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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

■2012年4月より開始となった感染防止対策加算において,当院を含む二次医療圏全体で感染防止対策ネットワークが作られ,2回目の合同カンファレンス(本格的なネットワーク始動としては1回目)が7月上旬に行われた.5月時よりさらに加算2が5病院増え,加算1が6病院,加算2が16病院の計22病院という,国内最大規模ネットワークでの始動となった.

■合同カンファレンスは総勢100名以上となり,ネットワーク代表の大学病院の大講堂で開催された.大学病院感染制御の教授の進行で開始され,感染対策ネットワークの会則(案)を全開一致で採択.その後,年間予定,加算要件の再確認,加算1-1施設ラウンド報告が行われた.

■加算1-1ラウンドの報告はPowerPointを使い,写真を提示して発表された.全部のチェック項目をラウンドしてチェックするのは時間的にも不可能なため,自施設でA評価の項目はある程度省略してラウンドを行っている.具体的な改善点の指摘としては,植木鉢の配置(水や土を含むため,倒れたときのことも考え,置く場所や撤去も考慮),手術室廊下のゴミ箱,ゴム手袋箱の向き(取り出し口が上向きでは駄目),消毒薬の配置・向き,マスク着用などであった.

■その後,各専門職別カンファレンスが開かれ,医師・看護師・事務職部会と薬剤師部会と検査技師部会の3つに分かれて会議が行われた.病院によって感染防止対策のレベルは大きく異なり,加算2の病院においては,感染防止対策の経験がほとんどない病院ばかりであり,ラウンドやサーベランスなどもほぼ行われていない状況にある.このため,当面はこれらの病院の底上げ期間が必要になってくる.なお,検査技師部会では「耐性菌とは」という,基礎の基礎の勉強会から始まったとのことであった.

■次に行われたのは各1-2連携カンファレンス.当院を含む連携は加算1の大学病院と加算2の6病院.アンケート結果で各施設の感染対策状況がその場で公表されたが,当院以外の病院は明らかに感染防止対策に慣れておらず,これまで特になされていなかったようである.とりわけラウンドもサーベランスも行われていない病院も複数あるため,その病院への指導が行われた.実際,7病院中長年のサーベランスデータを持っているのは当院のみであった(大学病院はつい最近).まずは各病院での耐性菌の全数把握を行うところから始まることになった.
※竹末教授のいる兵庫医大は加算2の15病院と連携しているとのことだが,15病院ともかなりの感染防止対策レベルを有しているとのことである.さすがというところか.

■細菌検査室がない病院も多く,これは加算1の病院でもみられたことである.このような病院では,外注先からの報告を紙ベースではなく,Excel化してもらい,データ集積を行うことが提言された.まずは後向きにデータ解析が行える環境を全病院が整えることから開始となった.
※某教授との話ででてきたが,加算2病院の想定以上の増加があることから,医療費削減のために加算2の病院の厳格基準による切り落としと,加算報酬点数の減点が行われる可能性がありうると予想されている.また,加算1だが細菌検査室を持っていない病院は200点になるのではないかと予想された.

■アウトブレイク時の対応についてはマニュアル化する予定ではあるものの,まだまだ調整が必要そうである.MRSAとESBLに関しては「1ヶ月に1つの病棟で同一菌による感染症が4例以上」の時点でネットワークに報告,となっているが,この基準についてはまだまだ議論が必要である(より緩和すべき?).MDRP,MBL産生菌,VRSA,VRE,MDRABなどは「1例でも出た時点でネットワークへ報告対処」とする案になっていて,MDRPやMBL産生菌をはずそう,VISAは入れない,という大学病院の意見があった.小生はこの意見には反対している(local factorなども考慮するとはずすべきではないと考える).このあたりは疫学認識の違いであろう.

■ネットワークとしては,最終的に以下の内容のデータを揃えることでまとまり,閉会となった.
①各施設のカルバペネム系・抗MRSA薬使用量の提示
②各施設の耐性菌全数データの提示
③手指消毒薬使用量データの提示

■手指消毒薬使用量データに関しては,アルコール消毒薬(ヒビスコール®)の使用量で評価することになった.具体的には,1回あたりの使用量が3cc(ヒビスコール®では1プッシュ1.5ccで1回あたり2プッシュ必要)として,全使用量を患者数×期間で割った「1人の患者につき1日に使用される量」を算出する.15cc/患者人/日が標準ラインとされている.ただし,病室に入るときと出るときの最低2回を考えても,15cc/患者人/日だと消毒回数5回,すなわち2.5回しか病室に出入りがない計算になるため,これでも少ない.ところが実際の病院内のアルコール消毒薬使用回数はおそらく15ccをはるかに下回ることが予想される.実際,大学病院は3cc/患者人/日しか使用されていなかった,つまり病室に0.5人/日しか出入りがなかった計算になる.当院では2011年の使用量から2cc/患者人/日以下であることが分かり,現在使用推進中である.2012年4-5月の集計では2011年使用量より倍化してはいるものの,まだまだ足りていない状況にある.

※手指衛生に必要な場面は5つある.これはWHOが“Clean care is safer care”をスローガンに手指衛生の実施率改善に努めているものである.従来の一処置一手洗いは時に不必要な手洗いを含み,手荒れなどの弊害もでてきる.手洗いの目標は「病原体を持ち込まない,持ち出さない,移動させない」ことである.患者と患者に属する器具・器材および環境を「患者周囲環境(患者域)」とし,それ以外(診療域)と区別する.すなわち,患者ベッド,床頭台,輸液ポンプ,人工呼吸器などを患者域とし,手指衛生に必要な5つの場面を提示している.
①患者域に入る前
②無菌操作前
③血液・体液に触れた後,あるいは触れた可能性があった場合
④患者域から出た後
⑤患者域に属する器材などに触れた後
なお,手袋の着用は手洗いの代用ではなく,手袋の着用が手洗い不要の理由とはならない.手袋には微小孔(ピンホール)が医療従事者が考えているよりはるかに多く存在し,実際に手袋を脱いだ手から患者と同一菌が1.7-4.2%の割合で検出されている(CCM 2012; 40: 1045-51).手術時の滅菌グローブであっても少なくとも1.5%にピンホールが空いている(日本グローブ工業会website).

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# by DrMagicianEARL | 2012-07-17 00:59 | 感染対策 | Comments(0)
当院の抗菌薬適正使用ガイドライン(2012年5月発表)
各項目についてのガイドラインに記載した解説文はこのブログでは省略(抗菌薬の基本原則にだいたいの内容は記載している).ここではなぜこの項目にしたのかについてのみ下に記載した.
5.腎機能・肝機能の考慮
5-1.腎排泄系,肝排泄系の抗菌薬では,それぞれの臓器機能障害に合わせて投与量の減量を考慮する.

5-2.透析によって除去を受ける抗菌薬では投与量,投与設計の変更を検討する.
 解説では腎障害・肝障害時の各抗菌薬の使用法について提示している.腎機能障害に関しては,安全・中等度注意・高度注意の3群に分類した.

6.抗菌薬併用療法の検討
6-1.細菌性感染症の場合,通常は単剤投与で治療するのが原則である.

6-2.抗菌薬併用による効果は,薬剤耐性化の抑制,スペクトラムの拡大,相乗効果が期待できるが,薬剤耐性化,相乗効果については不確定であり,推奨する根拠に乏しく,医療コスト増大,副作用リスク増大というデメリットも存在するため,安易に併用の選択は行うべきではない.

6-3.骨髄炎や心内膜炎などの慢性感染症に対し,長期的な抗菌薬投与が必要な場合は,原因となる細菌によっては併用が薦められる場合もある.
 抗菌薬併用療法は,経験的治療(empiric therapy)においては,推定される病原菌を,ときには薬剤耐性菌を含めてカバーする目的で行われる.原因微生物が判明している場合においては,①単剤に比べて良い効果を期待して併用する,すなわち相乗効果(synergy effect)を狙う,②治療する上で原因菌の耐性化を防止する,③その他抗菌活性以外の特殊な効果を期待して,などの目的で行われるが,そのエビデンスの蓄積は十分でなく,一部のケースにおいて推奨されているに留まる.このようにエビデンスは少ないが,臨床現場では抗菌薬併用療法は頻繁に施行されており,EBMとの乖離があることは否めない.解説ではスペクトラム,耐性菌防止,相乗効果,特殊な効果を期待しての使用,の4つの観点でそれぞれのエビデンスの有無などを記載した.
7.薬物血中濃度モニタリング
7-1.以下の薬剤は薬物血中濃度モニタリング(therapeutic drug monitoring:TDM)に基づき,投与量,投与間隔を設定する.
グリコペプチド系:VCM(バンコマイシン®),TEIC(タゴシッド®)
アミノグリコシド系:GM(ゲンタシン®),AMK(アミカシン®),ABK(ハベカシン®)

7-2.各抗菌薬の目標とするピーク値,トラフ値を以下に示す.
VCM:トラフ値 15-20μg/mL
TEIC:トラフ値 ≧17μg/mL
GM(1日1回投与法):ピーク値 16-24μg/mL,トラフ値 <1μg/mL
AMK(1日1回投与法):ピーク値 56-64μg/mL,トラフ値 <1μg./mL
ABK(1日1回30分投与法):ピーク値 8-12μg/mL,トラフ値 <2μg/mL

7-3.目標ピーク値,トラフ値を達成するためにも,薬剤課に血中濃度シミュレーションの依頼を検討する.

7-4.TDMを必要とする抗菌薬では,オーダー時に抗菌薬投与時刻指定を必ず行う.
 日本TDM学会ガイドライン正式発表前であり,この院内ガイドライン発表時はTSM学会ガイドラインは未考慮の状態である.このため,今後改訂する可能性はある.VCM,TEICについてはhigh targetを標準とした.
8.小児への抗菌薬投与
8-1.小児では薬剤ごとに吸収に差があるため注意が必要である.

8-2.乳幼児では主要血漿タンパクのアルブミンが低値であるため,薬剤が遊離型の状態で存在しやすく,効果が強く出やすいため注意が必要である.

8-3.小児は成人と比べ肝機能や腎機能が未熟であるため注意が必要である.
 解説では小児で特に注意すべき抗菌薬副作用について解説した.
9.妊婦への抗菌薬投与
9-1.妊婦感染症に比較的安全に投与しうる薬剤として,使用経験が豊富で胎児への有害作用がみられないペニシリン系,セフェム系,マクロライド系が挙げられる.その他,CLDM(ダラシン®),FOM(ホスミシン®)も安全性が高い.

9-2.テトラサイクリン系,アミノグリコシド系,ニューキノロン系,ST(バクタ®)は胎児への影響を考慮し,使用すべきではない.
 妊娠中は,腎クリアランスが高まり,分布容積が増加し,タンパク結合率が低下する薬物があるので,難治性感染症の治療では体内動態の変化を考慮する.
10.高齢者への抗菌薬投与
10-1.加齢に伴う薬物動態の変化を考慮して投与量,投与方法を選択する必要がある.

10-2.高齢者においては合併症のために多種の薬剤を併用されていることが多く,薬物間相互作用についての十分な注意も必要となる.
 高齢者での抗菌薬投与については下記文献参照.
Crossley KB, Peterson PK. Infections in the elderly. Principles and practice of infectious disease, 6th ed. Mandell GL, Bennett JE, Dolin R, eds. New York: Elsevier Churchill Livingstone 2004; 3164-9
 解説には記載しなかったが,高齢者の耐性菌リスクの考慮をどこまで行うかは今後議論の余地がある.とりわけ肺炎においては耐性菌リスクはあくまでも検出菌による疫学データからだされたものであり,真の起因菌での疫学データではない.このため,耐性菌リスクを考慮した抗菌薬治療が過剰なスペクトラムカバーとなり,さらなる耐性菌誘発を助長させる懸念もある.

■本章での引用文献数は26

院内抗菌薬適正使用ガイドライン「第3章.初期抗菌薬の選択(1)
→院内抗菌薬適正使用ガイドライン「第4章.抗菌薬の継続・変更・中止」

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# by DrMagicianEARL | 2012-07-16 14:22 | 感染対策 | Comments(0)
当院の抗菌薬適正使用ガイドライン(2012年5月発表)
各項目についてのガイドラインに記載した解説文はこのブログでは省略(抗菌薬の基本原則にだいたいの内容は記載している).ここではなぜこの項目にしたのかについてのみ下に記載した.

第3章.初期抗菌薬の選択
1.スペクトラム
1-1.その病態に対して抗菌薬を初めて投与する際は,経験的治療(empiric therapy)として,原因感染症を推定し,その感染症で疫学的に頻度の高い原因菌をカバーできる抗菌薬の投与を行う.

1-2.重症例や免疫抑制状態の場合,抗菌薬の選択は想定される微生物を網羅する広域抗菌薬の投与が推奨される.

1-3.軽症,中等症で,感染防御能が正常であるときは,その感染症において特に頻度の高い病原微生物を網羅できる範囲で,できるだけ狭域の抗菌薬を選択すべきである.

1-4.広域抗菌薬の多用は,宿主環境や病院環境における耐性菌の増加を誘導し,次に生じる感染症をより難治なものにすることを留意する.

1-5.グラム染色,塗抹鏡検所見を参考にして原因菌を推定し,抗菌薬の狭域化を図ることを検討する.

1-6.年齢,基礎疾患,最近の抗菌薬使用歴,過去の検出菌等を参考にして耐性菌リスクを考慮する.

1-7.特に嫌気性菌活性を有する抗菌薬を使用する際は,腸内細菌叢破綻による薬剤性関連下痢症(特にClostridium difficile関連下痢)を誘発するリスクを考慮し,probiotics製剤の併用を考慮する.

1-8.TFLX(オゼックス®)以外のニューキノロン系抗菌薬,LZD(ザイボックス®)は抗結核菌活性を有するため,結核が考慮されうる状態に対してはその除外がなされるまでは使用すべきではない.
 起因菌推定,患者背景,重症度の3点をベースにスペクトラム選択方法を提示した.ただし,過剰広域となりすぎないよう,グラム染色を使用した狭域化の努力を行うことも明記した.

 腸内細菌叢温存を重視し,probiotics製剤併用も明記している.これは今後作成予定の院内早期経腸栄養ガイドラインへのリンクも目的とした項目である.この項目に関しては特に以下の文献を重要視し,提示した.
Vollaard EJ, Clasener HA. Colonaization resistance. Antimicrob Agents Chemother 1994; 38: 409-14
Shimizu K, Ogura H, Tomono K, et al. Patterns of gram-stained fecal flora as a quick diagnostic marker in patients with severe SIRS. Dig Dis Sci 2011; 56: 1782-8
Hempel S, Newberry SJ, et al. Probiotics for the prevention and treatment of antibiotic-associated diarrhea: a systematic review and meta-analysis. JAMA 2012; 307: 1959-69

 市中肺炎などにおいて,第一選択でキノロン系を使用するケースがよく見られるが,本ガイドラインにおいてはその使用を非推奨としている.実際に当院呼吸器内科においては,肺炎に対する経験的治療としてニューキノロン系を第一選択にすることはほとんどなく,使用しないことで治療に難渋したケースもほとんどない.肺結核が空洞形成や上肺野に形成されたりなど典型的画像所見をとっていれば分かりやすいが,実際には通常の肺炎像と鑑別が困難なケースも多数存在する.とりわけ,AIDSなど免疫力が低下した患者における結核像は非典型的であることが多い.以上から安易なニューキノロン投与には警鐘を鳴らすべきである.開業医においてはニューキノロン系を経験的治療により第一選択で投与されるケースが非常に多く,初期は奏功したもののあとになって再燃し,当院に紹介となり結核であったケースがあとをたたない.
 同様に,LZD(ザイボックス®)も抗結核菌活性を有するため同様の注意が必要であり,肺炎のみならず,椎体炎などでもMRSAであるとは限らず(とりわけTh12の椎体炎は結核を疑うべきである),グラム染色や抗酸菌染色を活用して結核を除外する必要がある.
2.臓器・組織移行性
2-1.抗菌薬投与の際は,感染巣である臓器・組織への移行性を考慮する.

2-2.マクロライド系,ニューキノロン系,テトラサイクリン系,CLDM(ダラシン®),RFP(リファンピン®),ST(バクタ®)は組織移行性がよく,細胞内や組織内の濃度が血中濃度より高濃度になる.

2-3.膿瘍を形成している場合は,抗菌薬移行性は悪く,ドレナージ,デブリードマン,デバイス除去などの外科的処置も検討する.
 解説では各臓器と抗菌薬の移行性のよい組み合わせ,悪い組み合わせの表を提示した.バイオフィルムへの移行性については臨床的に考慮して使用されていることも多いが,in vivoでエビデンスが確立されているというわけではないため,項目としては示さず,解説に「マクロライド系,テトラサイクリン系,CLDM(ダラシン®)は菌のバイオフィルム透過性を亢進させるとのin vitroの報告があるが,in vivoでの有効性については現時点では結論が出ていない.」と記載するに留めた.

 膿瘍を含めた感染巣コントロールについては以下の文献を重要視して提示した.
Marshall JC, Maier RV, Jimenez M, et al. Source control in the management of severe sepsis and septic shock: An evidence-based review. Crit Care Med 2004; 32: S513-26
3.殺菌性の考慮
3-1.一般的に抗菌薬の殺菌性と静菌性の違いは多くの場合考慮する必要はないが,免疫力が重度に低下している患者や,敗血症,髄膜炎,感染性心内膜炎,重症ブドウ球菌感染症,重症グラム陰性桿菌感染症,好中球減少症においては殺菌性抗菌薬の検討が必要である.
 殺菌性と静菌性は日常診療ではまず考える必要はないが,特定の状況では考慮しなければならないため,単一項目として記載した.ただし,殺菌性と静菌性はあくまでも便宜上の分類であり,はっきりと区別できるわけではない.また,解説ではtoleranceについても記載している.
4.local factor / antibiogram
4-1.同じ感染症であっても,起炎菌の頻度や薬剤感受性は施設ごとに異なり,また,地域特有の感染症を考慮しなければならない場合もあることを留意する.

4-2.当院において検出される各菌の薬剤感受性を考慮する.
 抗菌薬適正使用を進める上でなくてはならない項目である.感染症に対するempiric治療は熱病などの書籍により選択することはできるが,実際には国,地域,施設,さらには病棟によってもその起因菌の頻度や感受性が異なる(以下の文献を特に重要視して提示している),いわゆるlocal factorが存在する.これを理解していなければ不必要に広域にカバーしたり,カバー漏れが生じる.
Souli M, Galani I, Giamarellou H. Emergence of extensively drug-resistant and pandrug-resistant Gram-negative bacilli in Europe. Euro Surveill 2008; 13; 47
Rhomberg PR, Jones RN. Summary trends for the Meropenem Yearly Susceptibility Test Information Collection Program: a 10-year experience in the United States (1999-2008). Diagn Microbiol Infect Dis 2009; 65: 414-26

 当院では院内サーベイランスが充実しており,antibiogramもその一環である.その年の1月に前年の院内antibiogramを全医師および各病棟に配布している.一般的に推奨されている抗菌薬がその菌に本当に有効であるかを判断する上でも重要である.

←院内抗菌薬適正使用ガイドライン「第2章.抗菌薬使用で考慮すべき事項」
→院内抗菌薬適正使用ガイドライン「第3章.初期抗菌薬の選択(2)」

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# by DrMagicianEARL | 2012-07-08 14:42 | 感染対策 | Comments(0)
当院の抗菌薬適正使用ガイドライン(2012年5月発表)
各項目についてのガイドラインに記載した解説文はこのブログでは省略(抗菌薬の基本原則にだいたいの内容は記載している).ここではなぜこの項目にしたのかについてのみ下に記載した.

第2章.抗菌薬使用で考慮すべき事項
1.抗菌薬選択基準と届出制
1-1.抗菌薬は以下の点を考慮して選択する.
① 推定あるいは同定された原因微生物の種類
② 薬剤感受性
③ 臓器移行性
④ 細胞内移行性(細胞内増殖菌)
⑤ 患者重症度(感染症,基礎疾患)
⑥ 患者臓器障害(腎機能障害,肝機能障害)
⑦ 既往歴(薬物アレルギー)
⑧ 副作用頻度
⑨ local factor / antibiogram
⑩ コスト

1-2.以下の抗菌薬の使用に際しては,必ず抗菌薬使用届けを提出する.
①抗MRSA薬:ABK(ハベカシン®),VCM(バンコマイシン®),TEIC(タゴシッド®),LZD(ザイボックス®),DPT(キュビシン®)
②カルバペネム系抗菌薬:IPM/CS(チエナム®),MEPM(メロペン®),DRPM(フィニバックス®)
※DPT(キュビシン®)は2012年5月現在未採用

1-3.以下の抗菌薬の使用に際しては,抗菌薬使用届けは不要であるが,その耐性化率,広域なスペクトラムから,熟慮の上選択することが望ましい.
TAZ/PIPC(ゾシン®),FMOX(フルマリン®),CMZ(セフメタゾン®),SBT/CPZ(スルペラゾン®),CAZ(モダシン®),CFPM(マキシピーム®),TFLX(オゼックス®),PZFX(パズクロス®),CPFX(シプロキサン®),LVFX(クラビット®),GRNX(ジェニナック®),GM(ゲンタシン®),AMK(アミカシン®)
 抗菌薬使用届けが本当に必要かについては賛否両論がある.「一部の適正使用できていない医師のためにやっている届出制で真面目にやってる先生にとっては無駄に仕事が増えるだけ」という意見もあったが,その意見には小生は耳を貸していない.なぜなら,当院においては適正使用できていない医師は“一部”ではなく“ほとんど”だからである.

 本届出制によりカルバペネム系の処方数が少なくなる一方で他の広域抗菌薬の処方数が増加するという現象は当院では生じていない.ただし,届出制に含まれていない広域抗菌薬についてもあまりスペクトラムを把握されずに使用されている現状は多い.これらのこともあって届出制に関する記載を冒頭にもってきている.なお,2012年5月から当院では月ごとに抗菌薬使用届けを提出していない医師名が医局に張り出されるようになった.

 届出用紙にはなぜその抗菌薬を選択したかの理由を記載する欄があり,ICTが介入を行う際はそこをチェックするが,「必要だから」の一言だけなど,主治医がなぜその抗菌薬を選択したのかがさっぱり分からないこともよくある.この書き方で提出しておきながらICTにコンサルトをしてくるのはどうなのだろうか.
2.PK/PDによる抗菌薬の分類
2-1.病原微生物を効果的に殺滅するため,薬物動態(PK:Pharmacokinetics)的思考と薬力学(PD:Pharmacodynamics)的な思考を行い,抗菌薬投与設計を行うことが推奨される.

2-2.時間依存的抗菌薬は一度に高用量を投与するよりも分割して投与回数を増やすことで効果が得られる抗菌薬である.このような抗菌薬には以下のものがある.
ペニシリン系,セフェム系,カルバペネム系,CAM(クラリス®),EM(エリスロシン®),CLDM(ダラシン®)

2-3.濃度依存的抗菌薬は分割投与よりも1回投与量を増加させることで効果が得られる抗菌薬である.このような抗菌薬には以下のものがある.
ニューキノロン系,アミノグリコシド系,DPT(キュビシン®),メトロニダゾール製剤(発売予定)

2-4.時間・濃度両方に依存的な抗菌薬は投与総量を増やすことで効果が得られる抗菌薬である.このような抗菌薬には以下のものがある.
VCM(バンコマイシン®),TEIC(タゴシッド®),AZM(ジスロマック®),LZD(ザイボックス®)

2-5.時間依存的要素を持つ抗菌薬の投与時間については,理論上投与時間を長くすれば効果が上昇するとされているが,適切な投与時間を推奨する根拠は不十分であるが,多くの抗菌薬では投与時間は最低でも投与時間は1時間かけるべきである.

2-6.重症敗血症,人工呼吸器,低アルブミン血症(毛細血管からの血漿漏出),心不全,体外循環(例;血漿交換,人工心肺),手術で留置されたドレーン,重症熱傷,好中球減少などにおいては体内分布容積が増加するため,抗菌薬の用量が不十分となりえることを留意する.

2-7.播腫性血管内凝固症候群(DIC)を併発している場合は,微小血栓により病巣に抗菌薬が到達できない可能性があり,DIC治療を検討する.DIC治療については当院のDIC診療ガイドライン,敗血症診療ガイドラインを参照のこと.
 解説ではPK/PD理論のおおまかな原則を記載している.また,各抗菌薬の動態のみならず,PK/PDに影響を与える因子についても記載している.DICについても言及したのはオーバーではあるが,本項目を記載したのは,他の院内ガイドラインとの連携や認知を高める目的もあるからである.
3.抗菌薬が不要な病態の判断
3-1.抗菌薬が必要な病態かを判断し,不要な投与は極力避けるべきである.

3-2.抗菌薬投与を白血球,CRPだけで判断してはならない.感染部位・臓器特異的が明らかでないならば,敗血症もしくは重症状態でない限り抗菌薬を投与せず責任病巣・起因菌の検索を行うことが推奨される.

3-3.ほとんどの風邪症候群(感冒,咽頭炎,副鼻腔炎,気管支炎)はウイルス感染症であり,重症例でない,もしくは明らかな細菌感染の徴候がない場合,抗菌薬投与は推奨されない.

3-4.既に抗菌薬を投与していて感染症が否定された場合は直ちに抗菌薬投与を中止すべきである.

3-5.保菌を治療しない.
 医療現場で使用されている抗菌薬の半数は不必要あるいは不適切であると報告されており,実際に当院の臨床現場で抗菌薬が不要の状態に対して抗菌薬が使用されているケースは非常に多い.現在風邪症候群に対する抗菌薬投与を明確な理由なしに行わないようICTから呼びかけを行っている.なお,当院ではプロカルシトニンは採用していない.

■本章内容解説においての引用文献数20.

←院内抗菌薬適正使用ガイドライン「第1章.序論」
→院内抗菌薬適正使用ガイドライン「第3章.初期抗菌薬の選択(1)」
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# by DrMagicianEARL | 2012-07-06 15:55 | 感染対策 | Comments(0)
※今回のこの記事はエビデンスに基づいた特集というわけではありません.あくまでも小生の一意見・考察に過ぎないので.第1回.

■高齢者の誤嚥性肺炎においては抗菌薬の選択には多数の意見があり,議論されている領域である.NHCAP(医療介護関連肺炎)診療ガイドラインにおいては選択抗菌薬が示されているが,広域すぎる印象もあり,むしろ耐性化や菌交代などが増加するのではないかと小生は危惧している.しかし,NHCAP診療ガイドラインの有効性に関して実際に検証するのは非常に困難であり,数年の歳月を要するだろう.いずれはガイドライン遵守群と非遵守群の比較が必要になると思われる.ここで論ずべきは耐性菌リスクで分けたB群・C群の取り扱いである.

■NHCAP診療ガイドラインにおける抗菌薬選択は重症度と耐性菌リスクの2つのfactorで4群に分けて提示している.

(1) A群
外来治療可能なNHCAP患者.
推奨抗菌薬:
・βラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン経口薬(CVA/AMPC,SBTPC)+マクロライド系(CAM or AZM)
・GRNX,MFLX or LVFX
・CTRX+マクロライド系(CAM,AZM)
※LVFXは抗嫌気性菌活性があまりないことに注意

(2) B群
非重症かつ耐性菌リスクがないNHCAP入院患者.
推奨抗菌薬:
・CTRX
・SBT/ABPC
・PAMP/BP
・LVFX IV
※LVFXは抗嫌気性菌活性があまりないことに注意
※PAMP/BPは緑膿菌に対する抗菌活性が弱い

(3) C群
非重症かつ耐性菌リスクがあるNHCAP入院患者.
推奨抗菌薬:
・TAZ/PIPC
・抗緑膿菌性カルバペネム系(IPM/CS,MEPM,DRPM)
・抗緑膿菌性セフェム系(CFPM,CRP)+ (MTZ IV,CLDM)
・ニューキノロン系(CPFX,PZFX)+SBT/ABPC
MRSAリスクがあるなら上記に抗MRSA薬(VCM,TEIC,LZD)追加を検討
※MTZ IVは2012年中に発売開始予定

(4) D群
重症で人工呼吸器装着などの集中治療を考慮するNHCAP入院患者.
推奨抗菌薬:
・TAZ/PIPC
・抗緑膿菌性カルバペネム系(IPM/CS,MEPM,DRPM)
・抗緑膿菌性セフェム系(CFPM,CRP)+ (MTZ IV,CLDM)
上記にニューキノロン系(CPFX,PZFX)or AZM IVを追加
MRSAリスクがあるなら上記に抗MRSA薬(VCM,TEIC,LZD)追加を検討

■この推奨抗菌薬で疑問となるのが,日常診療で誤嚥性肺炎に使用している抗菌薬よりも非常に広域である点である.とりわけ,NHCAPで問題となるC群の扱いについては推奨抗菌薬の再考が必要になると思われ,そのキーとなるのが耐性菌リスクの評価である.NHCAP診療ガイドラインが定める耐性菌リスクは「過去90日以内に広域抗菌薬(抗緑膿菌ペニシリン,第3・第4世代セフェム,カルバペネム,キノロン)の2日間以上の投与があった」「経管栄養が施行されていた」の少なくとも1項目を有する場合と定めており,さらにMRSA検出歴があればMRSAリスクありとされている.ただし,これはあくまでも喀痰からの検出菌によって抽出されたリスクファクターであり,その菌が肺炎の原因になっていたかは調査されていないし,耐性菌リスクのある患者の肺炎が耐性菌によって生じているかどうかのエビデンスもない.実際には耐性菌リスクあり,もしくは喀痰から緑膿菌,MRSAを検出しても,B群の抗菌薬で軽快することは非常に多い.この疑問に対して,うまく説明し得るのが大阪大学感染制御部の朝野和典教授の持論である.朝野教授は肺炎治療の限界と問題点を疫学的観点から見事に浮かび上がらせている.
 肺炎の診断方法は30年間進化していない.喀痰はどこから分泌されているのかは明らかになっていないし,実際に病巣からでている喀痰なのか,中枢に近い気管支からでたものなのかは不明であり,常在菌や保菌状態の菌まで紛れ込む.多数の肺炎球菌やインフルエンザ桿菌などがグラム染色で見えれば原因菌の可能性は極めて高いと言えるが,誤嚥性肺炎,NHCAPの患者においては喀痰培養で肺炎の原因菌は診断できず,あくまでも参考結果に過ぎない(喀痰培養をやらなくていいという意味ではない).

 肺炎は統計学的に見れば抗菌薬の影響を受けない.なぜなら新しい抗菌薬・ガイドラインが世にでても80歳以上の肺炎の死亡率は減少していない.超高齢者肺炎の死亡率が有意に減少したのはペニシリン系,マクロライド系抗菌薬がでたときだけであり,その後,セフェム系,カルバペネム系,抗MRSA抗菌薬がでても死亡率は不変である.加えて,肺炎が直接原因で死ぬことは統計学的にはほとんどない.一部の重症化,敗血症やARDSをきたした症例は別だが,それ以外のケースで亡くなることはなく,若年者の年齢別死亡者数は交通事故程度である(逆に,交通事故程度は死ぬので治療は行う必要がある).高齢者では肺炎死亡率が上昇するが,実際には肺炎が直接原因でなく,心不全などの合併症によって亡くなることがほとんどである.例外的に喀痰で診断がつけられ,適切な抗菌薬が投与される肺炎の代表的なものとして肺炎球菌肺炎がある.肺炎球菌によるCAP(市中肺炎)とHCAP(医療ケア関連肺炎)の死亡率を比較した報告では,7%vs30%と有意にHCAPの死亡率が高い.抗菌薬よりも宿主の基礎疾患の影響が大きいことがうかがえる.

■以上より肺炎診療における喀痰の細菌学的検査および抗菌薬治療には思った以上に低い限界があることを医療者は認知するべきである.

■喀痰から肺炎起因菌を診断することはいまだにできない.にもかかわらずNHCAP診療ガイドラインでは喀痰検出菌で耐性菌リスクを定め,該当する患者群にはかなりの広域抗菌薬やその併用を推奨している.耐性菌出現をおさえつつ抗菌薬を使用しなければならないが,これでは逆に耐性菌が増加してしまうのではないかという懸念がある.

■適切な治療と,不適切な治療を受けた患者群の比較では,不適切な治療を受けた群の予後が有意に不良であると報告されている.さらに,不適切な治療を行った群では,その後抗菌薬を広域なスペクトラムに広げて適正化しても予後は変わらないと報告されている.ただし,この報告では喀痰培養による分離菌が含まれているため,原因菌診断という面においては,初期治療が本当に不適切であったかどうか不明である.また,耐性菌の分離された群に適切な抗菌薬を選択したからといって,予後が改善するか否かは不明である.よって,NHCAPの患者では耐性菌が分離される率が高くなるが,必ずしも分離菌でないため,耐性菌の分離された患者にその細菌を標的に抗菌薬を選択することは過剰な治療となる可能性がある.

■当院では誤嚥性肺炎やNHCAPがたとえC群であってもSBT/ABPC,CTM+CLDM,CTX+CLDM,AZM IVといった選択が基本レシピであり,原則としてカルバペネム系,ニューキノロン系を第一選択に用いることはない(これは重症例でも同じで,肺炎に対してカルバペネム系,ニューキノロン系を第一選択とするのは特殊例のみである).当院のみの少数例での検討だが,緑膿菌,MRSAをカバーしないこの初期抗菌薬でもB群とC群の患者の死亡率は同等であり,死亡例はほとんどが慢性心不全増悪か窒息であった.当院でのNHCAP治療戦略は抗菌薬効果判定を治療開始から3-4日後に行い,効果が不十分かつ培養結果に耐性菌が検出された場合にのみその耐性菌に有効な抗菌薬にescalationする方法である.敗血症に陥っていないのであれば,後でescalationに切り替えても十分に治療可能ということが自施設の検討で示唆された.これは他の施設の医師に聞くと同様の印象をもつところがそれなりにある.広域で治療を開始するde-escalationよりも,昔ながらのescalationがNHCAPには向いているのかもしれないし,これによりNHCAP診療ガイドラインよりも耐性菌出現を減じることができるかもしれないが,これに関してはさらなる大規模多施設の検討が必要であろう.また,NHCAP自体がかなりlocal factorやantibiogramの影響を受けるため,地域によっては耐性菌が実際に肺炎の起因菌として多い可能性もありえるため,これらの要因を加味する必要もある.

■いずれにせよ,NHCAP診療ガイドラインの抗菌薬選択において必要と思われるのは,C群からB群に矢印をつけることである.すなわち,耐性菌リスク,MRSAリスクがあっても,医師の判断でB群の抗菌薬を使用してもよいという選択肢をつけることであろう.

■加えて抗菌薬治療はあくまでも患者の免疫力に補助的に使用するものであり,根本は原因を遮断することにあり,以前の記事「抗菌薬以外の誤嚥性肺炎治療」をより強く推奨する必要がある.

■NHCAP診療ガイドラインは内容については小生はかなり批判はしているが,“肺炎を考える機会を与えた”という意味ではよいきっかけとなったいえる.本ガイドラインを査読した上で,antibiogram,local factorを考慮し,各施設にマッチした自施設でのNHCAP診療ガイドラインを作成するのが望ましいと思われる.

誤嚥性肺炎(NHCAP)における抗菌薬(1)につづく
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# by DrMagicianEARL | 2012-07-03 13:46 | 肺炎 | Comments(4)

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