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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.医療におけるAIについても

3.プロカルシトニンガイド下抗菌薬治療
■前述のPCT(プロカルシトニン)の性質を利用し,PCTの値を評価して抗菌薬の治療開始のみならず終了まで決定するプロトコルの研究がなされるようになった.このようなPCTの使用法を行う上では,PCTの推移の性質も知っておく必要がある.

■Jensenら[1]はICU患者472例を対象とした多施設共同前向き観察研究を行い,1日のPCT値上昇≧1.0ng/mL,PCT最大値≧5.0ng/mLが90日全死亡に関連した予後予測因子であるとしており,その後JensenらはPASS trial[2]を行い,前日と比較してPCT値高値が遷延しているalart PCT(初回と2日目のPCTが≧1.0ng/mLで,前日と比較して減少が10%以内)の回数が多いことが予後不良因子となることも報告している.

■Karlssonら[3]は,ICUに入室した重症敗血症および敗血症性ショックの成人患者155例のPCT値を解析し,72時間でPCT値が50%以上減少した患者群の方が,減少が50%未満の患者群より有意に死亡率が低かったとしている.Charlesら[4]の敗血症によるICU患者180例の観察研究では,最初のPCT濃度は予後に影響を与えなかったが,3日後のPCT値は非生存者で有意に高かったと報告している.Azevedoら[5]は敗血症患者28例の前向き観察研究を行い,PCT初期濃度は生存群と死亡群で有意差はみられなかったが,24時間後PCTクリアランスは生存群が有意に高く,高いPCT濃度持続は死亡率増加に関連していると報告している.

■PCTの値には大きなばらつきがあり,敗血症においては1.0ng/mLを下回るケースもあれば100ng/mLを超えるものもあり,様々な治療因子もかかわってくるため,これらを一律にカットオフを定めて抗菌薬投与終了基準とすることは妥当ではないかもしれず,絶対値よりも変動を見た方が理にかなっているといえ,これは上記5報告が示す通りでもある.もう一つ注意すべきはもともとそれほどPCTが高くない場合の評価で,変動幅で評価するには測定誤差の因子が大きくなりやすい懸念があり,ある一定以上のPCT濃度がベースでなければ使用する意義は乏しいと推察される.

■PCTガイド下での抗菌薬治療について評価したメタ解析を以下にまとめた[6-14]
敗血症とプロカルシトニン(2)~プロカルシトニンガイド下抗菌薬治療~_e0255123_20511340.png

■これらのメタ解析の結果を見るに,PCTガイドによる抗菌薬治療は,死亡率に影響を与えずに抗菌薬投与期間を2-3日間短縮する効果がある,ということが概観として分かる.PCTガイドのプロトコルは研究によって大きく異なる.以下では,敗血症でのPCTガイドによる抗菌薬投与終了のプロトコルについて,代表的なRCT等を紹介する.

■Bouadmaらは,PCT値が0.5ng/mL未満またはピーク値の80%を超える減少があれば抗菌薬を中止するとするプロトコルを用いて,フランス8施設のICU患者630例でのオープンラベル並行群間比較試験PRORATA trial[15]を行い,死亡率に影響を与えることなく,抗菌薬投与期間を2.7日有意に短縮させた.同様のプロトコルを用いて,Stolzらは人工呼吸器関連肺炎患者を対象として,米国とスイスの7施設101例のオープンラベルRCTであるProVAP trial[16]を行い,抗菌薬投与日数を3.5日有意に短縮させた.

■Hochreiterらは,外科系ICUにおいて細菌感染症が疑われたSIRS患者に対して,全身状態の改善とPCT<1ng/mLまたは初回値の25-35%まで低下したら投与中止とするプロトコルを用いて,単施設で110例でのRCT[17]を行い,抗菌薬治療期間を有意に短縮した(5.9±1.7日vs7.9±0.5日,p<0.001)と報告している.これと同様のプロトコルを用いて,Schoederらは,外科系ICUの重症敗血症患者を対象として単施設で27例でのRCT[18]を行い,拘禁薬治療期間を有意に短縮した(6.6±1.1日vs8.3±0.7日,p<0.001)と報告している.

■Nobreらは,重症敗血症,敗血症性ショックの患者を対象として,①PCTの初期値が>1ng/mLであれば,PCT<0.25ng/mLまで低下または90%以上低下していれば,Day 5以降という条件付きで抗菌薬投与を終了する,②PCTの初期値が<1ng/mLであれば,<0.1ng/mLまで低下していれば,Day 3以降という条件付きで抗菌薬投与を終了する,というプロトコルを用いてスイスの単施設で79例のオープンラベルRCT[19]を行った.PCT群は対照群と比較して治療期間中央値が3.5日短縮していた(ITT n=79,p=0.15).per-protocol解析では,PCT群が抗菌薬投与期間が4日間有意に短縮し,(per-protocol n=68, p=0.003)抗菌薬投与量も有意に減少した(p=0.0002).死亡率,再発率は両群間に有意差はみられなかった.また,PCT群は対照群よりICU滞在日数が2日間有意に短縮した(p=0.03).この報告での抗菌薬終了のKaplan-Meier曲線を見るに,重症敗血症,敗血症性ショックでも抗菌薬投与期間が5日間ですむ症例が非常に多いことがよく分かる.

■一方で,最も新しいRCTではPCTガイド下抗菌薬治療プロトコルに否定的な結果がでている.Layiosらは,ICU患者を対象として,全例でPCTを計測するが,PCT値を用いて抗菌薬治療を行う群と,PCT値をブラインド化して抗菌薬治療を行う群を比較した509例のベルギー単施設共同RCT[20]を行った.この報告では,治療日数割合に有意差はないが,PCT群の方がより長い傾向がみられた.また,この研究では,感染症診断の正確さについても検討しており,感染症がないと確定した症例の中でPCT値が1ng/mL未満であるのは33.8%に過ぎず,感染症が確定した症例でPCT値が0.25ng/mL未満であるのが14.9%も存在し,ICU医師と感染症専門医との間で診断能の格差を埋めるのにPCTは有用ではないとしている.

■PCTガイドによる抗菌薬の変更を検討した研究もある.Jensenらは,ICU滞在48時間以上の患者1200例において,毎日PCT値を測定して,前日と比較してPCT値高値が遷延しているalart PCT(初回と2日目のPCTが≧1.0ng/mLで,前日と比較して減少が10%以内)を認めた場合に抗菌薬のスペクトルをより広域に変更する(escalation)プロトコルを検証した9施設共同オープンラベルRCTであるPASS trial[2]を行った.この研究はPCTガイドによる抗菌薬治療が予後を改善するという仮説の検証研究であったが,結果は死亡率に有意差なく(31.5%vs32.0%),人工呼吸の割合やICU滞在日数はPCT群でより延長する結果となった.さらに,PCT群で腎機能の有意な悪化が示されている.この研究では,PCTの感染に対する感度が59.3%と低値であったこと,TAZ/PIPCやCPFXの投与が増加したことによる副作用などが問題点として指摘されており,この研究で用いられたPCTガイド下抗菌薬投与プロトコルは推奨されない.

■敗血症患者をtargetにしたPCTガイド下抗菌薬治療プロトコルとしては,対象,N数や質,プロトコルの安全性の観点からNobreらの報告[19]が最も妥当ではないかと推察される.問題は,PCTを毎日計測することは本邦の実臨床では現実的ではないということであろう.都道府県にもよるが,3回以上の計測は通らない可能性がある.そこで,1つの目安として,初日と5日目の2ポイントのPCTを計測し,Nobreらのアルゴリズムに適応させれば,かなりの症例で5日目で抗菌薬投与を終了できると思われる.一方,終了基準を満たさず,6日目以降も必要となる症例においては,新たにアルゴリズムを追加する必要があるだろう.

■Surviving Sepsis Campaign Guideline 2012[21]では,「敗血症と診断したが,その後感染の根拠が認められない患者においては,プロカルシトニンや同様のバイオマーカーが低値であることを経験的治療の中止するために使用してもよい(Grade 2C)」という推奨となっている.この根拠として2つのメタ解析[12,22]が挙げられているが,同時に限界と潜在的有害性の懸念が残るとしている.さらに,この抗菌薬中止戦略が耐性菌リスクやClostridium difficileによる抗菌薬関連下痢症のリスクを減じるとしたエビデンスはない.日本版敗血症診療ガイドラインに[23]おいても「抗菌薬中止にはプロカルシトニンを考慮してもよい(2A).」という推奨となっている.

※PCTの絶対値のみをみるのではなく,推移を追うことで治療介入を少なくできるのであれば,これは他の薬剤でも同様のことが言えるのではないかと私は考えている.そのひとつとして,播種性血管内凝固(DIC)の治療期間がある(治療有無そのものに議論があるところではあるが別の話になるためここではおいておく).多くの施設ではDIC治療終了の目安を急性期DIC診断基準スコア3点以下としている.当院では,原疾患治療がなされていることを前提として,複数の指標を設定し,これらの指標すべてが改善傾向を示した時点でDIC治療を終了するとする終了基準を設けて重症敗血症・敗血症性ショック例に導入した結果,急性期DIC診断基準スコア3点以下で投与を終了するよりも1.6日有意に投与期間を短縮しており,投与期間は4日間以内でよい症例がほとんどであった(第17回大阪DIC研究会一般演題,2013年6月).初期治療を適格に行って全身炎症を制御してSIRSやCARSを抑えることができていれば患者自身の生理的制御範囲となり,治療介入は不要となる可能性がある.近年の敗血症治療の考え方からすれば,治療により敗血症病態から患者の恒常性維持可能な状態に制御することが理想であり,その状態になれば余計な侵襲を回避してPost-Intensive Care Syndrome(PICS)のリスクやコストを減じることができるかもしれない.

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←「敗血症とプロカルシトニン(1)~概要と精度~」はこちら
# by DrMagicianEARL | 2013-07-11 21:08 | 敗血症
1.プロカルシトニンとは?
■2010年のPierrakosらのレビュー[1]によれば,敗血症では178バイオマーカーが研究されていると報告されているが,現時点では高い確実性をもったバイオマーカーはない.また,バイオマーカーを評価する上で,その患者が敗血症であることを臨床診断しなければならないが,1991年のACCP/SCCMによるSIRS基準[2],2001年のSCCM/ACCP/ESICM/ATS/SISによる基準[3]が定められてはいるものの,その精度や予後に差はなく[4,5],1991年診断基準(SIRS基準)の精度は感度94.6%,特異度61.0%,2001年診断基準の精度は感度96.9%,特異度58.3%であり,AUCはそれぞれ0.778,0.776と有意差がなかった.よって,現時点で敗血症診断にゴールデンスタンダードは存在しないため[1,6],バイオマーカーの精度評価が困難となっている.理想的バイオマーカーとして,簡便,迅速,客観性,再現性,感度・特異度が良好,患者重症度を鋭敏に反映,安価,などが要求される[7]

■現在敗血症領域で精度が比較的高く,臨床応用されている代表例としてプロカルシトニン(PCT:procalcitonin)がある.PCTは米国ではあまり推奨されていないが,欧州を中心に研究が進み,本邦においても敗血症疑いに対して保険点数320点で承認されている.

■PCT検査は湾岸戦争の際に肺腺癌マーカーとして研究開発されたが,1993年にAssicotら[8]が敗血症関連蛋白として報告した.PCTは116個のアミノ酸で構成される分子量130kDa,通常は甲状腺C細胞でカルシトニンの前駆体として産生されている.しかし,細菌感染症による敗血症や重篤な炎症反応が生じた場合は,TNF-αなどの炎症性サイトカインの増加により,肺・肝臓・腎臓・筋肉などの全身の細胞で産生される.その一方で,ウイルス感染症や真菌感染症では増加しにくいことが知られている[9,10].また,PCTは白血球などの血球成分からはほとんど分泌されない[9].すなわち,ステロイドや抗癌剤などの白血球機能に影響を与え易い薬剤を使用しているような状況下であっても,細菌感染症の場合はPCT上昇は妨げられない[11]

■反応時間はCRPが6時間,PCTが2-3時間,ピークはCRPが48時間,PCTが24時間,半減期はCRPが4-6時間,PCTが20-24時間である.なお,PCTは透析膜の影響を受けうる.Montagnanaらの44例の観察研究[12]では,透析において高流量膜では透析前後でPCT値は有意に低下し(0.50→0.26ng/mL, p=0.005),低流量では有意な変化はみられなかった(0.41→0.42ng/mL, p=0.863).本邦の透析は原則として低流量であるため,PCT値は影響を受けにくいと推察される.

■以下ではPCTの精度と活用法に関する知見をまとめた.なお,PCTの研究は非常に多く,PubMed検索では2363件がヒットし,RCTは87報,メタ解析は30報におよぶ.すべては紹介できないので,メタ解析を中心に,比較的新しいもの,研究内容が特筆すべきものに限って紹介する.

2.プロカルシトニンの精度
■PCTの精度についてのメタ解析14報[13-26]を以下にまとめた.
敗血症とプロカルシトニン(1)~概要,精度~_e0255123_1522686.png
■これらの報告ではPCTの感度は0.59-0.96,特異度は0.43-0.91,AUROCは0.61-0.91とバラつきがあるが,おおむね0.7台といったところで,この数字だけ見ればCRPに比して特段優れているわけではない.とりわけ急性虫垂炎,肺炎随伴性胸水に関してはPCTは精度は低く推奨されないだろう.ただし,研究によってPCTカットオフ値に違いがあり,一概には評価しにくい面がある.

■健常人ではPCTの正常値は0.05ng/mL未満であり,特異度を高くとるのであれば,0.5ng/mLを越えると異常,0.5-2.0ng/mLが境界領域で,2ng/mLを超えると全身細菌感染症が強く疑われ,10ng/mL以上では重症敗血症,敗血症性ショックなど重症患者であることが多いとされる.しかし,Tangら[23]の報告を見ても分かる通り,敗血症とSIRSの鑑別におけるPCTの精度は決して芳しくない.

■本邦からもAikawaらの多施設共同前向きコホート研究(7施設245例)が1報あり[27],細菌感染の診断でのPCTのカットオフ値を0.5ng/mLとすると,感度0.64,特異度0.86,AUROC 0.84であり,エンドトキシン(AUROC 0.60),IL-6(AUROC 0.77),CRP(AUROC 0.78)に比して優れているという結果であった.

■カテーテル血流感染症(CRBSI)についてはTheodorouらの46例の観察研究がある[28].この報告では,CRBSIが疑われたICU患者において,PCTカットオフ値0.70としたときのCRBSI診断は感度92.3%,特異度100%であった.また,4日以内の値からPCT上昇幅が0.20以上のときの陽性予測値は96%であった.

■担癌患者119例,非担癌患者100例の検討では,Rapid Response Teamが契機となったPCTの測定は,感染症によるICUへの移送の必要性を予測するとしている[29]

■Quらは重症急性膵炎患者71例のRCTにおいて,感染の臨床徴候・症状とPCTにより抗菌薬投与開始・終了を決定する方法は,予防的抗菌薬を2週間投与する方法に比して有意に抗菌薬投与期間と入院期間を短縮し,コストを減少させたと報告している[30]

■蜂窩織炎,細菌性髄膜炎,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌菌血症では偽陰性をきたすことがある[10,31,32].また,学会ポスター発表においては,グラム陽性菌感染症ではPCTの感度が落ちるとする報告も散見されている.一方,遷延するショック,心肺停止蘇生後,自己免疫性疾患,神経内分泌腫瘍,誤嚥,膵炎,敗血症,外傷,熱傷,熱中症,手術,甲状腺髄様癌でPCT上昇の偽陽性が報告されている[33-35]

■PCTの精度の報告では,異常値であっても高値の場合と低値の場合で解釈が難しくなることが想定される.敗血症が疑われる症例においてはPCTが高値であることをもって抗菌薬を投与する方法は比較的安全と推察されるが,PCTが低値であることをもって抗菌薬を投与しないとするのはリスクが高まる可能性がある.万能ではないので,PCTはあくまでも参考所見にとどめるべきであろう.逆に,細菌感染ではない重症病態の際は,むしろPCTの低さが感染症除外に役立つ可能性がある.そのときどきの状況に応じてPCTをうまく使えば有用なツールであると考える.

※当院ではNPPVを含む人工呼吸管理を要する間質性肺炎急性増悪においてはPCT計測は抗菌薬必要性有無を判断する有用なツールと考えている.自験例ではPCT値はほぼ0.1ng/mL未満の症例がほとんどであり,0.1ng/mL未満の症例5例では,抗菌薬を投与せずステロイドを投与してもその後の感染症増悪と思われるエピソードは1例も認めていない.

※PCTに続いて,IL-6も保険承認される可能性があるが,PCTとの違いについて聞かれることがある.Jekarlら[36]は,177例のSIRS患者の解析を行い,敗血症においてPCTは診断マーカー,IL-6は予後予測マーカーとしている.

PCTは敗血症診断マーカーとして位置づけがあるが,私は敗血症の診断目的ではPCTは計測していない.私の診断目的での主な用途は,重症病態での計測で細菌感染症を除外することにあり,0.125ng/mL程度をカットオフとしている.腫瘍熱や間質性肺炎急性増悪において特に使用している.逆に軽症例では判断が難しくなるため計測していない.

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[31] Reinhart K, Meisner M, Brunkhorst FM. Markers for sepsis diagnosis: what is useful? Crit Care Clin 2006; 22: 503-19
[32] Shomali W, Hachem R, Chaftari AM, et al. Can procalcitonin differentiate Staphylococcus aureus from coagulase-negative staphylococci in clustered gram-positive bacteremia? Diagn Microbiol Infect Dis 2013; 76: 158-61
[33] Becker KL, Snider R, Nylen ES. Procalcitonin assay in systemic inflammation, infection, and sepsis: clinical utility and limitations. Crit Care Med 2008; 36: 941-52
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# by DrMagicianEARL | 2013-06-19 14:49 | 敗血症
■腹臥位療法に関する新知見が5月20日にonline publishされた.死亡率にかなりの差がでており注目されているようである.全文フリーであり,是非参照されたい.以下では論文の紹介と腹臥位療法についてのレビューを行った.
重症ARDSにおける腹臥位療法(PROSEVA study)
Guérin C, Reignier J, Richard JC, et al. ; the PROSEVA Study Group. Prone Positioning in Severe Acute Respiratory Distress Syndrome. N Engl J Med 2013 May 20 [Epub ahead of print]
PMID:23688302, Free Article
Abstract
【背景】急性呼吸窮迫症候群(ARDS)患者を含んだこれまでの試験では,人工呼吸管理中での腹臥位療法の予後に与える有用性は否定されてきた.我々は重症ARDS患者において腹臥位療法の早期からの適応効果について検討した.

【方法】この多施設共同前向き無作為化比較試験において,我々は466例の重症ARDS患者を少なくとも16時間の腹臥位療法を施行する群と仰臥位のままの群の2群に割り付けた.重症ARDSは,FiO2が0.6以上,PEEPが5cmH2O,1回換気量が6mL/kg理想体重のもとでPaO2/FiO2比が150mmHg未満の状態にある患者と定義した.プライマリアウトカムは登録から28日時点での全死亡率とした.

【結果】237例の患者が腹臥位群,229例の患者が仰臥位群に割り付けられた.28日死亡率は腹臥位群で16.0%,仰臥位群で32.8%であった(p<0.001).腹臥位療法の死亡におけるハザード比は0.39(95%CI 0.25-0.63)であった.非補正90日死亡率は腹臥位群で23.6%,仰臥位群で41.0%(P<0.001)であり,ハザード比は0.44(95%CI 0.29-0.67).合併症発生率は,心停止が仰臥位群で高かったことを除いて,両群間で有意差はみられなかった.

【結論】重症ARDSの患者において,早期からの腹臥位療法は28日死亡率,90日死亡率を有意に減少させた.

■近年の集中治療領域の報告で死亡率にここまでの差がでた報告は少ない(Kaplan-Meier生存曲線は早期から大きな差がでている).加えて,重症ARDSでの死亡率改善はもともとサブ解析で示されたものであり,集中治療領域でサブ解析をもとにRCTを組んで有意な結果を示した報告はほとんど存在しない.にわかには信じがたい人も多いかもしれない.

■Proseva Study報告から2週間後に今度は肥満患者での腹臥位療法の有用性報告.こちらはN数の少ない症例対照研究のためエビデンスレベルは落ちるが,肥満を有するだけで治療成績にかなりの差がついている.PROSEVA Studyでサブ解析を行うと肥満患者はさらに死亡率が低いのだろうか?
ARDSの肥満患者における腹臥位療法の安全性と有効性;症例対照研究
De Jong A, Molinari N, Sebbane M, et al. Feasibility and Effectiveness of Prone Position in Morbidly Obese Patients With ARDS: A Case-Control Clinical Study. Chest 2013; 143: 1554-61
PMID:23450309
Abstract
【背景】肥満患者は無気肺やARDSへの進展リスクを有する.腹臥位は無気肺を減少させ,ARDSによる重度の低酸素患者において酸素化と予後を改善させるが,肥満患者のARDSにおいては有効性は知られていない.

【方法】この症例対照研究では,ARDS(PaO2/FiO2≦200mmHg)の肥満患者(BMI≧35kg/m^2)にARDSの非肥満患者(BMI≦30kg/m^2)をマッチさせた.主要評価項目は腹臥位療法の安全性と有効性で,二次評価項目は酸素化に対する効果(腹臥位療法終了時のPaO2/FiO2)人工呼吸器装着期間,ICU在室期間,院内感染,死亡率とした.

【結果】2005年1月から2009年12月までの間に149例がARDSで入院となった.33例の肥満患者が33例の非肥満患者とマッチした.腹臥位療法の中央期間(25-75パーセンタイル)は,肥満患者で9時間(6-11時間),非肥満患者で8時間(7-12時間)であった(p=0.28).51例に合併症がみられ,25例が肥満患者,26例が非肥満患者であった.少なくとも1つの合併症を有する患者数は両群間で同等であった(n=10, 30%).PaO2/FiO2は非肥満患者(113±43mmHg→174±80mmHg)よりも肥満患者(118±43mmHg→222±84mmHg)で有意に増加した(p=0.03).人工呼吸器装着期間,ICU在室日数,院内感染に有意差はみられなかったが,90日死亡率は肥満患者で有意に低かった(27% vs 48%, p=0.05).

【結論】肥満患者における腹臥位療法は安全であり,非肥満患者よりも酸素化を改善させるかもしれない.腹臥位療法の恩恵を最も受けるであろうARDS患者のサブグループは肥満患者である.

■4足歩行動物として数億年かけて進化してきた肺と胸郭は脊椎に吊るされる形となる腹臥位において適応性が高い.しかし,直立2足歩行を獲得したヒトは腹臥位を日常的に行うことはない.よって,ヒトが臥位になるときは腹圧により横隔膜の背側部分は呼気終末に胸腔側に張り出す形となる.すなわち,立位時に比して背側肺底部は拡張が起こりにくいという現象が生じる上,重力の影響で血流が多くシフトしている部位であるためにシャントが増加する.さらに,鎮静下での人工呼吸器による陽圧換気では背側横隔膜はさらに動かなくなり,背側肺底部に吸気が送り込まれにくくなる.さらに背側肺底部は心臓や肺そのもの重力,腹圧によってコンプライアンスが低下し,無気肺も生じやすくなる.

■以上のメカニズムから,肺底部のコンプライアンスや無気肺を改善する方法が必要となり,とりわけ重症ARDSでは陽圧換気だけでは対処しきれない.一方,前胸部は非荷重領域であり,コンプライアンスもよい部位であるため,空気が入りやすい.この性質を利用し,rescue therapyとして用いられるのが腹臥位療法である.これにより,肺胞リクルートメント効果[1,2],背側肺底部の換気血流比の改善[3,4],心臓の肺圧迫解除[5],人工呼吸による肺実質ずり応力によるストレス軽減[6],体位ドレナージ効果などにより改善効果が期待される.

■腹臥位療法の最初の報告は1974年のBryanら[7]であり,ARDSへの応用が広がるに至る.初期は腹臥位療法によってPaO2がすみやかに改善を示す報告が多かったが,それが予後を改善するかについては検証されていなかった.これを最初に検証したのがGattinoniら[8]によるイタリア多施設共同RCT,Prone-Supine Studyである.この報告では,ALI/ARDS患者304例を腹臥位療法群と仰臥位療法群で比較しており,酸素化は改善したが,死亡率に有意差はなく,むしろ腹臥位療法によって合併症が有意に増加する結果となった.

■Gattinoniらの報告では,予定した症例数に達する前に試験を中止したため症例数が不足したこと,1日のうち腹臥位療法の時間が短かった(平均で7時間以下).これらの問題点を解消するため,2004年にGuirenらは,腹臥位療法の時間を8時間以上とし,791例の急性呼吸不全患者を登録したRCTを行い報告している[9].この報告においても腹臥位療法は酸素化上昇や人工呼吸器関連肺炎の減少を示したものの,死亡率に有意差は見られなかった(28日死亡率:腹臥位群32.4% vs 31.5%, RR 0.97, 95%CI 0.79-1.19, p=0.77).ただし,post-hoc解析ではP/F≦88の最重症例の10日間の研究期間の死亡率は改善されていた.

■一方,Gattinoniらも腹臥位療法時間を1日あたり20時間まで延長させたProne-Supine II Study[10]を行った.324例を登録したこのRCTにおいても,死亡率に有意差はみられなかった(28日死亡率:腹臥位群31.0% vs 32.8%, RR 0.97, 95%CI 0.84-1.13, p=0.72).重症例に限定したサブ解析においては,死亡率に有意差はみられなかったが,腹臥位療法群において改善傾向がみられた(37.8% vs 46.1%, RR 0.87, 95%CI 0.66-1.14, P=0.31).

■2005年のCurleyらの米国7施設102例の小児ARDSを対象としたRCT[11]でも死亡率に有意差はみられていない.2006年にManceboらは腹臥位療法の目標時間を20時間/日まで長くして検討した136例RCTを行い,腹臥位療法が有意にICU死亡率を減少させることを示している(43% vs 58%, p=0.12)[12]

■2007年に6報RCT,1372例のメタ解析を行い,腹臥位療法は酸素化を有意に改善するが,死亡率を改善させない(OR 0.97, 95%CI 0.77-1.22)と報告された[13].しかしながら,これまでの臨床試験のサブ解析では重度の低酸素血症(P/F<100)がある患者においては生存率を改善させる可能性が示唆されていたため,2010年に10報RCT,1867例のメタ解析[14]が行われ,重症低酸素血症(P/F<100)群と中等度低酸素血症(P/F<300)群での腹臥位療法の効果が検証された.結果は,中等度群では死亡率に変化はないが(RR 1.07, 95%CI 0.931.22, p=0.36),重症群では死亡率の低下がみられた(RR 0.84, 95%CI 0.74-0.96).今回,PROSEVA studyはこの重症例を対象として腹臥位療法のRCTを行い,死亡率を大きく改善させるに至っている.

■なお,Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2012[15]においては,腹臥位療法はP/F≦100の症例においてGrade 2Bで推奨されている.日本版敗血症診療ガイドライン[16]においても解説で同様の推奨をしている.

■ただし,腹臥位療法は決して容易にできる方法ではない.腹臥位管理中には,皮膚圧迫傷害,気管チューブの閉塞,事故抜管,血圧低下などが生じることは数多くの報告で示されるところである.また,仰臥位から腹臥位への体位変換後に91.7%の挿管患者で気管チューブが移動し,うち48%は10mmも移動しており,また86.3%でチューブカフ圧が減少することも報告されている[17].鎮静も必要となる上,スタッフの労力も増すことを考えれば,マンパワーは不可欠であり,すぐに明日から使える治療法とはいかないであろう.

■PROSEVA studyでここまで大きな死亡率の差がでたのはそのプロトコルにあると思われる.逆に言えばここまで厳格なプロトコルを組まなければ効果は得られないだろう.また,重症ARDSあれば全例とも腹臥位療法が有効かというと決してそういうわけではない.重力により血流が増加する背側肺に陰影が有意なARDSでは有用であるが,びまん性陰影をとるARDSでは奏功しない.このため有効となる患者を見出すためにCT検査は必要になるだろう.また,原疾患コントロールが不十分な場合,血中サイトカイン濃度が高いままとなり,腹臥位療法を施行すると下側になった肺のサイトカイン濃度が上昇し,新たに炎症性の陰影が出現することになってしまう.肺性ARDS(direct ARDS)であれば,感染性分泌物の経気管移動により健常肺野に新たに病巣が形成されてしまうリスクもある.適応に関しては十分に患者の状態を考慮して行わなければならない.

■PROSEVA studyにおける腹臥位療法の禁忌項目を以下に示す.
① 頭蓋内圧亢進(>30mmHg)もしくは脳還流圧低下(<60mmHg)
② 侵襲的処置が必要な大量出血
③ 15日以内の気管・胸部手術
④ 15日以内の顔面の外傷・外科手術
⑤ 深部静脈血栓症もしくは2日以内の肺塞栓加療
⑥ 2日以内の心臓ペースメーカー植え込み術
⑦ 四肢・胸郭・骨盤の骨折・脱臼
⑧ 心血管作動薬を使用しても平均動脈圧が70mmHg以下
⑨ 妊娠
⑩ 前面1本の胸腔ドレーンで管理する気胸

■腹臥位療法の合併症やスタッフの仕事量を減らす手段として前傾側臥位療法がある.神津らはARDS患者17例を前傾側臥位群と腹臥位群に割り付けた無作為化クロスオーバー試験を行い,腹臥位療法には劣るものの前傾側臥位療法はPaO2は有意に改善し,合併症はほとんど起こらず,マンパワーも少なくてすむと報告されている[18]

■腹臥位療法を受ける人工呼吸器患者の早期経腸栄養においては,25度ヘッドアップし,注入速度を6時間毎に25mL/hrから85mL/hrまで増加させ,prokineticsとしてエリスロマイシンを投与する方法が有効であると報告されている[19]

[1] Guerin C, Badet M, Rosselli S, et al. Effects of prone position on alveolar recruitment and oxygenation in acute lung injury. Intensive Care Med 1999; 25: 1222-30
[2] Cornejo RA, Diaz JC, Tobar EA, et al. Effects of Prone Positioning on Lung Protection in Patients with Acute Respiratory Distress Syndrome. Am J Respir Crit Care Med 2013 Jan 24
[3] Mutoh T, Guest RJ, Lamm WJ, Albert RK. Prone position alters the effect of volume overload on regional pleural pressures and improves hypoxemia in pigs in vivo. Am Rev Respir Dis 1992; 146: 300-6
[4] Richard JC, Janier M, Lavenne F, et al. Effect of position, nitric oxide, and almitrine on lung perfusion in a porcine model of acute lung injury. J Appl Physiol 2002; 93: 2181-91
[5] Albert RK, Hubmayr RD. The prone position eliminates compression of the lungs by the heart. Am J Respir Crit Care Med 2000; 161: 1660-5
[6] Mentzelopoulos SD, Roussos C, Zakynthinos SG. Prone position reduces lung stress and strain in severe acute respiratory distress syndrome. Eur Respir J 2005; 25: 534-44
[7] Bryan AC. Conference on the scientific basis of respiratory therapy. Pulmonary physiotherapy in the pediatric age group. Comments of a devil's advocate. Am Rev Respir Dis 1974; 110: 143-4
[8] Gattinoni L, Tognoni G, Pesenti A, et al; Prone-Supine Study Group. Effect of prone positioning on the survival of patients with acute respiratory failure. N Engl J Med 2001; 345: 568-73
[9] Guerin C, Gaillard S, Lemasson S, et al. Effects of systematic prone positioning in hypoxemic acute respiratory failure: a randomized controlled trial. JAMA 2004; 292: 2379-87
[10] Taccone P, Pesenti A, Latini R, et al; Prone-Supine II Study Group. Prone positioning in patients with moderate and severe acute respiratory distress syndrome: a randomized controlled trial. JAMA 2009; 302: 1977-84
[11] Curley MA, Hibberd PL, Fineman LD, et al. Effect of prone positioning on clinical outcomes in children with acute lung injury: a randomized controlled trial. JAMA 2005; 294: 229-37
[12] Mancebo J, Fernández R, Blanch L, et al. A multicenter trial of prolonged prone ventilation in severe acute respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 2006; 173: 1233-9
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[14] Sud S, Friedrich JO, Taccone P, et al. Prone ventilation reduces mortality in patients with acute respiratory failure and severe hypoxemia: systematic review and meta-analysis. Intensive Care Med 2010; 36: 585-99
[15] Dellinger RP, Levy MM, Rhodes A, et al; Surviving Sepsis Campaign Guidelines Committee including the Pediatric Subgroup. Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of severe sepsis and septic shock: 2012. Crit Care Med 2013; 41: 580-637
[16] 織田成人,相引眞幸,池田寿昭,他;日本集中治療医学会Sepsis Registry委員会.日集中医誌 2013; 20: 124-73
[17] Minonishi T, Kinoshita H, Hirayama M, et al. The supine-to-prone position change induces modification of endotracheal tube cuff pressure accompanied by tube displacement. J Clin Anesth 2013; 25: 28-31
[18] 神津玲,華山亜弥,前田智美,他.前傾側臥位が急性肺損傷および急性呼吸促迫症候群における低酸素化血症,体位変換時のスタッフの労力および合併症発症に及ぼす影響.人工呼吸 2009; 26: 210-7
[19] Reignier J, Dimet J, Martin-Lefevre L, et al. Before-after study of a standardized ICU protocol for early enteral feeding in patients turned in the prone position. Clin Nutr 2010; 29: 210-6
# by DrMagicianEARL | 2013-06-08 17:48 | 敗血症性ARDS
※一部,医療関係者以外の一般向けの内容も含めています.このため,薬剤に関しては一般名ではなく商品名で記載しています.

■2013年3月31日に中国において鳥インフルエンザA/H7N9の人への感染例が報告されて以降,中国国内において患者の報告が継続している.また,4月24日には,中国江蘇省帰りの患者が台湾において発症が報告されており(4月26日時点ではICUで人工呼吸管理となっている),大陸外で初の感染者がでている.ただし,感染拡大速度は遅く,ヒト-ヒト感染も確認されておらず,現時点ではパンデミックとは程遠い状態にある.このため,渡航制限はなく,現時点では本邦の新型インフルエンザ等感染症特別措置法の対象外である.

■日本ではまだ発生例はなく,ヒト-ヒト感染も確認されておらず,ヒト-ヒト感染があったとしても非常に限定されていると考えられているが[1],新型インフルエンザ感染症等特別措置法を1ヶ月早めて4月13日に施行,4月21日の第53回日本呼吸器学会学術講演会での第162回ICD講習会においてもH7N9に関する内容が急遽盛り込まれ,4月26日には厚生労働省よりH7N9を指定感染症として定める等の政令が施行などの対応がとられている.地方レベルでも対応が開始されており,小生の所属する地区においても保健所より緊急連絡会議開催により各病院の感染対策従事者が5月2日に召集された.

■今回,5月2日時点での情報を以下にまとめる.なお,最新情報については国立感染症研究所疫学センターが適宜更新発表している.
国立感染症研究所疫学センターはこちら

1.鳥インフルエンザウイルスA/H7N9について
■ウイルス株を入手した国立感染症研究所の解析報告[2]では,A/H7N9は3タイプの鳥由来の遺伝子(H7N3のHA,H7N9由来のNA,H9N2由来の内部遺伝子)の再集合体である.ヒト型のレセプター結合能が増しており,PB2遺伝子も哺乳類への適応力が増している.RNAポリメーラゼ至適温度は鳥の41℃からヒトの上気道の34℃に変化し,ヒト上気道でも増殖可能となっている.現在ヒトからヒトへの伝播は確認されていないものの,ヒトへの適応性が高まっていることは明らかである.

■補足であるが,インフルエンザウイルスは宿主細胞に侵入する際,その表面糖蛋白質ヘマグルチニン(HA)を使って宿主細胞表面の受容体に結合する.ヒトの間で流行している季節性インフルエンザウイルスのHAは,ヒト上気道細胞表面の受容体(ヒト型受容体)に強く結合できるが,鳥インフルエンザウイルスのHAはその受容体に容易には結合できない.このため,HAがヒト受容体特異性にかかわる変異をきたさなければヒトには感染できない.ヒトへの感染能を獲得しても,実際に感染するのは容易ではなく,さらにヒトからヒトに感染することはさらに困難となるため,鳥インフルエンザではヒト-ヒト感染が起こりにくい.
※中国で2家族において同時感染例が報告されているが,ヒト-ヒト感染があったかどうかは不明である.SARSの際は家族内感染において血縁者にのみヒト-ヒト感染が生じたケースが報告されている.これは,SARSウイルスが南アジア人や本省人(広東省や福建省からの移住者)に多いHLA-B4601,5401とSARS感染が相関が強いためと考えられている.このように遺伝学的背景も感染に関与している可能性がある.

■H7亜型のインフルエンザウイルスは鳥の間で循環しているインフルエンザウイルスグループであり,これまでH7N2,H7N3,H7N7のヒトへの感染が報告されているが,H7N9に関しては今回が初めてである.

2.死亡率,死因,リスク因子
■新型感染症の発生当初は重症例から報告されることが多く,発生初期に報告される死亡率は極めて高く過大評価されることはSARSやインフルエンザA/H1N1pdm2009においても示されている.今回のH7N9においても,初期は極めて高い死亡率であったが,患者探知を重症下気道感染症患者から外来でインフルエンザ様症状を呈した患者にまで検査を拡大したところ,軽症の患者や無症候性感染者(不顕性感染例)が見つかるようになっており,4月29日のWHOの速報[3]では感染者126例,死亡者24例で,死亡率は20%を切り,さらに低下傾向にある.
※インターネットでは死亡率60%という誤った情報が散見されるが,これはH7N9ではなく1998年から報告されている高病原性鳥インフルエンザA/H5N1である.

■4月24日の報告[1]では,4月17日までに確認された82例の確定患者のうち,38例(46%)は65歳以上であり,2例(2%)が5歳未満の小児であった.これら小児2例はいずれも臨床的に軽度な上気道症状を呈していた.確定患者の多くは男性で(73%),情報が得られた71例のうち54例が1つ以上の基礎疾患を含む健康危害状況を伴っていた(高血圧31例,糖尿病14例,心疾患12例,慢性気管支炎7例,肝炎4例,喫煙4例,関節リウマチ4例など).確定症例82例のうち81例は入院加療を受けた.情報が得られた確定患者51例のうち,33例(65%)は重篤な下気道症状のためICUにおいて隔離が行われた.4月17日現在,17例の確定例と1例の疑い例がARDS(急性呼吸窮迫症候群)もしくは多臓器不全により死亡し,60例の確定例と1例の疑い例が危篤な状態にある.軽症であった4例は既に退院しており,無症状であった小児1例は入院加療を行わなかった.

■確定症例のうち,情報が得られた81例では,発症から初診までの中央値は1日,発症から入院までの期間の中央値は4.5日であった.情報が得られた64例のうち,41例(64%)がオセルタミビル(タミフル®)投与を受けていた.投与開始のタイミングの中央値発症から6日目であった.情報が得られた40例のうち19例がARDSを合併(発症からARDS合併までの中央値8日間)し,17例が死亡した(発症から死亡までの中央値11例).

■参考までに,1998年から報告されている高病原性鳥インフルエンザA/H5N1によるARDSについて触れておく.H5N1のARDSの特徴として,①若年者で多い,②多臓器不全がめったに生じない,③他の要因によるARDSに比して極めて死亡率が高い(60%),④ウイルス血症をほとんどきたさない,などが挙げられる.ベトナムのハノイのPICUにおけるH5N1によるARDS12例の解析では,白血球,血小板の減少と,AST,ALTの上昇がみられ,多臓器不全は非常に少なかった.通常のインフルエンザでは7日で治癒するが,インフルエンザ脳症,インフルエンザ心筋炎は早期に生じる.一方,H5N1のARDSは7日目までは死亡しにくいが,その後は急速に病状が悪化するという特徴を有する.

3.検査と診断,本邦での各診療機関の対応
■H7N9の診断は,上気道あるいは下気道から採取した検体からH7N9ウイルス遺伝子を同定するか,ウイルスを直接分離培養同定することで確定される.中国における確定症例82例においては,7例(9%)がウイルス分離により,2例が血清診断(急性期と回復期の抗体価の4倍以上の上昇)により,73例(89%)がリアルタイムRT-PCRによるウイルス遺伝子の検出により診断されている[1].一方,台湾での発症症例では,経過中,2回咽頭拭い液を採取したが,ともにリアルタイムRT-PCR法でH7N9ウイルス遺伝子は陰性で,4月22日に採取された喀痰検査でリアルタイムPCR法でようやくウイルス遺伝子が陽性となっている.
※一般的にICUでのインフルエンザ診断は,鼻咽頭スワブより下気道検体の方がよいことが報告されている[4].インフルエンザ肺炎によるARDSでは鼻咽頭検体でのインフルエンザ迅速キットは3-4人に1人は偽陰性になってしまう.

■本邦での現時点でのH7N9の検査・診断についてであるが,本邦においては既に各地方衛生研究所でH7亜型検査が可能な体制ができている.現時点で以下の4項目全てを満たしている患者はH7N9ウイルス検査診断の候補となる.
(1) 38度以上の発熱と急性呼吸器症状があること
(2) 臨床的または放射線学的に肺病変(肺炎またはARDS)が疑われること
(3) 発症前10日以内の中国への渡航または居住歴があること
(4) ただし,他の感染症または他の病因が明らかな場合は除くこと
この基準を満たした患者を診療している病院においては,その患者が他の患者と接触しないような動線を確保し,マスク着用,個室に誘導し(確定診断がでるまで可能な限り入院させる.同伴者がいる場合は患者が要観察例と判断された時点で原則同伴させない),適切な感染防止対策を実施した上で,検体を採取し(喀痰,咽頭拭い液,吸引液)冷蔵保存を行う.同時に,保健所に連絡を行う.上記4項目を満たしていない場合でも,中国からの帰国者でインフルエンザ様症状を呈しているならば保健所に相談を行う(保健所としても極力検査にまわしたいとのことである).

■検体はハンクス液1.0-1.5mLを用い,保健所回収までは冷蔵保存とする(ハンクス液がない場合は保健所に相談).ハンクス液がない場合は滅菌生理食塩水を使用する(この場合,分離培養検査はできずPCR検査のみ可能).

■PCRによる確定診断となるまでは政令上はH7N9感染者とはみなされないため,要観察例とみなされた患者の入院は強制ではない.よって,やむを得ず入院ができない場合は,公共機関を使わないよう帰宅のうえ,自宅待機するよう指示する.また,H7N9と確定するまでは感染症指定医療機関には入院適応とならない.

■保健所が診療機関から検体を受け取り,地方衛生研究所に送付し,リアルタイムRT-PCR(検査時間5-6時間)を行う.H7と判明した場合は検体が国立感染症研究所に送付され(H7N9かの確認のため),同時に保健所の依頼により府搬送者または救急車で感染症指定医療機関に患者が搬送される.なお,休日の検査体制についてはまだ不十分であるため,週末や日曜祝日では初期対応病院での入院期間が数日にわたる可能性がある.
※大阪府下の感染症指定医療機関はりんくう総合医療センター,大阪市立総合医療センター,市立堺病院,市立豊中病院,市立枚方市民病院の5病院である.

■H7N9は通常のインフルエンザ迅速キットでも陽性となりうることは判明している,ただし,H7N9においてどの程度のウイルス量で陽性化するのかのカットオフ値や,適切な検体採取時期,検体採取部位等に関して信頼できる情報はなく,米国CDCからは,鳥インフルエンザウイルスまたは変異したA型インフルエンザウイルスを迅速キットでは検出できない場合があることも言及されており,現時点では迅速キット陰性をもってH7N9を否定してはならない

4.治療
■WHO,CDCいずれにおいても今回のH7N9に対してはタミフル®をはじめとするノイラミニダーゼ阻害薬は有効であると考えられている.H7N9に対する抗インフルエンザウイルス薬の臨床効果,適正な投与量,投与期間は不明であるが,理論上は発症早期の投与で有効性が高いと考えられるため,臨床的診断がついた段階で抗インフルエンザウイルス薬を投与した方がよい.中国からの報告においても,早期にH7N9を疑うこと,タミフル®を早期に投与することが重症度を下げる可能性があると言及されており,発症後5日以内の投与が重症化や死亡のリスクを減らすかもしれないと報告されている[1].これについては,過去にもH1N1pdm2009パンデミックの際に,ICUに入室したインフルエンザ患者1859例の後ろ向き解析で,ノイラミニダーゼ阻害薬投与群は非投与群より有意に生存率が高く(75%vs58%),発症後48時間を越えても,5日以内であれば非投与群より有意に予後が改善することが報告されている[5].また,中国の治療指針においては発症後48時間以内に投与開始すべきであるとされているが,重症例では発症後48時間以降においても投与を検討すべきであるとしている.

■国内においてはパンデミックに備えて国民の45%ぶんに相当するタミフル®の備蓄を行っている.これと市場に出回っているぶんを合わせれば,国民の60%ぶんに相当する.また,タミフル®耐性への懸念もあることから,リレンザ®等他の抗インフルエンザ薬の備蓄も検討している.

■タミフル®の有効性,副作用について,無効,あるいは異常行動を言及する声があるため,この点について触れておく.これまでタミフル®の有効性に関しては様々な多数の報告が存在する.最も質が高いと言われている報告として2012年1月のコクランレビューによるメタ解析の報告[6]があり,この報告では,「健康成人では抗インフルエンザ薬は,インフルエンザの罹病期間を21時間短縮するが,重症化を有意には抑えない.」としている.この報告については以下の注意が必要である.
(1) レビュー担当者の中にタミフル撲滅運動家の浜六郎氏(NPO法人医薬ビジランスセンター理事長でイレッサの撲滅運動も行っている)がおり,バイアスがかかっている可能性がある.
(2) 「学会誌等に掲載された論文は製薬企業の意向を反映している可能性が高いので,各国の規制当局が保有する臨床試験の成績を解析した.」と述べているにもかかわらず,いくつかは学会誌にも掲載されている報告があり,解析対象の矛盾が生じている.
(3) 規制当局が保有する臨床試験はハイリスク例や重症例が対象から除外されてしまっている(死亡例を出すわけにはいかないからである).
よって,このコクランレビューの報告から分かることは,非重症例の健常若年成人では(免疫力の関与が推察されるため)タミフル®の効果があらわれにくいという限定的な内容である.これらをもってハイリスク例や重症例,新型インフルエンザ感染者への投与を制限するのは危険である.このコクランレビューの報告が出て間もない2月7日に米国CDCは,「規制当局が保有する臨床試験のみでタミフル®の効果を結論づけるべきではなく,観察研究で評価されるべきである」としてコクランを批判する声明をだしている.

■実際にハイリスク例に対するタミフル®の投与を検討したメタ解析では,タミフル®が死亡リスクを77%減少させたとしている[7].また,2009年の新型インフルエンザH1N1pdm2009のパンデミック時の各国の死亡率をみると,日本が他国と比して非常に低い.これは,海外の他の国では,インフルエンザ罹患時は自宅待機し,タミフル®は服用しない方針であったのに対し,日本においては早期に病院を受診し,タミフル®を処方されていたことが関係しているとされる.これにより,これまでタミフル®処方に対して否定的見解を示してきたWHO,CDCもタミフル®使用検討に方針変更となっている.最も高い死亡率となった米国も「H1N1pdm2009時は日本のようにタミフル®を積極投与をすべきであった」との反省を示している[8]
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■タミフル®の副作用については日本では異常行動が指摘されてきた経緯がある.発端は2005年11月にタミフルを服用した2人の患者が異常行動の結果事故死したことから始まる.同年11月17日には米国FDAの調査でタミフルを服用した小児12人が死亡と公表した.2005年11月30日に日本小児科学会がタミフルと異常行動の因果関係を否定する見解を発表したが,2007年になってもタミフル服用後に異常行動による転落死などが相次ぎ,厚生労働省がタミフルの10歳代への使用制限を発表した.

■ここでひとつの議論となるのが,「インフルエンザそのもので異常行動は起きないのか?」ということである.インフルエンザに限らず重症感染症で高熱となった患者での中枢神経症状が生じることはよく知られており,敗血症が最たる例といえよう.近年,熱不安定性CPT-Ⅱ遺伝子多型による高熱での中枢神経傷害機序が判明し[9,10],特定の遺伝子変異を有する患者において異常行動が生じていた可能性も示唆されている.そこで,平成19年にインフルエンザに罹患した小児を対象に調査・後方視的解析が行われた.これによると,約1万例の解析で,タミフル服用者よりも非服用者の方が異常行動発生リスクが2.5倍有意に高いという結果となった.この結果を見れば,タミフル®が原因で異常行動が発生したとは考えにくいが,本解析は後方視的解析というlimitationが存在するため,タミフル®による異常行動は完全には否定しきれないとして,厚生労働省は10歳代へのタミフル®の使用制限を継続している.
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■なお,米国でタミフル®を処方された27684例と背景因子でマッチした27684例で有害事象を比較したコホート研究では[11],タミフル®は中枢神経系の有害事象との関連性はないとの結果であった.また,タイでの予防投与としてのタミフル®またはリレンザ®の16週間連続投与を検討したプラセボ対照二重盲検比較試験においても中枢神経系の有害事象は認められていない[12]

■アマンタジン(シンメトレル®)も抗インフルエンザ薬であるが,ノイラミニダーゼ阻害薬ではなく,H7N9においては耐性変異が既に確認されていることから使用は推奨されない.

■発熱外来は早期に破綻することが2009年の新型インフルエンザの時点で分かったため,今後は帰国者外来,接触者外来として対応していくことが特措法で定められている.

5.予防,ワクチン
■手指衛生,空気感染予防策が重要であることは言うまでもない.16報のシステマティックレビューにおいても,手指衛生がインフルエンザと気道感染症を減少させることが報告されている[13].また,感染源と推定されている家禽類(鳥)への接触を避けることも重要である.

■感染経路遮断については,全国的かつ急速な蔓延により国民生活および国民経済に甚大な影響を及ぼす恐れがあると認められるときに緊急事態宣言により,外出自粛要請,催物等制限など特別な措置がとれることになっている.

■H7N9のワクチンについては現時点では開発中の段階にある.ヒト-ヒト感染能が強まった場合のパンデミック時には第1波には間に合わないため,原則第2波への対応となる.その際はまず特定接種として,一般国民より先に医療従事者とライフライン関係者に接種が行われる.

■probioticsの免疫修飾作用が研究されているものの,probioticsによるインフルエンザ予防効果については現時点では明らかでない.国内では明治R-1ヨーグルト®がインフルエンザを予防しうるとして購入されているが,臨床的に解析検討はされておらず,真の有効性は不明である.一方,probioticsがインフルエンザワクチン接種後のIgA,IgG抗体価を上昇させることで予防効果を増強させるとする報告は複数ある.

■なお,近年,東日本大震災を皮切りにEM菌が話題となっているが,「EM菌をもって新型インフルエンザに対する抗体を獲得して罹患を予防する」といううたい文句でEM菌関連の製品を販売している業者が見受けられるが,まったくのでたらめ(この内容では詐欺商法ともいえる)である.感染が起こらなければ抗体は獲得できず,EM菌を接種したところで新型インフルエンザに対する抗体は作られない.

[1] Li Q, Zhou L, Zhou M, et al. Preliminary Report: Epidemiology of the Avian Influenza A (H7N9) Outbreak in China. N Engl J Med. 2013 Apr 24
[2] Kageyama T, Fujisaki S, Takashita E, et al. Genetic analysis of novel avian A(H7N9) influenza viruses isolated from patients in China, February to April 2013. Euro Surveill 2013 Apr 11;18
[3] WHO Global Alert and Response. Human infection with avian influenza A(H7N9) virus – update http://www.who.int/csr/don/2013_04_29/en/index.html
[4] López Roa P, Rodríguez-Sánchez B, Catalán P, et al. Diagnosis of influenza in intensive care units: lower respiratory tract samples are better than nose-throat swabs. Am J Respir Crit Care Med 2012; 186: 929-30
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[6] Jefferson T, Jones MA, Doshi P, et al. Neuraminidase inhibitors for preventing and treating influenza in healthy adults and children. Cochrane Database Syst Rev 2012; 1: CD008965
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[8] Kuehn BM. Antiviral drugs underused in US patients for 2009 influenza A(H1N1) pandemic. JAMA 2011; 305: 1080-3
[9] Chen Y, Mizuguchi H, Yao D, et al. Thermolabile phenotype of carnitine palmitoyltransferase II variations as a predisposing factor for influenza-associated encephalopathy. FEBS Lett 2005; 579: 2040-4
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[11] Greene SK, Li L, Shay DK, et al. Risk of adverse events following oseltamivir treatment in influenza outpatients, Vaccine Safety Datalink Project, 2007-2010. Pharmacoepidemiol Drug Saf 2013; 22: 335-44
[12] Anekthananon T, Pukritayakamee S, Ratanasuwan W, et al. Oseltamivir and inhaled zanamivir as influenza prophylaxis in Thai health workers: a randomized, double-blind, placebo-controlled safety trial over 16 weeks. J Antimicrob Chemother 2013; 68: 697-707
[13] Warren-Gash C, Fragaszy E, Hayward AC. Hand hygiene to reduce community transmission of influenza and acute respiratory tract infection: a systematic review. Influenza Other Respi Viruses. 2012 Oct 8
# by DrMagicianEARL | 2013-05-03 22:02 | 感染症
■New England Journal of Medicineから重症患者の栄養に関する衝撃的な報告です.

■グルタミンは体内でもっとも豊富な遊離アミノ酸であり,侵襲時には異化亢進により減少してしまう.高度侵襲病態でのグルタミンは病原体の体内への侵入を防ぎ損傷部位を修復するために活性化される免疫細胞や腸管粘膜細胞のエネルギー基質となり,これにより感染防御維持とBacterial translocationの防止効果が期待される.一方,グルタミンが欠乏すると,マクロファージの抗原発現能が低下し,アポトーシスへの感受性が高まる.また,グルタミンは細胞内の代謝により抗酸化物質のグルタチオンの材料となることで侵襲時の酸化ストレスを軽減し,組織傷害を防止する.また,heat shock protein(HSP)の発現を高めることで致命的高熱による細胞死を防止する.これらの機序からグルタミン投与が高度侵襲病態で有用であることが期待されていた.

■Houdijkら[1]の多発外傷患者を対象としたRCTでは,グルタミン投与で肺炎,菌血症,敗血症の発生を有意に抑えることが示されている.Estívariz[2]の壊死性膵炎・心血管・大腸手術患者を対象とした検討では,膵臓手術では有意差はなかったものの,その他の手術では感染症合併や肺炎が有意に減少した.Grauら[3]のICU患者127例での多施設RCTでは,感染症合併率の減少と血糖コントロールの改善が示されている.その一方,Gianottiら[4]の,明らかな低栄養状態のない待機的消化器外科手術患者428例を対象としたRCTでは,術後合併症,感染症,在院日数等アウトカムに有意差はみられなかった.Andrewsら[5]のRCTでも,グルタミン投与は感染症発生率や死亡率に影響を与えなかったと報告している.

■このように,グルタミンの効果はまだ議論のさなかであり,死亡率改善効果を示した報告は存在しない.ただし,グルタミンは炎症反応を増悪させず,むしろ抗酸化能を高め,HSPの発現を高めることから高度な炎症反応を示す重症患者にも安全に投与できると考えられていた[6].ただし,動物実験(マウス腸管虚血再灌流モデル)では虚血状態でのグルタミン投与が好中球の過剰活性化を引き起こし,再灌流後の生存率を悪化させることが報告されている[7]

■抗酸化物質としては,近年特にセレンに注目が集まっている.セレン注射製剤は本邦では未承認製剤であるため使用できない.セレンは生体内ではセレノシステインとしてタンパク質に組み込まれ,主にセレノプロテインとして働き,ビタミンEやビタミンCと協調して,活性酸素やラジカルから生体を防御すると考えられている.ヒトではセレン単独の欠乏症状が見られない.したがって,セレン欠乏は欠乏症の二次的な要因となると考えられている.すなわち,ビタミンEなどと協調してはたらくため,両栄養素の欠乏症状の相乗作用により現れると考えられている.高度侵襲化においてはセレンの生体内レベルが低下することが知られている.

■しかしながら,セレンの臨床効果についてはいくつかのRCTが存在するものの,そのエビデンスは極めて弱い.Angstwurmら[8]は重症SIRS,敗血症,敗血症性ショックについて検討した249例の大規模な臨床試験を行ったが,死亡率改善効果は認められなかった.また,セレン,グルタミンを評価したSIGNET trial[5]でも死亡率改善効果は認めていない.

■一方,メタ解析ではHeylandら[9]があり,セレンは死亡リスクを35%有意に減少させていた.この報告では,単独投与であれ他の抗酸化物質との組み合わせであれ,セレンの経静脈投与が死亡率の鍵を握ると結論している.また,Huangら[10]の12報RCTのメタ解析では,セレンの経静脈投与で敗血症による重症患者の死亡リスクが17%低下したと報告されている.さらに,Alhazzaniら[11]は重症敗血症に限定した9報RCTのメタ解析を行い,セレンは死亡リスクを27%有意に減少させたとしている.

■カナダ・米国・欧州で行われていたREDOXS studyは,このセレンに焦点をあて,グルタミンとの併用の効果を含めて検討した研究である.その中間解析が,セレンの有用性を示したAlhazzaniら[11]のメタ解析の報告から1週間たたぬうちにNEJMに報告された.これが以下に紹介する論文である.研究デザインはSIGNET trial[5]に似ているが,結論は,グルタミンは死亡率を増加させうる,抗酸化物質(主にセレン)はプラセボと有意差なしであった.

■ただし,この報告をもってグルタミンを否定するのは早計と思われる.本研究の対象は多臓器不全に陥っている患者であり,上述の腸管虚血モデルでの死亡率悪化の報告を踏まえれば,腸管虚血状態を合併している可能性が高い多臓器不全であればグルタミンによって死亡率が増加することは矛盾しない.一方で,多臓器不全に至っていない重症例でグルタミンが死亡率を増加させるかはこの報告では不明である.SOFA scoreが低い患者でのグルタミンの効果の検討が今後必要と思われる.

A Randomized Trial of Glutamine and Antioxidants in Critically Ill Patients
Daren Heyland, M.D., John Muscedere, M.D., Paul E. Wischmeyer, M.D., Deborah Cook
, M.D., Gwynne Jones, M.D., Martin Albert, M.D., Gunnar Elke, M.D., Mette M. Berger, M.D., Ph.D., and Andrew G. Day, M.Sc. for the Canadian Critical Care Trials Group
N Engl J Med 2013; 368:1489-1497 | April 18, 2013 | DOI: 10.1056/NEJMoa1212722
重症疾患患者におけるグルタミン,抗酸化物質の無作為化試験(The REDOXS Study)

要 約

【背景】重症疾患患者は相当な酸化ストレスを受けている.グルタミンと抗酸化物質の補充は治療的ベネフィットを提供するかもしれないが,近年のデータは矛盾している.

【方法】この盲検化2×2要因試験において,我々はカナダ,アメリカ合衆国,ヨーロッパの40施設のICUの,多臓器不全を有し,かつ人工呼吸管理を有する成人重症疾患患者1223例を,グルタミン投与群,抗酸化物質投与群,併用群,プラセボ群に無作為に割り付けた.ICU入室から24時間以内に投与を開始し,いずれも経静脈,経腸の両方で投与された.主要評価項目は28日死亡率とした.中間解析のため,P値は最終解析で0.044以下で統計学的に有意であるとした.

【結果】グルタミン投与群は,グルタミン投与を受けていない患者群と比較して28日死亡率が増加する傾向が見られた(32.4% vs 27.2%; 調整オッズ比 1.28; 95%信頼区間 1.00-1.64; P=0.05).院内死亡率,6ヶ月死亡率はグルタミン投与群が非投与群よりも有意に高かった.グルタミンは臓器不全や感染症合併に対する効果は認められなかった.抗酸化物質は28日死亡率に影響を与えず(30.8% vs 28.8%抗酸化物質非投与群; 調整オッズ比 1.09; 95%信頼区間 0.86-1.40, P=0.48),その他の全ての二次評価項目にも影響を与えなかった.群間で重度な副反応の差は認められなかった(P=0.83).

【結果】早期のグルタミン,抗酸化物質の投与は臨床的予後を改善せず,グルタミンは多臓器不全を有する重症疾患患者の死亡率増加と関連していた.


[1] Houdijk AP, Rijnsburger ER, Jansen J, et al. Randomised trial of glutamine-enriched enteral nutrition on infectious morbidity in patients with multiple trauma. Lancet 1998; 352: 772-6
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[10] Huang TS, Shyu YC, Chen HY, et al. Effect of parenteral selenium supplementation in critically ill patients: a systematic review and meta-analysis. PLoS One 2013; 8: e54431
[11] Alhazzani W, Jacobi J, Sindi A, et al. The Effect of Selenium Therapy on Mortality in Patients With Sepsis Syndrome: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Crit Care Med 2013 Apr 12
# by DrMagicianEARL | 2013-04-19 11:41 | 敗血症

by DrMagicianEARL