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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

■リコンビナント・トロンボモデュリンα(rTM:商品名リコモジュリン®;旭化成ファーマ)は日本で開発され,国内PhaseⅢ[1]でヘパリン群より有意なDIC離脱率を示したが,死亡率では有意な改善は示せていない(改善傾向はあり).PhaseⅢのサブ解析で,敗血症性DICにおいては28日死亡率でヘパリン群よりrTM群が10.2%死亡率を改善させている.その後,pre-post比較でのrTMによる死亡率改善の報告はあるが,二重盲検RCTでの報告はなかった.

■一方,海外ではリコンビナント活性型プロテインC製剤(rhAPC:Xigris®)がイーライリリー社から販売されており,敗血症に対する治療薬としてSurviving Sepsis Campaign Guidelinesにおいても推奨されていた.rTMはトロンビンと結合してプロテインCを活性化し,APCに変換することで効果を発揮しており,rTMの有効性を示す上で,APCの過去のデータはよく引用されていた.しかしながら,その後出血リスクと有効性の低さが指摘され,メタ解析したCochraneからの2008年のレビュー[2]では「重症敗血症や敗血症性ショックにrhAPCを使用すべきとするエビデンスはなく,出血性合併症を増やし,新たなRCTによって治療効果が証明されない限り用いてはならない」と警告が発せられた.PROWESS-SHOCK study[3]によってその効果が否定され,2011年10月に市場撤退し,姿を消すに至った.

■海外では本邦とは違い,DICが治療対象でないため,その概念は乏しく,rhAPCはDICでない敗血症症例にまで使用されていたことが有効性を示せなかった原因と推察される.DICをきたしている症例には有効と思われるが,非DIC症例においてその効果がどこまであるかは不明である.加えて,出血の問題もrhAPCにはつきまとっていた.そもそもrhAPCの有効性を示した最初のPROWESS study[4]自体に数多くの無視できない問題があったのも事実であり,このstudyから安易にrhAPCを承認してしまった米国FDAへの批判も多い.また,rhAPCを販売していたイーライリリー社がSurviving Sepsis Campaignのメインスポンサーであったことも関係していたのかもしれない.

■なお,rhAPC製剤販売中止から半年近くたってから,米国集中治療学会(SCCM)が2005-2008年に収集した15000例の解析結果で,敗血症診断の24時間以内に投与を開始した症例では予後良好という結果がCritical Care Medicine誌に掲載された[5].PROWESS-SHOCK studyとは異なる結果であるが,データ収集終了から4年たった,それもrhAPC製剤が市場撤退した後に本論文が登場した理由は謎である.

■これに対し,rTMはトロンビンと1対1に結合して効果を発揮するためrhAPC製剤より安全であることが推定され,DIC症例に適応を絞っているため,国内データも併せると,敗血症性DIC症例における死亡率改善に寄与するのではないかと期待が持たれていた.しかしながら,大規模でのプラセボ対照RCTを行うには国内では限界があった.

■そこで,旭化成ファーマは米国Artisan Pharmaに委託し,rTM(ART-123)の海外でのPhase2b trialが行われた.

ART-123(recombinant human soluble thombomodulin) Phase 2b study
【目的】敗血症性DICに対するrecombinant human soluble thombomodulin(rTM)の効果・安全性を確認する.

【方法】参加地域は米国,カナダ,欧州,オーストラリア,ニュージーランド,アルゼンチン,イスラエル,一部のアジア地域であり,登録患者は敗血症性DIC(もしくは凝固障害)患者750例,研究デザインは二重盲検プラセボ対照RCT,プライマリーエンドポイントは28日死亡率とされた.なお,本studyはArtisan Pharmaが行っていたが,途中で旭化成ファーマがArtisan Pharmaを買収し,旭化成ファーマアメリカとなっている.rTM群370例,プラセボ群371例であり,患者背景に有意差はない.DICの診断は急性期DIC診断基準ではなく,血小板数とPT INRで判定している.rTM,プラセボともに6日間の投与を行った.

【結果】28日死亡率はrTM群 17.8% vs プラセボ群 21.6%,p=0.273であった.p<0.3を達成しており,この結果をもってPhaseⅢへの移行が決定した.また,レトロスペクティブな解析では,1つ以上の臓器不全があり,かつPT INR>1.4の患者においてrTMの有効性がより高まることが確認された(死亡率:rTM群 26.3% vs プラセボ群 38.2%).重大な有害事象,中和抗体出現についてはrTM群とプラセボ群で有意差は認めなかった.TAT,D-DimerはrTM群で速やかに減少することが確認された.rTMの薬物動態は過去の研究(日本でのPhaseⅡ)と同等であり,性別,人種,年齢によって薬物動態は影響を受けないことが確認された.


■rTMのPhaseⅢ studyは旭化成ファーマアメリカが行う.目的は重症敗血症および凝固障害を対象としたrTMの安全性と効果の判定,プライマリーアウトカムは28日死亡率であり,800例の登録を予定している.登録基準として,PT INR>1.4に重きを置いている.

■気になるのはDICの診断基準である.PhaseⅡ・ⅢともにD-dimarすら用いておらず,DICというよりは凝固障害に対する治療であるため,この結果がそのまま本邦のDIC治療に結びつくのかは疑問が残る.ただし,PhaseⅡの解析におけるPT INR>1.4での有効性は興味深い.

[1] Saito H, Maruyama I, Shimazaki S, et al. Efficacy and safety of recombinant human soluble thrombomodulin (ART-123) in disseminated intravscular coagulation:results of a phase III, randomized, double-blind clinical trial. J Thromb Haemost 2007; 5: 31-41
[2] Marti-Carvajal A, Salanti G, Cardona AF. Human recombinant activated protein C for severe sepsis. Cochrane Datebase Syst Rev 2008; 1: CD004388
[3] Ranieri VM, Thompson BT, Barie PS, et al. Drotrecogin alfa (activated) in adults with septic shock. N Engl J Med 2012; 366: 2055-64
[4] Bernard GR, Vincent JL, Laterre PF, et al. Efficacy and safety of recommbinant human activated protein C for severe sepsis. N Engl J Med 2001; 344: 699.
[5] Casserly B, Gerlach H, Phillips GS, et al. Evaluating the use of recombinant human activated protein C in adult severe sepsis: results of the Surviving Sepsis Campaign. Crit Care Med 2012; 40: 1417-26
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# by DrMagicianEARL | 2012-06-18 23:25 | 敗血症性DIC | Comments(0)
2012年4月27日に院内の全職員を対象として院内抗菌薬適正使用ガイドライン案の概要発表+パネルディスカッションを行った。以下はそのガイドライン案の序論。

1.はじめに
 2010年12月3日に米国カリフォルニア州のモノ湖でGFAJ-1という新種の細菌を発見したとNASAが発表した.この細菌は地球上の既知の生物とは異なり,リンの代わりにヒ素を摂取してDNAとタンパク質を作り出すという前代未聞の生命体であった.このような極限環境における新種の微生物は数年に1度出現する.細菌にとって極限環境で生き抜く手段を得るのはそう難しいことではなく,様々な抗菌薬に曝露されるようになった昨今においても同様である.
※【2012年7月9日追記】スイス連邦工科大チューリヒ校と米プリンストン大の各研究チームが別々に,この細菌はヒ素濃度が高い環境でも生存できるだけで低濃度のリンを利用していることを実験で確認したとする報告が2012年7月8日のSicenceネット版に掲載された.

 米国でポピュラーな感染症診療の教科書であるInfection Diseasesは,Frederick Southwickの「われわれは抗菌薬の時代の終焉にいるのか?」という衝撃的な見出しから始まっており,抗菌薬の乱用により数多くの薬剤耐性菌が発生し,院内に留まらず,その地域にまで拡大しており,その速度は医師の想像の範疇を大きく越えるものである.

 1925年にAlexander Flemingがアオカビからペニシリンを発見し,1940年にはペニシリンが実用化となったが[1],それから20年足らずでペニシリン耐性黄色ブドウ球菌が急増した.しかし,実際にはペニシリン耐性菌は本剤が臨床で使用されるようになる以前から存在していたことが報告されている[2].自然環境においてはペニシリンをはじめとする抗菌物質を菌が産生することにより自分のなわばりのようなものを作ることが知られており,この抗菌物質に曝露される菌は多数存在しており,それらが生き延びるためには抗菌物質に対する耐性を持つ必要があった.すなわち,環境微生物に由来する抗菌性物質には古くから耐性菌が存在することは必然的なことであり,同時に抗菌薬に対する耐性獲得も時間の問題であったことは容易に想像できる.

 これに対し,キノロン系抗菌薬は自然界には存在しない化合物であったため[3],本剤耐性菌株が出現する可能性は低いと考えられていたが,この抗菌薬に対しても耐性菌が出現し,その頻度は上昇傾向にある[4]

 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)やバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)のアウトブレイクにより認識が広がりだした多剤耐性菌は,現在,ほとんどの抗菌薬が効かないESBL,NDM-1,KPC,MBLといった驚異的な耐性度をもつタンパクを有する菌が発見されるまでになっている.このような多剤耐性菌は日和見感染が主体であると考えられてきたが,近年,市中感染型MRSAが増加傾向にあり[5,6],2011年にドイツで食中毒により大流行した大腸菌O-104はESBL産生株であり[7],2011年に京都で発見された多剤耐性淋菌[8,9]も記憶に新しい.

 このように菌の耐性化の新規抗菌薬創薬のイタチゴッコが繰り広げられてきた中,抗菌薬開発はビジネスとしてリスクが高い割にはあまり収益が見込めない分野であり[10],採算性などの観点から最近は抗菌薬開発から撤退する企業が増加している[11].米国でも2020年までに新たな10種類の抗菌薬を開発するプロジェクトが行われているが,背景には1980年代以降,抗菌薬の数が減少し続けているという厳しい現状がある[12].加えて,医療現場で使用されている抗菌薬の半数は不必要あるいは不適切であるとされている[13]

 カルバペネムならグラム陰性桿菌にほとんど有効という時代は既に終わっており,本邦であってもカルバペネム耐性緑膿菌は珍しくはない[14,15].特に緑膿菌とAcinetobacter baumanniiは多剤耐性株の分離頻度も高まっており,通常利用可能なすべての抗菌薬が無効であることも経験される[16,17].器質拡張型βラクタマーゼextended-spectrum β-lactamase(ESBL)産生によるカルバペネム以外のほとんどの抗菌薬に対する薬剤耐性は世界中に拡散しているが[18],近年,カルバペネムすら加水分解するβラクタマーゼを産生する腸内細菌科の細菌が日本でも臨床分離されている[19]

 各医師が思いのままに処方を繰り返して行ったら,仮にその処方がその症例の治療には正解であったとしても,近い将来,その施設がペニシリン開発以前の時代に逆戻りしてしまう可能性すらある[20].既にESBL産生大腸菌などで現実となっているように[21],病院由来の高度耐性菌が市中に拡散する危険性もある.カルバペネムを含むすべての抗菌薬が無効な大腸菌による尿路感染敗血症が市中で発生するというシナリオもかなり現実味を帯びてきている[22]

 これらを背景として抗菌薬の適正使用が必要な理由は耐性菌増加防止が第一に挙げられるが,これはあくまでも将来的予測,地域医療における理論である.

 大腸菌ESBL,VCM MIC 2のMRSA,多剤耐性アシネトバクターMDRAB,Stenotrophomonas maltophilia,これらの4種の菌が担当している肺炎患者の喀痰から出てきたらどうするか?これは現実に当院で2012年1月に起こったことである.抗菌薬の不適切な使用により高度な多剤耐性菌がそれも複数同時に検出するということは当院でも例外ではないということである.

 臨床現場においての適正使用の意義は,実際に投与する患者の臨床経過に大きく直結するものであり,患者の予後改善,副作用軽減,入院期間減少,医療コスト軽減に大きく関与する[23-25]ことも認識しなければならない.

2.2012年4月現在の当院の状況
 当院が所属する二次医療圏において当院のantibiogramはまだ優秀な方ではあるが,2010年を境にカルバペネム系抗菌薬の使用本数が倍増しており,現在も増加傾向にある.これは患者数増加による使用数増加も要因ではあるが,倍増の理由の全てを説明しうるものではない.

 経口抗菌薬では経口第3世代セフェム系抗菌薬の処方数が全体の44%を占めており,ニューキノロン系,マクロライド系の使用量も多い.経口抗菌薬が処方される状況において,発熱や感冒症状が対象となっていると推察される.本邦での経口第3世代セフェム系抗菌薬はその大多数が誤用と言われている.現在,経口の第3世代セフェム系抗菌薬は,その体内利用率の低さと移行性の低さ,耐性菌誘発率の高さから,使用が推奨される状況はほとんどなくなってきており,使用法は見直されるべきであろう.

 周術期,パスにおいては使用される予防的抗菌薬が固定化されているが,感染対策委員会の積極的介入はなく,その抗菌薬が適正かの検討が必要であろう.周術期では予防的抗菌薬よりも術中の清潔操作,標準予防策がとりわけ重要であることは言うまでもない.

 2012年2月の当院の薬事審議会では感染対策委員会主体で抗菌薬の大幅な削減を行った.これは,在庫管理・コスト削減の問題のみならず,同系列薬剤を極力少ない種類におさめ,医療従事者間の混乱を予防し,医療従事者の感染症治療に対する知識の向上,ひいては感染症治療のレベルアップにつながる,などの副次的効果を期待してのことである.

 感染対策室としてはカルバペネム系,経口第3世代セフェム系等の抗菌薬使用数を減少させることが主目的ではない.初期治療の選択,de-escalationなどを考慮すれば,適正使用を行うことが目的であり,それにより使用数が大幅に減少できると考えている.

3.目 的
 抗菌薬適正使用については,米国疾病管理センター(CDC:Centers for Disease Control and Prevention)のサイトで,“A Public Health Action Plan to Combat Antimicrobial Resistance”と名づけられたプランが解説されており,抗菌薬の適正使用を“Appropriate antimicrobial drug use is defined as use that maximizes therapeutic impact while minimizing toxicity and development of resistance.”のように明確に定義している.また,オランダの研究者で,抗菌薬の適正使用研究で知られるGyssensは“Maximal efficacy of the treatment should be combined with minimal toxicity at the lowest cost.”と定義している[26].これにより,抗菌薬適正使用は,①最大の効果,②最小の副作用,③抗菌薬耐性の最小化にまとめられる.抗菌薬適正使用はこれらを実現するための活動ということになる.

4.ガイドライン・ポリシー
 当院の抗菌薬適正使用ガイドラインは私が当院に就職する前の2007年の第4版が最終改訂であり,それ以降は改訂がなされていない.今回は全面的に大幅改訂を行い,ほぼ一から作り直している.これまで定めていなかった緩和ケア患者に対する抗菌薬使用の項目を作成したことも新たな変更点である.

 本ガイドラインは可能な限りの最新のエビデンスに基づいた抗菌薬の使用法を提示するものであり,本邦あるいは当院の事情に合わせた指針として作成している.適正使用という観点においては推奨されるべきものではあるが,必ずしも全患者においてその使用法が第一選択として適応されるものとは限らない.あくまでも個々の患者での状況を踏まえた的確かつ適切な使用が行われるべきであり,それにより患者が得る利益が損なわれないのであれば,本ガイドラインより優先すべきである.また,多岐の領域に渡る感染症において,各医師にエキスパート並みの抗菌薬使用法を要求するのは非現実的であり,常識の範囲で必要最低限度の抗菌薬適正使用のための原則を記載している.

 本ガイドライン施行にあたり,その有効性を適宜フィードバックし,かつ診療に影響を与えうる新たな知見・根拠が得られた場合,新たな抗菌薬を採用した場合は適宜考察し,ガイドラインの改善点を抽出し,改訂を行うことが望ましい.

[1] Bush K. The coming of age of antibiotics: discovery and therapeutic value. Ann N Y Acad Sci 2010; 1213: 1-4
[2] Abraham EP, Chain E. An enzyme from bacteria able to destroy penicillin. 1940. Rev Infect Dis 1988; 10: 677-8
[3] Ball P. Quinolone generations: natural history or natural selection? J Antimicrob Chemother 2000; 46: S17-24
[4] Yamaguchi K, et al. In vitro susceptibilities to levofloxacin and various antibacterial agents of 12,919 clinical isolates obtained from 72 centers in 2007. Jpn J Antibiot 2009; 62: 346-70
[5] Naimi TS, LeDell KH, Como-Sabetti K, et al. Comparison of community- and health care-associated methicillin-resistant Staphylococcus aureus infection. JAMA 2003; 290: 2976-84
[6] Moran GJ, Krishnadasan A, Gorwitz RJ, et al. Methicillin-resistant S. aureus infections among patients in the emergency department. N Engl J Med 2006; 355: 666-74
[7] Christina F, et al. Epidemic Profile of Shiga-Toxin–Producing Escherichia coli O104:H4 Outbreak in Germany. N Engl J Med 2011; 365:1771-80
[8] Ohnishi M, Saika T, et al. Ceftriaxone-resistant Neisseria gonorrhoeae, Japan. Emerg Infect Dis 2011; 17: 148-9
[9] Ohnishi M, Golparian D, et al. Is Neisseria gonorrhoeae initiating a future era of untreatable gonorrhea?: detailed characterization of the first strain with high-level resistance to ceftriaxone. Antimicrob Agents Chemother 2011; 55: 3538-45
[10] Livermore D. Can better prescribing turn the tide of resistance? Nat Rev Microbiol 2004; 2: 73-8
[11] French GL. What’s new and not so new on the antimicrobial horizon? Clin Microbiol Infect 2008; 14: S19-29
[12] Infectious Diseases Society of America. The 10 x ’20 Initiative: pursuing a global commitment to develop 10 new antibacterial drugs by 2020. Clin Infect Dis 2010; 50: 1081: 3
[13] Hughes JM. Preserving the lifesaving power of antimicrobial agents. JAMA 2011; 305: 1027-8
[14] Kirikae T, Mizuguchi Y, Arakawa. Investigation of isolation rates of Pseudomonas aeruginosa with and without multidrug resistance in medical facilities and clinical laboratories in Japan. J Antimicrob Chemother 2008; 61: 612-5
[15] Ishii Y, Yamaguchi K. Evaluation of the susceptibility trends to meropenem in a nationwide collection of clinical analysis from 2002 to 2006. Diagn Microbiol Infect Dis 2008; 61: 346-50
[16] Sekiguchi J, Asagi T, Miyoshi-Akiyama T, et al. Outbreaks of multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa in community hospitals in Japan. J Clin Microbiol 2007; 45: 979-89
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[18] Paterson DL, Bonomo RA. Extended-spectrum β-lactamases: a clinical update. Clin Microbiol Rev 2005; 18: 657-86
[19] Queenan AM, Bush K. Carbapenemases: the versatile β-lactamases. Clin Microbiol Rev 2007; 20: 440-58
[20] Paterson DL, Lipman J. Returning to the preantibiotic era in the critically ill: the XDR problem. Crit Care Med 2007; 44: 159-77
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[22] Schwaber MJ, Carmeli Y. Carbapenem-resistant Enterobacteriaceae: a potential threat. JAMA 2008; 300: 2911-3
[23] Cosgrove SE, Qi Y, Kaye, et al. The impact of methicillin resistance in Staphylococcus aureus bacteremia on patient outcomes : mortality, length of stay, and hospital charges. Infect Control Hosp Epidemiol 2005; 26: 166-74
[24] Cosgrove SE. The relationship between antimicrobial resistance and patient outcomes: mortality, length of stay, and health care costs. Clin Infect Dis 2006; 42: S82-9
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[26] Gyssens IC. Quality measures of antimicrobial drug use. Int J Antimicrob Agents 2001; 17: 9-19
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# by DrMagicianEARL | 2012-06-03 11:57 | 感染対策 | Comments(0)
■2012年度の診療報酬加算改訂により感染防止対策加算が入った.加算は一定以上の基準を満たした施設に与えられ,加算1と加算2の大きく2つの群に分類される.

■感染防止対策加算1
以下の要件を満たせば加算1の適応となり,患者1人あたり入院初日に400点が加算される.また,加算1を算定している医療機関同士が連携し,年1回以上,互いの医療機関に赴いて,相互に感染防止対策に係る評価を行っていることを満たせば,感染防止対策地域連携加算として患者1人あたり入院初日にさらに100点が追加される(計500点).
① 専任の院内感染管理者が配置されており,感染防止に係る部門を設置していること.
② 感染症対策に3年以上の経験を有する専任の常勤医師,5年以上感染管理に従事した経験を有し,感染管理に係る適切な研修を修了した専任の看護師(医師又は看護師のうち1名は専従),3年以上の病院勤務経験を持つ感染防止対策にかかわる専任の薬剤師,3年以上の病院勤務経験を持つ専任の臨床検査技師からなる感染防止対策チームを組織し,感染防止に係る日常業務を行うこと.
※専従は専任とは異なり,感染対策業務以外の日常診療は行えない(週1回の外来ならOKとの話も・・・?).
③ 年4回以上,感染防止対策加算2を算定する医療機関と合同の感染防止対策に関する取組を話し合うカンファレンスを開催していること.
④ 感染防止対策加算2を算定する医療機関から感染防止対策に関する相談を適宜受け付けること.

■感染防止対策加算2
以下の要件を満たせば加算2の適応となり,患者1人あたり入院初日に100点が加算される.
① 一般病床の病床数が300床未満の医療機関であることを標準とする.
② 専任の院内感染管理者が配置されており,感染防止に係る部門を設置していること.
③ 感染症対策に3年以上の経験を有する専任の常勤医師,5年以上感染管理に従事した経験を有する専任の看護師(医師,看護師とも専任で差し支えない),3年以上の病院勤務経験を持つ感染防止対策にかかわる専任の薬剤師,3年以上の病院勤務経験を持つ専任の臨床検査技師からなる感染防止対策チームを組織し,感染防止に係る日常業務を行うこと.
④ 年に4回以上,感染防止対策加算1を算定する医療機関が開催する感染防止対策に関するカンファレンスに参加していること.

■感染防止対策加算要件をまとめると,以下の16の項目の施行が必須となる.
1.ICT(感染制御チーム)設置
2.院内感染状況の把握
3.抗菌薬の適正使用
4.職員の感染防止等
5.1回/週のICTラウンド(回診)
6.院内感染事例の把握
7.感染防止対策の実施状況の把握・指導
8.サーベイランス⇒分析・評価⇒感染対策へ
9.アウトブレイク対応
10.それらの記録
11.抗菌薬適正使用推進
12.広域抗菌薬の届出制等
13.広域抗菌薬の投与量・期間の把握
14.職員研修
15.マニュアルの作成
16.マニュアルの遵守確認

■感染防止対策加算は,各病院の感染対策レベルの底上げにはなるが,その主旨が意図せぬ方向に動いていることも事実であり,病院利益も絡んでか現状は非常に複雑である.

■この感染防止対策加算が2012年度から施行されるにあたり,加算1の病院では500点,加算2では100点と大幅な利益純増が見込まれるため,各病院がこの加算をとるため躍起になっている.とりわけ加算1と加算2が組まなければいけないため,加算2の病院を加算1の病院が取り合うという現象が日本全国で生じた.その理由として,加算要件維持が非常に困難であろうことが予想されること(加算1の病院といえども達成が困難である項目がある),厚生労働省が想定していた数をはるかに上回る膨大な数の病院が加算2をとってきたため予算圧迫を避ける名目で厚生労働省が加算2の病院を切りかかることが容易に予想されることが挙げられる.実際,加算2の病院のうち,これまで感染対策などほとんどやってこなかった病院は半数近くを占めるのではないだろうか?これらの加算2の病院が切られてしまうと,当然ながら,生き残れない加算2の病院ばかりと組んだ加算1の病院もまた要件を満たせなくなるため共倒れになる.こうなると,感染対策の豊富な経験がある切られそうにない加算2の病院を加算1の病院が取り合うということになり,いわゆる“お見合いパーティー”なるものが各地で開催されていた.

※当院の所属する二次医療圏内に大学病院もあるため,この大学病院が基幹となって,二次医療圏内の加算1の6病院,加算2の11病院の計17病院をつなぐ巨大なネットワークが作られた.しかしながら,先日開催された合同カンファレンスに小生が参加し,その雰囲気を見ると,加算2の11病院中,おそらく生き残れるのは半数にも満たないことが予想された.それほど加算2の病院の多くは無理して加算2をとりに来ているようで,twitterでの情報交換を見ても,これは他の地域でも同様のようである.カンファレンスでの感染対策に関する話に半数以上の病院が入ってこれない状況を小生は目の当たりにした.ましてアカデミックな話になればもはやポカーンとした表情になっていた.カンファレンスでは「各病院とも振り落とされないように。なんとかして監査をクリアせよ」との言葉が発せられている.
※当院はICNがいないため加算2の病院であるが,長年の感染対策の経験と豊富なサーベイランスデータを有するため,切られることのない病院と踏んだのか,大学病院から猛烈なラブコールを受けてタッグを組むことになり,加算2でありながら加算1と同様に当院からネットワーク会議の世話人を出すに至っている.加算1をとりに行くことも検討してはいるが,このような加算2の病院群の現状を見るに,加算1をとるのもそれなりにリスキーなのかもしれない.


■今回,感染対策において,口腔ケアもかなり重要視されている.歯科・口腔外科との連携も非常に大事なものとなってくる.その中で重要な疾患は人工呼吸器関連肺炎(VAP)と誤嚥性肺炎であろう.誤嚥性肺炎における口腔ケアの重要性は言うまでもない.VAPにおいては口腔ケアの有効性を示す報告は少ないが,理論的にも経験的にも口腔ケアは重要視されている位置づけにある.ただし,その頻度や方法についていまだに未解決な部分も多く,今後の課題となるだろう.

■感染対策での連携において,集団感染発生時(アウトブレイク)の連携は非常に重要で,各連携毎に必ず対応策を考えておく必要がある.マスコミ対策もそのうちの1つである.

■感染対策で各病院のデータ集積・提供は必須である.挙げられる項目例として以下のものがある.
①血液培養検体数
②カルバペネム系などの広域抗菌薬使用数
③消毒薬消費量データ
④各種サーベイランス(SSI,CRBSI,耐性菌,尿道留置カテーテル,ポート,スコープ)
⑤各病院感染対策ガイドライン
⑥各病院のantibiogram

※今回の感染対策防止加算の要件において,重大な欠陥を指摘するとすれば,開業医に対する指導が何一つ入っていないことであろう.抗菌薬を適正に使用できている開業医がはたしてどれだけいるのかおおいに疑問であり,当院でも経口第3世代セフェムを投与したが効かないと紹介されてくる患者や,目まぐるしく抗菌薬を短期間毎に変えて効かないと紹介されてくる患者,さらには開業医でカルバペネム系を点滴されているという驚くべきケースも散見する(製薬メーカーは開業医にカルバペネム系抗菌薬を絶対に販売すべきでないと小生は考えている).MRSAの持込例が非常に多いことも考えると,開業医レベルでの抗菌薬適正使用を行わなければコミュニティーでの感染制御は限界がある.

※経口抗菌薬に対する適正使用を推進している病院はどうやらかなり少ないようである.大学病院は研究機関でもあるため,経口抗菌薬の種類を減らすという策がとれない上,膨大な数の外来に介入していくのは非常に困難であり,現実的に不可能であるからかもしれない.しかし,経口抗菌薬を野放しにして本当に感染対策がすすむのかおおいに疑問がある.当院では2012年から経口抗菌薬(経口第3世代セフェム,キノロン,マクロライド)の適正使用についての介入を開始しており,大幅な経口抗菌薬採用数の削減とともに,経口第3世代セフェムの使用量を大幅に減少させることを目標としている.

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# by DrMagicianEARL | 2012-05-15 14:32 | 感染対策 | Comments(0)
Summary
・NHCAP診療ガイドラインは抗菌薬以外の治療法についてはあまり触れられていない.
・誤嚥性肺炎は嚥下反射・咳反射の低下が原因であり,その本態はsubstance Pの減少である.
・口腔ケアはsubstance Pの放出を促進させ,誤嚥性肺炎の予防につながる.
・ACE阻害薬はsubstance Pの分解を阻害し,嚥下反射・咳反射を改善させて肺炎を予防する効果があり,その効果は血圧に影響を与えない低用量でも発揮される.
・肺炎リスクのある高齢者に対する降圧薬において,ARBよりもACE阻害薬の方が死亡率を改善させる可能性がある.
・胃酸分泌抑制薬,とりわけPPI製剤は感染症のリスクを増大させる.一方,胃粘膜防御因子増強薬は感染症リスクを軽減する.
■高齢者肺炎のほとんどは誤嚥性肺炎であり,医療介護関連肺炎(NHCAP)である.2011年に日本呼吸器学会よりNHCAP診療ガイドラインが発表されたが,その内容はかなり抗菌薬に偏っており,抗菌薬以外の肺炎治療の方が抗菌薬単独より改善率がよいとする報告もあるにもかかわらずほとんど触れられていないに等しく,まだまだ問題点が指摘されている(2012年4月7日のNHCAPフォーラムでもその部分のフィードバックはほとんどなされておらず,反対意見はスルーされている).

■医療介護関連肺炎診療ガイドライン(NHCAP診療ガイドライン)の普及は抗菌薬に頼り過ぎる治療に成りかねず,結果的に耐性菌を増加させうる可能性があると思われる.

■誤嚥(aspiration)は,雑菌を含む唾液などの口腔,咽頭内容物,食物,稀に胃内容物を気道内に吸引することであり,これによって生じる肺炎を誤嚥性肺炎と称する.この危険因子として重要なのが不顕性誤嚥(silent aspiration:無意識のうちに細菌を含む口腔・咽頭分泌物を微量に誤嚥する現象)である[1,2].これを予防することで肺炎発症率を下げるのみならず,抗菌薬使用量減量・入院日数低下によりMRSA耐性菌などの減少につながる.

■嚥下性肺疾患は以下の4パターンがある.
① 誤嚥性肺炎
 嚥下障害により口腔内・咽頭の雑菌が気管・肺に混入し,発症する肺炎.胃食道逆流により消化管の細菌が上行性に混入することもある.
② 誤嚥性肺臓炎(化学性肺炎,Mendelson's syndrome)
 嘔吐の際に気管・肺に胃酸が混入して生じる肺炎.原則として感染合併がなければ抗生剤は不要である(抗生剤投与で逆に耐性菌による感染症合併をきたしやすくなる).状態によっては高率でALI/ARDSに進展する.
③ 人工呼吸器関連肺炎(VAP)
 人工呼吸器装着状態での感染性肺炎.
④ びまん性嚥下性細気管支炎(DAB)[3]
 食事による少量誤嚥によるもので,高齢者喘息と誤診されやすい.画像上はびまん性汎細気管支炎(DPB)に似た所見を呈する.通常,感染はきたさないため抗菌薬投与は不要である(ただし,誤嚥継続や閉塞性肺炎を呈するようであれば低用量マクロライド療法や抗菌薬治療が必要となることがある).吸入β刺激薬も吸入ステロイドも無効で,絶食のみで症状は改善する.

■以下ではNHCAPの主病態である誤嚥性肺炎について,抗菌薬以外の治療法をまとめる.
※本来ならばこれらのことはNHCAP診療ガイドラインに記載されてしかるべきである.

■不顕性誤嚥は,脳血管障害のなかでも特に日本人に多い大脳基底核病変を有している人に多く認められる[4].大脳基底核は穿通枝領域にあり,もともと脳梗塞を起こしやすい部位であるが,その障害はこの部位にある黒質線条体から産生されるドーパミンを減少させる[5].ドーパミンの減少は,迷走神経知覚枝から咽頭や喉頭・気管の粘膜に放出されるsubstance P(以下SP)の量を減少させる[2,6]

■SPは嚥下反射および咳反射の重要なtriggerであるため[2,6,7],SPの減少は嚥下反射と咳反射を低下させる.実際に,繰り返し肺炎を起こす高齢者から得られた喀痰中のSPの量は,健常者に比して減少していた[6].高齢者肺炎患者では嚥下反射と咳反射の低下が認められ,不顕性誤嚥を起こしやすい[7].特に,嚥下反射は夜間に低下しやすく,高齢者の肺炎の多くは夜間にはじまるのではないかと考えられている.

■口腔内雑菌まじりの唾液を誤嚥して誤嚥性肺炎を生じるため,口腔ケアを行い,口腔内雑菌を減少させると,たとえ誤嚥しても肺炎には至らないと考えられる.しかしながら,口腔ケアはいくら毎日行っても,1日もたてば,要介護高齢者では口腔内雑菌がもとに戻ってしまうと報告されており(雑菌除去が無意味ということではない),口腔ケアは口腔内雑菌を減らすより,口腔内を歯ブラシで刺激してSPを放出させ,嚥下と咳反射を改善することが主な作用と考えられている.

■口腔ケアを歯ブラシで食後5分くらい行ったところ,SPが放出されて嚥下反射の改善をみた[8].同様に口腔ケアによって咳反射の改善も確認されている.口腔ケアによって2年間の肺炎発生を40%減少させることができたと報告されている[9].この報告では,対象は施設入所中の要介護高齢者であるが,これらの高齢者は一旦肺炎に罹患すると,抗菌薬治療によっても20%しか救命できない.しかし,口腔ケアによって肺炎の死亡率を50%に減じることができたと報告している.抗菌薬治療の成績が悪すぎる印象は否めないが,この報告では,口腔ケアが抗菌薬より優れているとも考えられる.

■また,歯のない患者への口腔ケアを行うことによっても,歯のある人と同等の肺炎発生率と肺炎死亡率を予防できたと報告されており[10],SP放出促進がいかに重要であるかが分かる.よって歯のない患者へも口腔ケアは行うべきである.

■口腔ケアの際,患者の顔面を触った手を口腔に入れてしまう結果,MRSAなどがたれ込む.このことから,イソジンまではいらないが,まず顔面をタオルなどで拭き取ってから口腔ケアを行うべきである.口腔ケアではイソジンではなくジェルを使うと咽頭に汚れた液が咽頭にたれ込まない.

■食事の際の誤嚥を予防するには,熱い食物は熱いなりに,冷たい食物は冷たいなりに食べることによってSPが口腔から放出されて,嚥下反射は改善される[11].なまぬるい食物は最悪である.

■アンギオテンシン変換酵素(ACE)はSPの分解酵素の1つであり,降圧薬のACE阻害薬を投与すればSPの分解も阻害されるため,ACE阻害薬投与により誤嚥性肺炎患者の嚥下反射が正常化する[12].また,ACE阻害薬の有名な副作用の乾性咳嗽があるが,脳血管障害のため咳嗽反射が低下した高齢者にACE阻害薬を投与すると咳反射も改善することが知られている.実際,imidapril(タナトリル®)等のACE阻害薬は嚥下反射を改善し,肺炎罹患率を約1/3に減じたと報告されている[13].imidaprilの1/4~1/20量内服により74%の患者で不顕性誤嚥が消失し,血清SPの上昇を認めた[14]ことから,正常血圧患者でも血圧に影響を及ぼさない少量のACE阻害薬で肺炎予防効果が期待できることが分かる.

■脳内移行性が確認されているACE阻害薬はperindopril(コバシル®)とcaptoril(カプトリル®)があり,認知機能低下をきたす原因の1つである脳内ACEを阻害することで,非移行性ACE阻害薬よりアルツハイマー病発症率が有意に低下したと報告されている[15]
※ACE阻害薬は嚥下機能改善目的での使用は保険適応がないため,高血圧病名をつけておく必要がある.

■嚥下機能が落ち,肺炎リスクのある高齢高血圧患者においては,病態生理学的にも臨床的にもARBをACE阻害薬より優先して使用するメリットはないと考えられる.しかし,これまで死亡率をアウトカムとして比較した報告はほとんどなかった.実際にACE阻害薬は上述の通り,高齢者で問題となる誤嚥性肺炎とアルツハイマー病を予防し得ることが近年分かってきており,くわえて,メタボサルタンとも呼ばれる種類のARBの特徴であるPPAR-γ活性化作用は肺炎や下気道感染のリスクを増加させる可能性も指摘されている[16]
※一方のACE阻害薬では,かなり稀ではあるが,小腸血管性浮腫に注意が必要である.急性腹痛症状で発症する.(Am J Roentgenol 2011; 197: 393)

■そのような中,2012年4月にACE阻害薬とARBにおける20報・16万人のRCTのメタ解析が発表された[17].このような高血圧による死亡率のメタ解析は世界初である.この報告によると,全体の全死亡および心血管死を解析したところ,プラセボ群に比べてACE阻害薬/ARB投与群は全死亡リスクを5%有意に低下させることが分かった.しかし,ACE阻害薬,ARBに分けてそれぞれを解析したところ,両者のリスク低下作用に差が生じた.ACE阻害薬はプラセボ群に比べて全死亡率を10%有意に低下させた(20.4%vs24.2%)のに対し,ARBでは有意差が見られなかった(21.4%vs22.0%).また全死亡リスクの低下を両群間で比較したところ,ACE阻害薬の方が有意に死亡率が低下した.そして,ACE阻害薬とARBでは心血管死のリスクに有意差はなく,それ以外のイベントにより死亡リスクに差が出たことになる.この結果から,誤嚥性肺炎リスクのある高齢高血圧患者ではARBよりACE阻害薬が推奨されるべきかもしれない.

■ドーパミンが少なくてSPが放出されないことから,ドーパミンを補充すれば誤嚥性肺炎は予防が可能と考えられる.実際,嚥下反射の低下した脳血管障害患者にL-DOPAを投与すると嚥下反射が著明に改善した.そこで,脳血管障害を有する高齢者患者に大脳基底核でのドパミン遊離促進薬であるアマンタジン(シンメトレル®)投与により肺炎発症率が1/5に抑制された[12].誤嚥性肺炎に罹患した患者を抗菌薬単独投与群と抗菌薬+ACE阻害薬タナトリル+シンメトレル併用投与群で比較したところ,併用群で抗菌薬使用量が半減し,在院日数・医療費は2/3に減少,MRSA発生率,肺炎での死亡率も有意に減少した[18]

■不顕性脳梗塞も含めると,脳血管障害の99%は脳梗塞と考えられる.不顕性脳梗塞でも,要介護高齢者であれば,2年以内に30%は肺炎を生じる.要介護高齢者に抗血小板作用と脳血管拡張作用を有するシロスタゾール(プレタール®)を投与すると,誤嚥性肺炎発症率が40%に低下したと報告されている[7].また,アスピリンとの比較でもシロスタゾールの肺炎予防効果が有意に高かった[19].さらに,シロスタゾールに嚥下改善作用が報告され,脳梗塞予防以外にも肺炎予防効果に関連する作用を有することが明らかになった[20]

■漢方の半夏厚朴湯は脳変性疾患患者に投与すると嚥下反射時間が短縮することが知られている.長期療養型病院に入院中の患者に半夏厚朴湯を投与すると,非投与群に比して肺炎の発症率が有意に抑制される[21]

■胃ろう増設患者において胃液逆流改善効果のあるモサプリド(ガスモチン®)投与により肺炎頻度が減少する[22]

■高齢患者の入院後感染症発症率は胃酸抑制薬投与群で38.8%,非投与群で9.6%(p<0.001)である.この傾向はPPI(プロトンポンプインヒビター製剤)で著明であり,H2RA(H2受容体拮抗薬)では有意差がなかった[23].PPIは感染症リスクであり,Clostidium difficile関連下痢(CDAD)の原因においても抗菌薬と同じくらい重要である.胃酸抑制薬使用で市中肺炎発症リスクが4.47倍[24],PPIで市中肺炎入院リスク1.5倍[25],胃酸抑制薬使用で院内肺炎発症リスク30%増[26]などが報告されている.また,65歳以上で肺炎入院既往がある肺炎ハイリスク患者で胃酸抑制薬使用は肺炎再発リスクを1.5倍になると報告されている[27]

■高齢入院患者において胃粘膜防御因子増強薬が単独投与されていた患者からの感染症発症はなく,投与されていた患者全体では感染症発症率は9.4%で,非投与群の25.6%に比べると有意に低い[28].胃酸抑制薬を投与されていても,胃粘膜防御因子増強薬を併用されていた患者では感染症発症率は18.8%であり,胃酸抑制剤単独投与の38.8%より有意に抑制されていた.この傾向は肺炎においても同様であった.胃粘膜防御因子増強薬はムチンなどを含む胃粘液の増加,胃粘膜のプロスタグランジンの増加,創傷治癒の促進,抗炎症作用などを有し,損傷した粘膜の修復や保護に作用する.ムチンには細菌の排除を容易にする作用がある.

■以上より,誤嚥性肺炎リスク患者においてPPI投与は本当に必要か再検討すべきであり,むしろ胃粘膜防御因子増強薬の使用をより積極的に考慮すべきかもしれない.
※当院ではガスロン®を推奨している

[1] N Engl J Med 2001; 344: 665-71
[2] Tohoku J Exp Med 2005; 207: 3-12
[3] Chest 1998; 114: 350-1
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[10] J Am Geriatr Soc 2002; 50; 430-3
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[12] J Am Geriatr Soc 2001; 49: 685-90
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[17] Eur Heart 2012 Apr.17
[18] J Am Geriatr Soc 2004; 49: 687-8
[19] Cerebrovasc Dis 2006; 22: 57-60
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[23] Front Gastroenterol 2009; 14: 263-70
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[25] Arch Intern Med 2007; 167: 950-5
[26] JAMA 2009; 301: 2120-8
[27] AJM 2010; 123: 47-53
[28] Front Gastroenterol 2009; 14: 263-70
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# by DrMagicianEARL | 2012-05-10 06:11 | 肺炎 | Comments(3)
■広域抗菌薬使用例や早期経腸栄養を行っていない症例では何がまずいかを示すときにもってこいなのが以下の大阪大学の文献.腸管は人体の免疫の60%前後を有する最大の免疫システムであり,腸内細菌叢と腸管細胞と免疫は互いにcross-talkの関係にある.広域抗菌薬投与は腸内細菌叢の破綻をもたらし,経腸栄養を行っていない症例では腸内細菌叢撹乱,腸管細胞脱落,免疫力低下をきたすという理論が現在のスタンダードである.

■下記文献ではSIRS患者における便塗抹グラム染色所見で見た腸内細菌叢の多様性維持と予後の関係について研究した単施設前向きコホート研究である.多様性維持群,単一細菌群,細菌減少群に分け,MODS/MOFによる死亡率はそれぞれ5.9%,52.4%,64.3%であり,多様性維持群で有意に低く,便グラム染色による腸内細菌叢の確認が重症患者における状態と予後の指標となることが示されている.

■なお,広域抗菌薬(特にTAZ/PIPC(ゾシン®))を多用する病院は,患者の便中のグラム染色を見てみるとよい.腸内細菌叢がどれだけ破壊されているかが分かるはずである.これにPPIなどの胃酸抑制薬が加わることで一気に感染症リスクが増大する.

Shimizu K, Ogura H, Tomono K, Tasaki O, Asahara T, Nomoto K, Morotomi M, Matsushima A, Nakahori Y, Yamano S, Osuka A, Kuwagata Y, Sugimoto H.
Patterns of Gram-stained fecal flora as a quick diagnostic marker in patients with severe SIRS.
Dig Dis Sci. 2011 Jun;56(6):1782-8. Epub 2010 Nov 24.

Abstract

BACKGROUND: The gut is an important target organ of injury during critically ill conditions. Although Gram staining is a common and quick method for identifying bacteria, its clinical application has not been fully evaluated in critically ill conditions.

AIMS: This study's aims were to identify patterns of Gram-stained fecal flora and compare them to cultured bacterial counts and to investigate the association between the patterns and septic complications in patients with severe systemic inflammatory response syndrome (SIRS).

METHODS: Fifty-two patients with SIRS were included whose Gram-stained fecal flora was classified into three patterns. In a diverse pattern, large numbers of multiple kinds of bacteria completely covered the field. In a single pattern, one specific kind of bacteria or fungi predominantly covered the field. In a depleted pattern, most bacteria were diminished in the field.

RESULTS: In the analysis of fecal flora, the numbers of total obligate anaerobes in the depleted pattern was significantly lower than those in the diverse pattern and single pattern (p < 0.05). The concentrations of total organic acids, acetic acid, and propionic acid in the depleted pattern were significantly lower than those in diverse pattern and single pattern (p < 0.05). Mortality due to multiple organ dysfunction syndrome for the single pattern (52%) and the depleted pattern (64%) was significantly higher than that for the diverse pattern (6%) (p < 0.05).

CONCLUSIONS: Gram-stained fecal flora can be classified into three patterns and are associated with both cultured bacterial counts and clinical information. Gram-stained fecal bacteria can be used as a quick bedside diagnostic marker for severe SIRS patients.
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# by DrMagicianEARL | 2012-04-26 12:15 | 敗血症 | Comments(0)

by DrMagicianEARL