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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

カテゴリ:敗血症性AKI( 4 )

■AKI(急性腎傷害)に対するRRT(腎代替療法)の大雑把な導入基準としてはABCDE(Acidosis アシドーシス,Blood urea 尿毒症,Congestion 溢水,Drug 薬物除去,Electrolyte abnormalities 高K血症)が挙げられていますが,その具体的指標でどのように導入するかについては多数の研究があります.既知の観察研究では,早期導入の方がよさそうという流れがありましたが(Crit Care 2011; 15: R72),2年前にNEJMにpublishされたフランスの620例(内科患者80%,敗血症80%)での多施設共同RCTであるAKIKI trial(N Engl J Med 2016; 375: 122-33)では,KDIGO stage3のAKIに対するRRT早期導入は遅くに導入する待機群と比較して60日死亡率に有意差はなく(48.5% vs 49.7%, p=0.79),カテーテル血流感染症を有意に増加させ(10% vs 5%, p=0.03)ています.さらに,待機群の患者の半数がRRTを回避でき,腎機能改善も早かったと報告されています.60日後のRRT依存は2% vs 5%で有意差なしでした.

■今回紹介する論文は同じくフランスからの大規模RCTであるIDEAL-ICU trialです.無益性のため488例登録時点で早期中止となりました.結果は90日死亡率に有意差なし,待機群では腎代替療法を38%が回避できた,90日時点での透析依存割合は2% vs 3%という結果で,概ねAKIKI trialと同じ結果でした.以上から,少なくとも内科,特に敗血症患者では,AKIだからといって緊急導入基準を満たさないならすぐにRRT導入はせずともよさそう,とはなりますが,待機群の17%で緊急導入が必要になってますので,患者のモニタリングで遅れすぎないようにする必要はあります.また,AKIKIもIDEALもフランスからの研究なので,本邦や他国でのRCTがもう少し欲しいところです.ただ,これは完全に個人的考えですが,フランスで有意差がつかなかったものが他国でやって有意差つくとはあまり思えないですね.フランスでのRCTは有意差つきやすい傾向があるので.
急性腎傷害と敗血症を合併した患者における腎代替療法のタイミング(IDEAL-ICU trial)
Barbar SD, Clere-Jehl R, Bourredjem A, et al; for the IDEAL-ICU Trial Investigators and the CRICS TRIGGERSEP Network. Timing of Renal-Replacement Therapy in Patients with Acute Kidney Injury and Sepsis. N Engl J Med 2018; 379: 1431-42
Abstract
【背 景】
AKI(急性腎傷害)は,敗血症性ショック患者においてもっとも頻度が高い合併症であり,死亡の独立危険因子である.腎代替療法は重症AKIの標準治療であるが,理想的な導入時期に関しては議論が続いている.

【方 法】
本多施設共同無作為化比較試験において,リスク・障害・不全・喪失・末期腎不全(RIFLE)分類で不全の段階にある重症AKIを起こしているが,AKI 関連する生命を脅かす合併症は生じていない早期の敗血症性ショック患者を,AKIが不全の段階であることを確認してから12時間以内に腎代替療法を行う早期戦略群と,腎機能が回復しない場合48時間遅らせて腎代替療法を行う待期戦略群のいずれかに割り付けた.RIFLE分類における不全の段階は,血清クレアチニン値がベースライン値の3倍(または4mg/dL以上で0.5 mg/dL以上の急激な上昇を伴う),24 時間以上にわたって尿量が0.3mL/kg/hr未満,または12時間以上の無尿と定義した.主要評価項目は90日死亡率とした.

【結 果】
事前に規定された2回の中間解析後に,試験は無益性のため早期に中止された.488例を無作為化し,患者背景は両群間で有意な差はみられなかった.90日の追跡調査データを入手しえた477例のうち,早期戦略群の58%(138/239)と待期戦略群の54%(128/238)が死亡した(p=0.38).待期戦略群の38%(93例)は腎代替療法を受けなかった.待期戦略群の17%(41例)が緊急での腎代替療法導入基準を満たしていた.

【結 論】
重症AKIを起こした敗血症性ショック患者において,腎代替療法導入に関して早期戦略に割り付けられた患者と待期戦略に割り付けられた患者とのあいだで90日全死亡率に有意差は認められなかった.

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by DrMagicianEARL | 2018-10-12 17:05 | 敗血症性AKI | Comments(0)
■現在,敗血症性ショックにおける昇圧薬としてはノルアドレナリン(ノルエピネフリン)が第一選択であり,cold shockでなければバソプレシン追加が考慮されうる(もっとも本邦ではステロイドの方が好まれ,バソプレシンは四肢末梢虚血の経験が原因で敬遠されがちではある).しかし,ノルアドレナリンはドパミンほどではないものの炎症増加作用を有するカテコラミンであり,バソプレシンの方が24時間後のサイトカイン濃度が低かったとする394例の研究がある(Am J Respir Crit Care Med 2013;188:356-64)

■死亡率評価では,現時点ではどちらが予後良好という明確なものはなく,7報RCT(2323例)メタ解析では死亡リスクのみならず心拍数,平均動脈圧,心係数,全身血管抵抗係数,DO2,VO2に有意差はみられていない(Mil Med Res 2014; 1: 6)

■敗血症性ショックに対するノルアドレナリンとバソプレシンVASST studyの二次解析においては,ステロイド非使用下ではノルアドレナリンの方が予後良好だが,ステロイド使用下ではバソプレシンの方が予後良好という結果が得られおり(Crit Care Med 2009; 37: 811-8),他にもステロイドとバソプレシンの併用が予後良好に関連したとする報告(Intensive Care Med 2011; 37: 1432-7)はあるが,近年Gordonらが報告した二重盲検RCT(61例のpilot study)では,バソプレシンに対するステロイド併用はバソプレシンの投与量・投与期間を減少させるものの,死亡率や臓器不全については有意差がみられなかった(Crit Care Med 2014;42:1325-33)

■今回紹介するVANISH trialは,敗血症性ショックに対するノルエピネフリンvsバソプレシン,およびステロイド併用有無での腎不全を同時に評価した2x2機能RCTであり,前述のpilot studyを報告したGordonらが検討している.今回はステロイドに関しては報告はなく,結果は,バソプレシンの方がやや好ましい傾向がみられるも有意差はなし,腎代替療法導入はバソプレシンの方が有意に少ないという結果であった.
敗血症性ショック患者の腎不全における早期のバソプレシンvsノルエピネフリン:VANISH trial
Gordon AC, Mason AJ, Thirunavukkarasu N, et al; VANISH Investigators. Effect of Early Vasopressin vs Norepinephrine on Kidney Failure in Patients With Septic Shock: The VANISH Randomized Clinical Trial. JAMA 2016 Aug 2; 316(5): 509-18
PMID:27483065

Abstract
【背 景】
ノルエピネフリンは敗血症性ショックにおいて,循環作動薬の第一選択として近年推奨されているが,早期のバソプレシン使用が代替として提案されている.

【目 的】
敗血症性ショック患者の腎不全における早期のバソプレシンとノルエピネフリンの効果を比較する.

【方 法】
本研究は,2013年2月から2015年5月に英国の18の成人ICUで行われた,ショック発症後最大6時間以内に輸液蘇生を行っても循環作動薬を要する敗血症性ショックの成人患者を登録した,二重盲検無作為化機能(2x2)試験である.患者は無作為に,バソプレシン(0.06 U/分まで漸増)とヒドロコルチゾン併用群(101例),バソプレシンとプラセボ併用群(104例),ノルエピネフリンとヒドロコルチゾン併用群(101例),ノルエピネフリンとプラセボ併用群(103例)に割り付けられた.主要評価項目は,(1)腎不全に全く進展しなかった患者の比率,(2)腎不全を発症または死亡した患者の生存中に腎不全のなかった日数の中央値として計測された,無作為化から28日までの期間で腎不全がない日数とした.腎代替療法,死亡,重篤な有害事象の頻度を副次評価項目とした.

【結 果】
計409例の患者(年齢中央値66歳,男性58.2%)が本研究に登録され,試験薬の投与時間中央値はショック診断後から3.5時間であった.腎不全に全く進展しなかった生存者数は,バソプレシン投与群で165例中94例(57.0%),ノルエピネフリン群で157例中93例(59.2%)であった(絶対差 -2.3% [95%CI -13.0% to 8.5%]).腎不全を発症または死亡した患者の腎不全のない日数の中央値は,バソプレシン投与群で9日間(四分位範囲[IQR], 1 to -25),ノルエピネフリン投与群で13日間(IQR 1 to -25)であった(絶対差 -4日 [95%CI -11 to 5]).バソプレシン投与群はノルエピネフリン投与群に比して腎代替療法の施行が少なかった(25.4% vs 35.3%; 絶対差 -9.9% [95%CI -19.3% to -0.6%]).死亡率は両群間で有意差は見られなかった.バソプレシン投与群では205例中22例の患者(10.7%),エピネフリン投与群では204例中17例の患者(8.3%)に重篤な有害事象があった(絶対差 2.5% [95%CI -3.3% to 8.2%]).

【結 論】
敗血症性ショックの成人において,バソプレシンの早期使用はノルエピネフリンと比して腎不全のない日数を改善しなかった.これらの知見は,本シチュエーションにおける初期治療として,ノルエピネフリンの代替としてのバソプレシンの使用を支持するものではないが,信頼区間は潜在的にバソプレシンの臨床的に重要な益を含んでおり,さらなる評価のため,大規模試験が必要である可能性がある.

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by DrMagicianEARL | 2016-08-17 12:12 | 敗血症性AKI | Comments(0)
■ANZICSが行っていたICU患者での輸液における生食vs混合晶質液を比較した多施設大規模二重盲検RCTであるSPLIT studyが報告されました.なぜこんなに広い患者集団を対象にしてしまったのかプロトコル見たときから疑問で,こんな軽症群を大量に含むデザインでは有意差も何もつかないだろうと予想してましたが(輸液量も少ないですし),案の定結果はドローでした.終わってみれば院内死亡率は10%を切る患者集団.晶質液の種類を変えたくらいでアウトカムが変わるとはとうてい思えません.pilot studyだからだそうですが,最近サンプル数を集めるためにこんなデザインのRCT多いですね・・・.なんかもったいないです.今後8300例を登録するPLUS studyが予定されているのでそれに期待しましょう.

■もともとクロライド(Cl)を多く含む輸液製剤は,クロライドにより糸球体細動脈を収縮させるためGFRが落ちることが知られており,これまでの複数の観察研究でクロライド負荷が死亡リスクを増加させるとの結果が出ていました.今回の結果は,クロライドをより多く含む生理食塩水とその他の晶質液を比較しても差はなかったということですが,より重症例に絞った患者で検討されないと安全とは言えないと思われます.
ICU患者の急性腎傷害における混合晶質液と生理食塩水の効果:SPLIT無作為化臨床試験
Young P, Bailey M, Beasley R, ; SPLIT Investigators and the ANZICS CTG. Effect of a Buffered Crystalloid Solution vs Saline on Acute Kidney Injury Among Patients in the Intensive Care Unit: The SPLIT Randomized Clinical Trial. JAMA 2015 Oct.7 [Epub ahead of print]
PMID:26444692

Abstract
【背 景】
生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)は静脈内投与される輸液において最もよく使用されているが,その使用は急性腎傷害(AKI)と関連し,死亡率を増加させる可能性がある.

【目 的】
集中治療室(ICU)に入室した患者において,生理食塩水と比較した混合晶質液の腎合併症への効果を検討する.

【方 法】
本試験は2014年4月から2014年10月までニュージーランドの4つのICUで行われた二重盲検,クラスター無作為化,二重クロスオーバー試験である.3つのICUは内科外科混合ICUであり,1つのICUは胸部心臓血管外科患者が多かった.晶質液輸液療法を必要としてICUに入室した全患者を登録した.腎代替療法(RRT)を要するAKIを発症していた患者は除外とした.全2278例の患者が登録され,混合晶質液投与を受けた1162例中1152例(99.1%)と生理食塩水投与を受けた1116例中1110例の患者(99.5%)が解析された.参加したICUはマスクされた研究試液として,生理食塩水か混合晶質液に7週間の治療ブロックごとに割り付けられた.2つのICUは1つの輸液の使用を開始し,他の2つのICUでは他の輸液の使用を開始した.各ICUは研究の28週間にわたって2回輸液製剤を使用するように2つのクロスオーバーを行った.主要評価呼応目はAKI(血清クレアチニンレベルが少なくとも2倍,または血清クレアチニンレベルが0.5mg/dL以上の上昇を伴いかつ3.96mg/dL以上と定義)の患者の比率とした.副次評価項目はRRT使用発生率と院内死亡とした.

【結 果】
混合晶質液群では1067例中102例(9.6%)が登録から90日以内にAKIを発症し,生理食塩水群では1025例中94例(9.2%)であった(絶対差 0.4% [95%CI -2.1% to 2.9%]; RR 1.04 [95%CI 0.80 to 1.36]; p =0 .77).混合晶質液群では,RRTは1152例中38例(3.3%)で使用され,生理食塩水群では1110例中38例(3.4%)であった(絶対差 -0.1% [95%CI -1.6% to 1.4%]; RR 0.96 [95%CI 0.62 to 1.50]; p =0.91).全体においては,混合晶質液群では1152例中87例(7.6%),生理食塩水群では1110例中95例(8.6%)が院内で死亡した(絶対差 -1.0% [95%CI -3.3% to 1.2%]; RR 0.88 [95%CI 0.67 to 1.17]; p=0.40).

【結 論】
ICUにおいて晶質液の輸液療法を受ける患者では,生理食塩水に比して混合晶質液の塩生はAKIリスクを減少させなかった.より高いリスクを有する集団における効果の評価や死亡率といった臨床アウトカム評価のためにさらなる大規模無作為化臨床試験が必要である.

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by DrMagicianEARL | 2015-10-13 18:23 | 敗血症性AKI | Comments(0)
■JSEPTIC-CTGからの報告です.重症敗血症患者ではBUN,Cr上昇がしばしばみられ,AKI(急性腎傷害)としてCRRTを行うこともよくありますが,AKI全体で見るとseptic AKIは比較的予後良好である,という結論になるでしょうか.
持続的腎代替療法による治療を受けた急性腎傷害患者において,敗血症は死亡の危険因子とはならない可能性がある
Nagata I, Uchino S, Tokuhira N, et al; for JSEPTIC (Japanese Society for Physicians Trainees in Intensive Care) Clinical Trial Group.Sepsis may not be a risk factor for mortality in patients with acute kidney injury treated with continuous renal replacement therapy. J Crit Care. 2015 Jun 26 [Epub ahead of print]
PMID:26220246

Abstract
【目 的】
本研究の目的は,持続的腎代替療法(CRRT)を受けた非敗血症性急性腎傷害(AKI)と比較して,CRRTを受けた敗血症性AKIの重症患者の臨床的特徴,経過,予後を検討することである.

【方 法】
本研究は2010年の日本の14のICUにおいて行われた多施設共同後ろ向き観察研究である.CRRTを受けた重症AKIの全成人患者が登録され(n=343),患者背景,CRRT導入時の状態,CRRT設定,予後に関する情報を収集した.患者はAKIの要因によって,敗血症性AKI群と非敗血症性AKI群に分類された.

【結 果】
症例の約半数(48.7%)がAKIの要因としての敗血症/敗血症性ショックであり,CRRTを受けた敗血症性AKIの患者は非敗血症性AKI患者に比してより深刻な状態であった.しかしながら,CRRTを受けた敗血症性および非敗血症性のAKIの患者間でICU死亡率(48.5% vs 43.8%; p=0.44),院内死亡率(61.1% vs 56.3%; p=0.42)に有意差は見られなかった.さらに,多変量回帰解析では,敗血症は低い院内死亡と関連していた(OR 0.378; p=0.012).

【結 論】
CRRTを必要とするのに十分な状態のAKI患者において,敗血症は死亡の危険因子とはならない可能性がある.

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by DrMagicianEARL | 2015-08-10 16:18 | 敗血症性AKI | Comments(0)

by DrMagicianEARL