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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.医療におけるAIについても

■NEJM誌に相次いで敗血症関連のRCT論文が3報(ProCESS trial,ALBIOS study,SEPSISPAM study)online publishされましたが,一番インパクトがあるのはこの論文かな?と思ってまずはProCESS trialから紹介することにしました.敗血症性ショックEGDTプロトコルを評価するために3つの大規模RCTであるProCESS,ARISE,ProMISeが行われ,そのうちの1つが報告されたことになります.
早期の敗血症性ショックにおけるプロトコルに基づいた治療の無作為化試験(ProCESS trial)
The ProCESS Investigators. A Randomized Trial of Protocol-Based Care for Early Septic Shock. N Engl J Med 2014 March 18 [Early publish online]

Abstract
【背 景】
ERで,血行動態を標的に調整された輸液,循環作動薬,強心薬,輸血による6時間の早期目標指向型治療(EGDT)プロトコルによって治療を受けた重症敗血症および敗血症性ショック患者が,通常治療を受けた患者よりも著明に死亡率が低かったとする単施設研究が10年以上前に報告された.我々は,これらの知見が一般化できるのか,プロトコルの全ての要素が必要なのか,について検討する試験を行った.

【方 法】
米国31施設のERにおいて,我々は敗血症性ショック患者を6時間の蘇生において,EGDTプロトコル群,中心静脈カテーテルは用いずに強心薬と輸血を用いた標準治療プロトコル群,通常治療群の3群のうちの1つに割り付けた.主要評価項目は60日院内死亡率とした.我々は,(EGDT群と標準治療群をあわせた)プロトコルに基づいた治療が通常治療よりも優れているか,EDGTプロトコルが標準治療プロトコルよりも優れているかについても検討した.副次評価項目は長期死亡率と臓器支持療法の必要性とした.

【結 果】
1341例の患者が登録され,439例が無作為にEGDT群に,446例が標準治療プロトコル群に,456例が通常治療群に割付られた.蘇生戦略は,中心静脈圧と酸素のモニタリング,輸液,循環作動薬,強心薬,輸血の使用のそれぞれにおいて有意に異なっていた.60日までに,EGDTプロトコル群で92例が死亡(21.0%),標準治療群で81例が死亡(18.2%),通常治療群で86例が死亡(18.9%)した(プロトコルvs通常治療 RR 1.04; 95%CI 0.82-1.31; p=0.83 / EGDTプロトコル vs 標準治療プロトコル RR 1.15; 95%CI 0.88-1.51; p=0.31).90日死亡率,1年死亡率,臓器支持療法の必要性についても有意差はみられなかった.

【結 論】
3次救急において試行された多施設共同試験において,ERで診断された敗血症性ショック患者へのプロトコルに基づいた蘇生は予後を改善させなかった.
1.ProCESS trialの結果をどうとらえるか?

■ProCESSはProtocolized Care for Early Septic Shockの略であり,その名の通り,敗血症性ショックにおいてプロトコライズされた治療が,中心静脈カテーテルを用いない標準プロトコル群,あるいはプロトコルを用いない通常治療群と比較して有効かどうかを検証しており,EGDTプロトコルが予後を改善しないことが示されたことになり,これはSSCG(Sruviving Sepsis Campaign Guidelines)[1-3]の推奨に疑問を投げかけるものである.ただし,注意すべきは,この研究で用いられたEGDTは,EGDTの有効性を示したRiversら[4]のRCTのプロトコルとほぼ同じである.すなわち,CVP,平均血圧,ScvO2の3つの目標達成であるが,現在の臨床現場においてはこのRiversらのプロトコルをそのまま用いている施設はむしろ少ないのではないかと思われ,各施設でカスタマイズされたEGDTプロトコルを施行していることも予想され,この研究結果を受けて現在の敗血症性ショックの診療スタイルを変える医師はそれほどいないのではないだろうか?(そもそもこの研究での通常治療群が大雑把な記載しなかく,どのような治療をしたのかわかりにくい).

※当院の敗血症性ショック治療のEGDTプロトコルは,Passive Leg Raising test,CVP呼吸変動,平均血圧,尿量,乳酸値を指標としたプロトコルにカスタマイズしている.現在ここにアルブミンや他の蛋白を加味した指標を加えるか検討中である.

■また,Riversらの研究の時と今回のProCESSでは支持療法が異なる.とりわけ,敗血症の早期認知,早期の抗菌薬治療開始,NICE-SUGAR studyで示された中等度レベルでの血糖管理,低1回換気戦略といった部分で予後が当時よりさらに改善しており,死亡率が20%前後というのは歴代の敗血症性ショック患者を対象とした大規模RCTの中でも最もよい治療成績である(平均APACHEⅡスコアは20.7).これは研究前の予想死亡率,APACHEⅡスコアからの予測死亡率よりも低い.

■この研究でEGDTプロトコルと比較された標準プロトコルは,中心静脈カテーテルを用いない.すなわち,CVPとScvO2を計測せずに管理を行うプロトコルであり,収縮期血圧(100mmHgでカットオフ)とショック指数(0.8でカットオフ)を指標に輸液負荷,循環作動薬を投与している.また,EGDTプロトコル群も標準プロトコル群も尿量モニタリングはプロトコルに入っていない.

■最初の6時間での輸液量はEGDT群2.8L,標準プロトコル群3.3L,通常プロトコル群2.3Lであった(p<0.001).1時間ごとの輸液量のグラフを見ると,最初の2時間は標準治療プロトコル群>EGDT群=通常治療群であったのに対し,3時間目以降は標準治療プロトコル群=EGDTプロトコル群>通常治療群であった.

■循環作動薬,輸血,ドブタミンの使用率はいずれも3群間で有意差があり,EGDTプロトコル群>標準プロトコル群>通常治療群であった.

■平均血圧≧65mmHg達成率はEGDTプロトコル群,標準治療プロトコル群が通常治療群よりも有意に高かったが(p=0.02),平均心拍数は有意差がなかった(p=0.32).

■今後詳細な二次解析が行われる可能性はあるが,輸液量の違い,平均血圧の違い,薬剤・輸血の使用量の違いでの長期予後については,1年死亡率と臓器支持療法必要性というアウトカムでは有意差はなかった.

2.EGDTとRiversの報告,ProCESS trialが教えてくれたこと

■EGDT(Early Goal-directed therapy;早期目標指向型治療)はSSCG(Surviving Sepsis Campaign Guidelines)で提唱されている治療概念であり,抗菌薬治療とは独立した,敗血症性ショック治療の中心となる治療法である.これまで急性期循環管理にEGDTを導入したのは,1988年のShoemakerらの報告[5]にさかのぼり,その後の報告[6-9]によっても酸素消費量を改善するには必要な輸液をまず行うことで至適な循環血流量の維持が必要であることが示されていた.

■2001年にRiversらが報告したEGDTプロトコルは,救急初療の段階で敗血症性ショックと評価された対照群133症例,EGDT群130症例を前向き検討したものであり,カテコラミン投与に優先して十分な輸液を行い,中心静脈酸素飽和度を改善させることで,末梢の虚血に伴う代謝性アシドーシスと乳酸産生を救急初療の段階で有意に軽減し,院内死亡率を46.5%から30.5%に減じている.この輸液を中心としてプログラムされたRivers EらのEGDTでは,ショック初期6時間におけるScvO2≧70%が患者の94.9%で達成されており,EGDTを施行しない対照群では60.2%の達成率に過ぎない.また,7-72時間後の人工呼吸器装着率を16.8%から2.6%に減じている.

■画期的と言われたRiversらの研究は,その後CVPやScvO2の有用性が疑問視されても[10]なおSSCGにおいて蘇生プロトコルに最重要な治療戦略として組み込まれて続けている.この10年以上も前の古いプロトコルが推奨され続けてきた背景には,EGDTそのものの有効性を,非EGDTと比較して評価したRCTが実はRiversらの報告以降1報もなかったという事情もある(個々の指標を評価したRCTはある).そしてようやく行われた大規模多施設共同RCTがこのProCESS trialであり,さらには現在進行中のARISE,ProMISeである[11].この3つのRCTはデータを統合して解析可能であることも報告されており[12],最終的に3つの結果すべてが出揃えば精密なメタ解析がなされるものと思われる.

■本ブログで繰り返し述べている通り,いかなるエビデンスもといえどもその妥当性はTPO(Time Place Occasion)の影響を免れない.質の高いシステマティックレビューによるエビデンスでも賞味期限1年以内が15%,2年以内が23%,賞味期限の平均期間はわずか5.5年(95%CI 4.6-7.6)しかなく[13],今回,RiversらのEGDTプロトコルが再検証されたのは当然の流れであろう.

■しかし,このProCESS trialの結果はRiversらの功績を否定するものではない.事実,EGDTによって死亡率が低下したとするコホート研究の報告は数多く,死亡率を75%から30%まで改善させた当院[14]でも例外ではない.敗血症治療の基礎が定まっていなかった時代,あるいは敗血症治療の知識・経験が乏しい施設においてはEGDTが救命に大きく寄与してきたことは事実である.さらに,EGDTの普及を通して敗血症の循環動態を,治療概念を多くの医師に認知させることによりさらなる救命率の向上と研究を発展させた功績は大きい.Riversらが研究を行った時代は7割の医師が敗血症の定義を認知しておらず,また正しい知識を持ち合わせていないために8割の医師が敗血症を誤診するという事態が発生していたのである[15].こういった時代背景の違いもアウトカムの違いに影響がでたものと思われる.

■現在,EGDTはRiversらのプロトコルの骨格を保ちつつ,さまざまな指標や治療が加えられてカスタマイズされ,さらに治療成績を向上させつつあるが,敗血症治療成績がまだ芳しくない不慣れな施設においては,まずはガイドラインに沿ったEGDTの推奨によって治療水準を標準レベルまで上げるべきである.少なくとも今回のProCESS trialはEGDTが通常治療と比較して死亡率を改善させなかったというものであり,EGDTが予後を悪化させたわけではない.対照群とされた通常治療群の治療の質は経験豊富な三次救急施設の救急集中治療医によって担保されており,そうでないならばEGDTプロトコルに従っておく方がbetterであろう.

■現在敗血症初期蘇生においては大量輸液推奨から過剰輸液回避推奨に切り替わりつつある.ProCESS trialにおいて通常治療群の輸液量がプロトコル群よりも少ないことはより少ない輸液量で管理可能性があることの証左であろう.輸液量をどこまで減量しうるかについては,現在本邦でEV1000を用いたRCTの結果が待たれる.

■救急・集中治療医でない医師の中には「侵襲的処置はしてほしくないけどなんとか助けてくれ」という家族の希望のもと一般病棟で敗血症性ショックの治療を行ったことのある医師も少なくないと思われる.私自身,十数例ほど一般病棟で中心静脈カテーテルも動脈カテーテルも挿入せずに高齢者の敗血症性ショックの初期蘇生治療を行ったことがあるが,ICUでの積極的治療に比して治療成績はやや落ちるものの救命できないことはない.Hanzelkaら[16]は癌患者の敗血症性ショックにおいて,EGDTを非侵襲的要素のみで組んだ治療アルゴリズムを導入し,導入前後で比較を行ったところ,28日死亡率は20%vs38%で,導入後に有意に改善したと報告している.このように,癌患者で非侵襲的治療に限定した難しいケースであっても,SSCGにできる限り準じた治療を行うことで非担癌患者と同等レベルの治療成績をだせることが示されてきている.今回のProCESS trialの標準プロトコルは中心静脈カテーテルや動脈カテーテルなしでも管理できる指標であり,EGDTと変わらない治療成績を示していることから,うまく管理すれば一般病棟でも良好な敗血症性ショック治療成績をだせる可能性がある.この知見は近年日本にも上陸した癌救急(Oncologic Emergency)[17-19]領域においても重要であると思われる.

■同時に,中心静脈カテーテルを挿入しない治療は,治療侵襲度を下げ,カテーテル関連血流感染症や血栓リスクを回避しうる.長期予後の知見が増えるようになり,PICS(Post-Intensive Care Syndrome)[20,21]の概念も提唱されている近年,できる限り低侵襲で最大の治療効果をあげることが求められており,死亡率に差がなかった今回の研究結果から,中心静脈カテーテル挿入をできる限り回避する治療も検討してもよいかもしれない.

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[21] DrMagicianEARL. 敗血症と長期予後,PICS(Post Intensive Care Syndrome) EARLの医学ノート 2014 Apr.16 http://drmagician.exblog.jp/20272480
# by DrMagicianEARL | 2014-03-21 19:32 | 敗血症
【文献+レビュー】聴診器の菌汚染は手に匹敵する/聴診器の汚染と消毒レビュー_e0255123_15244139.png
■聴診器が汚いことは誰もが認識してると思いますが,じゃあどのくらい汚いのかというところまでは認識されておらず,そこまで院内感染の原因にまではなるまいという認識の医師は多いのではないでしょうか?首にかける,ポケットに入れる等の先生は多いですが,これも汚染されるもとです.私はICUでは原則聴診器は持ち歩かず極力個々の患者専用のものを使用し,一般病棟ではアル綿消毒を使用しています(もちろん手指衛生とセットです).聴診を指導する際には是非聴診器の消毒についても指導してください.

■今回手と聴診器の汚染レベルを比較した報告がでたので以下に紹介するとともに,聴診器と菌汚染に関するレビューを行いました.聴診器と菌汚染については「臨床に直結する感染症診療のエビデンス(文光堂)」にエビデンスレビューがあるのですが,論文が3報しかなかったので,そんなに多くないだろうと思って探してみたらたくさん見つかってまとめるのが大変でした.案外研究されてるんですね.
診察後の聴診器と医師の手の汚染
Longtin Y, Schneider A, Tschopp C, et al. Contamination of stethoscopes and physicians' hands after a physical examination. Mayo Clin Proc 2014; 89: 291-9
PMID:24582188

Abstract
【目 的】
医師の手と聴診器の汚染レベルを比較し,聴診器の使用による微生物の交叉伝播リスクを検討する.

【方 法】
スイスの大学病院で2009年1月1日から2009年5月31日まで83例の入院患者を登録した前向き研究を行った.標準的な診察後に,医師の手袋をしたあるいはしていないきき手の4箇所と,聴診器の2箇所を選択的あるいは非選択的培地にプレスし,489表面の検体を得た.全好気性コロニー数と全メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)CFU数を評価した.

【結 果】
指先,母指球,小指球,手背,聴診器膜部,聴診器チューブの全好気性コロニー数中央値はそれぞれ467,37,34,8,89,18であった.聴診器膜部の汚染レベルは指先の汚染レベルより低かったが(p<0.001),母指球の汚染レベルよりは高かった(p=0.004).聴診器膜部のMRSA汚染レベルは母指球のMRSA汚染レベルより高かった(7CFUs/25cm^2 vs 4CFUs/25cm^2; p=0.004).全好気性コロニー数およびMRSA CFU数の相関解析では,聴診器膜部の汚染レベルは指先の汚染レベルと関連していた(スペアマン順位相関係数 ρ=0.80; p<0.001,ρ=0.76; p<0.001).同様に,聴診器チューブの汚染レベルは,全好気性コロニー数およびMRSA CFU数の指先の汚染レベルの増加に伴い増加した(ρ=0.56; p<0.001, ρ=0.59; p<0.001).

【結 論】
これらの結果から,1回の診察後の聴診器の汚染レベルは相当なものであり,医師のきき手の各部位の汚染に匹敵することが示された.
1.感染対策上の聴診器の心得

■聴診器は医療スタッフが手で触り,かつ患者の体にあてる医療器具であり,消毒もあまりなされないことから菌汚染リスクは高く,手の汚染度に匹敵するとした今回の研究結果は納得がいくものである.患者の体表にあてる膜部は特に菌汚染が生じやすい.一般的に微生物は凹凸面よりも平滑面上の方が長く生存しうることが知られており,実際に,MRSAが聴診器に付着すると,60日後(消毒なし)でも15%の聴診器でMRSAを検出したと報告されている[1]

■聴診器表面に付着した細菌は,菌数を増やしながら細胞外多糖(EPS;extracellular polysaccharide)を産生し,接着がより強固になるとともに新たな菌付着の要因となる.さらにEPSはバリアーや各種物質の運搬経路の役目も果たし,いわゆるバイオフィルムを形成する.バイオフィルムが形成されると,環境変化,化学物質からの抵抗性が増す.このような菌としてブドウ球菌や緑膿菌は特に注意が必要である.

■感染症患者と診療で接触する以上,本来は聴診器は持ち歩くべきではなく,原則として聴診器は個々の患者専用とするのが望ましい(血圧計,体温計も)が,現実的には難しい面もある.このため聴診器を持ち歩くことが回避できないのが実際であり,聴診器の消毒と手指衛生を怠れば院内感染は容易に成立してしまうことを認識しなければならない.なお,ICU,血液内科病棟においては聴診器を個々の患者専用とすることは絶対条件とすべきであろう.

■首に聴診器をかける医師は非常に多いが,これは感染対策上行うべきではない(病院機能評価の際に見つかると評価員に注意されることがある).首は腋窩同様にグラム陽性菌のリザーバーの1つであり,聴診器汚染の原因となる.白衣のポケットに入れる方が無難ではあるが,白衣のポケットも手を入れる場所でもあり埃もたまるため,汚染しているリスクは高いと考えるべきである.

■聴診器を対象とした研究は,RCTはほとんどないものの観察研究等は数多く行われており,そのアウトカムは非常に参考となる.以下に文献のレビューを行った.

2.聴診器はどれだけ汚染されているか?

■聴診器の汚染率を調査した文献はPubMed検索で17報ヒットした[2-18].各研究ごとに培養の行い方が異なるため注意は必要であるが,abstractの記載データ(Free Full Textの場合は原文記載データまで収集)から(なんちゃって)メタ解析(n=2182)も以下に行った.

■聴診器の汚染率は27.5%から100%まで報告によって幅があり,中央値は78.5%であった.データを統合すると,汚染率は72.6%(95%CI 70.2-74.7%; 11研究1119例)であった.

■コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)検出率は27.5%から55%の幅であり,中央値は42.8%,データを統合すると45.5%(95%CI 41.6-49.4%; 4研究616例)であった.

■黄色ブドウ球菌(MRSA含む)検出率は1%から58.7%の幅であり,中央値は22.9%,データを統合すると30.1%(95%CI 27.9-32.4%; 12研究1530例)であった.

■MRSA検出率は0%から32%までの幅であり,中央値は7.3%,データを統合すると7.4%(95%CI 5.8-9.4%; 7研究799例)であった.

■以上から,聴診器が10本あれば,7本に菌汚染があり,5本にCNSが,3本に黄色ブドウ球菌が,1本にMRSAが付着しているというのがだいたいの頻度である.

■職種別では,聴診器汚染率は看護師より医師の方が高いという報告が複数ある[2,3,8,16].また,医学生,研修医,レジデントの聴診器汚染率は9割前後と高く,一方で麻酔科医は42.9%であったと報告されている[5].ここには医師,医学生の手指衛生遵守率の低さも関連していると思われる.

■病棟別では,Shiferawら[5]の報告では,聴診器汚染率はICUで100%,内科病棟で96%,病原菌でみるとICUで68.8%,産科病棟で35.3%であった.Unekeら[12]の報告では,聴診器汚染率は,ICU(66.7%),VIP病棟(50%),産科病棟(37.5%)であった.

■Zachary[19]らは,バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の保菌または感染者49例の観察研究を行ったところ,33例(67%)の診察・ケアに用いた手袋・ガウン・聴診器の少なくとも1つからVREを検出した.手袋の汚染率は63%,ガウンは37%,聴診器は31%であった.3つすべてからVREを検出したのは24%であった(多くは人工肛門形成術後または回腸造瘻術後の患者).手袋の汚染がなく,聴診器とガウンが汚染されていたのは1例のみ,また,アルコール消毒後の聴診器ではVRE検出例は1例のみであった.この研究から,手が汚染されなければ聴診器も汚染されることは稀であることが分かり,手指衛生の重要さが分かる.Unekeら[16]の報告でも,手洗いを行ったスタッフの聴診器の汚染率は9%であったのに対し,手洗いを行っていないスタッフでは86%であった.

3.聴診器の消毒は?

■聴診器の消毒はしばしば忘れられる.それゆえ,聴診器の汚染率に関連した論文の中には「あなたの聴診器で何を育てているの?」[20],「聴診器は味方なのか敵なのか?」[13],「Stethoscope or 'Staphoscope'?」[21]というタイトルのものもある.

■Jonesら[3]は,米国市中病院救急部の医療従事者150人の聴診器の消毒とブドウ球菌汚染について調査した前向き横断研究を行い,毎日あるいは毎週聴診器を消毒している医療従事者は48%,毎月は37%,年1回は7%,全く消毒しないのは7%であったと報告している.

■Tangら[6]は,ERスタッフ100名の聴診器を調べた前向き観察コホート研究(EXSSCITED pilot study)を行い,患者の聴診前後で消毒をしていた看護師は全体の8%しかおらず,聴診器を消毒しない理由としては,時間がない,多忙,忘れてしまう,といった理由が最も多かった.

■Merlinら[7]は,ERのスタッフの聴診器50本での前向き観察コホート研究を行い,32%のスタッフは最後にいつ聴診器の消毒をしたのか覚えておらず,最後に消毒した日からの日数とMRSA汚染には関連性が認められた.

■Gennéら[10]は62本の聴診器を調査し,医師の聴診器の消毒頻度は,頻回が32%,稀が46%,全く行わないが22%であったと報告している.この報告では,1日聴診器の消毒を行わないだけで汚染率は0%から69%まで上昇することから,少なくとも1日1回は消毒を行うべきであるとしている.

■Bukharieら[17]は,100本の聴診器を調査し,消毒頻度は毎日が21%,週に1回が47%,年に1回が32%であった.

■Núñezら[18]はERスタッフの聴診器122本の調査では42%が聴診器の消毒が年1回かまったくしない状態であった.

■聴診器の消毒によって菌汚染を減らすことができるとする報告は多く[2-5,7,9,10,16,19,20,22],約9割の汚染率減少効果がある.

■Parmarら[23]は,100本の聴診器において,消毒前群,ただちに66%エチルアルコール消毒する群,消毒しないまま4日経過した群,1日1回の消毒4日後群を比較した二重盲検RCTを行い,ただちに消毒すること,1日1回消毒することは菌汚染の減少に有意に関連しており(それぞれ28%,25%減少),コロニー数が10個未満だった聴診器はそれぞれ75%,84.7%であった(平均減少率5.2%,3.65%)であったことから消毒は有用であると結論づけている.Unekeら[12]は,各ケアごとに70%イソプロピルアルコールによる聴診器の消毒を行う訓練と教育を行うキャンペーンを施行し,前後で聴診器の汚染率を比較した前後比較研究を行ったところ,菌汚染率が78.5%から20.2%に有意に減少したと報告している.

■消毒に何を使うかについて比較検討した研究は3報あり,アルコール製剤が最も菌汚染を減らすとの報告が2報[2,3]であった.もう1報[24]はアルコール製剤どうし(エタノールベースのクレンザーとイソプロピルアルコール綿)を比較したコホート研究であり,2つの消毒法に有意差はなかった.

■なお,聴診器膜部の抗菌カバーは有用でないことが報告されている[25]

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# by DrMagicianEARL | 2014-03-12 15:25 | 感染対策
2014年1月31日掲載
2014年3月10日追記・改訂
この記事は鳥取大学の研究について紹介したものですが,ちょうどSTAP細胞論文がNature誌からpublishされたニュースがでた頃と重なったため,Abstractの下にちょっとだけ言及しました.しかし,この1ヶ月ちょっとで事態がいろいろと変わり,STAP細胞論文そのものに疑いがもたれている状況にあるため,今回追記改訂しました.


■iPS細胞理論(というより体細胞の再プログラミング(初期化)による多能性獲得の理論)の応用で,癌細胞を正常細胞に戻すという,一般的抗癌剤や分子標的治療薬ではなしえなかった,これまでにない癌根絶治療のパラダイムシフトともいえる夢の治療法が見えてきたのかもしれません.しかも,この研究は日本(鳥取大学)からの報告です.
Hsa-miR-520dは幹性誘導により肝癌細胞を正常な肝組織に誘導する
Tsuno S, Wang X, Shomori K, et al. Hsa-miR-520d induces hepatoma cells to form normal liver tissues via a stemness-mediated process. Sci Rep 2014; 4: 3852
PMID:24458129

Abstract
【目的・方法】
ヒトncRNA遺伝子RGM249は癌細胞の分化度の範囲を制御し,293FT細胞をhiPSCsに転換する.この過程にある因子を特定するため,我々はin vitroで293FT細胞およびHLF細胞におけるレンチウイルスから誘導したmiR-520d発現の効果を検討した.続いて,我々は異種移植モデルにおいて腫瘍の形態を評価した.

【結 果】
移植されたHLF細胞は24時間以内にOct4およびNanogが陽性となり,p53のアップレギュレーションとヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子(hTERT)のダウンレギュレーションを示し,ほとんどは移動能を失っていた.レンチウイルス感染後,細胞はマウス腹腔内に注入され,1ヶ月後の注入部位において,成熟(良性)奇形腫(6%),腫瘍なし(87%),成熟肝組織内の分化(7%)がみられた.

【結 論】
我々は単一のマイクロRNA(miRNA)の発現によってin vivoで癌細胞の悪性度を消失させることを初めて示した.このmiRNAは293FT細胞と肝臓癌細胞をhiPSC様細胞に転換させることに成功した.miR-520dによる悪性度の制御は,p53のアップレギュレーションを維持しつつ癌細胞を正常幹細胞に転換する.
■ここで登場している293FT細胞は京都大学の山中伸弥教授がiPS細胞に使用した細胞である.この293FT細胞や未分化癌を幹細胞に変化させると,癌抑制遺伝子であるp53を高発現している.それまではmiR-302 familyやmiR-369,200cなど多数種のマイクロRNA併用による幹細胞への初期化が検討されているが,単一マイクロRNAでこのような結果が得られたことはこれまでなかった.この研究では未分化癌細胞にmiR-520dを導入すると,わずか12時間で細胞が変化し,癌細胞とはまったく異なる細胞に転換している.この検討は高分化の癌細胞でも検討されており,1ヶ月の期間を要して同様の変化がみられている.よって,悪性度が高い低分化の癌細胞ほど容易に良性化に転換しやすい特徴があることが分かる.このmiR-520dは極めて小さい分子であり,癌細胞への感受性が高い.

■本研究ではレンチウイルス(遺伝子導入ツールとしてよく用いられる)を使用しており,このウイルスを用いずに可能な技術なのかは考慮しておく必要があるかもしれない(レンチウイルスには癌化リスクもある).また,miR-520Rがどのように作用しているのかの機序の解明がまだ不明確なようである(8000以上の遺伝子を標的にしているようで,解明は困難を極めるかもしれない).

----- STAP細胞に関する内容ここから.文字がグレーの部分は1月31日の記事-----
■先日報道され話題になっているSTAP細胞(Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency cell;刺激惹起性多能性獲得)[1,2]についても少しとりあげておく.STAP細胞は理研発生・再生科学総合研究センター細胞リプログラミング研究ユニットの小保方晴子研究ユニットリーダーを中心とする研究ユニットと,同研究センターの若山照彦元チームリーダー,および米国ハーバード大学のチャールズ・バカンティ教授らの共同研究グループによる成果である.

■iPS細胞は遺伝子を導入することで初期化し,多能性をそなえた幹細胞であり,簡便に作製できるが,ES細胞ほどの能力を有さない.STAP細胞は遺伝子導入が不要で,刺激を与えるのみで作製が可能で,iPS細胞よりも作製効率が向上しているようである.さらに,STAP細胞は,試験管の中では細胞分裂増殖が生じない(iPS細胞やES細胞は試験管内増殖が可能).しかし,ACTH培養下,あるいはFGF4培養下ではSTAP細胞は細胞分裂による増殖が可能であった.興味深いことに,ACTH培養下では体の細胞を造る能力はあるが胎盤や羊膜を造る能力はなく,逆にFGF4培養下では体の細胞は造れず,胎盤や羊膜を造れる能力を有していた.胎盤や羊膜の細胞への変化はiPS細胞やES細胞では不可能であり,それゆえ今回のSTAP細胞は全能性の可能性があるとされている.

■このSTAP細胞研究のlimitationとしては,生後1週間のマウスを用いている点であり,実際には,大人のマウスでは成功率が極端に低くなってしまうとのことで(加齢による細胞劣化が原因とのこと),ここをクリアすることが1つの大きな検討課題となると思われる.また,試験管内では増殖できないゆえに大量調整ができないことも課題となっている.

■理研とSTAP細胞の共同研究を行ったハーバード大学研究チームは,脊髄損傷で下半身が不自由になったサルをSTAP細胞による治療実験を進めている.STAP細胞を作製し,これをサルの背中に移植したところ,サルが足や尻尾を動かせるようになっている(論文化予定とのこと).


以下追記

■このSTAP細胞論文について,Guo Jianliらの論文からの文章の剽窃や,Robert Blellochらの論文からの文章剽窃が指摘されているが,それ以上に,画像において疑義がでていることから捏造の疑いがもたれている.まず,この研究では生後1週マウスの脾臓由来のTリンパ球を用いており,TCR再構成をもって初期化を証明するものであったが,それを示すDNA電気泳動写真のレーン3の部分に切り貼りを行った形跡があり,GLバンドないことが指摘された.その後の理研のプロトコル発表ではTCR再構成がなくともSTAP細胞と呼んでよいという定義に変わっており,初期化ではなく単に元からあった幹細胞を選択(スクリーニング)しただけの可能性がある(そうであれば生後1週マウスでなければ成功しにくいことも納得がいくため,limitationが致命傷となりうる).これによりそもそもの初期化あってこその大発見という意義が失われてしまう.

■さらに3月9日に小保方博士の博士論文に使われた画像がSTAP細胞論文の画像と酷似していることが発見され,流用の疑いがもたれている.具体的には,博士論文の骨髄sphere由来のテラトーマ/Mesoderm免疫染色画像とSTAP細胞由来のテラトーマ/Mesoderm免疫染色画像が同一写真ではないかと指摘されている.この部分はSTAP細胞の多能性を示す重要な部分となるが,この2つの論文の研究はまったく関係がないものであり,もし画像流用であれば多能性すら示せておらず,捏造が確定ということになる.なお,理研で作ったSTAP細胞をハーバード大学に送ってテラトーマの写真を撮影したことになっており,テラトーマの写真についてはハーバード大学のバカンティ教授も把握しているはずである.この件についてバカンティ教授からの説明を求めることも必要であろう.

■なお,小保方博士の過去の論文においても多数の実験画像において不適切なデータ処理・加工・流用が疑われている状況にあるほか,脊髄損傷のサルをSTAP細胞移植で治療したと発表したバカンティ教授のグループの小島宏司氏の論文における不適切な画像流用が2件発覚しており,事態は予想以上に深刻な可能性がでてきている.

■現在,Nature誌のSTAP細胞論文はオープンとなり,理研およびハーバード大学が調査中であるが,第3者の詳細調査が必要であろう.なお,小保方博士とその共同執筆者からは現時点で説明はない.

[1] Obokata H, Wakayama T, Sasai Y, et al. Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency. Nature 2014; 505: 641-7
[2] Obokata H,1Sasai Y, Niwa H, et al. Bidirectional developmental potential in reprogrammed cells with acquired pluripotency. Nature 2014; 505: 676-80
# by DrMagicianEARL | 2014-03-10 16:13 | 文献
■特定の変数が生存・死亡といったアウトカムとどれくらい関連があるかを調べる研究は多い.その際,生存群と死亡群で各変数を有意差検定していく方法がある(単変量解析).しかし,アウトカムは複数の変数の影響を受ける場合が多々ある.複数の変数がどのようにアウトカムに影響するかを見出すためには,より巧妙な統計学的方法がデータ解析に必要となる.2つまたはそれ以上の独立変数を持つ回帰モデルを適合させる方法は,重回帰(multiple regression)と呼ばれ(多変量解析とも言う),いくつかの種類がある.学会や論文で多変量解析と聞くと何かすごそうで非常に正確な統計解析手技に感じるかもしれない.

■生存,死亡という2つのアウトカムが存在する場合,これに関連する独立因子となる変数を検出するための重回帰はロジスティック回帰解析(logistic regression)である.今回,以下のシュミレーションを行った.

■EXCELで0から1までの数値をランダムにとりうる関数「=RAND()」を用い,患者数160例に対して20個の検査値(x1~x20)を想定したモデルを作成した.さらに,アウトカムとして,生存(=0),死亡(=1)を,0か1かをランダムにとりうる関数「=TRUNC(RAND()+0.5)」を定義した.この場合,死亡率50%モデルとなる.

■多変量解析を行うと以下のような結果であった.
多変量解析の落とし穴 ~ランダム関数を用いたシミュレーション~_e0255123_23303164.png
■症例数は160例であるため,変数20個をすべて独立変数として扱うことはできない(過剰適合overfittingとなってしまうため).そこで,一般的に行われている,全変数からもっとも関連性が低い変数を逐次的に除外(ここではp値が大きいものから除外)していく変数減少法(backward stepwise selection)を用いて変数を絞る操作を行う.この場合,症例数をN,変数の個数をMとすると,N>40×Mが一般原則であるため,変数を3つまで絞った結果が以下の通りである.
多変量解析の落とし穴 ~ランダム関数を用いたシミュレーション~_e0255123_23294172.png
■この3つの変数x8,x13,x15はすべてp値が0.05未満であり,有意水準5%の慣例に従えば,すべて「死亡に関連した有意な独立危険因子」ということになる.

■これらがランダム関数によるまったく関連のないシミュレーションデータをもとにした解析であることを知らなければ,非常によいデータであると勘違いしてしまうだろう.しかし,ランダム関数を用いているため,アウトカムと変数の間には関連性がないことは明らかである.つまり,これらの3つの変数が死亡に関連する独立危険因子であることは,p値が0.05を下回っていても単なる偶然に過ぎない.

■多変量解析において,変数を組み込むときに,まったく関連性がないものを組み込んでも偶然が生じる可能性があることが上記シミュレーションでも分かる.優れた解析に見える多変量解析といえども,使用する変数は解析者により恣意的に選ばれたものであることに注意が必要である.統計学的関連性は因果関係を保証するわけではなく,前提として,因果関係を示唆する根拠が必要である.

■近年は医療においてもpropensity score matching analysis(傾向スコアマッチング解析)が用いられるようになってきており,「観察研究,コホート研究をRCTっぽくする解析法」という触れ込みであたかもエビデンスレベルをかなり高めるかのように主張する人もいる.この解析は,各症例について,0から1までの傾向スコアを定めてペアをつくり,比較検討を行う解析であるが,これも多変量解析の1種であり,その変数選択は恣意的であることに十分注意が必要である.加えて,ペアマッチングを行う際にかなりの症例が脱落するため(集中治療領域の研究ではほとんどがN数が半数程度まで削られる),全集団のうち限られた層の評価しか行えない.逆に言えば,この層以外の集団においては,ここで得られたアウトカムがあてはまるとは限らない.

■2013年に重症急性膵炎への動注療法,敗血症へのPMX-DHPに関して,日本からDPCデータを用いた大規模なpropensity score matching analysisが報告され,いずれも死亡率を改善させなかったとしている.しかし,DPCデータはAPACHEIIやSOFAなどの重症度,検査値等の詳細は教えてくれない.ましてや病名のアップコーディングも多数含まれている可能性があり,解析に用いられた変数も恣意的となれば,まずあまり意味をなさない結果ではないかと思われる.
# by DrMagicianEARL | 2014-03-10 00:00 | 論文読み方,統計
■青木眞先生が「市中病院で見る世界の感染症セミナー」中止のお知らせをされていたので何事かと思い詳細を見てみると,原因は薬事日報3月4日の記事だった.リンクを見たらすぐ分かるので製薬メーカー名はもう伏せません.以下引用.抗菌薬適正使用を行っている先生方はこれを見ておそらくは頭にアラートが鳴るのではないだろうか?
【塩野義製薬】最も強い薬剤を短期投与‐抗菌薬適正使用でセミナー
http://www.yakuji.co.jp/entry35009.html

 塩野義製薬は2月26日,「グローバルにおける感染症治療」をテーマにマスコミ向けセミナーを開催し,竹安正顕海外事業本部長が,世界の感染症を取り巻く現況と治療薬の適正使用に対する同社の取り組みを語り,抗菌薬のグローバルスタンダードについて,「最も抗菌力の強い薬剤の短期間使用を地道に行うことにある」と強調した

 竹安氏は,日本では少ないカルバペネム耐性菌が米国や世界で問題になっている原因について、「日本は,最も抗菌力の強いカルバペネム抗菌薬を最初に短期間用いてきたが,米国や中国等では他の薬剤を先に使って同剤を最後に取っておく投与法を採用してきたことにある」と分析.抗菌薬療法のグローバルスタンダードは,「各病院ごとに出現する分離菌の状況,抗菌薬の感受性に従い,最も抗菌力の強い薬剤の短期間使用を地道に行うことにある」と提言した.
■塩野義製薬といえば,インフルエンザ啓蒙CM/サイトで多数の医療関係者から猛批判を浴びた(ついでに言えば「痛みはうつ」のCMも)ばかりだが,そこにきての今回のこのニュース.メーカー広報部はさすがに度が過ぎるのではないか.というわけで反論を書いておくべきと考えた.

※インフルエンザ啓蒙CM/サイト問題についてはこちら→http://drmagician.exblog.jp/21562162/

■セミナーの詳細までは掲載されていないが,「最も抗菌力の強い薬剤の短期間使用を地道に行うことにある」という台詞には違和感を感じる.好意的にとらえるなら,「その患者の状態に合って,推定病原菌に抗菌力を有する抗菌薬を(十分量)を用いて短期間で使用する」という意味で,一般人(ここではマスコミ関係者)向けに分かりやすく説明したのであれば問題はないが,そもそも「最も抗菌力の強い薬剤」という表現の時点で,感染症診療に理解があまりないのでは?と思われるし,後半でカルバペネムについて「最も強い抗菌薬」と言及している.

■基本的に抗菌薬を強い弱いという指標に分類するのは間違いである.たとえばメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)に対してはセファゾリンがよく用いられるが,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)であれば当然効かず,バンコマイシンが有効となる.ではバンコマイシンはセファゾリンより強いかというとそういうわけではない.セファゾリンが有効か無効かは黄色ブドウ球菌側の耐性遺伝子の有無で決まっているのであり,セファゾリンの方がバンコマイシンよりもMSSAに対する抗菌活性が強い.このように,病原菌ごとに,さらには感染臓器ごとに得意とする抗菌薬は変わりうるため,一般化して「この抗菌薬は強い」という表現は不適切となる.

■となれば,この発言の意図するところは,「感染症治療の中核となるβラクタム系抗菌薬の中でも最も広域スペクトラムを有するカルバペネム系を使え」という推奨にしか見えてこないのである.塩野義製薬はカルバペネム系抗菌薬であるドリペネムを販売している以上,メーカーがマスコミ向けに自社製品アピールを暗に含んだ抗菌薬推奨をグローバルスタンダードとして語っていることになり,極めて危険なバイアスといえる.極端に言えば,これによりカルバペネム系抗菌薬を使用していないだけで,それが適切か不適切かに関係なくマスコミが「カルバペネム系を最初に使っていないのは医療ミスでは?」と騒ぎ出す報道を行いかねないわけである.これまでのいわゆる医療崩壊の進展の原因のひとつにマスコミの歪んだ報道が関与していることは紛れもない事実であり,「極端に言えば」と前置きはしたものの,現実的に十分に起こりえる話であると思われる.ましてや抗菌薬メーカーが感染症医療崩壊を誘導するなどあってはならない.インフルエンザのCMの一件といい,メーカーとしての体質を疑わざるを得ない.

1.「日本ではカルバペネム使用量が多いから耐性菌が少ない」は正しいか?

■日本では少ないカルバペネム耐性菌が米国や世界で問題になっている原因を「海外ではカルバペネムを最初に使用しないから」としたのはおそらくカルバペネム消費量のみで見た結果であろう(このような主張をされる方々はほとんどが消費量のみでしか考察していないのをよく見かける).しかし,各国の背景の違いを考慮せずに消費量の比較で判断することは誤った結論を導きかねず注意が必要である.また,抗菌薬消費量が増えれば耐性率が増す例がいくらでも存在することは,ペニシリン実用化からわずか20年でペニシリン耐性黄色ブドウ球菌が発見され,さらにはMRSAが出現し世界中に伝播してきた歴史が物語っている.

■例えば,バンコマイシンすら効かない腸球菌(VRE)は1989年から米国で急激に増加したが,このときバンコマイシンを使用していなかったからではなくむしろバンコマイシンの消費量は非常に増加していたのである.欧州でも家畜の発育促進物質であるavoparcin(バンコマイシン類似物質)が関与しており,この使用禁止によりVREのヒトからの検出頻度が大きく減少している.日本が他国よりVREが少なかったのはバンコマイシンがMRSAにしか適応がなく,乱用されていなかったためと考えられている.

■「カルバペネムを使用すると耐性菌が増えるする科学的根拠はない」と仰っている先生もおられるようだが根拠は文献として既に報告されている.Carmeliら[1]は,緑膿菌感染症患者271例のコホート研究を行い,緑膿菌の薬剤耐性増加リスクが,セフタジジム(CAZ)で0.8倍,ピペラシリン(PIPC)で5.2倍,シプロフロキサシン(CPFX)で9.2倍であったのに対して,カルバペネム系のイミペネム/シラスタチン(IPM/CS)で44.0倍と圧倒的に高かったことを報告している.Owensら[2]も抗菌薬使用と入院期間に関連したグラム陰性桿菌の薬剤耐性獲得率はアンピリシン/スルバクタム,第3世代セフェム,フルオロキノロン系に比してカルバペネム系のIPM/CSが高かった.カルバペネム系抗菌薬は薬剤耐性誘導の危険性が高いことはこのように臨床において既に知られていることである.

2.病原菌の抗菌薬耐性獲得はしばしば我々の予想を超える

■日本ではまだ耐性菌が少ないから,という油断は禁物である.ペニシリン耐性菌は本剤が臨床で使用されるようになる以前から存在していたことが知られている[3].自然環境においてはペニシリンをはじめとする抗菌物質を菌が産生することにより自分のなわばりのようなものを作ることが知られており,この抗菌物質に曝露される菌は多数存在しており,それらが生き延びるためには抗菌物質に対する耐性を持つ必要があった.すなわち,環境微生物に由来する抗菌性物質には古くから耐性菌が存在することは必然的なことであり,同時に抗菌薬に対する耐性獲得も時間の問題であったことは容易に想像できる.

■これに対し,キノロン系抗菌薬は自然界には存在しない化合物であったため[4],本剤耐性菌株が出現する可能性は低いと考えられていたが,この抗菌薬に対しても耐性菌が出現し,その頻度は上昇傾向にある[5].耐性化の速度は医師の想像の範疇を大きく越えるものであることを認識しておかなければならず,そのための抗菌薬適正使用でもある.ほとんどの抗菌薬が奏功しないNDM-1,KPC,MBLといった菌株の出現をカルバペネム系抗菌薬開発時に誰が想像しただろうか?当時は,「強力な抗菌薬が開発されたので,細菌感染症は撲滅できる」とまで主張した人もいたくらい楽観的予測だったのである.

3.カルバペネムをいつ使用するのか?

■私自身カルバペネム系を使用することはある.耐性菌が原因菌の可能性のある重症敗血症では選択肢に十分入ってくるし,原因菌不明の段階での壊死性筋膜炎でも使用を推奨する.一方で,「最初にカルバペネム系のような広域スペクトラムの抗菌薬を投与して,原因菌判明後にde-escalationする」という理論も見直す時期にきている.

■肺炎領域においては,初期抗菌薬治療は予後に関連しない,むしろ宿主の状態が予後に関連するという報告が多数でてきており[6-12],さらに広域カバーからのde-escalation戦略によって逆に予後が悪化したとする報告もある[13,14].重症感染症患者においてde-escalation戦略が予後を改善したとする報告は現時点では小規模のコホート研究しかなく[15-18],RCTは報告がない[19].以上から,de-escalationを行うなら初期はとりあえず広域カバーでもOK,という単純な話ではなくなってきているのが近年のエビデンスから分かる.耐性菌推定は大事ではあるが,より大事な抗菌薬選択因子は患者の状態評価であり,これをもって抗菌薬を選択すべきである.

■日本のカルバペネム使用量の多さが,真にカルバペネム必要度を反映しているのであればよいが,実際はそうではなく,不適切使用が非常に多いことは日本中のICTが感じていることだろう.医療現場で使用されている抗菌薬の半数は不必要あるいは不適切であるとされており[20],今後も耐性化を抑えていくためにも,抗菌薬適正使用は必要であり[21],ICT(感染制御チーム)や感染症専門医と協力して,有効かつ耐性菌を作らない抗菌薬適正使用が望まれる.同時に,カルバペネム系は他の抗菌薬に比してコストが高く,副作用リスクも高い部類に入るため,耐性菌以外の問題もかかえている抗菌薬である.

■このような中にあって日本の耐性菌の事情は現時点では海外よりは悪くない.MRSA分離率は近年低下傾向にあり,市中感染型MRSAの流行もまだわずかであり,VREやNDM-1なども数えられる程度しか検出されていない.カルバペネムに耐性化した大腸菌や肺炎桿菌を見ることもまずない.アシネトバクターのカルバペネム耐性化率を見ると,米国50%,欧州15%,サウジアラビア90%,インド17%,タイ75%,シンガポール46%,韓国70%,中国80-90%であるのに対し,日本は2%である.島国たる日本は1990年代から急速に発展した感染対策と感染症診療により耐性化を抑え,いい意味でガラパゴス化した感染制御を歩んできており[22],この現状を悪化させてはならない.一度耐性菌が増加し始めれば,菌株によっては日本全土に広がるのに数年で十分であろう.これは近年急激にカルバペネム耐性アシネトバクターが増加した韓国がいい例であるし,ESBL産生菌も2007年頃から瞬く間に日本全国に広がった.

■塩野義製薬には感染症治療薬を販売してきたメーカーであるならば,このようなミスリードを招きかねないアピールは自粛していただきたいところである.

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# by DrMagicianEARL | 2014-03-08 17:23

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