重症疾患患者におけるpostintneive care syndrome予防のための早期リハビリテーション:システマティックレビューおよびメタ解析Fuke R, Hifumi T, Kondo Y, et al. Early rehabilitation to prevent postintensive care syndrome in patients with critical illness: a systematic review and meta-analysis. BMJ Open 2018; 0: e019998Abstract【背 景】我々は,重症疾患生存患者における身体機能,認知機能,精神の障害であるpostintensive care syndrome(PICS)の予防において,早期リハビリテーションの有効性を検討した.【方 法】PICS予防における早期リハビリテーションvs早期リハビリテーションなしまたは標準ケアの効果を比較した無作為化比較試験(RCT)を抽出するため,各データベース(Medline,Embase,Cochrane Central Register of Controlled Trials)で系統的文献検索と手動検索を行った.主要評価項目は入院期間中の短期での身体関連,認知関連,精神関連のアウトカムとした.副次評価項目は標準化された長期の健康関連QOL(EuroQol 5 Dimension (EQ5D)とMedical Outcomes Study 36-Item Short Form Health Survey Physical Function Scale (SF-36 PF))とした.エビデンスの質の評価はGrading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation(GRADE)を用いた.【結 果】5105報のアブストラクトをスクリーニングし,6報のRCTを登録した.標準ケアまたは早期リハビリテーションなしと比較して,早期リハビリテーションは,Medical Research Councilスケール増加(SMD 0.38, 95%CI 0.10 to 0.66. p=0.009,エビデンスの質:低い)と,ICU-AW発生率の減少(OR 0.42, 95%CI 0.22 to 0.82, p=0.01, エビデンスの質:低い)により短期身体関連アウトカムの有意な改善を示した.しかし,認知機能関連項目である無せん妄日数(SMD -0.02, 95%CI -0.23 to 0.20, エビデンスの質:低い),精神関連のHospital Anxiety and Depression Scaleスコア(OR 0.79, 95%CI 0.29 to 2.12, エビデンスの質:低い)は両群間で差はみられなかった.早期リハビリテーションはEQ5DとSF-36 PFによるPICSの長期アウトカムを改善させなかった.【結 論】早期リハビリテーションは重症疾患患者における短期の身体関連アウトカムのみ改善させた.さらなる大規模RCTが必要である.
■今回,このRCTの長期予後を評価した検討がpublishされましたので紹介します.結果は,ヘルメット群の方がICU-AWが少なく,機能的に自立している患者が多く,1年死亡率が低いという結果で,2016年の報告に引き続きヘルメット群に軍配が上がった形になります.また,本文を見ると,せん妄もヘルメット群の方が少ないという結果です.
■ただし,ヘルメット群の方がAPACHE IIスコアがやや低く,呼吸不全の原因が肺炎である率が高く,ショック患者が少なく,昇圧薬を必要とした患者数が少なく,ステロイド使用が多いという背景因子の違いがあり,全体的にヘルメット群の方が有利なようですので,その部分は考慮する必要がありそうです.もっとも既知の研究でもフェイスマスクよりヘルメットの方がハードアウトカムが良好とする報告はいくつかでています.理由としては,ヘルメットの方がPEEPが高く維持でき,リークも少ないことが挙げられます.
ヘルメットvsフェイスマスクの非侵襲的換気の無作為化臨床試験に登録されたARDS患者の1年後の予後Patel BK, Wolfe KS, MacKenzie EL, et al. One-Year Outcomes in Patients With Acute Respiratory Distress Syndrome Enrolled in a Randomized Clinical Trial of Helmet Versus Facemask Noninvasive Ventilation. Crit Care Med 2018 Mar 27. [Epub ahead of print]PMID: 29595563Abstract【背 景】急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の多くの生存患者は,おそらくは“侵襲的”人工呼吸管理の間の支持療法による長期予後不良の状態にある.ARDSにおけるヘルメット型の非侵襲的換気は挿管率を減少させる可能性があるが,ヘルメット型非侵襲的換気によって挿管を回避することでARDS生存患者の予後が変わるかについては明らかではない.【方 法】本研究は出版された既知の無作為化比較試験の長期観察データである.患者は発表された臨床試験における成人ICUのARDSの患者を登録した.主要評価項目は退院後から1年時点での日常生活動作および歩行の自立性で定義される機能的自立とした.1年時点で,機能的自立性,生存率,自宅で過ごした生存日数として定義される医療機関非受診日数を評価するために患者の調査を行った.ICU-acquired weakness(ICU-AW)と機能的自立は,退院時に盲検化された医療従事者によって評価された.【結 果】退院時に,フェイスマスク群ではICU-AWが多く(79.5% vs 38.6%; p=0.0002),機能的自立が少なかった(15.4% vs 50%; p=0.001).1年間の観察データは83例中81例で収集された(97.6%).1年後死亡率はフェイスマスク群で高かった(69.2% vs 43.2%; p=0.017).1年時点で,ヘルメット群の患者は,機能的自立がより多く(40.9% vs 15.4%; p=0.015),医療機関非受診日数が多かった(中央値 268.5[0-354] vs 0[0-323]; p=0.017).【結 論】ARDSにおいて侵襲的人工呼吸管理後の機能的回復不良は一般的である.ヘルメット型非侵襲的換気は,非侵襲的換気で管理されたARDS生存患者において問題となる長期合併症を緩和する最初の介入となる可能性がある.
ICU在室期間におけるメラトニン受容体作動薬ラメルテオンの投与効果:単施設無作為化プラセボ対照試験Effect of Administration of Ramelteon, a Melatonin Receptor Agonist, on the Duration of Stay in the ICU: A Single-Center Randomized Placebo-Controlled Trial. Crit Care Med. 2018 Mar 27.[Epub ahead of print]PMID: 29595562【目 的】ICUでのせん妄の発生はICU在室の長期化に関連している.メラトニン受容体作動薬であるラメルテオンの使用が重症疾患患者において,せん妄を予防し,ICU在室期間を短縮するかについて検討した.【方 法】本研究は大学病院ICUで行われた単施設三重盲検無作為化プラセボ対象試験である.患者は入室から48時間以内に薬剤の経口摂取または経鼻胃管投与が可能なICU患者とした.介入群はラメルテオン(8mg/日),対照群はプラセボ(ラクトースパウダー1g/日)をICU退室まで毎日20時に投与を受けた.【結 果】計88例がラメルテオン群(45例)またはプラセボ群(43例)に無作為化された.主要評価項目では,プラセボ群(5.86日)に比してラメルテオン群(4.56日)でICU在室期間の短縮傾向がみられた(調整前p=0.082,調整後p=0.028).副次評価項目では,せん妄の発生率(24.4% vs 46.5%; p=0.044)とせん妄期間(0.78日 vs 1.40日; p=0.048)がラメルテオン群で統計学的有意に低かった.ラメルテオン群の非挿管患者では,夜間の覚醒が有意に少なく,覚醒していない夜の比率が有意に高かった.【結 論】ラメルテオンはICU在室期間を短縮させる傾向があり,また,せん妄の発生率およびせん妄期間を統計的に有意に減少させた.
日本の若年女性において,HPVワクチンと,報告されたワクチン接種後の症状に関連性はない:Nagoya studySuzuki S, Hosono A. No Association between HPV Vaccine and Reported Post-Vaccination Symptoms in Japanese Young Women: Results of the Nagoya Study. Papillomavirus Res. 2018 Feb 23. [Epub ahead of print]PMID: 29481964Abstract【背 景】名古屋市は2010年に無料のHPV予防接種を導入し,2013年4月に厚生労働省はHPVワクチンを全国予防接種プログラムに組み入れた.しかし、2013年6月に未確認の有害事象の報告後,ワクチン接種の推奨を中止した.【方 法】名古屋市では,ワクチンと症状の関連性を調査するため,アンケート調査を実施した.参加者は1994年4月2日から2001年4月1日までの間に生まれた名古屋市の女性71177例であった.匿名化された郵便アンケートでは,24の症状(主要評価項目)の発症,関連する病院の受診,頻度,および学校出席への影響を調査した.【結 果】計29846例の参加者から回答が得られた.24のHPVワクチン接種後の症状のいずれも発生率の有意な増加は見られなかった.ワクチンは「異常な月経出血量」(OR 1.43; 95%CI 1.13-1.82),「不規則な月経」(OR 1.29; 95%CI 1.12-1.49),「ひどい頭痛」(OR 1.19; 95%CI 1.02-1.39),慢性的に遷延する「異常な月経出血量」(OR 1.41; 95%CI 1.11-1.79)において,年齢で調整されたオッズの増加と関連していた.学校への出席に有意に影響を与えた症状はなく,症状の蓄積も認められなかった.【結 論】本結果はHPVワクチンと報告された症状の間に因果関係がないことを示唆する.
重症疾患の成人患者における調整晶質液vs生理食塩水(SMART trial)Semler MW, Self WH, Wanderer JP, et al. Balanced Crystalloids versus Saline in Critically Ill Adults. N Engl J Med. 2018 Feb 27 [Epub ahead of print]PMID: 29485925Abstract【背 景】調整された晶質液と生理食塩水は成人重症疾患における輸液で使用されるが,臨床アウトカムにおいていずれがよりよいのかについては知られていない.【方 法】大学病院の5つのICUで行われた本実用的クラスター無作為化クロスオーバー試験において,我々は15802例の成人患者をICU入室時に,生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)投与群または調整された晶質液(乳酸リンゲル液またはPlasma Lyte A)投与群に無作為に割り付けた.主要評価項目は30日以内の主要な腎有害事象(退院時または30日のいずれか早い時点で生じた全死亡,新規の腎代替療法導入,クレアチニンがベースの200%以上の上昇で定義された腎機能障害遷延の複合アウトカム)とした.【結 果】主要な腎有害事象は,調整晶質液群で7942例中1139例(14.3%),生理食塩水群で7860例中1211例(15.4%)に生じた(marginal OR 0.91; 95%CI 0.84-0.99,conditional OR 0.90; 95%CI 0.82-0.99; p=0.04).30日時点での院内死亡率は調整晶質液群で10.3%,生理食塩水群で11.1%であった(p=0.06).新規の腎代替療法の導入率はそれぞれ2.5%と2.9%であり(p=0.08),腎機能障害の遷延はそれぞれ6.4%vs6.6%であった(p=0.06).【結 論】重症疾患の成人患者では,輸液投与における調整晶質液の使用は生理食塩水の使用と比較して,全死亡,新規の腎代替療法導入,腎機能障害遷延の複合アウトカムの発生率が低かった.