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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

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■インフルエンザに対して麻黄湯を使用されている先生はけっこういらっしゃると思います(私も使うことがあります).実際にはインフルエンザに保険適用があるのは麻黄湯と柴胡桂枝湯,竹茹湯胆湯の3つで,病態や進行状況に応じて使い分けがなされます.麻黄湯には,ウイルス感染に対する濃度依存性の抑制効果として桂皮が,サイトカインの産生抑制の効果として桂皮と麻黄が,免疫賦活作用として杏仁と甘草が含まれており,特にインフルエンザ急性期の使用に向いているとされています.具体的には,「熱はあるが比較的元気で汗がまだ出ておらず水分が摂取可能な状態」に適用されます.逆に「気持ち悪く水分摂取ができない状態」では使用すべきではありません.また,解熱薬の併用は逆効果とされています.

■麻黄湯の副作用として特に注意すべきはエフェドリンを含有していることです.このため,心血管系リスクを有する患者や甲状腺機能亢進症患者には使用すべきではありません.また,モノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤,甲状腺製剤,キサンチン系製剤などとの併用も避ける必要があります.

■臨床エビデンスとしては,これまで小規模のRCTが2報(Phytomedicine 2007; 14: 96-101,J Infect Chemother 2012; 18: 534-43)本邦からpublishされています.今回紹介するのは,インフルエンザに対する麻黄湯のRCTおよび観察研究のシステマティックレビューです.結果は,エビデンスの質は低いものの,麻黄湯を使用することで発熱期間は有意に短縮する,一方で有症状期間やウイルス排出期間はノイラミニダーゼ阻害薬とは差がない,という結果でした.これに加えてノイラミニダーゼ阻害薬よりも安いことも考慮すると麻黄湯の出番はやはり出てくるとは思います.とはいえやはりRCTがもう少し欲しいところですね.
インフルエンザ症状緩和における日本の漢方薬麻黄湯の使用:システマティックレビューとメタ解析
Yoshino T, Arita R, Horiba Y, et al. The use of maoto(Ma-Huang-Tang), a traditional Japanese Kampo medicine, to alleviate flu symptoms: a systematic review and meta-analysis. BMC Complement Altern Med 2019; 19: 68
PMID: 30885188

Abstract
【背 景】
インフルエンザは世界中で一般的なウイルス感染症である.麻黄湯は古代中国で作られ,インフルエンザの症状を家緩和するために使用されている.現時点で,インフルエンザの症状を緩和するための麻黄湯の有効性と安全性を評価したメタ解析はない.

【方 法】
本研究において,我々は2017年10月以前に出版された研究をMEDLINE/PubMed,Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL),EMBASE,日本のデータベース(医中誌),2つの中国のデータベース(China National Knowledge Infrastructure and VIP),2つの勧告のデータベース(Korean Medical database and Korean Association of Medical Journal Editors)で検索を行った.麻黄湯とノイラミニダーゼ阻害薬(NAIs)の併用 vs NAIs単独,あるいは麻黄湯単独 vs NSIs単独を比較した臨床研究を本解析に登録した.主要評価項目(有効性)は投薬開始からインフルエンザ症状(発熱,頭痛,倦怠感,筋肉痛,悪寒)の改善までの期間とウイルス検出期間とした.副次評価項目(安全性)は(1)悪心,異常行動,症状による治療中断といった,副作用または有害事象,(2)有病率(インフルエンザ感染による合併症)または死亡率,(3)あらゆる理由での入院,とした.

【結 果】
2つのRCT(n=60)を含む12報の関連研究が確認された.発熱期間では,1つのRCT(p<0.05,中央値差 -6時間)と4つの非RCT研究(p=0.003, 加重平均差 -5.34時間)において,麻黄湯とNAIsの併用はNSIs単独よりも優れていた.有症状期間やウイルス排出期間は麻黄湯とNAIsで差はなかった.麻黄湯とNAIsに関連した重篤な副作用や有害事象はみられなかった.

【結 論】
サンプル数が少なく,解析された研究ではバイアスリスクが高いため,最終的な結論に達することはできなかったが,麻黄湯単独,またはNAIsと併用​​すると,発熱期間が短縮する可能性がある.麻黄湯の有効性と安全性を判断するにはより多くのRCTが必要である.

by DrMagicianEARL | 2019-03-25 16:08 | 感染症
■特発性間質性肺炎,特に特発性肺線維症の急性増悪は非常に予後が悪く,挿管にまで至ったケースでは私は救命できたことがありません(ECMOまではやりませんでしたが).ERに搬送された時は既にかなり呼吸状態が悪く,ステロイドパルスや免疫抑制剤の使用もむなしく,呼吸不全の進行を止められなかったことが何度もあります.となれば早期の受診と治療が要となりますが,有効な治療方法が乏しいのが現状です.

■そのような中,期待されているのがDIC治療に使われる遺伝子組換えトロンボモデュリン(rhTM)と敗血症治療に使われるエンドトキシン吸着カラムのPMX-DHPです.いずれも観察研究において死亡率を大きく改善する結果が報告されており,rhTMは本邦で多施設RCTが進行中です.ただ,このrhTMとPMX-DHPといえども,これまでの研究内容を見てみると,挿管人工呼吸管理に至ってしまっている患者にはほぼ無効です.ですので,使用するとすれば救急受診する前,感冒様症状等の軽症の時点で受診し,他疾患を除外した上で早期に使用しなければ無駄になってしまうことになります.なので,重症化した後に対応する救急・集中治療医よりも早期の呼吸器内科の腕にかかっている治療とも言えます.

■今回紹介する論文は大阪間質性肺炎急性増悪研究グループによる前向き多施設コホート研究です.結果はこれまでの観察研究と同様の結果で,effect sizeも同程度といったところです.
特発性間質性肺炎に対する遺伝子組換えトロンボモデュリン
Arai T, Kida H, Ogata Y, et al; Osaka Acute Exacerbation of Interstitial Pneumonia Research Group. Recombinant thrombomodulin for acute exacerbation in idiopathic interstitial pneumonias. Respirology 2019 Mar 5 [Epub ahead of print]PMID: 30835911

Abstract
【背 景】
特発性肺線維症(IIP)やその他の特発性間質性肺炎(IIP)の急性増悪(AE)はコルチコステロイドや免疫抑制剤による標準治療を行っても予後は不良である.

【目 的】
本研究の目的はAE-IIPに対する遺伝子組換えヒト可溶性トロンボモデュリン(rhTM)の有効性と安全性を評価することである.

【方 法】
本前向きシングルアーム・オープンラベル多施設コホート研究において,2011年から2013年までの標準治療を受けたAE-IIP患者61例(対照群)と2014年から2016年までの標準治療とrhTM(380U/kg/dayを6日間)による治療を受けたAE-IIP患者39例を前向きに登録した(rhTM群).治療比較における潜在的交絡を減じるため,90日生存において調整された死亡率の解析を,治療の重みづけ確率の逆数を使用したCox比例ハザード回帰モデルで行った.重みづけは,潜在的交絡を含む多変量ロジスティック回帰解析を用いた傾向スコアで行った.

【結 果】
rhTMで治療を受けたまたは受けていないAE-IIP患者の90日生存率はそれぞれ66.7%(26/39)と47.5%(29/61)であった.不均衡を調整すると,rhTM治療は死亡減少に有意に関連していた(調整HR 0.453; 95%CI 0.237-0.864; p=0.0163).有害事象の頻度はrhTM群で17.9%(7/39),対照群で19.7%(12/61)であり,両群で同等であった(p=1.0).rhTM群において2例の出血関連有害事象が発生した.

【結 論】
AE-IIPのrhTM治療における安全性と有効性が確認された.最終的な結論を引き出すためには,今後無作為化比較試験が必要である.

by DrMagicianEARL | 2019-03-18 15:38 | 間質性肺炎