にリアルワールドではPCTがどう使われているのか,アウトカムにどう影響したかを見た後ろ向きコホート研究です.結果は,PCT利用により死亡率は変わらず,抗菌薬投与期間が延長し,C. difficile感染が増加したというものでした.前述の2ポイント測定のような複数回測定でも同様の結果です.RCTとは真逆の結果になったのは,RCTでのプロトコルをそのまま適用していなかったことも原因かもしれません.やはりPCTを利用するからには論文のmethod,inclusion/exclusion criteriaを熟読すべきです.
敗血症による重篤患者におけるプロカルシトニン使用に関連したパターンとアウトカム
Chu DC, Mehta AB, Walkey AJ, et al. Practice Patterns and Outcomes Associated With Procalcitonin Use in Critically Ill Patients With Sepsis. Clin Infect Dis 2017; 64: 1509-1515
PMID: 28329238

Abstract
【背 景】敗血症による重篤な患者の抗菌薬投与期間短縮のためのプロカルシトニン(PCT)に基づくアルゴリズムの使用は無作為化比較試験によって支持されている.しかしながら,近年のPCTの使用がリアルワールドの臨床現場におけるアウトカムに関連しているかは明らかではない.我々は,米国の敗血症による重篤な患者におけるPCT使用を抽出し,PCT使用と臨床アウトカムの関連性を検討した.

【方 法】
本研究は米国の集中治療室に入院した敗血症患者の約20%の後ろ向きコホート研究である.PCT使用とアウトカムの関連性の検討(抗菌薬投与期間,Clostridium difficile感染,院内死亡)に層別回帰モデルを用いた.測定されていない交絡(操作変数,差分の差分分析など)に対応するために使用された様々な方法に対する知見の堅牢性を評価するために感度解析を用いた.

【結 果】
PCTが利用可能な107施設の敗血症による重篤患者20750例のうち,3769例(18%)がPCTレベルをチェックされており,1119例(29.7%)が連続PCT測定を行われていた.PCT使用は,死亡率の変化なしに(調整後HR 1.05; 0.93-1.19),抗菌薬投与日数(調整後RR 1.1; 95%CI 1.15-1.18)やC. difficle発生率(調整後OR 1.42; 95%CI 1.09-1.85)の増加に関連していた.操作変数と差分の差分分析によるPCT使用の解析では,PCTの使用に伴う抗菌薬やアウトカムの改善は同様に見られなかった.

【結 論】
リアルワールドの状況において,PCTの使用は抗菌薬使用や他の臨床アウトカムの改善には関連していなかった.PCTに基づいた戦略の実行を改善するためのプログラムが普及前に必要である.

[PR]
by DrMagicianEARL | 2017-07-18 14:45 | 敗血症 | Comments(0)

■敗血症性ショックにおけるPMX-DHP(ポリミキシンB直接血液灌流;エンドトキシン吸着)はABDO-MIXにおいて死亡率悪化傾向がみられ,現在米国のEUPHRATESのpublish待ちの状態です(既に2016年10月の欧州集中治療医学会では発表済みで,死亡率はITT解析では43.8% vs 44.3%,PP解析では31.9% vs 36.9%でいずれも有意差なし).日本版敗血症診療ガイドラインでは敗血症性ショック患者を対象とした3つのRCTのメタ解析により使用しないことを弱く推奨するとしており,一方のSSCG 2016ではEUPHRATESの結果待ちというスタンスをとっています.

■今回御紹介する論文は,JSEPTIC-DIC studyのpost hoc解析でPMX-DHPの死亡率改善効果を見たものです.後ろ向きコホートで傾向スコア解析(propensity score analysis)を行っています(層別解析やIPTW法は使用していません).結果は,PMX-DHPが院内死亡率とICU在室期間を有意に改善するという結果でした.

■詳細データを見ると,まず全体が1723例に対し,傾向スコアマッチングで524例まで削ぎ落とされています.約1/3になってるあたりは他の集中治療領域の同様の解析でもだいたい同じです.PMX-DHP非施行群が1201例でPMX-DHP施行群が522例のため,マッチングにより患者背景はPMX-DHP施行群側に寄りやすくなります.マッチング前の患者背景では,非施行群より施行群の方が
・救急センターICUの率が高い
・救急部門からのICU入室が少ない
・ICUベッド数が少ない施設の入院が少ない
・肝不全が多い
・重症度が高い(APACHEⅡスコア 25.2 vs 25.9,SOFAスコア 11.2 vs 12.0)
・JAAM DICスコア4項目以上の患者数が多い
・感染巣が腹部で多くその他は少ない
・原因菌がグラム陰性菌や混合感染で多く,フラム陽性菌や不明は少ない
・白血球数,血小板数が少なく,PT-INRは延長
・rTM,AT製剤,プロテアーゼ阻害薬,IVIG,低用量ステロイド,RRT,non-renal indication RRTが多い
という特徴でした.マッチング前の全死亡率に差はありません(36.6% vs 37.9%).マッチング後は両群間の背景因子に有意差なく綺麗にそろっており,腹腔感染重症度はマッチング前後でほぼ変わっていないのですが,非施行群は死亡率が約5%上がり,施行群は約5%下がるということが起こっています.APACHEⅡスコア25前後,SOFAスコア11前後で非施行群の院内死亡率41.2%というのは敗血症性ショックとしては標準~やや高い印象を持ちます(私見です).

■マッチングにおいてどの変数が特に影響を与えたのかですが,背景因子の違いを見るに,感染巣(腹腔感染症),原因菌(グラム陰性菌)の比率がマッチング前後で特に大きく変動しています.このあたりは推測でしかありませんが,これまでPMX-DHPが特に用いられてきた腹腔内感染による敗血症で威力を発揮しやすいのかも?とも考えられるわけです.一方のABDO-MIXは腹腔感染に限定しているものの死亡率が悪化傾向となっていますが,ABDO-MIXはPMX-DHPに慣れていないフランスでの研究で,フサンではなくヘパリンを用いている,DICは治療しない,という違いがあります.これらも考えると,再度腹腔感染症でフサンを使ってDICも治療する状態でRCTをやってみてほしいなと思うわけですが,EUPHRATESがああいう結果である以上,海外ではもうRCTは組まれないと思われます.日本でやるしかないでしょうけれども・・・

敗血症性ショック患者でのポリミキシンB血液灌流による潜在的な生存率の改善:傾向スコアマッチングコホート研究(JSEPTIC-DIC studyのpost hoc解析)
Nakamura Y, Kitamura T, Kiyomi F, et al; Japan Septic Disseminated Intravascular Coagulation (JSEPTIC DIC) study group. Potential survival benefit of polymyxin B hemoperfusion in patients with septic shock: a propensity-matched cohort study. Crit Care 2017; 21: 134

Abstract
【背 景】
本研究の目的は,ポリミキシンB血液灌流(PMX-HP)が敗血症性ショック患者の生存率を改善させるかについて検討することである.

【方 法】
本研究は3年の間に治療を受けた患者で行われた後ろ向き多施設共同研究である.我々はJapan Septic Disseminated Intravascular Coagulation (JSEPTIC DIC) studyのデータベースの傾向スコア解析を行った.本研究は16歳以上の敗血症性ショック患者1723例のデータを登録した.さらに,患者をPMX-HP治療群とPMX-HP非治療群に分けた.主要評価項目は全院内死亡,副次評価項目は集中治療室(ICU)死亡と最初の28日間でICUに在室していない日数(ICUFDs:ICU-free days)とした.

【結 果】
1723例のうち,522例がPMX-HPを受けた.傾向スコアマッチングにより262組がマッチした(PMX-HP非治療群とPMX-HP治療群それぞれ262例ずつ).全院内死亡率はPMX-HP非施行群よりもPMX-HP施行群の方が有意に低かった(32.8% vs 41.2%; OR 0.681; 95%CI 0.470-0.987; p=0.042).最初の28日間のICUFDはPMX-HP非治療群よりもPMX-HP治療群の方が有意に多かった(それぞれ14(0-22) vs 18(0-22)日,p=0.045).一方で,ICU死亡率には二群間で有意差はみられなかった(21.8% vs 24.4%; OR 0.844; 95%CI 0.548–1.300; p=0.443).

【結 論】
我々の結果は,敗血症性ショック患者においてPMX-HPが全院内死亡とICU在室期間を減少させることを強く示唆する.


[PR]
by DrMagicianEARL | 2017-06-08 17:39 | 敗血症 | Comments(0)
■敗血症は迅速な認知とそこから迅速な治療へのスムーズな移行が課題となっています.今回御紹介するNEJMの論文はSSCG2012で定められた敗血症治療の3時間ケアバンドル,抗菌薬投与,輸液負荷が開始されるまでの時間と死亡率の関連性について大規模データを用いて検証されたものです.輸液負荷開始までの時間については統計学的に有意な関連性はみられなかったものの,3時間ケアバンドル,抗菌薬投与はいずれも1時間遅れるごとに4%有意に死亡率が上昇するという結果であり,迅速な治療開始の重要性を示唆する論文です.
敗血症の指定された緊急治療における治療までの時間と死亡
Seymour CW, Gesten F, Prescott HC, et al. Time to Treatment and Mortality during Mandated Emergency Care for Sepsis. N Engl J Med 2017, May 21[Epub ahead of print]

Abstract
【背 景】
2013年にニューヨークでは,敗血症の早期発見と治療のためのプロトコルを病院に求めるようになった.しかし,より迅速な敗血症の治療が患者の転帰を改善するか否かについては議論されている.

【方 法】
2014年4月1日から2016年6月30日までのニューヨーク州健康局に報告された敗血症および敗血症性ショックの患者データを研究した.患者は,救急部門に到着後6時間以内に敗血症プロトコルが導入され,敗血症患者の3時間ケアバンドル(血液培養,広域抗菌薬,乳酸値計測)の全項目を12時間以内に完遂された.マルチレベルモデルを使用して,3時間バンドルの完了までの時間とリスク調整死亡との間の関連性を評価した.また,抗菌薬の投与および最初の静脈内輸液のボーラスの完了までの時間も調査した.

【結 果】
149病院の49331例の患者のうち,40696例(82.5%)が3時間以内に3時間バンドルを完遂されていた.3時間バンドルの完遂までの時間の中央値は1.30時間(四分位範囲 0.65 to 2.35),抗菌薬投与までの時間の中央値は0.95時間(四分位範囲0.35 to 1.95),最初の輸液ボーラス投与完遂までの時間の中央値は2.56時間(四分位範囲1.33 to 4.20)であった.12時間以内に3時間バンドルを完遂した患者において,バンドル完遂までの時間がより長いこと(OR 1.04/hour; 95%CI 1.02 to 1.05; p<0.001),抗菌薬投与開始までの時間がより長いこと(OR 1.04/hour; 95%CI 1.03 to 1.06; p<0.001)は高いリスク調整後院内死亡と関連していたが,最初の輸液ボーラス投与完遂までの時間がより長いことは関連していなかった(OR 1.01/hour; 95%CI 0.99 to 1.02; p=0.21).

【結 論】
より迅速な敗血症治療の3時間バンドルの完遂と迅速な抗菌薬投与は低いリスク調整後院内死亡と関連していたが,最初の輸液ボーラス投与の迅速な完遂は関連していなかった.

[PR]
by DrMagicianEARL | 2017-05-22 14:45 | 敗血症 | Comments(0)
■免疫グロブリン製剤(IVIG)は壊死性軟部組織感染症の原因となりやすい連鎖球菌や黄色ブドウ球菌の毒性の中和作用があることが知られていますが,壊死性軟部組織感染症に対するIVIGを検討したRCTは1報のみで,それも患者登録がなかなか進まずわずか21例で中止となっています.

■今回紹介する論文は,もう少し症例数を増やして検討しようということで行われた研究(INSTINCT trial)です.主要評価項目は,リハビリテーションなどでよく評価される長期機能の指標となるSF36-PFスコアリングシステム(SF36は健康関連QOL評価ツールであり,SF36-PFは運動関連のADLに相当)を用いています.これは,IVIGによる菌毒性や炎症の中和作用が身体機能を改善するのではないかという執筆者らの仮説からくるものです.

■目のつけどころは興味深く,近年トピックスとなっているPICSにも関連する研究ですが,結果はネガティブでした.もっともPICSを評価する上で重要な他の介入(リハビリテーション等)が具体的にどのようになされていたのかは不明ですが,少なくともIVIGがPICSに大きなインパクトを与えるような効果はこの研究では見られません.

■副次評価項目では死亡率を評価しています.有意差はないものの28日死亡率,90日死亡率,180日死亡率と日数が伸びるにつれてIVIG群の方が死亡率が低く,180日時点では6%の差がついてはいます.サンプル数不足とも言えるかもしれませんが,Kaplan-Miere曲線を見ると途中で交差しておりますので,臨床的に有意な差とは言い難いと思います.
壊死性軟部組織感染症患者における免疫グロブリンG(INSTINCT):二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験
Madsen MB, Hjortrup PB, Hansen MB, et al. Immunoglobulin G for patients with necrotising soft tissue infection (INSTINCT): a randomised, blinded, placebo-controlled trial. Intensive Care Med 2017 Apr 18[Epub ahead of print]
PMID: 28421246

Abstract
【目 的】
本INSTINCT試験の目的は,壊死性軟部組織感染症(NSTI)のICU患者における自己報告の身体機能において,プラセボと比較した多特異性免疫グロブリンG注射製剤(IVIG)の効果を評価することである.

【方 法】
我々は,NSTI患者100例を,ICU入室から最初の3日間にIVIG(Privigen, CSL Behring) 25gまたは同用量の0.9%生理食塩水を1日1回静注する群に無作為化した.主要評価項目は無作為化から6ヶ月後の36項目のの健康サーベイ(SF-36)の身体的サマリースコア(PCS)とし,死亡した患者は最も低いスコア(0点)とした.

【結 果】
無作為化された100例の患者のうち,87例がPCSスコアのITT解析に登録され,IVIG群が42例(84%),プラセボ群が45例(90%)であった.2つの介入群は,無作為化前のIVIG使用(1回投与は許容)を除いた背景因子や急性腎傷害の率は同等であった.PCSスコアの中央値は,IVIG群で36点(四分位範囲 0-43),プラセボ群で31点(0-47)であった(平均調整差 1点(95%CI -7 to 10), p=0.81).
※本文より,平均値は29点vs28点
本結果は背景因子で調整した解析,per-protocol集団,サブグループ解析(NSTIの部位),無作為化前のIVIG使用で調整したpost-hoc解析でも維持されていた.

【結 論】
NSTIのICU患者では,6ヶ月時点での自己報告での身体機能においてアジュバントIVIGの効果は見られなかった.

[PR]
by DrMagicianEARL | 2017-04-21 16:51 | 敗血症 | Comments(0)
CQ8.敗血症性ショックに対するステロイド療法
CQ8-1:初期輸液と循環作動薬に反応しない成人の敗血症性ショック患者に低用量ステロイド(ハイドロコルチゾン;HC)を投与するか?

A.敗血症性ショック患者が初期輸液と循環作動薬によりショックから回復した場合は,ステロイドを投与するべきでない.初期輸液と循環作動薬に反応しない成人の敗血症性ショック患者に対して,ショックの離脱を目的として低用量ステロイド(HC)を投与することを弱く推奨する(2B)
 敗血症におけるステロイドはいまだに議論のさなかにあり,エビデンスも二転三転しているが,特定の集団には有効に作用するであろうというのが近年の流れである.加えて血糖変動が敗血症の予後に想像以上に関連しているのではないかということも分かってきており,ステロイドの益と害のバランスを見極める必要がある.ただし,少なくともショックに陥っていない段階での敗血症へのステロイド投与はショックへの進展率や死亡率を改善させず,高血糖を有意に増加させ,二次感染,ICUAWも増加傾向であったとするHYPRESS trialが2016年に報告されている(JAMA 2016;316:1775-85)ことも考慮すると,ショックでない限りはステロイドの投与は行うべきではないだろう.

 ステロイドは抗炎症作用を有するが,あくまでもグルココルチコイド受容体を発現させる細胞にのみ作用が限定されるにもかかわらず敗血症が進行すると受容体は減少し,細胞選択性もなく,悪影響の懸念がある.さらには血糖値が上昇し,高血糖による害や外因性インスリン投与による害の懸念もある.その一方で,敗血症においては副腎機能低下が進行し,ショック形成に関与していることを留意する必要があり,ステロイドカバーの役割を担う可能性は残されており,これは本ガイドラインでも言及されている.

 ただし,真に副腎機能低下を有するのかの判断は極めて難しい.血中のコルチゾルを測定する方法も考えられるが,血中コルチゾルの9割は蛋白結合型の不活性型であり,活性を有するフリーコルチゾルは1割である.ところが,敗血症ではフリーコルチゾルの割合が50%程度にまで増加する.その一方で,アルブミン低下が著明となると,フリーコルチゾルが正常または増加しているにもかかわらず,総コルチゾルは低く測定されることになる.以上からコルチゾル値を計測しても副腎機能低下の判断は困難である.1つの方法として高度炎症状態では上昇するはずの血糖値がむしろ低い場合に副腎機能不全を疑うことはできるが,菌血症や糖尿病治療薬によって生じている可能性もあるため,確実な判定とはならない.
※ただし,低血糖を合併した敗血症は予後が非常に悪いことから,私は低血糖を見た時点でステロイド投与を行っている.

 本ガイドラインで行われたメタ解析では,28日死亡の有意な改善はみられていないが,効果推定値は1000 人あたり17人が死亡減少(95%CI 82人の減少~56 人の増加)という結果であり,加えてショック離脱率は有意に改善していた(137人が改善(81~198 人の改善)).一方,害のアウトカムは3つが設定されており,どれも重要度は5になっているため重みづけはできない.感染症発生リスクは1000 人あたり 23人の増加(31人の減少~93 人の増加),消化管出血発生リスクは21 人の増加(9人の減少~68人の増加),高血糖発生率は103人の増加であった(62~172 人の増加).これらを見るに,少なくとも感染症発生リスクと消化管出血発生リスクは死亡減少リスクの効果推定値とそこまで変わらない.高血糖発生もショック離脱よりも少ない数である.これらを総合的に見れば,益が害をおそらく上回るという判定は妥当と推察される.

 ただし,各研究ごとにデザインや患者層の違いがある.敗血症性ショックに対する低用量ステロイド療法は有効とする報告と無効とする報告の両方が複数報告されている.2004年のメタ解析(BMJ 2004; 329: 480-84)では,ステロイドによって28日死亡率,ICU死亡率,入院死亡率が有意に減少し,消化管出血,高血糖,続発性感染などの合併症の増加を認めず,ステロイド使用によりショックの離脱率が高く,昇圧薬の使用期間が短くなることが報告され,これを根拠としてSSCG 2004では低用量ステロイド長期間投与が推奨された経緯がある.

 一方で,2008年に報告された二重盲検多施設共同RCTであるCORTICUS study(N Engl J Med 2008; 358: 111-24)は症例数が500例と大規模であり,28日死亡率はステロイド投与によって変わらないことが示された.また,ステロイド群では続発性感染,高血糖,高Na血症が有意に高いことが示された.post hoc解析では,12時間以内に薬剤投与された場合でもステロイドの有無で死亡率が変わらないことが示された.この報告を受けて,SSCG 2008では少量ステロイド療法の推奨度がやや後退することとなる.しかしながら,CORTICUS studyには,ベースの患者の重症度が低い,ステロイド投与開始までの時間が長い(=すでに敗血症が軽快している可能性),有意差を出すためにサンプルサイズを800人に設定していたが,期間内に症例を集めることができず500人で終了している,などの問題点が挙げられている.

 そして,2004年のメタ解析が2009年にup-dateされ,少量ステロイド長期投与による死亡率の改善効果がみられ(Clin Microbiol Infect 2009; 12: 308-18),さらに低用量ステロイドは死亡率が高いと予測される患者(重症患者)では有効となり,死亡率が低いと予測される患者(軽症患者)では害となりうることを報告している.これらから,患者の重症度に応じてステロイドを使い分ける必要がある可能性が示唆され,比較的軽症の敗血症性ショックで使用すると害が益を上回る可能性があることを考慮すべきである.

 本ガイドライン推奨はSSCG 2012でもほぼ同様の内容となっている.なお,敗血症におけるステロイドは現在ANZICSが3800例の大規模RCTであるADRENAL studyを行っており,この結果で一定の決着がつくものと思われる.
CQ8-2.ステロイドの投与時期は早期投与か晩期投与か?

A.成人の敗血症性ショック患者に対してステロイドを投与する場合,ショック発生6時間以内に投与開始することを推奨する(EC/エビデンスなし)
 ステロイドの早期投与と晩期投与を比較したRCTは存在しない.本ガイドラインでは根拠として①ショック発症後8 時間以内にステロイドを投与したフランスの RCT(JAMA 2002; 288: 862-71)ではショック離脱率や死亡率が改善しているが,ショック発症72時間以内に投与したCORTICUS Study(N Engl J Med 2008; 358: 111-24)では改善していない,②2つの観察研究(いずれも170例程度)がステロイドの早期投与の方が死亡率が低いと報告している,を挙げている.

 ①についてであるが,フランスのAnanneらのRCTはCORTICUS studyよりも重症度が高く,ベースの死亡リスクも高いことから,投与開始時間の違い以外に,Annaneらの方がベースの重症度が高かったからステロイド投与群の死亡リスクが改善した可能性がある.
※ガイドラインの解説文がやや紛らわしくなっているが,Annaneらのステロイド投与群の方がCORTICUSのステロイド投与群よりも死亡率が低いという意味ではないと思われる.

 次に②であるが,このガイドラインで挙げられた2つの170例程度の観察研究以外にCasserlyら(Intensive Care Med 2012; 38: 1946-54)の報告があるが,この報告はSurviving Sepsis Campaignデータベースを用いた17847例(敗血症性ショック)の大規模解析である.本解析結果では,ステロイド投与による死亡のオッズ比は,全体で1.18,8時間以内の投与開始で1.23,8-24時間で1.05(N.S.),24時間以降で1.36であり,投与開始時間が8-24時間の場合を除けば有意に死亡リスクが増加している.

 これらを見るに,ステロイド投与を6時間以内に投与することを推奨する,というエキスパートコンセンサスにはやや疑問を感じる部分はある.やはりどの程度の重症度あるいはカテコラミン反応性での判断によることが臨床現場では多いのではないだろうか?その上で後手に回らない早期治療を行っていけば結果的に6時間以内にステロイドが開始されている可能性はあると思われる.また,ステロイドの研究はSSCGが広く普及する以前のものも多いことを考慮しなければならない.

 なお,SSCG 2012,SSCG 2016ともに早期投与・晩期投与については推奨をだしていない.
Q8-3.ステロイドの至適投与量,投与期間は?

A.敗血症性ショック患者に対してステロイドを投与する場合,HC 300 mg/day 相当量以下の量で,ショック離脱を目安に(最長7日間程度)投与することを推奨する(EC / エビデンスなし)
 敗血症性ショックに対する高用量ステロイド投与は死亡リスクが増加するとして既に否定されていることから,行うのであれば低用量ステロイド投与である.投与量で比較したRCTは存在しないが,システマティックレビュー(JAMA 2009; 301: 2362-75)では,5日間以上/未満,ハイドロコルチゾン300mg以上/未満で比較して,低用量長期投与のみがショック離脱率や28日死亡率を改善していたとしている.各研究ごとにステロイドの投与レジメンが異なるものの,これらの結果から投与量・投与期間が最長7日間程度,300mg/day以下と設定している.ただし,ステロイドの副作用を考慮すると,循環動態が改善した場合は早めに投与量を漸減させた方がbetterと思われる.また,小規模研究ではあるが,反復ボーラス投与が持続投与よりも高血糖をきたしやすいことも報告されている(Intensive Care Med 2007; 33: 730-3)ことから,持続投与の方がbetterかもしれない.

 なお,SSCG 2012,SSCG 2016ではハイドロコルチゾン投与量は200mg/dayとしている.
CQ8-4.ハイドロコルチゾンを投与するか?

A.敗血症性ショック患者に対してステロイドを投与する場合,ハイドロコルチゾン(HC)または代替としてメチルプレドニゾロン(MPSL)を投与することを推奨する(EC/ エビデンスなし)
 どのステロイドがよいかについて検討したRCTはないが,過去の研究からこの2種類のステロイドが用いられることが慣習化している.ハイドロコルチゾンとメチルプレドニゾロンを比較した後ろ向き観察研究(Adv Ther 2009; 26: 728-35)では臨床アウトカムに差はない.

 これら以外のステロイドでは,フルドロコルチゾンやデキサメサゾンについて言及しているが,いずれもデメリットが大きいと考えられているステロイドのため推奨されていない.

←日本版敗血症診療ガイドライン2016(5) 初期蘇生・循環作動薬
日本版敗血症診療ガイドライン2016(7) 輸血,人工呼吸管理(近日UP予定)→

[PR]
by DrMagicianEARL | 2017-04-03 19:16 | 敗血症 | Comments(0)
■敗血症においては,血液分布が変わったり代謝や血行力学的変動により抗菌薬の効力が低下する懸念が以前から指摘されてきました.特に敗血症早期においては,腎血流量増加,腎糸球体ろ過率(GFR)増加,腎クレアチニンクリアランス増加を伴う代謝亢進状態にあり,抗菌薬も例外ではありません.よって,通常の抗菌薬投与レジメンでは有効血中濃度を維持できず,敗血症患者においては不利になるのではないかと考えられています.これもあって私も初期投与量は腎機能に関わらず最大投与量としてできる限り早く定常状態に達するような抗菌薬投与プランを用いてきました.この過大腎クリアランス(Augmented Renal Clearance;ARC)の状態が臨床アウトカムに関連するかについて検討した報告がIJAAにpublishされました.

■本研究はANZICSが行った重症敗血症での抗菌薬持続投与と間欠投与を比較したRCTであるBLING-II trialの二次解析です.結果は,ARCは予後をに影響を与えないというものでした.最もARCを有する患者は若年で臓器障害が少ないという特徴があるため,背景因子として予後は比較的良好な患者集団とも言えます.RCTでの再評価が待たれます.

■ただ,個人的考えですが,このようなPK/PDの理論は,敗血症の予後に影響を与えるほどのインパクトはないのではないかと諸研究を見て最近感じています.敗血症の本体は炎症であり臓器障害であり,いわゆる宿主側の問題であって,感染症治療については抗菌薬が原因菌に当たってさえいれば非敗血症での投与方法・投与期間でも変わらないのではないかとつくづく思います.敗血症患者でのプロカルシトニンガイド下での抗菌薬投与で投与日数がこれまでの経験的日数よりかなり少なくてすんでいる知見がでてきたのもそういうことではないかと.
持続的または間欠的静脈内投与によるβラクタム系抗菌薬治療を受けた患者における過大腎クリアランス(ARC)と臨床アウトカムの関連性:BLING-II無作為化プラセボ対照比較試験のコホート内研究
Udy AA, Dulhunty JM, Roberts JA, et al; BLING-II Investigators; ANZICS Clinical Trials Group. Association between augmented renal clearance and clinical outcomes in patients receiving β-lactam antibiotic therapy by continuous or intermittent infusion: a nested cohort study of the BLING-II randomised, placebo-controlled, clinical trial. Int J Antimicrob Agents. 2017 Mar 9 [Epub ahead of print]
PMID: 28286115

Abstract
【背 景】
過大腎クリアランス(ARC)はβラクタム系抗菌薬の薬物動態に影響するものとして知られている.

【目 的】
BLING-II試験の本サブ研究の目的は,大規模無作為化比較試験におけるARCと患者アウトカムの関連性について検討することである.

【方 法】
BLING-II試験は,βラクタム系抗菌薬による治療を持続的投与か間欠的投与かで無作為化された重症敗血症患者432例を登録した.CLCr≧130 mL/minで定義されるARCを抽出するため,第1病日に8時間でのクレアチニンクリアランス(CLCr)を用いた.腎代替療法を受けた患者は除外された.主要評価項目は28日時点でのICU非在室生存日数とした.副次評価項目は90日死亡率と抗菌薬中止から14日時点での臨床的治癒とした.

【結 果】
計254例の患者が登録され,45例(17.7%)がARCとされた[CLCr中央値(四分位範囲) 165 (144-198) mL/min].ARC患者は,若年であり(p<0.001),男性に多く(p=0.04),臓器障害が少なかった(p<0.001).28日時点でのICU非在室生存日数に有意差はみられなかったが[ARCあり 21 (12-24)日; ARCなし 21(11-25)日; p=0.89],未調整解析ではARCを有する方が有意に臨床的治癒率が高かった[33/45 (73.3%) vs 115/209 (55.0%), p=0.02].多変量解析においては本結果は減衰していた.90日死亡率に差は見られなかった.

【結 論】
ARC患者の臨床アウトカムに統計的に有意な差はなかった.重症敗血症におけるβラクタム系抗菌薬の大規模臨床試験の本サブ研究において,ARCは投薬戦略にかかわらずいかなるアウトカムの差異にも関連していなかった.

[PR]
by DrMagicianEARL | 2017-03-27 17:43 | 敗血症 | Comments(0)
■近年,ICU患者の鎮静の研究がさかんで,近年の知見では①ベンゾジアゼピンは避けた方がいい,②鎮静による抗炎症作用が期待できる,③デクスメデトミジンはせん妄を減少させる可能性がある,などが主に分かっています.

■昨日,人工呼吸器を要する敗血症患者へのデクスメデトミジンを検討した本邦8施設共同RCTであるDESIRE trialがJAMA誌にonline firstでpublishされたので御紹介します.サンプル数201例であり,検出力不足のためか死亡率や人工呼吸器非装着期間に有意差はなし,良好な鎮静管理はデクスメデトミジンの方が有意に多く,サブ解析ではAPACHEⅡスコア23以上の重症例に限定するとデクスメデトミジンが有意に死亡率を改善するという結果でした.

■この結果,いろんなことが言えるとは思います.まず第一に死亡率の絶対差が8%もあることです.サンプル数不足のため統計学的有意差はありませんが,臨床的には無視できない大きな差です.問題はこの8%が偶然の産物なのかですが,過去の報告を見ると,ICU患者を対象とした16報RCTのメタ解析であるCrit Care Med 2014; 42: 1442-54においては死亡リスクをアウトカムとしてデクスメデトミジンはOR 0.90,95%CI 0.76-1.06で改善傾向を示しており,本研究結果の効果推定値を考慮しても非一貫性はほぼないものと考えられ,偶然ではないであろうと推測できます(ただこのメタ解析は患者集団や介入の統一性が乏しく,もう少し絞り込んだシステマティックレビューが必要だろうとは思います).

■サブ解析ではAPACHEⅡスコア23以上でデクスメデトミジン群が有意に死亡率を改善しています.これは昨今の集中治療領域での研究でよく見られる「重症例ほど死亡率改善効果が得られやすい」と矛盾しないものです.ただし,確かにAPACHEⅡ≧23と<23とで効果推定値のベクトルは真逆ですが,95%信頼区間は半分ほど重なっています(なのでおそらく交互解析をしても有意差はでません).サブ解析はあくまでも恣意的に選んだ患者集団ですから,これをもってAPACHEⅡスコア23以上に対象を絞って再度RCTをやり直しても有意差がつくとは限りません(特に集中治療領域ではサブ解析を元にRCTを組んで有意差がだせた研究はほとんどありません).

■では,さらなるRCTを組むとしたらどれだけサンプル数を集めるかですが,ICU患者の死亡率が30%以下に突入している昨今,統計学的有意差という意味では限界が見えると最近感じています.差がまずつかないため,p値に縛られない解釈が必要だとは思います.例えば今回と同じデザインで行うならば,効果推定値0.69(相対死亡リスク31%減少),対照群の死亡率30.8%と仮定して死亡率で統計学的有意差を得るためにはサンプル数は約1000例は必要です.こんなサンプル数は日本だとまず無理でしょうし海外でもできるのはANZICSぐらいじゃないでしょうか?

■もしサブ解析結果をそのまま信じるなら,効果推定値0.39(相対死亡リスク61%減少),対照群死亡率が40%と仮定した場合120例で済みますが(と言っても患者集団を絞っているので患者登録期間は今回より長期化しやすくなってしまいますので,試験参加施設を増やす必要があります),前述の通りサブ解析を元にしたRCTはある意味博打です.次の研究でどのようなデザインを組むのかは悩ましい話だと思いますが頑張っていただきたいです.できればPICSの評価も・・・
敗血症で人工呼吸管理を要する患者における死亡率と人工呼吸器非装着日数におけるデクスメデトミジンの効果:無作為化比較試験(DESIRE trial)
Kawazoe Y, Miyamoto K, Morimoto T, et al; for the Dexmedetomidine for Sepsis in Intensive Care Unit Randomized Evaluation (DESIRE) Trial Investigators. Effect of Dexmedetomidine on Mortality and Ventilator-Free Days in Patients Requiring Mechanical Ventilation With Sepsis: A Randomized Clinical Trial. JAMA 2017, Mar21 [Epub ahead-of-print]

Abstract
【背 景】
デクスメデトミジンは人工呼吸管理下の患者に鎮静作用を与えるが,敗血症患者の死亡率や人工呼吸器非装着日数への効果についてはよく研究はされていない.

【目 的】
デクスメデトミジンによる鎮静戦略が人工呼吸管理を受ける敗血症患者の臨床アウトカムを改善できるかについて検討する.

【方 法】
本研究は2013年2月から2016年1月までに日本の8つの集中治療室において行われた,少なくとも24時間の人工呼吸管理を要する成人敗血症患者201例を連続的に登録したオープンラベル多施設共同無作為化臨床試験である.患者はデクスメデトミジンによる鎮静(n=100)またはデクスメデトミジンを用いない鎮静(対照群;n=101)を受ける群に無作為化された.両群で他に用いた薬剤はフェンタニル,プロポフォール,ミダゾラムであった.主要評価項目は死亡率と人工呼吸器非装着日数(28日間)とした.Sequential Organ Failure Assessment(SOFA)スコア(1,2,4,6,8病日),鎮静管理,せん妄・昏睡の発生,集中治療室入室期間,腎機能,炎症,栄養状態を副次評価項目として評価した.

【結 果】
203例の患者がスクリーニングされ,201例が無作為化された.平均年齢は69歳(標準偏差14年)であり,63%が男性であった.28日死亡率はデクスメデトミジン群と対照群で有意差はみられなかった(19例[22.8%] vs 28例[30.8%]; HR 0.69; 95%CI 0.38-1.22; p=0.20).28日での人工呼吸器非装着期間は両群間で有意差が見られなかった(デクスメデトミジン群中央値20日[四分位範囲5-24日] vs 対照群中央値18日[四分位範囲 0.5-23日]; p=0.20).デクスメデトミジン群は人工呼吸管理中の良好な鎮静管理率が有意に高かった(範囲17-58% vs 20-39%; p=0.01).その他の評価項目は両群間で有意差は見られなかった.有害事象はデクスメデトミジン群と対照群でそれぞれ8例(8%)と3例(3%)であった.
※本文より:APACHEⅡスコアが23以上のサブ解析ではデクスメデトミジン群が有意に死亡率が低かった(APACHEⅡスコア≧23:OR 0.39; 95%CI 0.16-0.91,APACHEⅡスコア<23:HR 1.13; 95%CI 0.36-3.57).

【結 論】
人工呼吸器を要する患者において,デクスメデトミジンの使用はデクスメデトミジンがない場合に比して死亡率や人工呼吸器非装着日数を統計学的に有意に改善した結果とはならなかった.しかし,本研究は死亡率については検出力不足の可能性があり,追加研究としてさらなる評価が必要である.

[PR]
by DrMagicianEARL | 2017-03-22 18:59 | 敗血症 | Comments(0)

by DrMagicianEARL