■ガイドラインではどうだろうか.WHOは,エアロゾル発生手技(AGP)リストにおいて,HFNOを削除,NIVはAGPリストに残っている.米国CDCは,NIVをAGPとして,HFNOを潜在的AGPとしてリストアップしている.英国健康保健庁は,直近(2022年)の迅速レビューで,HFNOもNIVもリストから除外することを検討すべきであるとした後,HFNOとNIVを現行のガイドラインから除外している.
■COVID-19におけるHFNOおよびNIVに関するnarrative reviewが複数あるが,メタ解析による定量評価を行ったシステマティックレビューはなかった.今回紹介する論文は,HFNOとNIVがエアロゾル産生を増加させるかを検討した研究のシステマティックレビューである.
■HFNOについては5件の観察研究における152例の患者からの合計212の空気サンプルのメタ解析が行われ,サンプルレベル(OR 0.73; 95%CI 0.15-3.55; P=0.58),患者レベル(OR 0.80; 95%CI 0.14-4.59; P=0.71)のいずれにおいてもHFNOと病原体を含む空気サンプルとの関連は示されなかった.環境汚染の可能性を調査した研究4件のプール感度分析では,HFNOと病原体を含む環境表面サンプルとの関連は示されなかった.健常ボランティアにおけるエアロゾル検出の実験的研究14件のうち9件では,HFNOと対照群とのエアロゾル濃度に統計的に有意な差は認められず,残りの研究のうち,HFNOによるエアロゾル増加の効果量は非常に小さかった.例えば,HFNOに関連したエアロゾル検出が最大の研究では2.3倍に増加しているが,これはHFNOを用いない咳嗽のみによって誘発された際の数値である「371倍の増加」と比較すると非常に小さいものであった.


非侵襲的呼吸管理によるエアロゾル発生:システマティックレビューとメタ解析
Generation of Aerosols by Noninvasive Respiratory Support Modalities: A Systematic Review and Meta-Analysis. JAMA Netw Open 2023; 6: e2337258
PMID: 37819660
https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2023.37258
Abstract
【背景】感染制御ガイドラインでは,これまで高流量経鼻酸素投与および非侵襲的換気を特殊な感染予防・制御対策を必要とするエアロゾル発生手技として分類してきた.
【目的】高流量経鼻酸素および非侵襲的換気が病原体を含むエアロゾルおよびエアロゾル発生に関連するという現在のエビデンスを評価する.
【データ】2023年3月15日までのEMBASEおよびPubMed/MEDLINE,ならびに2023年8月1日までのCINAHLおよびClinicalTrials.govの系統的検索を実施した.
【研究の選択】高流量鼻経鼻酸素または非侵襲的換気でサポートされている患者または健常ボランティアを対象とした観察研究および(準)実験研究を抽出した.
【データ抽出と統合】3人の査読者が独立した研究スクリーニング,バイアスリスクの評価,およびデータ抽出を行った.観察研究のデータは,標本レベルと患者レベルの両方でランダム効果モデルを用いてプールされた.モデル選択の影響を評価するために感度分析を行った.
【主要評価項目と評価基準】主要評価項目は,空気サンプル中の病原体の検出とエアロゾル粒子の量であった.
【結果】24件の研究が含まれ,そのうち12件は患者,15件は健康なボランティアを対象としたものであった.COVID-19患者152例を対象とした高流量経鼻酸素投与時の合計212検体におけるSARS-CoV-2検出に関する5件の観察研究をメタ解析のためにプールした.高流量経鼻酸素と病原体を含むエアロゾルとの関連は認められなかった(陽性サンプルのオッズ比は,サンプルレベルでは0.73[95%CI 0.15-3.55],患者レベルでは0.80[95%CI 0.14-4.59]).2件の研究では,非侵襲的換気中のSARS-CoV-2検出を評価した(72人の患者から84の空気サンプル).非侵襲的換気と病原体を含むエアロゾルとの関連は認められなかった(陽性サンプルのオッズ比は,サンプルレベルでは0.38[95%CI 0.03-4.63],患者レベルでは0.43[95%CI 0.01-27.12]).健常ボランティアを対象とした研究ではいずれも,高流量経鼻酸素または非侵襲的換気によるエアロゾル粒子産生の臨床的意義のある増加を報告していない.
【結論と関連性】このシステマティックレビューおよびメタ解析では,高流量経鼻酸素または非侵襲的換気と空気中病原体検出またはエアロゾル生成の増加との関連は認められなかった.これらの知見は,高流量経鼻酸素または非侵襲的換気をエアロゾル発生手技として分類することや,これらの手技を受ける患者に対する感染予防および制御の実践を区別することに反対することを主張するものである.