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EARLの医学ノート

drmagician.exblog.jp

敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.医療におけるAIについても

※2023/8/24:作成
※2023/9/8:更新

■2023年8月24日午後1時から福島第一原発の処理水の海洋放出が開始となった.東日本大震災直後に原発関連のデマがネットや報道にまであふれていたが,それの再来ともいえる状況になっている.もっとも,SNSで声高に反対を訴えているアカウントの主張は非科学的である以前にそもそも政府の公開資料等を全く見ていないものばかりである.定量評価もしないどころかデータも見ずに感情論のみで風評をまき散らすなど言語道断である.

■以下に,今回の処理水放出に関連する資料を以下にまとめた.この通り,処理水は安全性がきっちりと確認されたものであり,福島第一原発廃炉にむけた重要な施策である.この資料は新しい情報が入り次第随時更新していく.

1.ALPS処理水の海洋放出開始以降の情報

■(1)2023年8月24日処理水放出当日にトリチウム濃度の最終的な測定を実施し,放出基準の1リットル当たり1500Bqを大きく下回る最大63bqベクレル.沖合約1キロ先まで海底トンネルを通って放出.今後1日あたりおよそ460tずつ,17日間程をかけて7,800tのALPS処理水を海洋放出する予定.モニタリングを行い,異常値が出た場合は放出を中止する予定.
https://www.sankei.com/article/20230824-WPQSFEVKO5OAHAWRKGE7M7FARU/
https://www.tepco.co.jp/decommission/progress/watertreatment/oceanrelease/#process

■(2)国際原子力機関IAEA の独立したオンサイト分析により、福島第一原発から排出される希釈水(ALPS処理水)のトリチウム濃度は、1リットルあたり1,500ベクレルの運用限界をはるかに下回っていることを確認
https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/iaea-director-general-statement-on-discharge-of-fukushima-daiichi-alps-treated-water-0

■(3)東京電力ホールディングス処理水ポータルサイト(ALPS処理水等の状況,測定・確認用設備の状況,希釈・放水設備等の状況,海域モニタリングの結果)
https://www.tepco.co.jp/decommission/progress/watertreatment/

■(4)IAEAが処理水の排出に関する日本からのライブデータを提供するウェブページを立ち上げ.提供されるデータには,水流量,放射線モニタリングデータ,希釈後のトリチウムの濃度が含まれる.
https://www.iaea.org/topics/response/fukushima-daiichi-nuclear-accident/fukushima-daiichi-alps-treated-water-discharge/tepco-data
【資料まとめ】福島第一原発のALPS処理水放出の安全性について(9/8情報追加)_e0255123_09592389.png


■(5)福島第一原発港湾口放射線モニター(10分ごと更新).セシウム以外の各種については速報値のため全βでモニタリング
http://www.tepco.co.jp/decommission/data/monitoring/seawater/index-j.html

■(6)環境省によるALPS処理水海域モニタリング速報値.トリチウム以外の核種については速報値のためγ線モニタリング
https://www.env.go.jp/content/000155509.pdf

【9/8追加】(7)水産庁による福島第一原発沖合の水産物トリチウムモニタリング
https://www.jfa.maff.go.jp/j/housyanou/kekka.html2.ALPS処理水についての情報

■(1)海洋放出されるのは,汚染水ではなく安全性の確認されたALPS処理水である.ALPS処理水はトリチウム以外の放射性物質も環境放出の際の規制基準を満たすまで繰り返し処理している.トリチウムは自然界でも生成されており,発する放射線は紙1枚で防げる程度である.また,生物濃縮も確認されていない(有機トリチウムについては本ブログ記事2-(13)参照).
https://www.env.go.jp/chemi/rhm/r3kisoshiryo/r3kiso-06-03-05.html
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/hairo_osensui/alpsqa.html
【資料まとめ】福島第一原発のALPS処理水放出の安全性について(9/8情報追加)_e0255123_15283856.png

■(2)WHOのトリチウムの飲料水基準は2L/日を一年間飲み続けて0.1mSv/年の線量となるように計算されている
https://shorisui-monitoring.env.go.jp/pdf/tritium-who.pdf
【資料まとめ】福島第一原発のALPS処理水放出の安全性について(9/8情報追加)_e0255123_15332201.png

■(3)ALPS処理水を海洋放出する際はそのさらに1/7未満になるよう海水を加えて調整する
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/hairo_osensui/shirou_alps/no1/
【資料まとめ】福島第一原発のALPS処理水放出の安全性について(9/8情報追加)_e0255123_15333899.png

■(4)2mSv/年の放射線被曝で遺伝子が受ける損傷の頻度は日常の紫外線等による損傷の頻度の100万分の1以下.トリチウムから出る放射線は弱く,また体内に取り込んだとしても体外へ排出されるため,体内に蓄積されない
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/osensuitaisaku03.html

■(5)スクリーニングされた69核種の内訳は以下のとおり
・トリチウム
・半減期から事故後約12 年経っても存在しうる核種のうち、水への溶け方等も考慮して選定され、告示濃度比総和1未満の対象であるもの:29核種
※ この測定対象核種の選定については、原子力規制委員会から認可を得るとともに、 IAEA から国際安全基準に適合したものとの評価を得ている.これら以外の核種については,放射線の減少期間の短いことから測定する必要がない.
・汚染水中にも有意に存在する可能性は無いが自主的に測定し,検出限界未満であることを確認するもの:39核種
なお,最初に放出予定のタンクの水の放射線影響は0.28であり規制基準値の1を大幅に下回っており,これが放出時にはさらに大幅に希釈される
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/574280.pdf
【資料まとめ】福島第一原発のALPS処理水放出の安全性について(9/8情報追加)_e0255123_15420913.png

■(6)トリチウム以外の放射性物質も基準以下になるまで浄化処理が行われており,2020年の試験でトリチウムを除く核種の告示濃度比総和が1未満に低減できることが確認されている(除去対象核種(62種)+炭素14の告示濃度比総和:処理前2,406→処理後0.35)
https://fukushima-updates.reconstruction.go.jp/faq/fk_270.html
【資料まとめ】福島第一原発のALPS処理水放出の安全性について(9/8情報追加)_e0255123_15472825.png

■(7)ALPS処理水中にCs(セシウム)-137やSr(ストロンチウム)-90が含まれているが,これについても考慮されている.原子力発電所からの排水を人が毎日経口摂取したと仮定した場合の内部被ばく線量(mSv)を告示濃度限度比で評価し,複数の核種が存在する場合はその和で評価する.告示濃度限度は,人が通常1日に飲む量の水を1年間飲み続けた場合に1mSvとなる当該核種の放射性物質の濃度である.
なお,核種ごとの排水の運用目標として,Cs-134,Cs-137は周辺河川の汚染状況も参考とし,1Bq/L未満,Sr-90は分析に時間を要するため,基準を全βで5Bq/L未満とし,10日に1回の頻度で1Bq/L未満としている.例えばCs-137,Sr-90のそれぞれの測定濃度は0.47Bq/L,0.41Bq/Lであり,ここから100倍以上の希釈を受ける.食品基準が100Bq/kgであることから,生態系での濃縮は無視できるレベルになる.また,「半減期の関係で汚染水中にも有意に存在する可能性は無いが自主的に測定し,検出限界未満であることを確認するもの」として39核種も計測しているがすべて検出限界値未満であった.
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/takakusyu/pdf/002_05_00.pdf?ssp=1&setlang=ja-JP&safesearch=off
https://www.tepco.co.jp/decommission/data/analysis/pdf_csv/2023/2q/measurement_confirmation_230622-j.pdf

■(8)ALPS処理水の放出に関するIAEA事務局長の声明では,処理水放出に対するアプローチと活動は関連する国際安全基準と一致しており,人々と環境への放射線影響は無視できる程度であると結論付けている.
https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/iaea-director-general-statement-on-discharge-of-fukushima-daiichi-alps-treated-water

■(9)福島第一原発のタンク内に保管されている水のうち,7割を占める「処理途上水」についても,ALPSで二次処理を行うことで安全に関する規制基準値を確実に下回るまで浄化してから海洋放出される.
※処理途上水:浄化処理した水のうち、安全に関する規制基準を満たしていない水(トリチウムを除く告示濃度比総和1以上のもの)
https://www.tepco.co.jp/decommission/progress/watertreatment/alps01/

■(10)福島第一原発の汚染水は雨水や地下水が混ざると増え続ける.このため,汚染源の手前で地下水を抜き,地下を全長1.5kmの壁で囲い込み,雨水が入らないよう表面を覆う対策を施すことで,かつて1日550トンペースで増加していた汚染水は1日90トンペースまで減少した.
https://www.yomiuri.co.jp/science/20230704-OYT1T50189/

■(11)中国・ロシアが主張する水蒸気放出に関しては,ALPS処理水に含まれるいくつかの核種が固まって残るため放射性廃棄物が生じる.また水蒸気放出ではモニタリングが難しくなること,費用が高いこと,処分完了までの期間が長くなることから見送られた.
http://www.tepco.co.jp/decommission/data/monitoring/seawater/index-j.html
https://www.sankei.com/article/20230820-O554B5N5INPK3FHYVFKVOJBBM4/
https://www.sankei.com/article/20230824-5EIR4UP6GBME7M24NXMXOXSCCU/

■(12)海洋生物において濃縮が起きないことは飼育試験により科学的に立証済み
https://www.tepco.co.jp/decommission/progress/watertreatment/breedingtest/

【9/8更新】(13)カナダの核廃棄物管理エリアからの長期にわたる流出があったパーチ湖の観測において,生物への有機トリチウム濃縮は起きていない.非有機トリチウムは化学反応性が低く,生体内で有機トリチウムに変換されにくく,湖水中の非有機トリチウム濃度が高くても生体内有機トリチウム濃度はむしろ低下していたことが確認されている.有機トリチウムの蓄積に関しては世界中で使用されている放射線医薬品(トリチウムが放射性同位体でラベルとして使用される)に伴うもので環境中で分解されにくい高分子化合物でもあり,蓄積が生じる可能性があるとされているが,これはALPS処理水にあてはまるものではない.
福島県沖で捕獲された魚介からも有機結合型トリチウムは検出されておらず,食物連鎖による生物濃縮の根拠はない.https://www-ns.iaea.org/downloads/rw/projects/emras/2nd-combined-meeting/scenario-twg-perch-lake-final.pdf
http://www.cnic.jp/wp/wp-content/uploads/2018/08/FUKUSHIMA-tritiated-water-releases-final.pdf
https://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/smp/2018/images2/fish03_180618-j.pdf
https://link.springer.com/article/10.1007/s10872-023-00697-2

■(14)トリチウムを取り除く技術自体は既に複数開発されているが,実用化ベースにはまだ至っていない(実際に東京電力ホールディングスでは,実用化レベルのトリチウム除去技術を現在進行形で募集中である).
https://www.tepco.co.jp/decommission/progress/watertreatment/tritium/?ssp=1&setlang=ja-JP&safesearch=off

■(15)福島第一原発敷地内にはALPS処理水を貯蔵している巨大なタンクが増え続けており,タンクの数は既に1000を超えている.老朽化の問題やスペースの問題もある他,これから本格化する廃炉作業に伴い,敷地内スペースがさらに必要となるため,長期的な貯蔵は困難である.
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/hairo_osensui/shirou_alps/no3/

3.処理水放出前の海産生物について

【9/8追加】(1)2023年2月に福島県沖で水揚げされたスズキが検査基準を上回った報道を今になって処理水放出反対派があたかも処理水放出後に発生したかのようなデマを流しているが,当然ながら放出の半年前であり処理水とは無関係である.もっともこのスズキは自主検査の50Bq/kgを上回った85.5Bq/kgであり,国の基準の100Bq/kgを下回っているため問題ない.なお,欧米の基準値はこの数倍~10倍の高さであり,いかに日本の安全基準が厳しいかが分かる.
https://www.huffingtonpost.jp/entry/factcheck-fukushimasuzuki_jp_64f7b3dae4b039d8665217d2

【9/8追加】(2)2023年5月に捕獲されたクロソイから18000Bq/kgの放射性セシウムが検出された.このクロソイは沖合ではなく,東京電力福島第1原発の港湾内(1~4号機に近い波除堤の内側エリア)で捕獲された.
廃炉作業中の第1原発に雨が降ると,雨水が放射性物質に汚染された地表やがれきをつたって「K排水路」に集められ,このエリアに放出される.東電は,放出される雨水について,国の基準値(セシウム134は60Bq/L,セシウム137は90Bq/L)を下回っていることを確認しているが,他の排水路に比べると放射性物質濃度の高い水が内側エリアに放出されている.そのため,このエリアの海底の土も高いところでは,2023年1月末時点でセシウム137は13万Bq/kg超,セシウム134は3400Bq/kg超となっている.基準値超のクロソイが捕獲された理由について,K排水路からの排水やこのエリアの海底の土が要因の一つとされる.実際,4月にも同じ場所で捕獲したアイナメから1200Bqのセシウムが検出されている.
なお,このエリアについては,金網が設置されており,このエリアの魚が外洋に逃げないよう隔離されている.また,このクロソイの研究では魚の頭部にある「耳石」と呼ばれる器官に含まれる元素が代謝されずに残ることに注目しており,食品として耳石を口にすることはない.
https://mainichi.jp/articles/20230628/k00/00m/040/162000c
https://mainichi.jp/articles/20220429/k00/00m/040/060000c
https://nordot.app/1038408973057541014

【9/8追加】福島大学の研究で,東日本北太平洋沿岸海域において,海水中のトリチウム濃度は福島第一原発事故の影響は見られなかった.また,海産生物に福島第一原発事故後の有機トリチウムの蓄積はみられなかった
https://link.springer.com/article/10.1007/s10872-023-00697-2

4.その他

■(1)全漁連会長の浜本氏も科学的・技術的な安全性については理解が得られている.
https://www.zengyoren.or.jp/news/press_20230714/

■(2)各社の世論調査では放出賛成が多数派となっている.
日経:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA284690Y3A720C2000000/
テレビ朝日:https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000312350.html
産経:https://www.sankei.com/article/20230717-ZK64NHATWVO35KG32CITTBOHQE/
dサーベイ:https://mainichi.jp/articles/20230904/k00/00m/040/140000c
■(3)以前に,フリーライターが当時の内閣府の園田康博政務官に会見で「第一原発に立ち入れないので東電の情報を信じるしかない。飲んでも大丈夫なら実際にコップに出してみなさんに飲んでもらうのは無理か」「菅さん(菅直人元首相)もカイワレダイコンを食べた前例がある.東電が飲んでも大丈夫といっているのだから,一杯どうですか.飲んでみませんか」というフリーライターの発言に応える形で,福島第一原発にたまっている低濃度の放射能汚染水を浄化処理した水を飲んだ.その後も園田康博氏はご健在である.
https://www.asahi.com/special/10005/TKY201110310428.html
https://mainichi.jp/articles/20230902/k00/00m/030/194000c

■(4)世界各国の原発からのトリチウム排出量は福島第一原発からの処理水放出によるものに比してはるかに多い.
https://www.sankei.com/life/news/210509/lif2105090039-n1.html
【資料まとめ】福島第一原発のALPS処理水放出の安全性について(9/8情報追加)_e0255123_16115289.png

■(5)X(旧Twitter)のクラスタリング解析では,各クラスタのアカウント数は処理水放出反対クラスタが42,021,処理水に問題がなく放出すべきであるというクラスタが30,842,処理水の放出に反対するアカウントを批判するクラスタが48,854あり,放出賛成派の方が多い.放出反対派では立憲民主党,共産党,れいわ新選組を支持するアカウントがほとんどであった.処理水放出反対派が拡散した投稿うち,風評被害に関する言及は4.6%しかなく,X(旧Twitter)上での反対派は,風評被害を気にしているからではなく,イデオロギーベースであることが推察された.https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/b06a69badc65ea0451abdaa6e184b8b1ffef7bc8
【資料まとめ】福島第一原発のALPS処理水放出の安全性について(9/8情報追加)_e0255123_10110453.png

# by DrMagicianEARL | 2023-09-08 11:20 | 文献
■酸化還元感受性転写因子BTB and CNC homology 1(BACH1)は,BTBドメインとbZIPドメインをもつ転写抑制因子であり,酸化ストレスによって分解され活性が抑制されている.主な標的遺伝子はヘムオキシゲナーゼ1(HMOX1)で,BACH1はその発現を抑制する.Nuclear factor erythroid 2-Related Factor 2(NRF2:癌細胞ではNRF2シグナルが亢進し,抗酸化能が上昇することが知られている)と拮抗的に働き,酸化ストレス下ではNRF2がBACH1に置き換わって遺伝子発現を活性化する.癌細胞では酸化ストレスが低いため,BACH1が安定化し転写活性が亢進する.既知の研究では,BACH1は肺癌の転移を促進することが示されている.

■本研究では,ビタミンCやビタミンEといった抗酸化物質を投与すると,このBACH1が安定化し,肺癌細胞,腫瘍オルガノイド,移植腫瘍で血管新生関連遺伝子の発現がBACH1依存的に上昇した.BACH1の発現を上げると血管新生関連遺伝子の発現が上がり,BACH1をノックアウトするとその発現が下がったことから,BACH1は血管新生遺伝子のプロモーター領域でクロマチン修飾を直接制御していることが示された.BACH1は低酸素でも抗酸化剤でも低酸素誘導因子HIF1α依存的に発現上昇したが,HIF1α不在下でもBACH1は血管新生遺伝子を誘導できることも判明した.ヒト肺癌サンプルではBACH1発現量と血管新生遺伝子発現に相関がみられ,マウス移植腫瘍モデルで,抗酸化剤はBACH1依存的に腫瘍血管新生を増加させ,BACH1高発現は抗血管新生薬の感受性を高めた.

■では,一部の医療機関で行われている,癌患者に対する高濃度ビタミンCはどうであろうか?ビタミンCについては一般市民にもよく知られている「抗酸化作用」があるが,実は条件次第では真逆の向酸化作用に切り替わることはあまり知られていない.癌細胞においては,活性酸素種ROSの産生が増加していることに加え,鉄イオンなどの遷移金属イオンの利用可能性も高まっている.この環境下で,高濃度のビタミンCを投与すると向酸化作用が発揮される.ビタミンCは遷移金属イオンを還元し,その結果としてヒドロキシルラジカルなどのROSを生成する.このROSの急激な増加が,がん細胞の抗酸化防御機構を圧倒し,酸化ストレスを誘導する.酸化ストレスはDNAやタンパク質,細胞膜の酸化的損傷を引き起こし,癌細胞のアポトーシスを誘導する(正常細胞では遷移金属イオンが制御されており,過剰なROS生成が起きにくいため,アポトーシスは誘導されない).しかしながら,本研究のビタミンCによるBACH1を増加させる結果は,これらの利点を相殺してしまう可能性がある.また,ビタミンCはプロリン水酸化酵素を阻害することで低酸素誘導因子HIFの分解を抑制することで癌細胞増殖を抑制するとされているが,本研究結果ではHIFとは無関係にBACH1は血管新生を誘導してしまう.

■高濃度ビタミンC点滴療法はこの相殺の結果どちらに転ぶかは分からないものであり,場合によっては悪化するリスクすらある.ではRCTではどうであろうか.よく高濃度ビタミンC点滴をうたっているクリニックに掲載されている科学的根拠はどれも質が低いかN数が極めて少ない研究しか扱っていない.ハードアウトカムを検討したN数が多く質の高い研究はほとんどなく,VITALITY試験くらいである.このVITALISTY試験切除不能で未治療の転移を伴う大腸癌に対するFOLFOX+ベバシズマブに高濃度ビタミンCを上乗せするか否かを見た442例非盲検RCT(第Ⅲ相治験)であり,無増悪生存期間 (PFS)に有意差はみられなかった[PMID:35929990]
抗酸化物質がBACH1依存性の腫瘍血管新生を刺激する
Wang T, Dong Y, Huang Z, et al. Antioxidants stimulate BACH1-dependent tumor angiogenesis. J Clin Invest 2023 Aug.31
PMID: 37651203
https://doi.org/10.1172/jci169671

Abstract

【背景】肺癌の進行は血管新生に依存しており,血管新生は通常低酸素誘導性転写因子(HIF)によって調整される低酸素に対する応答である.しかし,HIF以外の転写プログラムが腫瘍血管新生を制御していることを示すエビデンスが増加してきている.

【目的】我々は,酸化還元感受性転写因子BTB and CNC homology 1(BACH1)が,広範な血管新生遺伝子の転写を制御していることをここに示す.

【結果】BACH1は活性酸素レベルを低下させることにより安定化される.その結果,肺癌細胞,腫瘍オルガノイド,および異種移植腫瘍における血管新生遺伝子発現は,正常酸素条件下でビタミンCとビタミンE,およびN-アセチルシステインの投与により,BACH1依存的に大幅に増加した.さらに,内因性のBACH1過剰発現細胞では血管新生遺伝子の発現が増加し,BACH1ノックアウト細胞では抗酸化剤の非存在下で発現が減少した.BACH1レベルはまた,HIF1aノックアウト細胞および野生型細胞の両方において,低酸素症およびプロリルヒドロキシラーゼ阻害剤投与後に上昇した.BACH1はHIF1αの転写標的であるが,血管新生遺伝子発現を刺激するBACH1の能力はHIF1aとは無関係であることがわかった.抗酸化剤はBACH1依存的にin vivo で腫瘍血管を増加させ,BACH1を過剰発現させると腫瘍は抗血管新生療法に感受性を示した.肺癌患者の腫瘍切片におけるBACH1の発現は,血管新生遺伝子およびタンパク質の発現と相関していた.

【結論】我々は,BACH1が酸素および酸化還元に敏感な血管新生因子であると結論づけた.

# by DrMagicianEARL | 2023-09-05 14:58 | 文献
■高齢ドライバーの交通事故対策は急務の課題である.加齢により,安全運転に関連する視覚,聴覚,振動検知,注意力,処理・反応速度に関する知覚・認知機能が低下することが知られている[PMID:239890445].最近の研究では,加齢に伴い自動車衝突事故の重大性が増加することが報告されている[PMID:32563407,PMID:36554977]

■運転能力は認知機能,特に実行機能,注意力,処理速度に影響されることが知られている.日本を含むいくつかの国では,高齢ドライバーの運転免許更新時に認知機能障害を評価する検査が義務付けられている.主観的記憶障害(SMC)と歩行緩慢によって特定される運動認知リスク症候群(MCR)[PMID:22987797]は,処理速度と実行機能の低下,および認知症や障害の発症リスクの増加と関連している.もしMCRと自動車衝突事故リスクとの間に関連性があるのであれば,MCR評価を行うことで,早期にリスク上昇に気づくことができるかもしれない.

■今回紹介する論文は,JAMA Network Openにpublishされた,MCR評価と自動車衝突事故との関連を検討した日本の研究である.結果は,SMCとMCRは,客観的認知障害とは無関係に,自動車衝突事故リスクの1.48~1.73倍と,ヒヤリハット事故が2倍以上の増加と関連していたというものであった.MCRは様々な側面からの評価であるため,MCRと自動車衝突事故との関連性のメカニズムは,認知機能以外の要因によって説明される可能性がある.すなわち,従来の認知機能検査では拾いきれない層でも自動車衝突事故を起こすリスクが高い集団がいるということになる.
日本における高齢ドライバーの運動認知リスク症候群と交通事故
Kurita S, Doi T, Harada K, et al. Motoric Cognitive Risk Syndrome and Traffic Incidents in Older Drivers in Japan. JAMA Netw Open 2023; 6: e2330475
PMID: 37624598
https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2023.30475

Abstract

【背景】高齢ドライバーによる自動車衝突事故を防ぐには,衝突リスクの増大を早期に考慮すべきである.認知機能の低下は自動車衝突のリスクを高める.運動認知リスク症候群(MCR:Motoric Cognitive Risk Syndrome)は,認知機能への懸念と遅い歩行の存在を特徴とし,簡便に評価することができ,認知症のリスクを評価するのに有用である.

【目的】日本における高齢ドライバーのMCR評価所見と自動車衝突事故との関連を検討すること

【方法】本研究は,2015年から2018年にかけて日本で実施された地域ベースのコホート研究「国立長寿医療研究センター-老年症候群研究」のデータを用いた横断研究である.参加者は65歳以上の地域在住高齢者であった.データは2023年2月~3月に解析された.MCRは,主観的記憶障害(SMC)と遅い歩行を有すると定義された.参加者は4群に分類された:SMCも歩行遅延もなし,SMCのみ,歩行が遅いのみ,MCR.対象は,過去2年間の自動車衝突事故および過去1年間の交通事故ヒヤリハットの経験について,対面面接により質問された.衝突事故またはヒヤリハットした交通事故の経験のオッズをロジスティック回帰を用いて評価した.

【結果】計12,475人の参加者の平均(SD)年齢は72.6(5.2)歳で,7093人(56.9%)が男性であった.SMCのみ群とMCR群では,自動車衝突事故とヒヤリハット事故の両方の割合が他の群よりも高かった(調整標準化残差>1.96; P<0.001).ロジスティック回帰分析によると,SMCのみ群とMCR群では自動車衝突事故のオッズが増加していた(SMCのみ群:OR 1.48; 95%CI 1.27-1.72/MCR群:OR 1.73; 95%CI 1.39-2.16),ヒヤリハットの交通事故(SMCのみ群: OR 2.07; 95%CI 1.91-2.25/MCR群:交絡因子の調整後:OR 2.13; 95%CI 1.85-2.45).MCR評価を客観的認知機能障害で層別化した後も有意な関連が観察された.歩行が遅いのみ群においては,客観的認知機能障害は自動車衝突事故のオッズ増加と関連していた(OR 1.96; 95%CI 1.17-3.28).

【結論】日本の地域在住高齢ドライバーを対象としたこの横断研究では,SMCとMCRは,客観的認知障害とは無関係に,自動車衝突事故やヒヤリハット事故と関連していた.今後の研究では,これらの関連性のメカニズムをより詳細に検討すべきである.

# by DrMagicianEARL | 2023-08-30 13:38 | 文献
■心停止患者に対する心肺蘇生時に慣習的に重炭酸ナトリウムを使用されることがある.重炭酸塩は,古代エジプト人が天然に存在する複合塩であるナトロンという形で初めて使用した.干上がった塩湖の湖底から塩の混合物を採掘して得られていたナトロンの用途は,スキンケア,ミイラ化プロセスにおける薬剤としての日常的な使用,さらには局所的な創傷消毒剤としての使用など,多岐にわたった[PMID:27027749,PMID:11625036].重炭酸水素ナトリウムの医学的適応は,伝統的に高カリウム血症の治療,腎毒性薬剤の尿アルカリ化,および特定の毒性摂取の治療(例えば、三環系抗うつ薬および他のナトリウムチャネル遮断薬の過剰摂取)に限られている.しかし,救急患者における重炭酸水素ナトリウムの使用は,これらの臨床的適応以外のさまざまな臨床場面,特に重篤な代謝性アシドーシスの状況において明確な指針はない.

■重炭酸水素ナトリウムは酸塩基平衡障害の治療によく使用される.心停止患者の体内では酸素交換の不均衡が生じ,その結果アシドーシスが生じる.このため,心停止患者に重炭酸ナトリウムを投与することは理にかなっているという理由で行われてきた経緯がある.確かに,代謝性アシドーシスは,筋細胞収縮能の低下,全身血管緊張の低下,内因性カテコラミンや血管作動薬に対する反応障害,肺血管収縮,免疫反応低下,白血球機能障害などが知られている.しかし同時に,代謝性アシドーシスには,酸素に対するヘモグロビンの親和性が低下して組織への酸素利用率が高まること,血管拡張によって組織への血流が増加すること,イオン化カルシウムの利用率が高まって心筋収縮力が増強することなど有益な作用もある生理学的反応ともいえる[PMID:24377654,PMID:4621213]

■臨床ではどうかというと,2020年に報告された観察研究6報18,406例のシステマティックレビュー[PMID:32978028]では,心停止患者に対する重炭酸ナトリウムの使用は死亡リスクは改善せず,副作用として,高ナトリウム血症,アルカローシス,CO2蓄積などが指摘された.そして今回紹介するのは,American Journal of Emergency Medicine誌に報告されたRCTおよび傾向スコア研究のシステマティックレビューである.結果は,院外心停止患者に対する重炭酸ナトリウムの投与は短期生存率にも長期生存率にも関連せず,感度分析ではむしろ長期生存率を悪化させる可能性があるというものであった.このことから,重炭酸ナトリウムのルーティン使用は益が乏しいどころか害が益を上回る可能性がある

■おそらく重要なのはアシドーシスの原因解除であって,強制的な補正ではないのであろう.逆に言えば,病態によっては重炭酸ナトリウムが有効に働くサブグループが存在する可能性も残されている.アニオンギャップのない代謝性アシドーシス(消化管や尿路からの重炭酸塩の直接喪失,慢性腎臓病に伴うアンモニアの排泄障害等[PMID:22403272])では,重炭酸ナトリウムの喪失が原因であるため,重炭酸イオンの補充がアシドーシスの原因解除に直結しうることから,有効に働くかもしれない.
院外心停止患者における重炭酸ナトリウムの効果:RCTと傾向スコア研究のシステマティックレビューおよびメタ解析
Xu T, Wu C, Shen Q, et al. The effect of sodium bicarbonate on OHCA patients: A systematic review and meta-analysis of RCT and propensity score studies. Am J Emerg Med 2023; 73: 40-6
PMID: 37611525
https://doi.org/10.1016/j.ajem.2023.08.020

Abstract

【背景】院外心停止(OHCA)における重炭酸水素ナトリウム(SB)の有効性に関するエビデンスは議論の余地があり,一般的に質が低い.無作為化比較試験(RCT)および傾向スコアマッチング(PSM)コホート研究に基づき,OHCA患者におけるSBの効果を評価するために系統的レビューおよびメタ解析を行った.

【方法】PubMed,Cochrane,Embaseの各データベースから,開始時から2023年7月15日までのRCTおよびPSMコホート研究を検索した.重炭酸塩群と対照群の比較が明確な成人(16歳以上)の外傷のないOHCA患者を対象とした研究を対象とした.すべての研究で,主要評価項目である短期生存率(ROSC,救急部または入院までの生存率),副次評価項目である長期生存率(退院時の生存率,1ヵ月後の良好な神経学的予後)が報告された.結果はオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を用いた.バイアスを減らすために,RCTとPSMコホート研究のサブグループ解析を行った.また,異質性を解消するために感度分析を行った.

【結果】21,402人の患者を対象とした6件の研究(RCT3件,PSM3件)が組み入れられた.このメタアナリシスの主要評価項目は,両群間の短期生存率に差がないことを示した(OR=1.04; 95%CI 0.98-1.12; P=0.21; χ2=6.68; I2=25%).副次評価項目では,両群間の長期生存率に差はなかった(OR=0.82; 95%CI 0.50-1.34; P=0.43; χ2=14.96; I2=80%).1つの研究を除外して感度分析を行ったところ,重炭酸塩群の長期生存率は対照群より低かった.

【結論】OHCA患者において,重炭酸ナトリウムの投与は短期生存率にも長期生存率にも関連せず,むしろ長期生存率を悪化させる可能性がある.

# by DrMagicianEARL | 2023-08-29 12:36 | 文献
■敗血症性ショックの初期蘇生においては,30mg/kg以上の急速輸液負荷が長年推奨されている.この30mL/kg以上という輸液量は,敗血症治療の蘇生バンドルの順守率と予後を検討した大規模観察研究結果[PMID:20069275]が根拠となっており,以降,この輸液量が慣習化し,その後の無作為化比較試験のプロトコルでも最低30mL/kgの輸液投与が行われている.

■少なくとも組織低灌流が臓器虚血を引き起こし,多臓器不全の要因となる以上,過小輸液は推奨されない.一方で過剰輸液も予後を悪化させることが報告されており[PMID:30199843],ある程度の制限輸液戦略が有効なのではないかという仮説がたてられた.しかし,2022年にNEJMにpublishされた1554例のRCT[PMID:35709019]では,主要評価項目の90日死亡率は42.3% vs 42.1%で有意差はみられず,その他副次評価項目の短期予後,1年後死亡率やPICS[PMID:37330928]も有意差はみられなかった.2023年にNEJMにpublishされた1563例のRCT[PMID:36688507]でも90日死亡率に有意差はみられていない(14.0% vs 14.9%).また,最も長いフォローアップが行われたバイアスリスクの低い8つの試験でのメタ解析[PMID:37142091]でも90日全死亡リスクに差はみられていない(RR 0.99; 97%CI 0.89–1.1).

■今回の紹介する研究は,ベースに心不全既往を有する敗血症患者において制限輸液戦略が有効かを検討したシステマティックレビューである.結果は,4研究571例が抽出され,制限輸液群の方が1.81倍死亡リスクが高かった(OR=1.81,95%CI=1.13-2.89,p=0.01).異質性解析の結果,I2は0%であり,選択された研究の結果とプールされたデータの間に異質性はみられなかった.
【SR】心不全既往のある敗血症性ショック患者への制限輸液戦略は死亡リスクを増加させた_e0255123_11244126.png
■このシステマティックレビューに組み込まれた4研究は全て後ろ向き観察研究であり,交絡因子は免れない.しかしながら,敗血症病態を考慮すれば,過小輸液はたとえ心不全病態であっても避けるべきであるという仮説を支持するものであり,より質の高い研究での評価が待たれる.なお,ベースに心不全や腎不全があると輸液を躊躇する医師は多い.私は敗血症性ショックの場合はベースに心不全/腎不全があっても最低30mL/kgの初期急速輸液負荷は躊躇するなと研修医には伝えてきた.個々のモニタリング指標があるにはあるが確定的なものはなく,迷うなら輸液を入れる(あとで水引きはどうになかなるので)という,まずは血管内充填を最優先に考えるClinical Pearlであった.

■熟練の集中治療医なみの循環管理ができる自信があるなら3時間以内に30mL/kgという固定された輸液量にこだわる必要もないが,そうでないなら少なくともこれまでのRCTレベルの知見によって,循環管理に長けた集中治療医による管理とほぼ同等の死亡率であったプロトコル(いわゆるEGDT:Early-Goal Directed Therapy)を行った方がマシである.EGDTは否定されたといってもそれは死亡率が高かったという結果ではない以上,ガイドラインの推奨から消えてもEGDTは敗血症治療に不慣れな医師にとっては迷走せずに施行しやすく患者を救命しうる手段と思われる.
心不全を合併した敗血症患者に対するガイドラインベースと制限輸液の蘇生戦略:システマティックレビューおよびメタ解析
Zadeh AV, Wong A, Crawford AC, et al. Guideline-based and restricted fluid resuscitation strategy in sepsis patients with heart failure: A systematic review and meta-analysis. Am J Emerg Med 2023; 73: 34-9
PMID: 37597449
https://doi.org/10.1016/j.ajem.2023.08.006

Abstract

【目的】敗血症および心不全(HF)の既往を有する患者において,ガイドラインに基づく輸液蘇生戦略(30mL/kg以上の晶質液を静脈内投与)と,3時間以内に30mL/kg未満に制限した輸液アプローチとが,院内死亡率に影響を及ぼすかどうかを検討する.

【データソース】Embase,PubMed,Scopusにおいて,PRISMAガイドラインを用いて査読のある論文と抄録を検索した.

【研究選択】言語は英語に限定した.2016年以降に発表された研究で,HFの既往を有する敗血症患者,またはHFを有する患者のサブグループ,およびこれらの患者に関する院内死亡率データがあり,3時間以内に30mL/kg(30×3)の目標を達成した,または達成しなかったものを対象とした.重複研究,敗血症の診断から3時間よりも長い期間に焦点を当てた研究,HF患者の死亡率の内訳がない研究,タイトル/抄録が無関係な研究,倫理委員会の承認がない研究は除外した.
※この論文では「3時間以内に30mL/kgの輸液」を「30×3」と表記している.

【データ抽出】院内死亡率データは,30×3の目標を達成した敗血症を有するHF患者,または達成しなかったHF患者に関する最終研究から抽出した.

【データの統合】メタアナリシスは,効果指標としてORを用い,Review Manager 5.4プログラムを用いて行った.出版バイアスの評価にはProMetaプログラムバージョン3.0を用いた.出版バイアスの評価には,Eggerの線形回帰とBerg and Mazumdarの順位相関を用いた.結果はファネルプロットで視覚的に表した.異質性に起因する分散の割合を推定するために,I2統計量を算出した.

【結果】検索により26,069件の研究が得られ,4件の研究が抽出された.30×3の目標を達成した群と比較して,<30×3群では院内死亡リスクが有意に高かった(OR=1.81,95%CI=1.13-2.89,P=0.01).

【結論】制限的な輸液蘇生法は,敗血症を有するHF患者の院内死亡リスクを増加させた.この集団に対する最適な輸液蘇生戦略を決定するためにはより厳密な研究が必要である.

# by DrMagicianEARL | 2023-08-21 11:27 | 敗血症

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